鳥取県 曹洞宗 松風山 永明寺

永明寺公式ブログ【所在地】〒681-0065 鳥取県岩美郡岩美町新井210 【電話&FAX】 0857-72-0777

鳥取藩主菩提寺 長谷寺 アライグマ被害

2020-07-10 21:23:08 | 【長谷寺だより】

 鳥取藩主菩提寺のひとつで岩美町長谷にある曹洞宗雲門山長谷寺の本堂の天井がアライグマの侵入により抜け落ち、脱出しようとしたアライグマによって大名蓮が描かれた襖絵(岩美町保護文化財)、三十三観音像、開山像などが被害を受けました。

 長谷寺を兼務している永明寺の石田貴道住職が6月14日(日)7時40分に何者かの侵入により散乱した本堂を発見し、長谷寺責任役員の中嶋健雄氏の立ちあいのもと同日14時より警察による現場検証が行われ、アライグマによる被害と判明しました。アライグマ侵入時、石田住職は、長谷寺に不在で、長谷寺には月に数日だけ庭掃除や朝課諷経などに訪れていました。

 本堂に安置されていた開山の道肝徹要尼和尚の像(加賀藩前田家より寄進)や三十三観音像のうち二十三体の観音像が破損しました。岩美町保護文化財に指定されている鳥取藩四代藩主池田宗泰正室の桂香院殿久姫ゆかりの蓮池図襖絵のうち三葉葵の紋がある手前の一枚が甚大な被害を受けました。幸い長谷寺に伝来する鳥取藩主池田家、御三卿田安家、加賀藩前田家、薩摩藩島津家など錚々たる大名家より寄進された寺宝の数々は、鳥取県立博物館に寄託してあり、難を逃れました。

 6月16日(火)には岩美町教育委員会事務局社会教育係の寺本謙吾係長、鳥取県立博物館の来見田博基学芸員、山田修平学芸員の立ちあいの下、南部町で襖絵等の修復工房をされている秦博志氏より岩美町保護文化財の襖絵の修復手順の説明を受け、秦氏の修復工房で岩美町保護文化財の襖絵を保存修復することになりました。

 6月25日(木)には東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学専攻博士課程を修了し、博士(文化財)の学位を持つ彫刻家の吉水快聞氏(橿原市 浄土宗正楽寺住職)が開山像や観音像の被害状況の確認と修復の見積もりに長谷寺を訪れました。

 長谷寺は、紀州藩主徳川宗直の二女で鳥取藩主正室の桂香院殿久姫が帰依した道肝徹要尼和尚のために建立した尼寺であり、鳥取藩主池田家の私的な菩提寺のため檀家を持たない寺です。長谷寺の御霊屋には藩主と藩主正室の位牌が安置されています。才色兼備の桂香院殿久姫は、夫の池田宗泰の死後、鳥取藩五代藩主から七代藩主までを養育し、藩校の尚徳館の創立にも関与し、藩政改革を断行し、池田家に絶大なる貢献をした姫です。長谷寺の歴代住職は、尼(院主)が代々勤めてきましたが、先先代(景福寺 山根宗範東堂)、先代(景福寺 山根宗信住職)、現住職までの三代の住職は、尼ではなくなりました。

 この度の被害を受け、長谷寺では復興のための会議を開き、様々な手段で広く有志より浄財を募り、藩主ゆかりの文化財が置かれている本堂や破損した文化財を修復することを目指しています。復興後、住職は、地域の歴史的な拠点として長谷寺を観光や文化活動の場として活用してもらいたいと希望しています。何卒、皆様のご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。


最新の画像もっと見る