エコ・ニュージーランド Eco New Zealand

ニュージーランド発。エコライフ、環境保護、山、森、動物、アウトドア、山歩き、猫についてのブログ。

ねむりねこよりみなさんへ

エコ・ニュージーランドへようこそ!! その時の気分で、過去の旅行の話になったり、庭、環境保全、トレッキング等々、話が飛んでいます。ジャンル別にお読みになりたい方は、左のカテゴリーからどうぞ!! また、本文中のトレッキング(トランピング)関連の用語の説明は、同じくカテゴリー欄から「ニュージーランドのトランピング用語集」をご参照ください (^o^)

トラ6歳?の誕生日と友達のお祝いダブル・パーティ!

2013年07月17日 | ネコ
 先日、トラを最寄りの獣医さんの所へ定期検診に連れて行った。全般的にいたって健康、と獣医さんに太鼓判を押されたものの、

「トラちゃん、ずいぶん歯石がたまってきましたね。歯肉炎も起こしかけてますので、近いうちにきれいにしましょう」

と言いながら、獣医さんが何やらコンピューターに入力しかけて、ふと手を止めた。

「あら、トラちゃん、3歳になってますけど
「飼い主が見つからなくて引取ったネコなので、年齢は分からないんです
「健康だし、若く見えるけど、3歳ってことはないと思うわね」
「私もそんな気はしますが…… 幾つぐらいだと思いますぅ
「そうねぇ…… 普通、歯石がたまり始めるのは8~9歳なんだけど、まだ毛ヅヤがとてもいいから、6歳ぐらいにしておきましょうか

こうして年齢不詳だったトラは、公称6歳ということになった

 トラがわが家の一員となったのは今から3年前の7月13日。以来、毎年この日が近づくと、友人たちも招いてお祝いをすることにしている。家人の都合から今年は15日にパーティを行うことになった。

 今年は同じ時期にお祝いごとが重なり、友人が最近2年間のワークビザを申請して受理されたので、そのお祝いも兼ねたパーティとなった。友人のニックネームが「タカ」というので、これにひっかけて「虎・鷹パーティ」と名付けて、出席者は「虎」か「鷹」の仮装をすることに決定

 パーティ当日。ニュージーランドでは、自宅でパーティを行う場合、家の外に風船を飾ってご近所さんに知らせるのが通例。



 これは人間用のごちそう。参加するにも何か一人一品づつ、持ち寄ってもらった。友達の持ち寄りは、たこ焼き、お寿司、豚肉の煮物。わが家で作ったのは、チョコレートケーキ、野菜の中華まん(ハウスメイト作)、レモンケーキ(猫かぶり作)、カボチャスープ、たらことわかめのおにぎり(ねむりねこ作)。写真はごちそうの一部。



 先日、地元のスーパーで買い物した時に、ニュージーランドの白ワイン(ソーヴィニヨン・ブラン)の銘柄で"Tora Bay"というのを見つけたので「トラ兵衛」に引っ掛けてパーティ用の飲み物としてゲットした。お祝いなので、シャンペンも一緒に提供。





 そして、トラ用のごちそうニュージーランドでは、ペット餌用の挽肉を売っており、これがトラの大好物。挽肉だけではネコが必要な栄養素を全部取れないので、キャットフードと併用で食べさせるのが基本。



 「ハッピーバースデイ」の大合唱と共にトラにごちそうが差し出される…… 

 普段とは異なる妙な雰囲気に、最初は警戒して近寄ってこなかったが、ごちそうの芳香には叶わなかったらしい。おずおずと近づいて来て、ガツガツと食べ始めたトラ。



 「見て、見て~ ぼく、みんなにオモチャもらったよ~」お誕生祝いをもらって嬉しそうなトラ。



 そして、さっそく遊ぶ。



  当日、仕事で遅くなる友達がいたり、家族が病気で早く帰る友達もいたので、一次会、二次会のようになった。





 ごちそうに舌鼓を打ち、話しに花を咲かせ、とっても楽しい一夜となった。来年は、どんなお祝いをしようかな、と気の早いである。 

エコガーデン冬支度完了。そして冬料理は……

2013年07月09日 | エコ
 冬至から2週間が経った。ニュージーランドの冬至は北半球の夏至と同じ日で、統計上は冬至から2週間後、つまり今の時期が一番寒くなるらしい。

 日本では梅雨なのに雨量が少なく、あっという間に梅雨明けしてしまったと聞いた。こちらクイーンズタウンは、本来ならカラッと良く晴れるはずの冬の日が、なぜか雨が多く風も強くまで鳴るのだから、地球の北と南で気候が逆転してしまったかのようでビックリ。こんなウェットな冬は、過去15年で初めての体験だ。

 少し前のことになるが、一年で一番寒くなるこの時期に備えて、エコ菜園の作物を全部収穫して、コンポストの堆肥とぼかし肥を埋め込んで更地の状態にした。例年、今の時期は朝晩が氷点下になって土が凍り、地上に生える野菜類は霜で全滅してしまうからだ。



 幸いなことに、このところの雨続きで朝晩も氷点下にはならず、夜になっても薪ストーブに火を入れなくても済む日があるほど 暖冬だと、スキー場が雪不足で大変なのだが、これまで降った雨はスキー場のある山間部ではほぼ雪になっているというので好都合。朝晩が温暖で過ごしやすく、スキー場には雪がたっぷりある冬は、本当にとても珍しい。

 今日は数日ぶりにお日さまが顔を出したので、ねむりねこは庭のバラの花を摘み取った。冬だけど、庭で一番日当りの良い所に植えてあるバラは何とまだ花をつけていた。





「えー、こんなにがついてるのに全部摘んじゃうなんて、もったいないんじゃない?」と思うかもしれない。

 しかし、どんなにをつけていても、現在バラは生命体としてはシャットダウン状態にある。

 それが証拠に、花を切って花瓶に生けて数日経つと、花はその形を変えずに黒っぽくなって朽ち枯れてしまう。本来なら、ばぁっと艶やかに開ききった後に、花びらがハラハラと落ちて終わるんだけどね。

 これが花を摘み取った後のこざっぱりした姿。





 バラの枝の剪定は、来月終わりか9月の初めにする予定。冬が終わり「バラさん、春が来たよ」と教えてあげる効果もあるので。

 庭木の何本かは、夫・猫かぶりが時間を見つけてはせっせと剪定してくれているので、こちらもすっきり顔をしている。





 剪定で切り落とした木の枝は……



適当な長さに切り分けて、薪ストーブ行き。寒い夜をじんわり温めてくれる 



 すべてが眠りについているような庭で、しっかりと息づいている植物もいる……ラッパスイセンの可愛らしい芽



毎年のことだけど「冬が終われば春だからね」と約束してくれてるみたいで嬉しい

 寒い時に食べる料理はいろいろあるけど、この日はチーズ・フォンデュを作った。日本へ帰る知り合いが主宰したガレージセールで、フォンデュ鍋セットを安く入手したのがきっかけ。

