ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

或る意味で最高のコンビ その5

2022年12月31日 00時00分00秒 | 日記・エッセイ・コラム

2022年もあれこれとありましたが、やはり、ここは或る意味で最高のコンビ、Snoopy&Woodstockに御登場願いましょう。

2022年10月から12月まで、日本の主な都市で、トラックに牽かれるような形で走り回っていました。私も渋谷で見たことがあります。

 小学校3年生の時からこの漫画に親しんできましたが、この小さな黄色い鳥がWoodstockと名付けられてから、俄然、面白くなってきたような気もします。犬と鳥のコンビが登場する話が、何とも言えない味わいを出しているのです。このコンビなら、台詞が一切なくとも十分に、という言葉では足りないほどに楽しめます。

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東京メトロ16000系16112F

2022年12月30日 07時00分00秒 | 写真

 

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再び、東急6000系6103F

2022年12月27日 00時00分00秒 | 写真

このブログではよく登場する、東急6000系6103Fです。

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いつまで走るか 東京メトロ8000系8118F

2022年12月26日 00時00分00秒 | 写真

 東京メトロ半蔵門線用の車両として1981年から営業運転を続けている8000系は、製造初年の点からすれば、現在、東京メトロ最古参の車両です。銀座線用の01系、日比谷線用の03系は、一部が他の私鉄に譲渡されているものの、東京メトロから(少なくとも営業用としては)姿を消しており、これらよりも8000系が長く活躍してきたのですが、18000系に置き換えられることとなっており、徐々に廃車が進められています。

 また、8000系は、当時の帝都高速度交通営団の車両として初めてワンハンドルマスコンを採用しました。言うまでもなく、東急新玉川線・田園都市線(現在は田園都市線に統一)に乗り入れるためです。但し、一部の編成は東西線で運用されたことがあり、その関係で当初はマスコンとブレーキ弁が別になっていました(その期間は短く、半蔵門線に移る際にワンハンドルマスコンに改造されています)。

 当初から半蔵門線および田園都市線を走ってきた8000系は、2003年から東武伊勢崎線・日光線にも乗り入れています。それから20年が経過しようとしており、8000系も引退の日を迎えようとしています。

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第3部:地方税財政制度  第13回:地方交付税制度

2022年12月25日 00時00分00秒 | 財政法講義ノート〔第6版〕

1.地方交付税制度の存在意義

 地方交付税制度は財政調整制度、日本流の表現では地方財政調整制度の代表的な存在である。「第3部:地方税財政制度 第10回:地方税財政法の基本原則(地方財政権その2)」において、地方税財政法の基本原則の一つとして地方税財政自律主義を取り上げたが、いかに地方公共団体の財政を保障し、強固なものとするために地方税制度を組み立てたとしても、人口、産業基盤などの偏差により、地方公共団体の財政力に格差が生じることは避けられない。地方税制において完全な意味における普遍性を実現することは不可能に近いからである。しかし、格差を放置することは財政力の乏しい地方公共団体の存在を危うくし、ひいてはその住民の生活水準を低下させることになる。これは、憲法第14条および第25条の趣旨に鑑みても許されることではないであろう。

 そのために、地方公共団体間の財政力の偏差あるいは格差を是正する必要が生ずる。こうして、財政調整制度としての地方交付税制度が存在するのである。

 日本において財政調整制度に関する本格的な取り組みが始められたのは昭和時代に入ってからのことであり、1936(昭和11)年の臨時町村財政補給金制度を嚆矢として、1937(昭和12)年からの臨時地方財政補給金制度、1940(昭和15)年からの地方分与税制度と続いた※。シャウプ勧告を受けて1950(昭和25)年から地方財政平衡交付金制度※※が施行されたが、財政平衡交付金の総額をめぐる紛争が絶えなかったことから、1954(昭和29)年より地方交付税制度が採用され、現在に至っている。

 ※地方分与税制度は還付税と配布税とからなっていた。このうち、配布税は、所得税収入と法人税収入とのそれぞれに対する一定の割合を総額とするものであった。

 ※※地方財政平衡交付金制度は、地方分与税制度のうちの配付税と異なり、地方財政の必要に応じて平衡交付金の額を毎年決定し、国の一般財源から支出する、というものであった。財政平衡交付金制度の場合、たしかに、地方財政の強化や平準化には資する。しかし、総額を決定する際に国と地方公共団体との間に紛争が生じやすくなるという問題点がある。

 地方交付税制度は、世界の財政調整制度の中でもとくに精緻で複雑な制度であることで知られる。後にその点について検討を進めることとして、地方交付税の総額に関する基本的な事柄から入る。

 地方交付税法第6条第1項は「所得税及び法人税の収入額のそれぞれ100分の33.1、酒税の収入額の100分の50、消費税の収入額の100分の19.5並びに地方法人税の収入額をもつて交付税とする」と定めている。

 次いで、同第2項は「毎年度分として交付すべき交付税の総額」として「毎年度分として交付すべき交付税の総額は、当該年度における所得税及び法人税の収入見込額のそれぞれ100分の33.1、酒税の収入見込額の100分の50、消費税の収入見込額の100分の19.5並びに地方法人税の収入見込額に相当する額の合算額に当該年度の前年度以前の年度における交付税で、まだ交付していない額を加算し、又は当該前年度以前の年度において交付すべきであつた額を超えて交付した額を当該合算額から減額した額とする」と定める。

 従って、地方交付税の総額は、上記5種類の国税の、対象年度における実際の収入額によって決定される訳ではない。まずは収入見込額、すなわち、国の歳入予算に計上される額を見積もり、これによって暫定的に計算する。そして、実際の収入額と収入見込額との差額を、後の年度における地方交付税の総額において精算することとなる。

 また、地方交付税は普通交付税と特別交付税とに分けられる(同第6条の2第1項)。このうち、普通交付税の総額は第6条第2項の額の94%に相当する額、特別交付税の総額は第6条第2項の額の6%に相当する額である(同第2項・第3項)。

 なお、地方交付税は、普通交付税であれ特別交付税であれ、垂直的財政調整のための制度である。但し、間接的であるが、水平的財政調整にも資する制度でもある。間接的と記したのは、地方公共団体相互間における資金のやり取りがなされないためである。それでも、都市部、または富裕な地方公共団体の領域から徴収される国税収入を、都市部以外の地域、または富裕でない地方公共団体に配分するという機能が、地方交付税には存在する。

 

 2.地方交付税の目的および性質

 地方交付税は、地方財政調整制度の一種であり、地方公共団体の財政力の格差を是正するための制度である。この他に、いかなる目的があるのか。地方交付税法第1条は、次のように規定する。

 「この法律は、地方団体が自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能をそこなわずに、その財源の均衡化を図り、及び地方交付税の交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによつて、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化することを目的とする。」

 ここで明示されているのは、財源の均衡化は勿論、地方行政の計画的運営の保障、地方公共団体の独立性の強化である。地方交付税は、国庫支出金と異なり、使途が限定されていないので、財政の均衡化に資するのみならず、地方公共団体の行政を執行する権能を損なわないという利点を有する。但し、その利点が逆に作用することもありうる。とりわけ、現在のように、都道府県レヴェルでみるならば地方交付税不交付団体は東京都など数団体に過ぎず(しかも、東京都以外の団体、たとえば神奈川県、景気の推移によって不交付団体にも交付団体にもなる)、市町村レヴェルでみても地方交付税不交付団体が100団体程度ほどしか存在しないという状況では、過度に依存度を高め、結果として地方税財政自律主義を減殺させることになりかねない。

