ポーランドからの報告

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広がる所得格差

2006年09月10日 | 政治・経済

社会主義の崩壊から15年たって、ポーランドでは今、所得格差の拡大が深刻な問題となっています。お城のような豪邸に住んで高級車を乗り回し、洋服はシャネルやヴィトン、夏は地中海やエーゲ海にバカンスに行く金持ちがいるかと思えば、生活費にも事欠き、道端で物乞いをしなければ暮らしていけない人も増えてきています。

私の住むクラクフ・クリニ地区は、旧市街から約20km離れた住宅地で、社会主義だった70年代から開発が進み、90年代には豪邸が立ち並ぶ高級住宅地になりました。都心へ近すぎず遠すぎず、公園に囲まれ緑が豊富にあり、幹線道路から近いのにうるさくなく、と「知る人とぞ知る」理想の住宅地でした。(有名なSF作家、故スタニスワフ・レム氏のおうちもあります。)

ところが去年から今年にかけて、同じ地区に自治体の社会保障団地が建設されました。この社会保障団地とは、住宅ローンや光熱費、管理費などを払えずに住んでいた家を追い出された人が、自治体から与えられる住居で、新築とはいえ見るからに質素な造りになっています。

その結果、通りを一本隔てて、豪邸と最貧困住宅が隣り合わせする、というおかしな構図になってしまいました。治安の良さ悪さは、住民の所得におおよそ比例するのでしょうが、この社会保障団地ができて新たな住民が入居してくるや否や、地区の雰囲気がガラリと変わってしまいました。豪邸の壁にはペンキで下品な落書きが描かれ、乳母車を引いたお母さんが散歩する静かな公園だった場所では、夜な夜なフーリガンがドンちゃん騒ぎをする顛末に。車の盗難や住居への不法侵入の件数も増えました。

新しい住民の品の悪さに眉をひそめる高級住宅地の住民と、豪邸をみて格差を目の当たりにし、不満を爆発させる社会保障団地の住民。わずか15年でここまで所得の差が開いてしまったのは驚きです。実は社会主義時代も決して皆均等であったわけではなく、実際には共産党員とその他一般という二つの階層がありましたが、一般の人にとって共産党員というのは何か別個の存在で、普通の人は皆似たり寄ったりの生活をしていました。ところが体制が変わり、自由競争ができるようになった結果、このように勝ち組と負け組みにはっきり別れてしまいました。


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