 本格レシピだと、チーズはエメンタールやグリュイエールなんかを使うんだけど、ニュージーランドのスーパーで普通に売っているエダムとマイルド・チェダーを今回は使った。実際、風味の違いはそんなに違わなかった。



 ディップする具は、バゲットに加えて、温野菜、えび、ソーセージなどで試したが、



 チーズの塩気と温野菜の甘みが合って、一番美味しく感じた。スイスでは洋梨を使うらしいので、次に試してみようかな

 おしまいに……ヨガのブログいつもヨガといっしょ!を始めました。このブログ、エコ・ニュージーランドとはちょっとタッチを替えて、思索的にヨガについて語っています。こちらのリンクからどうぞ


ニュージーランド 真冬の大晦日とお正月!?

2013年07月01日 | 思ったこと
 「大晦日とお正月って言ったら、真冬に決まってるじゃ~ん」 
というのは北半球での常識で、南半球では真夏にクリスマス、大晦日、お正月がやって来る。ニュージーランドに15年も住んでいるのだから、いい加減慣れても良さそうなものだけど、こればかりは毎年な~んとなく違和感が拭いきれない。

 ここは日本じゃないんだから、除夜の鐘、紅白、初詣がないのは仕方ないとして…… 朝は5時前から明るくなり、日中は夏の陽射しが眩しく輝き、夜は10時を過ぎないと暗くならない。そんな時期に一年の変わり目を迎えたって雰囲気が出やしないのだ。

 現に、この国ではMidwinter Christmas(真冬のクリスマス)というイベントが行われ、真冬の時期にクリスマスの飾り付けをして肉のローストなどクリスマス料理をこしらえて食べる人達がいる。

 夏にオーブンでローストやケーキを作るなんて暑苦しい作業は、普段離れて住んでいる家族が集まるクリスマスでもなけりゃやってらんない。特にこちらのロースト料理は、日本での鍋料理に匹敵する家庭料理だから、南半球でのクリスマスにローストとは、お盆の時期に鍋を囲むようなもの、と考えれば分かりやすいだろう。キリスト教徒でないねむりねこたちは、クリスマスには大して思い入れがないけど、このアイディア自体はかなりナイスだと思った。

 ある日のこと。お正月に食べ切れなかったお餅のパックがまだ未開封で残ってるのに、夫・猫かぶりが気がついた。で、このMidwinter Christmasにヒントを得て「真冬の大晦日とお正月」イベントを提案。色々と人を呼ぼうかとも思ったけど、何せ主役のお餅の数に限りがあるので、ハウスメイトたち等の身内だけで密やかに行うことした。

 猫かぶりと話し合った結果、大晦日の日を6月30日、元旦を7月1日と決定。大晦日は牛肉とキノコのしぐれ煮と、庭でかろうじて生き残ったミズナを添えたおソバを、元旦はお雑煮以外の料理を一人一品づつ分担して作る、ということでそれから毎日を楽しみに過ごした

 待ちに待った大晦日。友達の録画してくれた2年前の紅白歌合戦を見ながら年越しソバを食べた。食べるのに忙しくて写真を撮るのを忘れてしまったけど、やっぱり薪ストーブが暖かな冬の夜に食べるおソバは、夏の夜に窓を開け放して食べるそれよりもず~っと美味しく感じた 

 ハウスメイトたちの帰宅が遅かったこともあり、おソバを食べ始めたのが9時頃、というタイミングもそれっぽくって「今年はどんな一年だった?」なんてお互いに報告し合ったたりして(笑)大晦日の雰囲気はどんどん盛り上がる。かれこれ過去15年、たちは年末・年始の時期に帰国していないから、こんな「ゴッコ」をしているだけで、本当に日本で大晦日を過ごしているような錯覚に陥る…… 耳を澄ませば除夜の鐘の音が聞こえてきそうだ。

 そして翌日は元旦「明けましておめでとう。今年も宜しく」と新年の挨拶を交わす。朝食は軽く済ませて、お昼に食べるお正月料理の準備を始める。お雑煮とだし巻き卵はの係。東京風の「なとり雑煮」に近いものを作ろうと、鶏のもも肉に、小松菜が手に入らないので青梗菜で代用。見た目を賑やかにするために、薄切りにしたマッシュルームと缶詰のタケノコも入れてみた。



だし巻き卵は初挑戦。だしが入る分、卵がやわらかいので巻くのに一苦労したけど、何とか格好はついた。



スキー場のカフェでバリスタをする、ハウスメイトの一人が紅白なます、



日本食レストランで調理補助をするもう一人は、黒豆の煮物を作ってくれた。



 そしてDVDは、これもまた件の友人が録ってくれた「欽ちゃんの仮装大賞」の2012年新年バージョン。アイディアを凝らした仮装の数々に感心したり、笑いながら食べるお正月料理のおいしいこと料理の取合せも、箸が止まらない。



 食事の後は、が作っておいたさつまいもプリン(あっ、また写真を忘れた)を食べながら、仮装大賞を最後まで見る。

 次のDVDは「笑点」の新年特別企画。猫かぶりが焼いたチョコレートとパイナップルのアップサイドダウンケーキを食べながら見る。



 家族同然の友人たちと、美味しいものを頬張りながら、楽しくおしゃべりして、いっぱい笑って…… やっぱりお正月はこうやって過さなくっちゃね

 夕ご飯は、お昼の残りのなます、黒豆、だし巻き卵に、ハウスメイトの特製ハンバーグ ご飯はお赤飯に見えるけど、黒米入りの雑穀ご飯なので全体に赤い色がついているのだ。これもウマし…… 



 たまたま新年に食べ損なったお餅があったので、思いつきでやってみたこのイベントは、思いのほか楽しかったので家の恒例行事になりそうだ。来年は、お餅をもっと用意しておいて、もう何人か人を誘ってみようかな

 最後にこれを読んでいるの友達のK・Hやんへ
 一同を代表しまして…… いつも日本のTV番組を録ってくれてどうもありがとうそー言う訳で、また今年も「紅白歌合戦」「仮装大賞」「笑点」と、できたら「ゆく年来る年も」録画を宜しくお願いしま~す