 また、地方交付税は、あくまでも垂直的財政調整を第一の特質とするため、国の財政状態に左右されるという問題点もある。当然のことであるが、国の歳入が少なければ、地方交付税の総額も少なくなる。これまで、地方交付税率や算定などが度々変更されているが、1990年代には歳入に占める地方交付税の割合が全体的に上昇していたのに対し、2000年代に入ってからは国の財政事情や地方分権改革における見直しなどもあって低下傾向を示している。

 地方交付税は地方固有の財源である、などと表現されることもある。しかし、これは不正確である。そもそも、財政力の調整のための制度であるから、交付を受ける地方公共団体と交付を受けない地方公共団体とに分けられるから、地方税と異なって固有の財源であるとは言えない。地方交付税の配分に関する権限は、第一次的にも最終的にも地方公共団体の側ではなく、国の側にある。また、憲法上、地方交付税制度が地方自治の本旨を実現するために不可欠な制度であるとしても、具体的な制度設計などは国の側に委ねられる訳であるから、その意味においても地方固有の財源とは言えない。あくまでも、一般財源として自主財源を補助するための資源と理解すべきである。

 

 3.地方交付税の総額の変更

 既に述べたように、地方交付税の総額は、収入見込額によって暫定的に計算した上で、実際の収入額と収入見込額との差額を、後の年度における地方交付税の総額において精算することによって算出する(なお、国家予算の補正がなされた場合には、補正後の額が収入見込額となる)。このため、地方交付税の総額が減額となる補正を受ける可能性はある。

 地方交付税法第16条は、交付の時期を定める。原則として、第1項の表に掲げられている時期に一定の額を交付することになるのであるが、第2項は「当該年度の国の予算の成立しないこと、国の予算の追加又は修正により交付税の総額に変更があつたこと、大規模な災害があつたこと等の事由により、前項の規定により難い場合における交付税の交付時期及び交付時期ごとに交付すべき額については、国の暫定予算の額及びその成立の状況、交付税の総額の変更の程度、前年度の交付税の額、大規模な災害による特別の財政需要の額等を参しやくして、総務省令で定めるところにより、特例を設けることができる」と定めている。ここに言う特例には増額変更と減額変更の双方が含まれると解すべきであろう。どちらかを除外する趣旨が明文に現われていないからである。

 もっとも、碓井教授も指摘するように、地方交付税の規定を概観すると、減額修正に関する規定は十分であると言えない〈 碓井光明『要説自治体財政・財務法』〔改訂版〕・(1999年、学陽書房)56頁 〉

 また、地方交付税の総額の変動には、地方税も関係する。所得税や法人税の計算の際に、地方税によっては必要経費や損金に算入されるので※、地方税について超過課税などを行った場合には国税収入が減少することになり、地方交付税の総額も減少することとなる。逆の関係も成立する。

 ※まず、所得税法第45条第1項第4号は、必要経費に算入しない地方税として道府県民税および市町村民税をあげる。また、同第5号は、地方税法に定められる延滞金、過少申告加算金、不申告加算金および重加算金を必要経費に算入しないことを定める。

 次に、法人税法第38条第2項第2号は、損金に算入しない地方税として道府県民税および市町村民税(退職年金等積立金に対する法人税に係るものを除く)をあげる。また、同第55条第3項第2号は、地方税法に定められる延滞金、過少申告加算金、不申告加算金および重加算金を必要経費に算入しないことを定める(但し、延滞金によっては損金に算入するものもある)。

 なお、地方交付税法第10条第1項により、普通交付税は、毎年度、基準財政需要額が基準財政収入額を超過する、すなわち、財源不足が生じる場合に、その財源不足の額を地方公共団体に対して交付されることとなっている。仮に財源不足の合算額が普通交付税の総額を超過する場合には、同第2項ただし書きにより、次のように算出して得られた額を交付する。

 A-B×(C-D)/E

 A:当該地方団体の財源不足額

 B:当該地方団体の基準財政需要額

 C:財源不足額の合算額 

 D:普通交付税の総額

 E:基準財政需要額が基準財政収入額をこえる地方団体の基準財政需要額の合算額

 ここで、B×(C-D)/Eの部分が調整率である。これにより、基準財政需要額を圧縮することによって調整することになる。そして、その調整を経た後の額が普通交付税の合算額に満たない場合には特別交付税の総額を減額した上で普通交付税に充てることとされる(同第6項)。

 

 4.地方財政計画

 地方財政計画は、地方交付税法第7条に従い、毎年度、内閣が作成する「翌年度の地方団体の歳入歳出総額の見込額に関する書類」であり、国会に提出して審議の参考に供さなければならないとともに、一般に公表しなければならないこととなっている。その内容は、地方公共団体全体の予算とも言いうるものとなっており、地方交付税の総額は勿論、地方債発行額の総額なども決定される。

 地方財政計画には、次の事項を記載しなければならない。

 ①地方公共団体の「歳入総額の見込額及び左の各号に掲げるその内訳」(「各税目ごとの課税標準額、税率、調定見込額及び徴収見込額/使用料及び手数料/起債額/国庫支出金/雑収入」)

 ②地方公共団体の「歳出総額の見込額及び左の各号に掲げるその内訳」(「歳出の種類ごとの総額及び前年度に対する増減額/国庫支出金に基く経費の総額/地方債の利子及び元金償還金」)

 

 5.基準財政需要額および基準財政収入額

 既に述べたように、普通交付税は、毎年度、基準財政需要額が基準財政収入額を超過し、財源不足が生ずる場合に、その財源不足の額として地方公共団体に対して交付される(地方交付税法第10条第1項)。そこで、基準財政需要額および基準財政収入額の意味が重要となる。

 この二つは、地方公共団体の財政力を測るためにも重要な概念である。財政力指数は、基準財政需要額に対する基準財政収入額の比率として求められるからである。

 (1)基準財政需要額

 地方交付税法第11条により、基準財政需要額は「測定単位の数値を第13条の規定により補正し、これを当該測定単位ごとの単位費用に乗じて得た額を当該地方団体について合算した額」と定義される。すなわち、基準財政需要額は、地方公共団体が行政サーヴィスを行うために必要な財政需要を、各々の行政項目ごとに、経常的経費、投資的経費として算定した合計額を基礎とし、これに公債費(地方債の償還費)を加えた額のことである。

 これをさらに詳しくみていくことにすると、経費の種類ごとに測定単位が設けられており、その数値に補正係数を乗じ、さらに単位費用を乗じて得られた額の合計額が基準財政需要額である。従って、

