ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

2003年5月31日、大分県南海部郡宇目町(現在は佐伯市の一部)の木浦にて

2018年04月02日 00時27分10秒 | 旅行記

(今回は、「待合室」の第97回として2004年5月21日から28日まで掲載した記事の再掲です。写真をクリックすると拡大します。なお、一部を修正しています。)

 

 2013年5月31日、大分県南海部郡宇目町へ行きました。有名なトトロの里を訪れ、そこから、バス路線にもなっている狭い県道を走ります。すると、鉱山などで有名だった木浦に到着します。

 この狭い県道とは宇目日之影線(大分県道6号線)です。上の写真で狭さがおわかりになるでしょうか。手前が国道326号線側で、宇目町小野市のほうに出ます。その途中にととろの里がある訳です。写真の奥のほうを進めば、宮崎県日之影町に出るのですが、この道は、この先、さらに細くなって走りにくくなります。しかも、訪れた日は御覧のように悪天候、ということで、日之影行きは断念しました。 もっとも、たとえ晴れていたとしても、ここから日之影町の中心部までは長い道のりです。ガソリンスタンドがあるかどうかもわかりません。所々で細く、車で走りにくい道となることはわかっています。何時間かかるかもわかりません。

 同じ道路ですが、今度は国道326号線方面です。山から霧が立ち込めているのがおわかりだと思います。この集落では、高層建築などなく、木造の平屋か2階建てのものばかりですが、生活感が溢れているような気がします。

 2004年の某日、東京の台場を通ったのですが、車を運転しながら、人が多い割には殺伐とした街に違和感を覚えました。

 最近住み始めたという方には理解できないのかもしれませんが、1970年代には、川崎などにも、ほんの少しではあれ、上の写真と似たような場所が多かったのです。最近読んだ本で、東京の郊外が荒廃して貧しくなる一方だという、有名な若手批評家(私より三歳下)の記述を読みましたが、敢えて記すならば、この方の場合、郊外と言われる場所(閉園した向ヶ丘遊園の近所だとのことです)の歴史などには無関心であり、そこに根付くつもりもないからこそ、このように記せたのでしょう。先祖代々、その場所に住んできた人であれば、こんなことは記せません。

 私は、東京から見ればやはり郊外である川崎市の北部に生まれ育ちました。家系をたどっていくと、その北部で農家として生きてきたことがわかります。代々、その土地に住んでいる者ですから、その土地に特有の慣習を守り続けています。そういう者の立場からすれば、郊外の荒廃は、都市が拡大することによる開発によって既にもたらされていたのであり、現在の荒廃、そして貧しさというものは、むしろ、都市が郊外から撤退するということを意味するのではないかと思います。時折、文芸批評家や現代哲学者の著作を読みますが、彼らには、地域などを深く理解するという視点がなく、そのために、都市問題などを極めて表面的に、言葉だけは飾り立てて述べているような気がしてならないのです。

 「待合室」の趣旨から外れましたので、元に戻します。川崎や横浜にも、何十年か前までは、たとえ少しだけであろうとも、上記の写真のような風景が存在したのです。1970年代、私が小学生の頃にも、例えば高津区から横浜市都筑区や緑区にかけて、丘に車がようやく1台通れるような道が伸びているという場所が点在していました。

 「名水の湯」と書かれた暖簾が見えます。木浦名水館です。私は、大分県に7年も住んでいた割に、温泉のことをよく知りません。あまり関心がないからです。この時も、たまたま通ってみたらこんなところがあった、というだけで、温泉には入っていません。時間が正午近くになっていて、昼食をとりたかったのでした。

 ここで川魚を焼いたものなどを食べました。ヤマメかと思ったのですが、少し違うようです。料理ができるまでの間、鉱山に関係のある展示物などを見ていました。錫、鉛などが採掘されていたとのことで、現在、これらの採掘は行われていませんが、鉱山自体は現在でも操業中です。鉱山の発祥については諸説が存在するのですが、保元2年(西暦1157年)と言いますから平安時代後期の文献にこの鉱山に関する記述があるということですから、相当に古い歴史を持っていることは間違いないでしょう。一説には、ここで採掘された錫が、奈良の大仏を建立するために使われていたとか。

 名水館でしばらく、ゆっくりとした時間を過ごしてから、先ほどの県道を佐伯方面に向かいました。ちなみに、左に写っている黒い自動車は私のもので、大分から川崎に帰る時も、この車を運転してきました。


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