ニュージーランド 秋の味覚

2013年05月05日 | エコ
 南半球のニュージーランドは、秋から冬へと向かっており、木々の黄葉も盛りを少し過ぎたところ。毎年、ねむりねこ夫婦のこの時期の楽しみは自然の恵みの収穫である。

 夏の間働いていた職場には、大きな、大きなクルミの木があり、毎日眺めては収穫の日を心待ちにしていた。クルミとは、あの茶色い殻の状態で木に実るのだとばかり思っていたので、青梅のような実をたわわにつけた木を眺めては

「一体、いつになったら収穫できるのかしら」

なんて考えていた。そのうち、その青梅状の実がボトボトと地面に落ちてくるようになり、割れた実を見たら、何と内側から茶色殻のクルミが顔を出しているじゃないの

 つまり、クルミの茶色い殻は青梅のような実に包まれていて、地面に落ちた衝撃で薄緑色の果肉のような外皮がはじけ、あの茶色い殻が飛び出す、という複雑な仕組みになっているのだ。

 ふぅむなるほど……と一人納得しながらクルミを割ってみたら、今度は真っ白な実が中から出てきた。あれぇ、クルミって茶色くなかったっけ 食べてみると軟らかくて、あの香ばしくてカリッとした食感がない。

 これはどうしたことかと思ってインターネットで調べたら、クルミは拾ってから2~3週間ほど天日干しをしないと、おいしく食べられる状態にはならないとのこと。身近な食べ物なのに、知らないことだらけ。意外なクルミの奥深さを知ったであった。

 拾って来たクルミを、庭のテーブルやイスの上に干して2週間ほど経ったので、殻を割って中の実を取り出す作業をねこかぶりと始めた。日本で代表的なオニグルミよりもやや小振りで殻も薄いので、作業は思ったより早く進んだ。






 さっそく、クルミを使って料理をしてみた。ねこかぶり作、小麦胚芽入りクルミパン。胚芽の香ばしさがクルミにマッチして 日本では、もちもち食感のふわふわしたパンが人気らしいが、パンとは本来ボソッとした食感の食べ物だ。このパンのように、しっとり、どっしりとした重めの食感は、噛み締めると口の中に風味が広ってとても美味しいと思う。




 これは作、ロースト・カボチャのサラダのクルミがけ。緑の野菜は自家製ミズナとルッコラ。マヨネーズに白ワインビネガーと白ワインを加えて作ったドレッシングには自家製チャイブスを入れ、ちょっと奮発してパルメザンチーズのおろしたのも混ぜてみたら、栄養・味のバランスともに 思いつきで作った割には美味しく大好評だったので、結果的に3日連続でこのサラダを作ることになった。




 今秋も栗拾いに出掛けた。ある人から伝授された場所は秘密のはずだったんだけど、今では結構みんなに知られていて、ポピュラーな栗場になっている。日本の栗に比べてこちらのは小さいので、大振りのものを選んで拾って来た。日本では地面に落ちた栗にはすぐに虫が入ってしまうが、病害虫が少ないクイーンズタウンではそんなことがなくってラッキーだ。クルミとは対照的に、栗は拾ってから日持ちがしないので、早く加工する必要がある。




 栗料理の王道、栗ごはん。日本の栗に比べると甘みが少ないので、いくつかのレシピを試した結果、ほんのりとした醤油の風味が栗の甘さを引き立てる、このレシピがとても気に入った




 スイーツ系が得意なねこかぶりは、栗クロワッサンを作った。ニュージーランドでは、成形済みで後は焼くだけの状態になったパンやクロワッサンを売っており、オーブンで10分ほど焼くだけで誰もが手軽に焼きたての味を楽しめる、というスグレモノだ。このクロワッサンを買って来てオーブンで焼き、栗のペーストと渋皮煮を挟んだものだが、上品な甘さがコーヒーにとても良く合って二人のお気に入り




 最後にこれはおまけ。寒くなると鍋料理が恋しくなるように、ニュージーランドではオーブンを使ったロースト料理が冬の家庭料理の代表選手だ。写真左は、クマラ(さつま芋)、ニンジン、カリフラワー、ズッキーニ、カボチャに、オリーブオイルと塩こしょう、自家製のローズマリーを刻んだのをまぶしてオーブンで焼いただけのシンプルな料理だけど、野菜の甘みが引き出されてとても美味しい。写真右は、タマネギとニンジンの薄切りを乗せて焼いたローストビーフ。野菜の薄切りを乗せることで肉が乾燥しないでうまく焼ける。真ん中の小さい器に入っているのは、ローストビーフの焼き汁を使ったグレービーで、肉にかけていただく。




 寒い時期のオーブン料理は、アツアツで体も心もほっこり温まるし、オーブンの熱で部屋も暖まると一挙両得なのだ。クルミも栗もまだまだ残っているので、次は何を作ろうかと研究中の食いしん坊夫婦である。 

 







誕生祝いに裏山リマーカブルズの谷下り

2013年04月01日 | トレッキング
 毎年、だれにも律儀に巡ってくる誕生日 そして、今年もまたその日が近づいてくると「何をして過そうかなぁ」と計画を練るのが常である。

 今回は二人で誕生日をはさんで四連休を取り、ウキウキの計画、ルートバーントラックからマッケンジー小屋をベースにした、二つのサイド・トリップを考えていた。詳しくは1:50,000地形図NZTopo50-CB09 Hollyford(こちらのリンクから)を参照。

<プラン1・サニークリーク探索>
 ルートバーン・トラックの車代行サービスをする「トラック・ホッパー」を運営する友人から教えてもらった穴場。アーランド滝 (Earland Falls) に流れ込む支流の一つ、サニークリーク (Sunny Creek) という川を辿りその先にある氷河湖に行く。コンディションが良かったら、近くのピークをハントする。

<プラン2・エミリー峠越え>
 マッケンジー湖からエミリー峠 (Emily Pass) を登攀、フレイザー・コル (Fraser Col) に寄り道してルートバーン・フォールズへと抜け、ルートバーン・シェルターまで歩く。

 <プラン2>に関しては天候に大きく左右される場所で、ちょっとでもガスったりしたら方向が分からなくなる 加えて、このところ病気等々で体力が落ちていることもあって、決行には天候・体調がどちらもいいこと、という条件付きで考えていた。

 その点、高低差が少なくルート・ファインディングも比較的容易な<プラン1>なら問題はなさそう。件の友達も難しくなかったって言ってたし…… ルートバーン・トラックを歩くのは数年ぶりで、ちょっとした冒険気分を味わえるサイド・トリップというのは何とも魅力的だ