 各行政項目の基準財政需要額=測定単位×補正係数×単位費用

という数式で表すことができる〈林宏昭・橋本恭之『入門地方財政』〔第2版〕(2007年、中央経済社)138頁による〉

 ここで測定単位は、第12条に定められるように、経費に係る財政需要の大きさを、合理的かつ客観的に反映するための指標であり、経費の種別ごとに定められている。たとえば、都道府県の警察費については警察職員数、教育費のうちの小学校費および中学校費については教職員数となっている。同条の表のみではわかりにくいが、経常的経費と投資的経費の違いは、たとえば都道府県の教育費のうちの高等学校費については、経常的経費の測定単位が教職員数、投資的経費の測定単位が生徒数というようになっている。経常的経費の測定単位と投資的経費の測定単位が同一である場合も存在する。

 測定単位の数値の補正は第13条に定められる。これには種別補正、段階補正、密度補正、態容補正、寒冷補正、数値急増・急減補正、災害復旧費補正がある。

 種別補正:「面積、高等学校の生徒数その他の測定単位で、そのうちに種別があり、かつ、その種別ごとに単位当たりの費用に差があるものについては、その種別ごとの単位当たりの費用の差に応じ当該測定単位の数値を補正する」ものであり(第1項)、「当該測定単位の種別ごとの数値に、その単位当りの費用の割合を基礎として総務省令で定める率を乗じて行うものとする」(第2項)。

 段階補正:「人口その他測定単位の数値の多少による段階」による補正をいう(第3項第1号、第4項第1号)。

 密度補正:「人口密度、道路1キロメートル当たりの自動車台数その他これらに類するもの」による補正をいう(第3項第2号、第4項第2号)。

 態容補正:「地方団体の態容に応じてそれぞれ割高となり又は割安となるものについて行う」補正をいう(第3項第2号、第4項第3号)。

 寒冷補正:「寒冷度及び積雪度」(第3項第4号)によって「当該行政に要する経費の測定単位当たりの額」が割高となるものについて行われる補正をいう(第4項第4号)。

 数値急増・急減補正:「人口、学校数その他の測定単位の数値が急激に増加し又は減少した地方団体、廃置分合又は境界変更のあつた地方団体及び組合(地方自治法第284条第1項の一部事務組合、広域連合又は役場事務組合をいう。)を組織している地方団体に係る補正係数」(第10項)。

 災害復旧費補正:「災害復旧費に係る測定単位の数値に」ついて行われる補正(第11項)。

 いずれの補正についても、補正係数の算定方法につき必要な事項は、法律にも施行令にも定められておらず、普通交付税に関する省令という総務省令で定められることとなっている(第12項)。地方交付税制度が非常に理解し難い制度になっている原因の一つが、ここに現われている。

 単位費用は、地方公共団体が標準的な行政活動を行う際に必要とされる一般財源の額を、測定単位1について示したもので、次のように計算される〈林・橋本・前掲書139頁による〉

 (A-B)/C=D/C

 A:標準団体(これは一種の仮想団体であり、市町村であれば人口10万人、面積160平方キロメートルという想定がなされている)の標準的歳出

 B:国庫補助金等特定財源

 C:標準団体の測定単位の数値

 D:標準団体の標準的一般財源所要額

 詳細は、第12条第4項および第5項を受け、別表第一および別表第二に規定される。

 (2)基準財政収入額

 基準財政収入額は、地方交付税法第14条に定められるものであり、標準地方税収入の見積額である。ここで標準地方税収入は、法定普通税および一部の目的税、地方譲与税その他の収入を言い、法定普通税および一部の目的税、都道府県税交付金(市町村)については、それぞれの収入の75%、地方譲与税については100%が算入される。但し、附則第7条の2により、道府県個人住民税および市町村個人住民税の所得割については「当分の間」100%が基準財政収入額に算入される。

 また、附則第7条により、「当分の間」ではあるが道路交通法附則第16条第1項に定められる交通安全対策特別交付金の収入見込額も基準財政収入額に算入される。

 基準財政収入額を算出する際の地方税の税率は、地方交付税法第14条第2項により、基準税率というものが利用される。これは、地方税法第1条第1項第5号に定められる標準税率または一定税率が基礎となっており、道府県税、市町村税など、いずれについても75%となっている。

 基準財政収入額に含まれない標準地方税収入は、留保財源といわれ、使途の決定が地方公共団体に委ねられている。

 

 6.地方交付税制度の問題点

 これまで、地方交付税制度の概要を述べてきたが、非常に複雑な制度であり、理解や説明に苦労する。実際の算出は、とくに補正係数が絡んでくるために面倒になる。しかも、この補正係数が法律にも施行令にも定められず、普通交付税に関する省令という総務省令で定められるのである。実際に、地方交付税制度を、そして毎年度の地方交付税の算定の様子などを正確に理解しうる者は総務省の内部にごく僅か存在するだけであるという話すらある。

 また、算定時期、交付時期に不安定性があることも指摘されている。地方交付税法第8条は「各地方団体に対する交付税の額は、毎年度4月1日現在により、算定する」と定めるのであるが、総務大臣による普通交付税の額の決定は「遅くとも毎年8月31日までに決定しなければならない。但し、交付税の総額の増加その他特別の事由がある場合においては、9月1日以後において、普通交付税の額を決定し、又は既に決定した普通交付税の額を変更することができる」とされる(同第10条第3項)。従って、或る地方公共団体に普通交付税が交付されるか否か、換言すれば、或る地方公共団体が交付団体になるか否かは、通常、その年度の8月下旬頃にならなければわからないということになる。

 さらに、交付団体になるか否かは、地方交付税以外の財源にも影響を与えることとなる。

 普通交付税に関する省令は、基準財政収入額の算定に関する詳細などを定めるのであるが、この省令はほぼ毎年、7月下旬に改正される。そのため、とくに法人関係の地方税については、収入の伸び率などがどのように変化するかが基準財政収入額の変化に影響を及ぼすこととなる。

 なお、合併を行った市町村については、市町村の合併の特例等に関する法律第17条により「国が地方交付税法(昭和25年法律第211号)に定めるところにより合併市町村に対して毎年度交付すべき地方交付税の額は、当該市町村の合併が行われた日の属する年度及びこれに続く5年度については、同法及びこれに基づく総務省令で定めるところにより、合併関係市町村が当該年度の4月1日においてなお当該市町村の合併の前の区域をもって存続した場合に算定される額の合算額を下らないように算定した額とし、その後5年度については、当該合算額に総務省令で定める率を乗じた額を下らないように算定した額とする」こととされる。

 

 7.特別交付税

 特別交付税は、地方交付税法第15条第1項により「第11条に規定する基準財政需要額の算定方法によつては捕そくされなかつた特別の財政需要があること、第14条の規定によつて算定された基準財政収入額のうちに著しく過大に算定された財政収入があること、交付税の額の算定期日後に生じた災害(その復旧に要する費用が国の負担によるものを除く。)等のため特別の財政需要があり、又は財政収入の減少があることその他特別の事情があることにより、基準財政需要額又は基準財政収入額の算定方法の劃一性のため生ずる基準財政需要額の算定過大又は基準財政収入額の算定過少を考慮しても、なお、普通交付税の額が財政需要に比して過少であると認められる地方団体に対して、総務省令で定めるところにより、当該事情を考慮して交付する」ものとされている。

 具体的な算定方法は、特別交付税に関する省令(現在は総務省令)に規定されており、この省令に基づき、総務大臣が毎年度、12月中および3月中の2回に分けて額を決定する。その際、「第1回目の特別交付税の額の決定は、その総額が当該年度の特別交付税の総額の3分の1に相当する額以内の額となるように行う」こととされている(地方交付税法第15条第2項。同第16条も参照)。

