毎年、だれにも律儀に巡ってくる誕生日
そして、今年もまたその日が近づいてくると「何をして過そうかなぁ
」と計画を練るのが常である。
今回は二人で誕生日をはさんで四連休を取り、ウキウキ
の計画、
ルートバーントラックからマッケンジー小屋をベースにした、二つのサイド・トリップを考えていた。詳しくは1:50,000地形図NZTopo50-CB09 Hollyford(
こちらのリンクから)を参照。
<プラン1・サニークリーク探索>
ルートバーン・トラックの車代行サービスをする「
トラック・ホッパー」を運営する友人から教えてもらった穴場。アーランド滝 (Earland Falls) に流れ込む支流の一つ、サニークリーク (Sunny Creek) という川を辿りその先にある氷河湖に行く。コンディションが良かったら、近くのピークをハントする。
<プラン2・エミリー峠越え>
マッケンジー湖からエミリー峠 (Emily Pass) を登攀、フレイザー・コル (Fraser Col) に寄り道してルートバーン・フォールズへと抜け、ルートバーン・シェルターまで歩く。
<プラン2>に関しては天候に大きく左右される場所で、ちょっとでもガスったり
したら方向が分からなくなる
加えて、このところ病気等々で体力が落ちていることもあって、決行には天候・体調がどちらもいいこと、という条件付きで考えていた。
その点、高低差が少なくルート・ファインディングも比較的容易な
<プラン1>なら問題はなさそう。件の友達も難しくなかったって言ってたし…… ルートバーン・トラックを歩くのは数年ぶりで、ちょっとした冒険気分を味わえるサイド・トリップというのは何とも魅力的だ
マッケンジー小屋のある地域は、フィヨルドランド国立公園に属していて、年間6000mmを超える多雨地帯なのでよいお天気に巡り会うことはあまり容易ではない。しかし
つい最近も書いたように、2月~3月にかけてはNZほぼ全土が毎日快晴
続きだったので、ねむりねこ
の誕生日の3月24日近辺も奇跡のような好天にあやかれないか、と願っていた……
う~ん、現実は厳しかった。3月17日に約6週間ぶりの
が降ったことが快晴・残暑パターン終了の合図だったようで、以後は従来の気候パターンに戻ってしまった。全土的な旱魃には朗報だったけど、よりによって24日前後はフィヨルドランドを含む西海岸地域は大雨注意報が発令された
ちょこっとの
ならまだしも、大雨が降らなくたっていいじゃないっ
あ~あ、大雨になるんじゃ無難な
<プラン1>もダメ
結局、この計画は泣く泣く次回まで見送ることになった
この程度のことでは凹まないのが
のいいところ
それなら大雨が降りそうのない地域に、雨が来る前に出掛けりゃいいじゃん、ってことになった。
で、兼ねてからちょっと気になっていた、クイーンズタウンの南西にある
イヤー連山 (Eyre Mountains) の
ビー山小屋 (Mount Bee Hut) からの尾根歩きをしたいと提案した。標高900m超のビー山小屋までは登山道兼4WD道路が通っているから、小屋までスイスイッと
で行って、そこから眺望のいい尾根歩きができるからとってもオイシイ
日本には五合目までとか、下手をすると頂上まで
で行ってしまえる山があるけど、ここNZではそういう山はひじょうに珍しいのだ
前日に小屋で一泊して翌朝早くから歩き始めれば、
が降る夕方前までに戻って来れる。荷物を自力で担いで上がらなくていいんなら、重さを気にせず食べ物をいろいろ持って行ける
ので、小屋での食事メニューも普段より豪勢にできる。いそいそ
と支度をして、いざイヤー連山へ
ここへはクイーンズタウンを南下して、ファイブ・リバーズ (Five Rivers) というところから未舗装道路に入り、そこから件のマウント・ビー・ロードを登る。
はDOCレンジャー時代には4WD運転講習を受けたし、猫かぶりは地元の主な4WD道路を走ったことがあるから、二人の運転技術はたぶん問題ないと思うけど、心配の種は今乗っている
にあった。ある程度の車底部の地上高は、溝、ぬかるみ、凸凹など、4WD道路特有の悪条件をクリアするのには絶対的に必要なのだが、当時乗っていた
は地上高が今のRAV4よりも高かった。
4WDとしては地上高が低いコイツで、果たしてどこまで行けるのか…… 道路に大きな溝や隆起部がないことを祈りつつ
を走らせたが、間もなく現れた溝を何とかクリアしたのもつかの間、道のど真ん中にあって避けられない隆起に車底部をぶつけてしまい
まさか、あの程度の隆起部で車底を打つとは思わなかった
こんなんじゃ4WD道路走行は、よほどコンディションが良くない限りかなり難しい。損傷がどの程度か凸凹だらけのその場では確認できず、このまま奥へ入るのは不安があったので、あえなく退却することに
舗装道路に戻り、路肩に車を寄せて車底を覗き込んだら、パイプをこすった程度だったのでよかった~
あいにく、他の場所へ行くには少し時間が遅かったし、行ったとしても担いで歩けるような荷物ではなかったので、この日は一旦自宅に戻り、翌日どこかへ日帰りハイクに行くことに再度予定を変更
ちょっと肩を落として帰路に着いた
一度ならずとも、二度も予定を変更しなくちゃいけないなんて……トホホ
しかし、とにかく諦めない
たちは、帰りの車中で翌日のアイディアを出し合った。誕生日の記念に歩くんだから、多少キツくたって思い出に残るハイクがいい……
あ、そうだ
自宅から見て裏山に当たる、リマーカブルズ連峰 (The Remarkables、写真下) の谷下りはまだやったことがなかったから、この機会にやってみたいな。