 マッケンジー小屋のある地域は、フィヨルドランド国立公園に属していて、年間6000mmを超える多雨地帯なのでよいお天気に巡り会うことはあまり容易ではない。しかしつい最近も書いたように、2月~3月にかけてはNZほぼ全土が毎日快晴続きだったので、ねむりねこの誕生日の3月24日近辺も奇跡のような好天にあやかれないか、と願っていた……

 う~ん、現実は厳しかった。3月17日に約6週間ぶりのが降ったことが快晴・残暑パターン終了の合図だったようで、以後は従来の気候パターンに戻ってしまった。全土的な旱魃には朗報だったけど、よりによって24日前後はフィヨルドランドを含む西海岸地域は大雨注意報が発令された 

 ちょこっとのならまだしも、大雨が降らなくたっていいじゃないっあ~あ、大雨になるんじゃ無難な<プラン1>もダメ 結局、この計画は泣く泣く次回まで見送ることになった

 この程度のことでは凹まないのがのいいところ それなら大雨が降りそうのない地域に、雨が来る前に出掛けりゃいいじゃん、ってことになった。

 で、兼ねてからちょっと気になっていた、クイーンズタウンの南西にあるイヤー連山 (Eyre Mountains)ビー山小屋 (Mount Bee Hut) からの尾根歩きをしたいと提案した。標高900m超のビー山小屋までは登山道兼4WD道路が通っているから、小屋までスイスイッとで行って、そこから眺望のいい尾根歩きができるからとってもオイシイ 日本には五合目までとか、下手をすると頂上までで行ってしまえる山があるけど、ここNZではそういう山はひじょうに珍しいのだ

 前日に小屋で一泊して翌朝早くから歩き始めれば、が降る夕方前までに戻って来れる。荷物を自力で担いで上がらなくていいんなら、重さを気にせず食べ物をいろいろ持って行けるので、小屋での食事メニューも普段より豪勢にできる。いそいそと支度をして、いざイヤー連山へ

 ここへはクイーンズタウンを南下して、ファイブ・リバーズ (Five Rivers) というところから未舗装道路に入り、そこから件のマウント・ビー・ロードを登る。はDOCレンジャー時代には4WD運転講習を受けたし、猫かぶりは地元の主な4WD道路を走ったことがあるから、二人の運転技術はたぶん問題ないと思うけど、心配の種は今乗っているにあった。ある程度の車底部の地上高は、溝、ぬかるみ、凸凹など、4WD道路特有の悪条件をクリアするのには絶対的に必要なのだが、当時乗っていたは地上高が今のRAV4よりも高かった。

 4WDとしては地上高が低いコイツで、果たしてどこまで行けるのか…… 道路に大きな溝や隆起部がないことを祈りつつを走らせたが、間もなく現れた溝を何とかクリアしたのもつかの間、道のど真ん中にあって避けられない隆起に車底部をぶつけてしまい 

 まさか、あの程度の隆起部で車底を打つとは思わなかった こんなんじゃ4WD道路走行は、よほどコンディションが良くない限りかなり難しい。損傷がどの程度か凸凹だらけのその場では確認できず、このまま奥へ入るのは不安があったので、あえなく退却することに

 舗装道路に戻り、路肩に車を寄せて車底を覗き込んだら、パイプをこすった程度だったのでよかった~ あいにく、他の場所へ行くには少し時間が遅かったし、行ったとしても担いで歩けるような荷物ではなかったので、この日は一旦自宅に戻り、翌日どこかへ日帰りハイクに行くことに再度予定を変更 ちょっと肩を落として帰路に着いた 

 一度ならずとも、二度も予定を変更しなくちゃいけないなんて……トホホ

 しかし、とにかく諦めないたちは、帰りの車中で翌日のアイディアを出し合った。誕生日の記念に歩くんだから、多少キツくたって思い出に残るハイクがいい……

 あ、そうだ 自宅から見て裏山に当たる、リマーカブルズ連峰 (The Remarkables、写真下) の谷下りはまだやったことがなかったから、この機会にやってみたいな。



 リマーカブルズの裏側を流れるワイ・クリーク(川)沿いに谷を下るワイ・クリーク・ルート (Wye Creek Route) は、数年前に猫かぶりが歩いたことがあるが、その日は働いていたのでまだ歩いていなかったのだ。というワケで決定


 その翌日の23日(日)、曇り空で肌寒かったが午後には晴れる予報だったので、予定どおり計画を実行 このルートは始点と終点が離れているので、予め終点にを一台置いてから、もう一台で始点に向かう必要がある。始点はリマーカブルズ・スキー場の駐車場。ここからアルタ湖へのトラック(Lake Alta Track) を辿って、湖からワイ・サドル(按部)まで登る。



 トラックは湖で終わるので、その先はルート・ファインディングをしながら登る。目的地がはっきり見えていて人の踏み跡がしっかりとついていおり、ガレ場もあるけど表面が崩れにくいので比較的歩きやすい。






 サドル付近からアルタ湖を見下ろしたところ。




 サドルから来た方角を振り返る。曇り空のため、湖の色、眺望が今ひとつなのは残念。



 これは別の日にサドルへ行った時に撮った写真。晴れた日にはこんなにゴージャスな眺めなのだ。青い空ってどうしてこんなにきれいなんだろうね。






 サドル上はとても風が強かったので、写真撮影もそこそこに谷を下り始める。これがサドルの反対側。氷河が削り取った、美しいV字谷がどこまでも伸びる。




 夏が終わったばかりというのにまだ雪渓が残っている。昨年の真夏にクイーンズ・ドライブを歩いた時にもあったので、これは一年を通して溶けることのない万年雪だ。




 谷をずんずんと下って行く。最初の30~40分程度は険しい下りで、誤って足を滑らせたら大怪我をしそうなところを、ケルンを道標に淡々と下る。その後は緩やかな下りが続き、景色を眺めるゆとりができる。



 サドルを振り返る。ここまでくると風はもう止んでいた。




 谷にはいくつも池溏(ちとう)があった。この辺の地面は分厚い地衣類に覆われていて、フカフカの絨毯の上を歩いているような感触が気持ちいい この近くでランチ休憩 今日のお弁当は、猫かぶり特製のクラブハウス・サンドイッチ。普段の山歩きのお弁当作りはの担当なんだけど、今回はお誕生祝いなので特別なのだ。へへっ