 

 8.誘導策としての地方交付税

 地方交付税は、本来、地方公共団体の一般財源を補充するための資金として位置づけられるべきものであり、何らかの政策目的のための誘導策として用いられるべきものではない。しかし、実際には、国の特定政策のための誘導策として利用される傾向が強くなっている。とりわけ、特別交付税の場合は誘導策としての機能を強く発揮する。この点については、特別交付税に関する省令を参照されたい。

 しかし、普通交付税であっても誘導策としての機能を発揮することがある。私としては、このことを問題としたい。もっとも、地方交付税に特定政策のための誘導策としての機能を持たせることが、直ちに憲法上の問題などを惹起する訳ではない。それでも、数の上で交付団体が不交付団体を圧倒的に上回る状況が続いている中では、その時々の国の政策に従うか否かが地方公共団体の財政状況を左右するという結果につながりやすいだけに、地方交付税が地方を支配するための有効な道具として扱われやすいことを意味する。

 その方法の第一は、地方公共団体が国の法律に従って一定の施策を実施する際にみられる。地方公共団体が地方税の課税免除や不均一課税などを行った場合には、こうした措置による減収額を基準財政収入額から控除するという方法である。この方法は多くの法律において採用されている。また、地方交付税法第14条は基準財政収入額の算定の際に標準税率を採用するので、この標準税率より低い税率によることは、地方公共団体の財政に余裕があるとみられることになる。逆に、標準税率より高い税率、すなわち超過税率を採用しても、基準財政収入額の算定に反映されない。

 第二は、地方債の元利償還金の全部または一部を、普通地方交付税の基準財政需要額の計算において単位費用として算入する、という方法である。これは、旧市町村合併特例法第11条の2第2項で威力を発揮した方法であり、合併しなければ地方交付税の交付額が減少するという施策もセットされた上に、同第1項により発行される合併特例債とあいまって、多くの市町村の合併を強力に推進する役割を果たした。また、一種の変形として、事業費補正に算入するという方法もある。

 碓井教授も指摘するように、地方交付税を「受け皿として一定の国の政策を推進することは、もともと交付税に期待されていた機能から相当離れたものであ」り、「地方債の元利償還金を交付税で措置することは、『もらい得』の観念を生むばかりでなく、国(納税者)の将来の負担を約束するものであり、極力抑制されなければならない」〈碓井・前掲書64頁〉。しかし、実際には、むしろ濫用ではないかと疑われるほどに多用されており、長期的に地方財政を悪化させるのではないかという懸念をぬぐえない。

 第三は、やはり地方債に関連するものであるが、特定の基金に資金の拠出をなす際に地方債を発行し、元利償還金について地方交付税措置を採るという方法である。これには、特定の民間事業への融資の原資に際して地方債の発行を認め、利息負担分について地方交付税措置を採るという変形もある。

 

 9.地方交付税の減額などに関する勧告および返還請求

 地方交付税の交付については減額補正などがありうることは既に述べた。これとは別に、地方公共団体の行政活動の態様によっては、特定の地方公共団体に対し、地方交付税に関する勧告、さらには返還請求が行われることがありうる。

 基準財政需要額の算定は、都道府県および市町村が法令により定められる行政事務を着実に行うことを前提としている。そこで、地方交付税法第20条の2第1項により、「関係行政機関は、その所管に関係がある地方行政につき、地方団体が法律又はこれに基く政令により義務づけられた規模と内容とを備えることを怠つているために、その地方行政の水準を低下させていると認める場合においては、当該地方団体に対し、これを備えるべき旨の勧告をすることができる」とされる。なお、この勧告をなす際には、あらかじめ、総務大臣に通知することを必要とする(地方交付税法第10条の2第2項)。

 この勧告に地方公共団体が従わなかった場合には、同第3項により、関係行政機関が総務大臣に対し、当該地方公共団体に「交付すべき交付税の額の全部若しくは一部を減額し、又は既に交付した交付税の全部若しくは一部を返還させることを請求することができる」。これを受けて、第4項により、総務大臣は、当該地方公共団体の弁明を受けた上で「災害その他やむを得ない事由があると認められる場合を除き、当該地方団体に対し交付すべき交付税の額の全部若しくは一部を減額し、又は既に交付した交付税の全部若しくは一部を返還させなければならない」。これは、国が自らの政策を地方公共団体にとらせる―さらに強く表現すれば、従わせる―ために威力を発揮する、非常に強力な手段であると評価しうる。但し、第5項により、減額または返還額は「当該行政につき法律又はこれに基く政令により義務づけられた規模と内容とを備えることを怠つたことに因り、その地方行政の水準を低下させたために不用となるべき額をこえることができない」という歯止めはかけられている。

 以上とは別に、地方財政法第26条第1項は、「地方公共団体が法令の規定に違背して著しく多額の経費を支出し、又は確保すべき収入の徴収等を怠つた場合においては、総務大臣は、当該地方公共団体に対して交付すべき地方交付税の額を減額し、又は既に交付した地方交付税の額の一部の返還を命ずることができる」と定める。これは、地方交付税法第20条の2と比較するならば、やむをえないもの、あるいは妥当性の高いものとも考えることができるが、裁量性が完全に否定されている訳ではないだけに、根幹に深刻な問題を抱えうるものであるとも言いうる。

 

 10.地方特例交付金

 地方交付税とは別に、地方公共団体の財源を保障する手段として、地方特例交付金制度が存在し、地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律によって規律される。

 地方特例交付金は、元々、1999(平成11)年に行われた減税措置に伴い設けられた制度である。現在、同法第1条は次のように規定する。

 「この法律は、個人の道府県民税(都民税を含む。第三条において同じ。)の所得割及び個人の市町村民税(区民税を含む。同条において同じ。)の所得割の収入が地方税法(昭和25年法律第226号)附則第5条の4及び第5条の4の2(同法附則第45条の規定により読み替えて適用する場合を除く。)の規定による控除(第3条において「住宅借入金等特別税額控除」という。)を行うことにより減少することに伴う地方公共団体の財政状況に鑑み、その財政の健全な運営に資するため、当分の間の措置として、地方特例交付金の交付その他の必要な財政上の特別措置を定めるものとする。」

 地方特例交付金は都道府県および市町村に対するものであり(同第2条第1項)、児童手当特例交付金および減収補てん特例交付金の二種類である(同第2項)。児童手当特例交付金の額は同第3条に、減収補てん特例交付金の額は同第4条に定められている。

 なお、地方特例交付金は、普通交付税の基準財政需要額に全額が算入される。

 

 ▲第6版における履歴:2022年12月25日掲載。

 ▲第5版における履歴:未掲載。

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第3部:地方税財政制度  第9回:地方税財政法とは(地方財政権その1)

2022年12月24日 00時00分00秒 | 財政法講義ノート〔第6版〕

 この講義ノートにおいて用いる「地方財政権」という語は、北野弘久博士、碓井光明教授などが用いる「自治体財政権」と同じ意味である。また、私が今回の講義で用いる「地方税財政法」は、碓井教授のいう「自治体財政・財務法」と同義と考えてよい。