リマーカブルズの裏側を流れるワイ・クリーク(川)沿いに谷を下るワイ・クリーク・ルート (Wye Creek Route) は、数年前に猫かぶりが歩いたことがあるが、その日
は働いていたのでまだ歩いていなかったのだ。というワケで決定
その翌日の23日(日)、曇り空
で肌寒かったが午後には晴れる
予報だったので、予定どおり計画を実行
このルートは始点と終点が離れているので、予め終点に
を一台置いてから、もう一台で始点に向かう必要がある。始点はリマーカブルズ・スキー場の駐車場。ここから
アルタ湖へのトラック(Lake Alta Track) を辿って、湖からワイ・サドル(按部)まで登る。
トラックは湖で終わるので、その先はルート・ファインディングをしながら登る。目的地がはっきり見えていて人の踏み跡
がしっかりとついていおり、ガレ場もあるけど表面が崩れにくいので比較的歩きやすい。
サドル付近からアルタ湖を見下ろしたところ。
サドルから来た方角を振り返る。曇り空のため、湖の色、眺望が今ひとつなのは残念。
これは別の日にサドルへ行った時に撮った写真。晴れた日にはこんなにゴージャスな眺めなのだ。青い空ってどうしてこんなにきれいなんだろうね。
サドル上はとても風が強かったので、写真撮影
もそこそこに谷を下り始める。これがサドルの反対側。氷河が削り取った、美しいV字谷がどこまでも伸びる。
夏が終わったばかりというのにまだ雪渓が残っている。昨年の
真夏にクイーンズ・ドライブを歩いた時にもあったので、これは一年を通して溶けることのない万年雪だ。
谷をずんずんと下って行く。最初の30~40分程度は険しい下りで、誤って足を滑らせたら大怪我をしそうなところを、ケルンを道標に淡々と下る。その後は緩やかな下りが続き、景色を眺めるゆとりができる。
サドルを振り返る。ここまでくると風はもう止んでいた。
谷にはいくつも池溏(ちとう)があった。この辺の地面は分厚い地衣類に覆われていて、フカフカの絨毯の上を歩いているような感触が気持ちいい
この近くでランチ休憩
今日のお弁当は、猫かぶり特製のクラブハウス・サンドイッチ。普段の山歩きのお弁当作りは
の担当なんだけど、今回はお誕生祝いなので特別なのだ。へへっ
しばらく行くと、ニュージーランドのバックカントリー特有のタソックの草原が広がる。この辺のタソックはそんなに丈が高くないので、歩くのに大して邪魔にならなかった。
遥か彼方に谷の終わりが見えて来た。行く手はまだ長い。
滝があったが、このところの好天続きで枯れそうになっていた。もう少し水量があったらきれいなのにね。
リマーカブルズ連峰最高峰のシングル・コーン峰 (2319m) 。ぴょこっと突き出た山頂が、その名前を表している。
斜面をトラバース。タソックに覆われているので地表が見えにくい。所どころ落とし穴のようなくぼみがいきなり出現して、何度か足を取られそうになった。
この辺りのタソックは丈が長く、ものによっては1m近い。草同士が絡み合って生えているので、足を引っかけて転びながら歩く。下はタソックが生い茂っているから痛くはなかったよ
これがワイ・クリーク。見たところ山の上の方に雪はなさそうなのに、清水が流れているということは、どこか見えない場所にはかなりの量の万年雪が残っているってことよね。
巨大なスペアグラス(スパニヤード)を発見。オレンジ色のニョキッとしたのは花で2mくらいありそう。スペアグラスはその名 (spear=槍、grass=草) の通り葉先が固く尖っているのでうっかり刺さると血が出るし、花には固くて大きなトゲがたくさん生えていて、全く手に負えない難物だ
危険なほど固い葉っぱだが、側部は尖っていないので、この辺に暮らすノウサギ (hare)
達は食べ物の乏しい時期にスペアグラスの葉を横からかじって食べる……野生の生き物って逞しいよね。
枯れ沢。この下を本流が通ってる。
枯れ沢が終わったところには本流が戻り、淵ができている。瑠璃色の水が美しい
森に入る前に、元来たルートを振り返る。ニュージーランド南島南部の森林限界は1000mぐらい。
森に入ると登山道の
ロウワー・ワイ・クリーク・トラック (Lower Wye Creek Track) があり、足場が一気に楽になる。
今まで歩いて来たルートも、数年前まではDOC(環境保全省)が管理するルートだったのだが、いつの間にか管理外になってしまった。まだ
が働いていた時代のことで、理由は良く覚えていないけど、真夏に二つのパーティが相次いで遭難救助騒ぎになったことが後押しになったような気がする。遭難の原因は、どちらも明らかな準備・下調べ不足だった。
トラックから、初めてワカティプ湖が姿を見せて、何となくホッとする……ああ、やっぱりきれいだなぁ
この辺りはロッククライマー達にも人気があり、写真で
が歩いているすぐ先の右側の岩壁で、数人のクライマー達が取り付いていた。
下流の方に滝とダムがある。もっと下流には小さな水力発電所があり、現在も稼働中だ。この橋を渡って反対側にもクライミングのスポットがある。
駐車場への道を下って行く。行く手には道路が見えて来て、終点は間近だ。
途中、苦手の岩場があったり、タソックに足を取られたりして時間がかかったので、10時間弱の長い行程となった。あー良く歩いたな~
っていう達成感と充実感が好きだ。
誕生祝い
の記念にどこかへ出掛けることはこれまでにもあったけど、こんなに何度も計画変更を余儀なくされたのは初めてのこと。「七転び八起き」体験と長時間のトレッキング、後々まで忘れることのない思い出になりそうだから
としよう
最後に、誕生日にかこつけて
のわがままに付き合ってくれた猫かぶりに、思い出深い一日を心からありがとう