 しばらく行くと、ニュージーランドのバックカントリー特有のタソックの草原が広がる。この辺のタソックはそんなに丈が高くないので、歩くのに大して邪魔にならなかった。




 遥か彼方に谷の終わりが見えて来た。行く手はまだ長い。




 滝があったが、このところの好天続きで枯れそうになっていた。もう少し水量があったらきれいなのにね。




 リマーカブルズ連峰最高峰のシングル・コーン峰 (2319m) 。ぴょこっと突き出た山頂が、その名前を表している。




 斜面をトラバース。タソックに覆われているので地表が見えにくい。所どころ落とし穴のようなくぼみがいきなり出現して、何度か足を取られそうになった。



 この辺りのタソックは丈が長く、ものによっては1m近い。草同士が絡み合って生えているので、足を引っかけて転びながら歩く。下はタソックが生い茂っているから痛くはなかったよ




 これがワイ・クリーク。見たところ山の上の方に雪はなさそうなのに、清水が流れているということは、どこか見えない場所にはかなりの量の万年雪が残っているってことよね。




 巨大なスペアグラス(スパニヤード)を発見。オレンジ色のニョキッとしたのは花で2mくらいありそう。スペアグラスはその名 (spear=槍、grass=草) の通り葉先が固く尖っているのでうっかり刺さると血が出るし、花には固くて大きなトゲがたくさん生えていて、全く手に負えない難物だ

 危険なほど固い葉っぱだが、側部は尖っていないので、この辺に暮らすノウサギ (hare) 達は食べ物の乏しい時期にスペアグラスの葉を横からかじって食べる……野生の生き物って逞しいよね。




 枯れ沢。この下を本流が通ってる。



 枯れ沢が終わったところには本流が戻り、淵ができている。瑠璃色の水が美しい




 森に入る前に、元来たルートを振り返る。ニュージーランド南島南部の森林限界は1000mぐらい。




 森に入ると登山道のロウワー・ワイ・クリーク・トラック (Lower Wye Creek Track) があり、足場が一気に楽になる。

 今まで歩いて来たルートも、数年前まではDOC(環境保全省)が管理するルートだったのだが、いつの間にか管理外になってしまった。まだが働いていた時代のことで、理由は良く覚えていないけど、真夏に二つのパーティが相次いで遭難救助騒ぎになったことが後押しになったような気がする。遭難の原因は、どちらも明らかな準備・下調べ不足だった。




 トラックから、初めてワカティプ湖が姿を見せて、何となくホッとする……ああ、やっぱりきれいだなぁ この辺りはロッククライマー達にも人気があり、写真でが歩いているすぐ先の右側の岩壁で、数人のクライマー達が取り付いていた。



 下流の方に滝とダムがある。もっと下流には小さな水力発電所があり、現在も稼働中だ。この橋を渡って反対側にもクライミングのスポットがある。






 駐車場への道を下って行く。行く手には道路が見えて来て、終点は間近だ。




 途中、苦手の岩場があったり、タソックに足を取られたりして時間がかかったので、10時間弱の長い行程となった。あー良く歩いたな~っていう達成感と充実感が好きだ。

 誕生祝いの記念にどこかへ出掛けることはこれまでにもあったけど、こんなに何度も計画変更を余儀なくされたのは初めてのこと。「七転び八起き」体験と長時間のトレッキング、後々まで忘れることのない思い出になりそうだからとしよう 

 最後に、誕生日にかこつけてのわがままに付き合ってくれた猫かぶりに、思い出深い一日を心からありがとう

湖と秀峰を見渡す絶景!ワナカのロイズ・ピーク

2013年03月26日 | トレッキング
 クイーンズタウンに15年住んでいながら、今だに歩いていないところが実はいろいろある。その一つが、ワナカのロイズ・ビーク(Roys Peak)。クイーンズタウンから車で約1時間と至近距離にありながら、なぜ、これまで歩かなかったのか。

 それは、牧場の中を通るトラックだということ。このいかにもニュージーランドらしい「牧場の中」というのが、ねむりねこたちは苦手なのだ。だって、家畜のフンだらけで汚くて臭いところを歩くのがツライんだも~ん 

 ニュージーランドに来て初めて経験したトレッキングが、牧場の中を2泊3日で歩くものだった。景色はとても良かったし、牧場の人々の暖かいもてなしもひじょうに嬉しかったんだけど……場所によっては足の踏み場もないほどフンだらけで、あまりの臭さに吐き気をもよおしながら歩いたことが、ニュージー初トレッキングの思い出として今も忘れられないのだ

 加えて、牧場には陽射しを遮る木々がないので、真夏に歩くのは暑くてバテそうだし、それなら春から夏の始めにかけての時期はどうかというと、子羊が生まれる時期なのでトラックが閉鎖される。で、冬は結構雪がありそうだし等々……「ああ、もうめんどくさいっ」と後回しになったのだ。

 3月上旬のある日、どこかへ日帰りハイクに行こうかという話しになり「ここは行った、あそこも行った」と消去法で残ったのが、このロイズ・ピークだった。晴天で、暑くなるという予報だったが、とりあえず行ってみよることにした。

 トラックのスタート地点で、牧場のフェンスを越える。



トラック維持費のカンパ箱があったのでたちも協力した。 




 トラックは頂上(1587m)を目指して、ひたすら登り続ける。







所どころ傾斜が緩くなるが、基本はガンガン登る。太陽は時々雲の陰に隠れ、心地よい風が時折吹き、気温もまだ高くなかったので、登りにはラッキーな気候条件。






 この牧場を始めた人の記念碑が途中に立てられていた。



 少し離れた岩の上に、ニュージーランド・ファルコン(マオリ名・カレアレア, New Zealand Falcon/Karearea)の凛々しい姿が






 途中で休憩。湖と空の青が目にしみるほど美しいな






 頂上まであと一息




 やった、頂上だ (1587m) 先着のフランス人とドイツ人の男の子たちは、暑さのため上半身裸になっていた。




 頂上からは期待していた以上の絶景が広がっており、登りの辛さは一瞬のうちに吹っ飛んでしまった これはワナカ湖 (Lake Wanaka)。



ワナカ湖と、国立公園の名前にもなっている秀峰・アスパイアリング山 (Mt Aspiring, 3033m)。写真中上の山脈の中央で、頭をニョキッと突き出しているのがそれ。



スキー場のあるカードローナ谷方面とその標識。





近くの尾根にあった三角点。



二人で記念撮影



 青空・山々・湖の織りなす、素晴らしい自然の造形美。とにかく、美しいの一言に尽きる。山頂にいたフランス人とドイツ人の男の子たちも「ヨーロッパ・アルプスもきれいだけど、この景色の方が上だよ。ニュージーランドの南島はサイコー」と、飽かずに景色を眺めていた。頂上なのに全く穏やかで、テントを持ってたらキャンプでもしたいくらいだった。