 碓井光明『要説自治体財政・財務法』〔改訂版〕(1999年、学陽書房)3頁は、「自治体財政法」を「自治体の財政権力に関する法や、国・他の自治体との財政関係を規律する法の色彩が強」いもの、「自治体財務法」を「内部的な財政事務の統制ないし財政管理に関する法、すなわち、財政管理法(本書においては、この意味に用いることとする)という色彩が比較的強い」ものとして位置づけている。

 ここで、まずは地方税財政法について、さらに詳しくみていくこととする。

 既に、第1部において財政および財政法の定義を示した。念のため、ここに再現しておく。

 財政:国または地方公共団体が、その存在目的、およびそれを実現する任務を果たすため、必要な財力を調達し、維持・管理し、使用する作用のことである。

 形式的意義における財政法:財政法という名称の法律のことである。

 実質的意義における財政法:国または地方公共団体が必要な財力を調達するための法、財力を維持・管理するための法、財力を使用するための法、これらの総体である。

 従って、地方財政という場合には、上の定義から国を除けばよいことになる。そして、地方財政法という場合、それらの意義は、一応、次のようになる。

 形式的意義における地方財政法:地方財政法という名称の法律のことである。

 実質的意義における地方財政法:地方公共団体が必要な財力を調達するための法、財力を維持・管理するための法、財力を使用するための法、これらの総体である。なお、この講義においては、実質的意義における地方財政法を地方税財政法と表現している。

 碓井・前掲書6頁は「憲法92条及び94条から自治体財政権を抽出するならば、自治体財政権とは、自治体が、その事務処理に必要な経費に充てるために必要な財源を調達し管理する権能であるということができる」としている。

 但し、地方税財政法の場合、一の地方公共団体自体で完結するものではなく、国との関係などが含まれる。しかし、それを念頭に置くとしても、地方税財政法の定義は、上記のままでよいと思われる。

 それでは、地方税財政法の構造には、いかなる特徴があるのであろうか。碓井教授は「複合的構造」として、次の3点をあげている〈以下の記述を含めて、碓井・前掲書8頁による〉

 まず、地方税財政法のうちの財務管理に関する法は、主として地方公共団体の内部法としての性格を有し、形式的経理手続法とも言われる。主に行政組織法の一部として扱われることになるのであるが、時には外部法としての性格、さらに住民訴訟制度を通じて裁判規範としての性格を有することもある。むしろ、昨今においては裁判規範としての性格の度合いが高まっている、と考えてよい。

 次に、地方税財政法には、財政権力法というべきものが存在する。地方税法が代表的な存在である。地方税は一種の法定債務であり、法律および条例によって地方公共団体の債権および住民の債務が創造されることとなる。また、地方税の賦課徴収に権力的な側面が多いことは否定できない。しかも、地方税の場合は普通徴収方式(国税で言えば賦課徴収方式)によることが多く、申告制度によることが多い国税の場合よりも権力性が高いとも言える。但し、住民との関係が常に権力性を有する訳ではないという点には、注意を要する。

 そして、地方税財政法には、国または他の地方公共団体との関係を規律する法が存在する。これも行政組織法の一種と捉えることが可能であるが、地方自治法第2条第1項によって地方公共団体は法人とされており、国または他の地方公共団体との関係は行政主体間の関係であるから、行政組織法とは言っても単なる内部法ではありえない※。碓井教授の表現を借りるならば「行政主体間関係法」または「政府間関係法」ということになる。この講義ノートにおいては、行政主体間財政関係法と銘うつこととしておく。形式的な意味における地方財政法、地方交付税法などが、この種の法の代表である。もっとも、地方税法などにも、この種の性格がみられることがある。

 ※但し、碓井・前掲書9頁も指摘するように、この種の地方税財政法は、国も地方公共団体も行政機能を分担するがために狭義の法規としての性質を有しない、とする見解がある。この場合には、仮に地方公共団体と国との争訟が発生するとしても機関争訟としか位置づけられないこととなる。

 後に述べるように、行政主体間財政関係法は、とくに国との関係という側面に注目するならば、地方公共団体の財源を保障する機能と、その逆の機能とが同居するというものである。また、財政調整(Finanzausgleich / Fiscal Equalization System)の観点で記すならば、国と普通地方公共団体との税財政関係を規律する場合は垂直的財政調整が問題となり、普通地方公共団体同士の税財政関係を規律する場合は垂直的財政調整と水平的財政調整とが存在しうることとなる。

 本来、地方自治法第2条に示されているように、都道府県と市町村とは同格である。しかし、多くの場合において、同格ではなく、都道府県のほうが上に位置づけられることもある。このような場合には、都道府県と市町村との関係は垂直的な関係にある。他方、都道府県相互、または市町村相互の関係は水平的な関係である。

 ここで、地方税財政法とされる法律のうち、基本的なものをあげておく。

 ①日本国憲法

 当然のことながら、地方自治制度の大原則は日本国憲法に示されている。とくに、第92条および第94条は、地方税財政法に一貫すべき大原則を定めるのであり、地方財政権の根拠もこれらの条文に求められる。

 ②地方自治法

 日本国憲法を踏まえつつ、地方自治法が、地方自治に関する基本法として、地方自治制度の大枠を定めている。この中には、予算・決算、地方税や分担金などの収入に関する規定、支出に関する規定、財産の管理や処分に関する規定などが含まれている。その意味において、地方自治法は地方税財政法の基本法でもある。但し、地方自治法が地方税財政法の全領域を細かく規定する訳ではなく、この他の法律、政令、条例などに規律を委任している場合も多い。

 ③地方財政法

 地方自治法第243条の4は、「普通地方公共団体の財政の運営、普通地方公共団体の財政と国の財政との関係等に関する基本原則については、この法律に定めるもののほか、別に法律でこれを定める」と規定する。これを受ける形で地方財政法が存在する。同第1条に示されているように、地方財政の運営という、普通地方公共団体内部の事柄、そして「国の財政と地方財政との関係」などに関する基本原則を定めるものである。その意味において、国の財政を規律する形式的意味における財政法よりも規律の範囲が狭く、地方財政全般を規律するものではない。

 杉村章三郎『財政法』〔新版〕(1982年、有斐閣)372頁は、地方財政法について「その名称の示唆するような地方財政に関する法典を意味するものではない。その内容の重要性も国と地方公共団体との間における経費の配分、国の地方公共団体に対する負担強制の抑制等、国自身の行為の規制に見出されるのである」と述べる。

 ④地方税法

 この法律は、普通地方公共団体の地方税立法権、課税権などの根拠となる地方自治法第223条を受けたものである〈拙稿「地方税立法権」日本財政法学会編『財政法講座3 地方財政の変貌と法』(2005年、勁草書房)36頁)〉。また、地方自治法第96条第1項第4号にも関係する。

 国税については、所得税法、消費税法などのように、税目毎に法律が制定され、手続などについても国税通則法や国税徴収法のように個別に制定される。これに対し、地方税の場合は、税目に関係なく、地方税法によって統一的に定められる。税目のみならず、賦課徴収などの手続についても、地方税法によって統一的に定められる。その意味において、地方税法は地方税に関する統一的法典と言いうる。但し、地方税法の規定がそのまま各普通地方公共団体(東京都の特別区を含む)に適用されるのではなく、各普通地方公共団体の地方税条例(など)に規定されることによって、各普通地方公共団体は地方税の賦課徴収などをなしうるのである。地方税法は、普通地方公共団体の収入たる地方税に関する規定を置くことによって、普通地方公共団体の課税権を根拠づける一方、それに対する制約をなすものでもある。

