日本では今、所得格差の拡大が深刻な問題となっていますが、ポーランドでも、ここ数年で、格差が急激に広がっています。(以前の記事 でも取り上げています) 勝ち組みは、ワルシャワなど一部の大都市のエリートビジネスマンや、体制変換以降に不動産をうまく売り買いして短期に巨額の富を得た人々。人数比にしたら、国民のほんの数パーセントです。その一方で、負け組みとして切り捨てられている、地方の農民や、年金生活者、失業者、低賃金の国家公務員らがいます。それら負け組みの中には、日々の食料にも事欠く人もおり、一部地域では、学校で欠食児童の増加が深刻な問題となっているほどです。そんな中、キャッシングローンのCMが増えているのと相まって、これら負け組みの低所得者らが、安易なキャッシングを頼るケースが急増しています。
なんというか、最近のポーランドには、思わず「お金を借りなきゃ!」と感じてしまうような、そんな雰囲気が整っています。銀行や消費者金融のキャッシングローンの宣伝は、それこそこちらが感心するくらい多岐にわたっていて、例えば、下の写真のようなビラがポストに入っていて、一瞬「あれっ!お金が入っている!」とビックリするのですが、よく見ればただのビラだったり。
テレビをつければ、必ずキャッシングローンのCMが流れていて。 なかでもすごいのが、今年後半あたりから頻繁に流れるようになった、 BPH銀行 の「3000zlまで月々の月賦89zl」というテレビCMです。月々の手数料がたった89zlですよ、とてもお得でしょう!というとても明るいイメージのCMなのですが、しかしテレビ画面をよく見てみると、下の方に、ものすごく小さな字で、「ただし48ヶ月以降は、年利20.23%になります」と書いてあるんです。年利20%以上ってすごいですよね!そしてそれに対抗して最近出たのが、PKO銀行 の、「3000zlまで月賦73zl」、「ただし60ヶ月以降は年利17.23%になります」という商品。3000zl(約12万円)で、クリスマスプレゼントを買おう、一家でスキー旅行に行こう.. etc と、こちらもまた、とても家庭的で明るい未来を描いたCMです。こんなCMを、それこそ毎日見せられたら、思わずお金を借りてしまうと思いませんか?もし手元に現金がなかったら..
日本では、アイフルのCMの チワワのくぅーちゃん がかわいすぎるとして規制対象になりましたが、ポーランドでも、同様の規制の必要を痛感します。
(このBPH銀行とPKO銀行というのは、どちらも国内トップ規模の銀行なのですが、それらの有力銀行が、日本の消費者金融なみの金利の商品を宣伝しているというのに、とても驚きました。しかも、この「○○ヶ月以降は~」の注意書きの文字が本当に小さくて、我が家の21インチ型テレビで、目を凝らしてやっと見える大きさです。14インチ型テレビを持つご老人だったら、まず読めません.. )
ポーランドで問題なのは、40歳以上の中高年層の人々が、経済学を知らないことです。学校教育を社会主義の時代に受けているため、自由経済の基本的な仕組み、例えば、投資とは何か、株式会社とは何か、そういう経済の基礎をまったく知りません。もちろん彼らに非はないのですが(時代が時代でしたから)、こういった単利と複利の違いすらいすらわからないような一般の人々が、安易なテレビCMを信じて、後から「騙された」と嘆くケースが後を絶たないという、嘆かわしい状況になっているのです。(この点、同じ元社会主義国家のチェコやハンガリー、スロベニア、クロアチアなどでは、現在どうなっているのか、大変興味深い所です。)
こうして、負け組みは債務が増えてますます負け組みに、勝ち組みは利子で潤ってますます勝ち組みに、と今後さらに、所得格差が拡大していくと予想されます。