 しばらくして下りにかかり、脇道に入ってヨガのポーズをしてみた。



このクローズアップ写真を見ると、風がないため湖面がほぼ鏡状になっているのが分かる。



とにかく、ここからも絶景なのだ。



もひとつおまけのヨガポーズ。ウォームアップ充分だったので脚が良く上がった。




 このトラック、景色が美しいだけでなく、ちょっとしたフシギもあった。場違いで唐突としか言いようのないピンク色の水晶が、中腹のある地域にいくつも転がっているのだ はっきり言ってどーでもいいことなんだけど、念のため証拠写真を撮ってみた。

 

 写真を撮るのはさすがに控えたけど、問題のトラック上の家畜のフン害はもちろんあった。トラックの脇でがメエメエ言いながら牧草を食んでるんだから当然の事態なのだ。しかし、フン害の状態が許容レベルだったのがホント何よりだった……特に、頂上付近にはなかったのは◎。

 山々と湖の織りなす絶景を楽しめるということでは、クイーンズタウンで一押しのベン・ロモンド・トラックに対抗できる……いやそれ以上かもしれないので、ワナカを訪れる人には、ぜひぜひお勧めしたい。

 それにしても、こんなにきれいなところ、何でこれまで放っといて歩かなかったんだろーね   

クイーンズタウンの最高に楽しい夏遊び!スキッパーズ・ウォーク

2013年03月25日 | トレッキング
 3月の前半まで残暑が続いたクイーンズダウンだった。

 残暑と言っても、拷問のような酷暑が続くのではない。秋の訪れを告げる朝晩の冷え込みがなく、真夏の爽やかな暑さが心地よく続く、とってもとっても素敵な毎日だったのだ。元来、降水量が少ない土地柄なんだけど、2月の初めから6週間もの間に一滴の雨も降らなかったのは珍しく、この時期にクイーンズタウンを訪れた観光客は、来る日も明くる日も雲一つない晴天に恵まれとてもラッキーだった。

 そんな時は外遊びが最高に楽しい。紫外線が日本よりも5倍から7倍も強いので、日焼けには注意しなくてはならないのだけど、ニュージーランドでは日本のように極端に反応する人々はごくごく少数派。トレッキングでも、日に焼けるからと真夏の暑い盛りに長袖・長ズボンスタイルで歩くのは、日本からのハイカーぐらいのもの。日焼け止めをたっぷり塗って、半袖・短パンで外遊びを快適に楽しむ、というのがニュージーランド流で、ねむりねこも、陽射しと風を全身に感じられるこのスタイルがだーい好きだ。

 植物はお日さまからエネルギーをもらって生きているように、人間だって肌に日を浴びないと免疫力が低下してしまう。ホワイトニングブームだとか巷ではいうけど、真夏に白い肌ってどう考えても不自然な感じが…… わざわざ真っ黒に焼くこともないと思うけど、要はその季節に合った自然な姿がいちばん美しいと思う。 

 暑い時は水遊びが楽しい。それも大自然の中でできたらこの上ない……というワケで、ジャブジャブと川の中を歩きながら鉱山の歴史を巡るウォークを、2月下旬のある日に楽しんで来た。

 場所はクイーンズタウンの郊外、スキッパーズ。ゴールドラッシュ時代には、最大で1000人以上の鉱夫とその家族が暮らしていたが、現在は当時の面影を残す廃墟や史跡が寂しく残るのみである。スキッパーズのタウンシップ(もちろんゴーストタウンだけど)へは、スキッパーズ峡谷を車で抜けなくてはならないのだが、道路は舗装されておらず、道幅が狭くてカーブが多く、道の反対側は崖っぷち、という悪条件なのでレンタカーは保険の対象外地域である。スキッパーズ・ロードの詳細はこの動画を。

 タウンシップには、復元された小学校、農家、そして墓地があり、ここから複数のウォーキング・トラックが出発する。






 この日に訪れたのは、ダイナモ小屋へと通じる片道3時間程度の「ダイナモ・ハット・トラック(Dynamo Hut Track)」。歩き始めると、すぐにかつてホテルだった建物の廃墟がある。








 20分も歩くと徒渉。ジャブジャブと音を立てて足首ぐらいの深さの川を歩くのは、童心に帰れてとっても楽しい このトラックの約半分は川の中を歩くので、暑い日には超気持ちいいのだ。






 少し歩くと小さな小屋があって、



内部には、金鉱の掘削機に使う電力を供給していた発電機の遺跡が安置されていた。






 透き通った水の中を歩く、歩く 澄み切っていて美しい水なのだが、上流にある支流の一つのマードック川(Murcdock Creek) から今も鉱毒が滲み出ているので、本流の冷たい水を手にすくってゴクゴクっとできないのが残念。




 行く手に、水力発電に使われていたダムが見えて来た。



 近づいてみるとこんな感じ。まだしっかりと構造を保っている。




 途中はずっとこんな感じで、山や丘に囲まれた渓谷をの~んびりと歩く 頭上には真っ青な夏空が広がり、すっごくいい気分





 本道からダイナモ・ハット・トラックへと別れる分岐点の標識が見えて来た。






 分岐路からは谷が少し狭くなり、丈の高い茂みや少しだけど木々の姿も現れてきた。




 ダイナモ・ハットへは緩やかな傾斜の丘を登って行く。






 行く手にハットの姿が。終点は近い。




 終点のハットに到着



 ふうっ、暑かったけど楽しかった~




 こじんまりとした小屋の内部は、きちんと整頓されており、古いながらも居心地が良く、典型的な"Good Old Kiwi Hut (昔ながらのニュージーランドの山小屋) "という感じだ。それもそのはず、小屋に備え付けてあるビジター・ブックを見ると、訪問・滞在者の大多数はハット・エチケット(hut etiquette, 山小屋でのマナー)を心得た、地元の人かニュージーランドに住む山好き達ばかりだった。




 小屋の裏には「ニュージーランドで初めて建造された水力発電」の遺跡が残っていた。この「初めて」というのがややクセもので、たちはこれ以外にもニュージーランド初の発電所というのをいくつか見て来ている……







 人間の欲とは計り知れないもので、ヘリコプターも大型トラックもなかった時代に、よくこれだけ大掛かりなものをこんな山奥に造ったものだと思う。よその金鉱である程度お金を貯めて、ここで一攫千金を夢見た金鉱夫たちが資金と労力を提供し合ったのだろう。で、元はどれだけ取れたのかしら…… 錆びにまみれて朽ちかけた重器具を前に、当時への思いを巡らせるだった。