 なお、法定外普通税・法定外目的税とは、地方税法に定められていない地方税のことである。地方税条例とは別個の条例によって規律される。

 ⑤地方交付税法

 地方自治法には対応する規定が存在しないが、これも地方公共団体の収入に関する法律である。それとともに、国と地方公共団体との財政関係を規律する、非常に重要な法律の一つである。地方交付税は、国税の一定割合を普通地方公共団体に交付することによって、地方財源の均衡化を図り、地方行政の計画的運営を保障することとされているのであるが(地方交付税法第1条)、実際には補助金に近い存在とも言われ、また、均衡化の役割も失われている。

 ⑥地方公営企業法

 地方自治法第263条を受けたものである※。国も一定の事業を行う際に企業を経営することがありうるが、地方公共団体についても同様である。そのため、企業の組織、企業に従事する職員の身分取り扱い、財務などに関して、地方自治法に対する特例法としての位置づけにある。公営企業については、特別会計が設けられ(地方公営企業法第17条)、発生主義に基づく企業会計原理が採用され(同第20条)、予算などについても特例が設けられている。

 ※この他、地方自治法第263条に基づく法律として地方公営企業労働関係法がある。

 ⑦地方独立行政法人法

 既に、国の行財政改革の一環として独立行政法人通則法が存在していたが、行財政改革の必要性は地方公共団体についても変わりがないため、地方公共団体が独立行政法人を設立する際の根拠法として制定されたのが地方独立行政法人法である。

 ⑧地方公共団体の財政の健全化に関する法律

 地方税財政法の基本的部分を構成すると言いうるか否か、私自身には明確ではない。しかし、昨今の地方財政の状況に鑑みると、いつ、どの地方公共団体がこの法律の適用を受けるかということも考えられうる。また、国と地方との関係、そして普通地方公共団体と住民との関係に重大な影響を及ぼすものなので、ここで取り上げておく。

 この法律に関する入門書的な文献として、月刊「地方財務」編集局編『スラスラわかる! 自治体財政健全化法のしくみ』(2007年、ぎょうせい)、兼村髙文『財政健全化法と自治体運営』(2008年、税務経理協会)がある。また、批判的な文献も少なくないが、ここでは平岡和久・森裕之『地方財政改革の焦点 新型交付税と財政健全化法を問う』(2007年、自治体研究社)をあげておく。

 地方公共団体の財政の健全化に関する法(以下、自治体財政健全化法)は、地方財政再建促進特別措置法に代わる法律として、2007(平成19)年6月22日、法律94条として公布され、一部の規定を除いて2009(平成21)年4月1日より施行された。地方公共団体の財政の健全化については、2006(平成18)年1月より、当時の総務大臣の私的懇談会として設置された「地方分権21世紀ビジョン懇談会」において議論されていた。同年、夕張市定例市議会において市長が地方財政再建促進特別措置法の準用団体となって財政再建に取り組む決意を述べたことがきっかけとなり、新しい法制度の設置が急がれたことによって、自治体財政健全化法が制定されたのである。

 なお、夕張市が準用再建団体に指定されたのは2007年3月である。

 自治体財政健全化法について述べる前に、廃止された地方財政再建促進特別措置法について若干の説明をしておこう。この法律は、本来は臨時立法であり、都道府県の約8割、市町村の約7割、町村の約2割が赤字決算だったと言われる1953(昭和28)年度決算の状況に鑑みて制定されたものである〈杉村章三郎『財政法』〔新版〕(1982年、有斐閣)373頁による〉。赤字決算に陥った普通地方公共団体を救済するという意味を有するが、地方債についての特例※を設ける一方、財政再建計画に対する国の承認、計画の実施状況の調査など、国による強い関与を受け、それに応じて自治権が制約されることになる※※。

 ※2006(平成18)年度より、地方公共団体が地方債を起こす際には総務大臣または都道府県知事との協議を行うこととされた(地方財政法第5条の3第1項・第3項・第4項、地方自治法第250条。原則として総務大臣または都道府県知事の同意を要するが、同意を得ないで起こすことも可能である)。しかし、財政再建団体となり、財政再建債を起こすには、総務大臣の許可を必要とした。2005(平成17)年度まで一般的に採用されていた許可制が残されている訳である。なお、地方財政法第5条の4にも、総務大臣または都道府県知事の許可を得なければならない場合が規定されている。

 ※※碓井・前掲書18頁は、地方財政再建促進特別措置法に対する批判説を紹介し、「財政再建団体の自律性が著しく制限されていたことは疑いない」としつつも、この法律による普通地方公共団体の自治権(財政権)の制約はやむをえないものであると評価する。

 なお、地方財政再建促進特別措置法の適用を受ける地方公共団体を財政再建団体というが、これは同第3条第4項により、「財政再建計画について承認を得た昭和29年度の赤字団体」、さらに言えば、同第2条第1項により、「昭和29年度において、歳入が歳出に不足するため昭和30年度の歳入を繰り上げてこれに充て、又は実質上歳入が歳出に不足するため昭和29年度に支払うべき債務の支払を昭和30年度に繰り延べ、若しくは昭和29年度に執行すべき事業を昭和30年度に繰り越す措置を行つた地方公共団体」を指す。このため、1955(昭和30)年度以降の年度に「歳入が歳出に不足するため翌年度の歳入を繰り上げてこれに充て、又は実質上歳入が歳出に不足するため当該年度に支払うべき債務の支払を翌年度に繰り延べ、若しくは当該年度に執行すべき事業を翌年度に繰り越す措置を行つた地方公共団体で既に財政再建団体となつているもの以外のもの(以下「歳入欠陥を生じた団体」という。)」は、同第22条第2項および第3項に従い、準用再建団体という。最近では、1992(平成4)年度から2001(平成13)年度まで、福岡県赤池町※が準用団体であった。また、2007(平成19)年度に、北海道夕張市が準用再建団体となっている。

 ※2006(平成18)年3月、金田町および方城町と合併し、福智町となっている。

 しかし、地方財政再建促進特別措置法には、次に示すような重大な問題点があった〈以下、宇賀克也『地方自治法概説』〔第9版〕(2021年、有斐閣)217頁を基にしている〉

 第一に、財政の早期是正ないし再建に重点を置いた財政指標の開示がなされず、その財政指標および算定根拠の客観性や正確性などを担保するための手段が不十分であった。

 第二に、再建団体の基準は存在したが、早期に是正する機能がなかった。このために、再建が長期にわたらざるをえないこととなった。

 第三に、再建団体の基準として実質収支比率というフローの指標のみが用いられていた。このため、実質公債費比率などが悪化した地方公共団体や、ストックベースで財政状況の面において問題を抱える地方公共団体が対象から外れていた。

 第四に、主に普通会計のみが対象とされており、地方公営企業や地方公社などとの関係が考慮の外に置かれていた。莫大な赤字を抱える地方公営企業、地方公社、さらに第三セクターなどを抱える地方公共団体には有効に対処しえなかったという訳である。

 第五に、地方公共団体における再建制度と地方公営企業における再建制度とが全くの別物であり、しかも後者についても財政情報の開示が不十分であった。

 第六に、再建を促進するための仕組みがほぼ限定されていた。

 以上の問題点を克服し、地方公共団体の破綻を防ぎ、「再建制度から再生制度へ」の転換※を図ることを目的として自治体財政再建法が制定された。第1条は「この法律は、地方公共団体の財政の健全性に関する比率の公表の制度を設け、当該比率に応じて、地方公共団体が財政の早期健全化及び財政の再生並びに公営企業の経営の健全化を図るための計画を策定する制度を定めるとともに、当該計画の実施の促進を図るための行財政上の措置を講ずることにより、地方公共団体の財政の健全化に資することを目的とする」と定めている。

 ※この表現は、兼村・前掲書3頁による。

 兼村髙文教授は、自治体財政再建法が地方財政再建促進特別措置法と異なる点として、主に「①自主再建の選択はないこと、②全ての自治体を対象としていること、③破綻の前に『早期健全化』の段階を設け2段階で健全化に取組むこと、④監査委員と議会にも責任を求めたこと、⑤健全化の財政指標(健全化判断比率)を法定したこと」をあげる〈兼村・前掲書23頁〉。また、平岡和久教授と森裕之准教授は、自治体財政再建法の特徴を「新たな自治体財政規律のルールとそれにもとづく国による行政的統制の強化」であるとした上で、同法の重要な点として「①財政の健全化を判断する指標として4つの指標を導入すること、②早期是正制度を導入すること、③早期是正段階での個別外部監査契約の義務づけ、④財政再生団体(従来の財政再建団体)の基準に実質赤字比率に加えて新たに連結実質赤字比率と実質公債費比率を入れたこと、⑤公営企業の経営の健全化を促進(資金不足比率が基準以上になった場合、経営健全化計画策定を義務付け)、⑥議会と監査委員の役割の拡大、など」をあげる〈平岡・森・前掲書102頁〉

 ここで、自治体財政健全化法第3条第1項が「健全化判断比率」としている4つの指標について概観しておく。同第2条がこれらの定義に関する規定を置くが、いずれも難解であるので簡略化する。

 第一に、実質赤字比率(同第1号)は、地方公共団体(都道府県、市町村および特別区のみを指す)の前年度一般会計等の歳入における実質赤字額を、標準財政規模の額※で除して得た数値のことである。

 ※これは、地方財政法第5条の4第1項第2号に規定されており、標準的な規模の収入の額として政令で定められる額をいう。

 第二に、連結実質赤字比率(同第2号)は、地方公共団体の連結実質赤字額を前年度の標準財政規模の額で除して得た数値のことである。結局、全会計の実質赤字額を前年度の標準財政規模の額で除して得た数値であるということになる〈平岡・森・前掲書102頁、宇賀・前掲書219頁〉

 第三に、実質公債費比率(同第3号)は、地方債の元利償還金(地方財政法第5条の4第1項第2号)の額と準元利償還金(同第2号)の額との合計額から一定の経費を控除して得られた額を、標準財政規模の額から一定の額を控除して得られた額で除して得られた数値である(但し「当該年度前三年度内の各年度に係るものを合算して得られた額」の3分の1の数値を用いる)。

 第四に、将来負担比率(自治体財政健全化法第2条第4号)は、地方公共団体の地方債の残高や債務負担行為に基づく支出予定額などの実質的な負債に地方公営企業や出資法人などの実質的負債を加えた額を、前年度の標準財政規模の額から算入公債費等の額を控除した額で除して得た数値である。

 地方公共団体の長は、毎年度、前年度の決算の提出を受けた後、速やかに以上の健全化判断比率およびその算定の基礎となる事項を記載した書類※を監査委員の審査に付し、その意見を付けて当該健全化判断比率を議会に報告し、かつ、当該健全化判断比率を公表しなければならない(同第3条第1項)。そして、この健全化判断比率を、都道府県知事および政令指定都市の市長は総務大臣に報告しなければならず、その他の市町村の長および特別区長は都道府県知事に報告し、その報告を受けた都道府県知事は総務大臣に報告しなければならない(同第3項)※※。

 ※これについては、自治体財政健全化法第3条第6項によって備え付けの義務が課されている。また、包括外部監査団体については同第7項を参照。

 ※※報告の取りまとめおよび公表については、第4項および第5項に規定されている。

 上記4種の健全化判断比率のいずれかが早期健全化基準以上の数値を示した場合には、原則として地方公共団体の長が財政健全化計画を作成し、議会の議決を経て定めなければならず(同第5条第1項、同第4条第1項)、この計画の内容を公表しなければならず、都道府県知事および政令指定都市の市長は総務大臣に報告しなければならず、その他の市町村の長および特別区長は都道府県知事に報告し、その報告を受けた都道府県知事は総務大臣に報告しなければならない(同第5条第2項)。

 この計画の内容は「財政の状況が悪化した要因の分析の結果を踏まえ、財政の早期健全化を図るため必要な最小限度の期間内に、実質赤字額がある場合にあっては一般会計等における歳入と歳出との均衡を実質的に回復することを、連結実質赤字比率、実質公債費比率又は将来負担比率が早期健全化基準以上である場合にあってはそれぞれの比率を早期健全化基準未満とすることを目標とし」なければならず、「次に掲げる事項について定めるもの」とされる。

 「一 健全化判断比率が早期健全化基準以上となった要因の分析

 二 計画期間

 三 財政の早期健全化の基本方針

 四 実質赤字額がある場合にあっては、一般会計等における歳入と歳出との均衡を実質的に回復するための方策

 五 連結実質赤字比率、実質公債費比率又は将来負担比率が早期健全化基準以上である場合にあっては、それぞれの比率を早期健全化基準未満とするための方策

 六 各年度ごとの前二号の方策に係る歳入及び歳出に関する計画

 七 各年度ごとの健全化判断比率の見通し

 八 前各号に掲げるもののほか、財政の早期健全化に必要な事項」(以上、同第2項)

 また、「財政健全化計画は、その達成に必要な各会計ごとの取組が明らかになるよう定めなければならない」(同第4条第3項)。

 なお、早期健全化基準は「財政の早期健全化(地方公共団体が、財政収支が不均衡な状況その他の財政状況が悪化した状況において、自主的かつ計画的にその財政の健全化を図ることをいう。以下同じ。)を図るべき基準として、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率及び将来負担比率のそれぞれについて、政令で定める数値をいう」と定義されている(同第2条第5号)。

 また、上記4種の健全化判断比率のいずれかが財政再建基準以上の数値を示した場合には、財政健全化計画ではなく、財政再生計画の策定が義務づけられることとなる。自治体財政健全化法第8条第1項本文は「地方公共団体は、実質赤字比率、連結実質赤字比率及び実質公債費比率(以下「再生判断比率」という。)のいずれかが財政再生基準以上である場合には、当該再生判断比率を公表した年度の末日までに、当該年度を初年度とする財政の再生のための計画(以下「財政再生計画」という。)を定めなければならない」と定める。