 来た道をブラブラ戻りながら、周囲の植物にも目をやってみる。

 途中にはルピナスの群生地があった。もう花盛りはとうに過ぎていて、所どころ花が残っているだけだったけど、満開の時にはどんなにか美しいことだろう…… 次は花のきれいな初夏に訪れてみたいんだけど、これだけ徒渉だらけの場所は、天候が安定して気温が高い時期でないとちょっと厳しい。初夏は天気が変わりやすく、肌寒いことが少なくないので、実現するにはタイミングがポイントになりそう。




 フワ~ッと爽やかな香りが一面に漂っていたので、よく見るとなんとミントの大群生地



もちろん、この国の固有種ではないので、この辺に住んでいた鉱夫が植えたのだろう。山奥にいきなり現れた香り高いハーブ。この荒涼とした場所に確かに人が暮らしていたのね。

 感慨深い気持ちにちょっぴり浸りながらの帰り道。日も段々と西に傾き、さっきまでは心地よかった足下の清流が、少し冷たく感じられるようになった。

 歩き終えて車に戻ると、夏の陽射しをたっぷり浴びて、水遊びと山遊びをした後の心地よい疲労感が体を覆っていた。こんな楽しいことが手軽に出来ちゃうから、15年住んでてもクイーンズタウンでの暮らしは変わることなくサイコーなのだ

巨大ズッキーニを収穫!

2013年02月06日 | エコ
 今年になって初めて、ズッキーニをエコ菜園で育ててみた。

 これまで育てなかった理由は、温暖な地域の作物というイメージがあるズッキーニは、クイーンズタウンでは難しいかも、と思ってたからだ。ここは盆地特有の気候なので、夏には全国でもトップレベルの最高気温を記録するほど暑くなり、幸運にも害虫がほとんどいないので何でも育ちそうな感じもする。しかし、いきなりやってくる南極からの寒波の影響で急激に気温が下がり、真夏でも山の頂上にうっすら雪化粧をすることがある。いわゆる夏野菜は、寒さや霜に弱いものが多いから、クイーンズダウンで育てる時には細心の注意が必要なのだ。

 実際、トマトを育てた時には実がついて赤くなる前に秋が来てしまい、バジルの苗を植えた数日後に寒波が襲って全滅したこともあったし、ナスを育てようとした友達は見事に失敗した。レンジャーだった頃、野菜を育てるのが上手な同僚がいて、彼は寒さに弱いトマトを育てるために1メートル四方の小型の温室を用意していた。だからズッキーニのことは良く知らなかったけど、寒さに弱そうだからと作らずしてあきらめていたのだった。

 ところがこの春になって、ある友達が自分の家でズッキーニを育ててることを知った。

「まだ肌寒い日もあるけど、うまく育ってる
「特別なケアは何もしてないけど、元気に育ってますよぉ

 こりゃあいいこと聞いたゾと、さっそく園芸店で種を買って来て植えたのが、春の終わりに当たる11月のこと。これから発芽させて育てるにはきわどいタイミングのように思えたけど、ものは試し、気楽に構えることにした。

 11月は季節外れの寒さに見舞われ、地域の農作物によからぬ影響を与えていたけど、わが家のズッキーニはちっちゃな緑の葉っぱを広げて精一杯寒さに耐えていた。いいぞ、その調子

 12月も後半になり夏の暑さが本格化してきたあたりから、待ってましたとばかりにすくすくと大きくなり、1月の上旬には黄色い花をつけ始めた。
 ねむりねこは1月の中旬から下旬にかけて、母の納骨のため寒い日本に一時帰国したのだけど、帰って来て家庭菜園を見てビックリ。

 ズッキーニの株が全体的に巨大化してて、ゴロンとお化けのように立派な実をつけているではないの 花が咲いてわずか2~3週間程度で実がなるのなら、寒さの影響を受ける確率も低いし、なるほどクイーンズタウンでも育つわけだ。

 さてさて、こんなに大きくなってしまったズッキーニ、どうやって食べようか



 ハウスメイトと話し合ったところ、マリネにしよう、いやカレーだよ、等々、いろんなアイディアが出された。その時ふと、イタリア人の友達が、中に詰め物をしてオーブンで焼いた、巨大ズッキーニの写真をフェイスブックにアップしていたのを思い出したので提案した。それなら大きさを活かし見た目もゴージャスなオーブン焼きにしてみよう、ということで意見がまとまった。

 この日、疲れていたは料理をお休みさせてもらい、代わりにハウスメイト夫妻が腕をふるってくれた……ありがとう

 まずズッキーニを縦半分に割り、中心の種の部分をスプーンでほじり出して、そこに火を通した豚挽肉とタマネギ、マッシュルーム,自家製フダンソウ(ほうれん草のような葉野菜)、ニンニク、パセリ、ミックスバーブを混ぜたものを詰めてから元の形に戻す。トマトソースをかけ、アルミホイルに包んで、180℃のオーブンで焼くこと1時間強。

 焼けた後、トマトソースを鍋に移し、少し煮詰めてからお皿に盛ったズッキーニにかけてでき上がり~

 

 
 
 断面はこんな感じ。ズッキーニの向こうにあるサラダの野菜も自家製、左上にちょこっと見えている瓶はの手作り和風ドレッシング。写真には写っていないけど、これ以外にハウスメイト手作りの全粒小麦粉パンとフムスがあり、ぜ~んぶ手作りのアットホームで豪華なディナーなのだ。

 

 気になる味の方は、とーってもおいしかった ズッキーニ自体に甘みがあっておいしいし、詰め物とソースとのバランスも 調理前、ズッキーニの皮が固そうだったけど、火が通ったらいい感じで軟らかくなった。どでーんと重そうな見た目に反して、するすると軽く胃にもたれない食後感、三人であっという間に完食してしまった ごちそうさまでした

 エコ菜園のズッキーニは、燦々と降り注ぐ夏の日を浴びて、まだ花と実をたくさんつけている。





 今度はどうやって料理しようかな…… 山に入っていて今回のご馳走にありつけなかった猫かぶりが帰宅したら、一緒に何か考えて作ろうっと。

年の初めに……

2013年01月08日 | 思ったこと
 昨年11月に栢野の大杉のことを書いた1週間後に母がこの世を去った。その頃、母は検査と治療で入院していたが、経過良好のため担当医から退院許可が下りた矢先の出来事だった。

 仕事から帰宅すると、非番で家にいた夫・ねこかぶりが、夕食の準備もそこそこに真剣な表情で電話を受けており、

「お父さんからの電話でね、お母さんが亡くなったよ」 

電話を変わって話しをしたが、全くの予想外の出来事に、狐につままれたような心境だった。

 その晩は大急ぎで、インターネットで飛行機を予約し、帰り支度を整え、お隣さんにトラの世話など留守中のことを頼み、翌朝に二人でバタバタとクイーンズタウンを後にした。

 彼岸への旅立ちは順送りだから、いつかはやって来るこの日を避けられないとは思ってたけど、いざその時が訪れた時のねむりねこの反応は、周囲が心配するほど冷静で穏やかだった。

 日頃からヨガに精進しているお陰で、物事を客観的に見られるようになっていたのも一つにはあると思うけど、それ以上に母の他界を信じられなかったことと、残された父を一人娘のが支えなくちゃという意識が、悲しみや喪失感などの感情を一時的に押さえ込んでしまったらしい。

 それにしても、人が一人亡くなるとはこんなにも大変なこととは知らなかった 

 日本には11日間滞在したが、毎日のスケジュールがあっという間に埋まり、加えて予定外のこともあれこれ起きる。そのうち、心身の過労からねこかぶりが体調を崩し、クイーンズダウンに戻るその日に病院で点滴を受けることに。自宅に戻ってからも、ねこかぶりの看病や、始めたばかりの仕事への復帰でフル回転の日々が続いた。

 母を思って涙を流したのは、ねこかぶりが元気になって山の仕事に戻り、週末を迎え仕事も休みになってからだった。ふっと気が抜けたその瞬間から、気分が不安定になったり、珍しく風邪を引いたりしていた。

 青い空に白いむら雲が生まれては流れる去るように、悲しい気持ちや寂しさが心を過る毎日を送り、あっという間に年の瀬が迫って来た。喪中なのでクリスマスと新年のお祝いや飾り付けは当然なし。元旦もお餅をお雑煮にして食べただけ。大晦日の晩から正月二日にかけてクイーンズタウンは雨続きで、外にも出られなかったので、友達が録ってくれた日本のテレビ番組のDVDを観るなどして過ごした。

 三日から仕事だったのだが、家に帰ると父から母校の日本体育大学が箱根駅伝で総合優勝を成し遂げたとファクスが入っていた。前日、往路優勝したことは父との電話やインターネットのニュースで知っていたが、復路も優勝したとはスゴい快挙じゃないの 後輩のみんな、よく頑張ったね 雲間から一筋の光明が射したように、心がパァッと明るくなるのを感じた。

 知らせをくれた父にさっそく電話したら「テレビでずっと見てたんだけど、お前の後輩たちは本当にすごく頑張っててね。励まされたよ」 母校の新年早々の大活躍に父娘で大いに励まされ、加えて、このところあまり元気のなかった父の、久し振りに聞く明るい声に嬉しくなった。
 それから数日後、日本に住む友達から封書が届いた。の喪中を知る彼女の手紙の内容は、近況を短い言葉でまとめたものだったけど、その裏に書いてあった言葉に目頭が熱くなった



 シンプルだけど心温まる言葉。その向こうに「大丈夫っすよ!」と彼女の笑顔が浮かぶ。

 このカードを選んで、送ってくれた優しい心に思いを馳せる。彼女自身も悩み事を抱えているから、他人にあれこれ思いを巡らす余裕などないんじゃ、と思っていたけど、根っから気立てのいい人ってこういう時にも違うのね。

 大好きな母校の胸をすく大健闘、元気を取り戻しつつある父、友達への心からのありがとうという気持ち、いい友達を持てたことに感謝して新しい年が始まった。

 ……本当だね。生きてると色々あるけどさ、無駄なことってないんだね

石川県の山中温泉にある、樹齢2300年の杉の木

2012年11月11日 | 環境保全(生態系、動植物)
 日本に帰省している間に、ねむりねこはどうしても見たいものがあった。
 
 ある日、興味にかられて世界の古い樹木についてネットでちょこっと調べていたら、日本には縄文杉に並んで古い木があることを知った。それは、石川県の山中温泉にある菅原神社に植えられている「栢野の大杉(かやののおおすぎ)」という。わざわざ屋久島まで行かなくても、古い巨木に会えるなんてスゴい、スゴい 

 元・石川県民の夫、ねこかぶりに知ってるか聞いたら、「そんなの見たことも、聞いたこともないよぉ」との返事。それならぜひ見に行かなくっちゃということで話しがまとまったのだった。

 ねこかぶりの郷里、金沢市に帰省した時に、彼の両親、弟妹、親戚にも「栢野の大杉って知ってますか」と聞いたんだけど、誰も知る人がいなかった 樹齢2300年で国の天然記念物にも指定されているっていうのに、何でこんなに認知度が低いのっ

 よく晴れた日に、ねこかぶりの両親とねむりねこ夫婦で杉を見に出かけた。金沢市内からで約1時間ほどで山中温泉に到着。菅原神社を探したが、途中、どこにも看板や標識はなく、キョロキョロと探しながらを走らせていたら、道路脇にいきなり現れたので、慌てて停める場所を探した 

 神社のお向かいには昔ながらのお茶屋さん「大杉茶屋」があり、ここの薬草茶と草団子は、素朴だけど天然の風味が豊かでとっても美味しかった


 これが入り口。ここまでくればさすがに看板が立っている。


 神社の境内へは、木の根と土壌を保護するために浮橋参道(木道)が設けられている。




 途中には栢野郷の由来に関する案内もあった。



 
 昭和22年に昭和天皇がこの地を訪れ、地元の青年の説明を受けながらご覧になったことから「天覧の大杉」とも呼ばれる。


 栢野の大杉の高さは約55m、周囲は11.5m。とにかく、とにかく、巨大なのだ 2300年もの間、嵐や地震に堪え、よくもこれだけの巨木に成長したものだ 本当に自然ってスゴいよね がっしりとしたしめ縄が張り渡されており、ご神木としての貫禄と威厳もひじょうに際立っている。幹が途中から二股に分かれているが、どちらも立派に育っており、訪れた人達に向かってサインをしているようにも見える。






 木の根元に立って上を見上げたが、枝葉が生い茂っていたので先端を見ることはできなかった。これは境内から見たところ。


 菅原神社にはこの栢野の大杉の他、3本の杉の木があり、うち栢野の大杉を含めた2本(上の写真の左側)が国の天然記念物、残りの2本(右側)は石川県の天然記念物にとそれぞれ指定されている。

 おまけだけど、神社には力石が置いてあった。




 見つけるのにちょっと手間取ったけど、こんなに交通の便の良いロケーションにこんなに素晴らしい木があるなんて 古い巨木たちを大事に、大事に保護されている地元のみなさんに大感謝 石川県にお住まいの方、または訪れる予定のある方は、ぜひ見に行って下さいね。超オススメです