 財政健全化計画を定めている地方公共団体(財政健全化団体)が財政再生計画を定めた場合には、財政健全化計画の効力が失われる(自治体財政健全化法第8条第2項)。

 ここで財政再生基準は「財政の再生(地方公共団体が、財政収支の著しい不均衡その他の財政状況の著しい悪化により自主的な財政の健全化を図ることが困難な状況において、計画的にその財政の健全化を図ることをいう。以下同じ。)を図るべき基準として、実質赤字比率、連結実質赤字比率及び実質公債費比率のそれぞれについて、早期健全化基準の数値を超えるものとして政令で定める数値をいう」と定義されている(同第2条第6号)。早期健全化基準の数値を超える場合には再生判断比率とも呼ばれる。

 財政再生計画は、やはり地方公共団体の長が作成し、議会の議決を経て定めなければならない(同第9条第1項)。これについても財政健全化計画とほぼ同様の報告義務が課されている(同第2項)。財政再生計画の内容は「財政の状況が著しく悪化した要因の分析の結果を踏まえ、財政の再生を図るため必要な最小限度の期間内に、実質赤字額がある場合にあっては一般会計等における歳入と歳出との均衡を実質的に回復することを、連結実質赤字比率、実質公債費比率又は将来負担比率が早期健全化基準以上である場合にあってはそれぞれの比率を早期健全化基準未満とすることを、第十二条第二項に規定する再生振替特例債を起こす場合にあっては当該再生振替特例債の償還を完了することを目標とし」なければならず、「次に掲げる事項について定めるものと」される。

 「一 再生判断比率が財政再生基準以上となった要因の分析

 二 計画期間

 三 財政の再生の基本方針

 四 次に掲げる計画(ロ及びハに掲げる計画にあっては、実施の要領を含む。次号において同じ。)及びこれに伴う歳入又は歳出の増減額

  イ 事務及び事業の見直し、組織の合理化その他の歳出の削減を図るための措置に関する計画

  ロ 当該年度以降の年度分の地方税その他の収入について、その徴収成績を通常の成績以上に高めるための計画

  ハ 当該年度の前年度以前の年度分の地方税その他の収入で滞納に係るものの徴収計画

  ニ 使用料及び手数料の額の変更、財産の処分その他の歳入の増加を図るための措置に関する計画

  ホ 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)第四条第二項若しくは第五条第二項に掲げる普通税について標準税率を超える税率で課し、又は同法第四条第三項若しくは第五条第三項の規定による普通税を課することによる地方税の増収計画※

 五 前号の計画及びこれに伴う歳入又は歳出の増減額を含む各年度ごとの歳入及び歳出に関する総合的な計画

 六 第十二条第二項に規定する再生振替特例債を起こす場合には、当該再生振替特例債の各年度ごとの償還額

 七 各年度ごとの健全化判断比率の見通し

 八 前各号に掲げるもののほか、財政の再生に必要な事項」(以上、同第8条第3項)

 ※「財政の再生のため特に必要と認められる地方公共団体に限る」(自治体財政健全化法第8条第3項ただし書き)。

 また、「財政再生計画は、その達成に必要な各会計ごとの取組が明らかになるよう定めなければならない」(同第4項)。

 再生判断基準および財政再生計画に関連して、地方公共団体は次のような制約を受ける。

 第一に、再生判断比率のいずれかが財政再生基準以上であり、かつ、財政再生計画について総務大臣の同意(同第10条第3項・第7項)を得ていない地方公共団体は「地方債をもってその歳出の財源とすることができない」(同第11条本文)。

 第二に、財政再生団体は、財政再生計画について総務大臣の同意を得ている場合に限り、収支不足額を地方債に振り替え、その収支不足額を財政再生計画の計画期間内に計画的に解消するため、地方財政法第5条の規定にかかわらず、当該収支不足額の範囲内で、地方債(再生振替特例債)を起こすことができる(自治体財政健全化法第12条第1項)。財政再建団体は、再生振替特例債を財政再生計画の計画期間内に消化しなければならないが、国も法令の範囲内において、かつ資金事情の許す限りにおいて適正な配慮をしなければならない(同第2項・第3項)

 第三に、財政再生団体、および財政再生計画を定めていないが再生判断比率のいずれかが財政再建基準以上である地方公共団体は「地方債を起こし、又は起債の方法、利率若しくは償還の方法を変更しようとする場合は、政令で定めるところにより、総務大臣の許可を受けなければならない。この場合においては、地方財政法第五条の三第一項の規定による協議をすること並びに同法第五条の四第一項及び第三項から第五項までに規定する許可を受けることを要しない」(自治体財政健全化法第13条第1項)。

 この他、財政再生団体に係る総務大臣から各省各庁の長への通知(同第14条)、財政再生団体の長による財政再生計画の実施状況の報告・公表(同第18条)、総務大臣による財政再生計画の実施状況の調査や報告(同第19条)などがある。

 

 ▲第6版における履歴:2022年12月24日掲載。

 ▲第5版における履歴:未掲載。

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第3部:地方税財政制度  第12回:地方公共団体の経費の負担(地方財政権その4)

2022年12月23日 00時00分00秒 | 財政法講義ノート〔第6版〕

 1 経費全額負担の原則

 行政事務の経費を、どの行政主体がどれだけ負担すべきであるかは、地方税財政制度における重要な課題である。行政事務は国、都道府県、市町村のそれぞれが法令または条規に従って行うのであるが、事務の配分と財政支出権限の配分とが一致しない場合も多く、共管事務、事務の委託などが往々にして行われているからである。

 経費の負担については、いくつかの考え方が存在しうる。1948(昭和23)年に制定された地方財政法は、当初、事務を実際に行う行政主体の如何ではなく、利害が帰属する行政主体が経費を負担するという原則を採用し、「主として地方公共団体の利害に関係のある事務を行うために要する経費」、「国と地方公共団体相互の利害に関係のある事務を行うために要する経費」、「主として国の利害に関係のある事務を行うために要する経費」および「地方公共団体が処理する権限を有しない事務を行うために要する経費」に区分していた〈碓井光明『要説自治体財政・財務法』〔改訂版〕(1999年)33頁による〉。しかし、1952(昭和27)年度改正により、利害の帰属ではなく、事務を行うべき行政主体が経費を負担するという原則に変更された。現在の地方財政法第9条は、都道府県が条例によって市町村が処理することとした事務(地方自治法第252条の17の2第1項)※、および、都道府県が条例により、都道府県が加入しない広域連合が処理することとした事務(同第291条の2第2項)を除き、当該地方公共団体が、事務を行うために要する経費を全額負担すると定める※※。これを経費全額負担の原則と表現することが可能である。

 ※これは「条例による事務処理の特例」と位置づけられ、事務の委託とは異なる、と説明される。都道府県から市町村への事務の再配分であり、事務の管理および執行の権限は市町村長にある。松本英昭『要説地方自治法』〔第六次改訂版〕(2009年、ぎょうせい)636頁。

 ※※地方自治法第252条の17の2第1項に該当する場合には、地方財政法第28条第1項により、都道府県が経費の財源について必要な措置を講じなければならない。また、地方自治法第291条の2第2項に該当する場合には、地方財政法第28条第2項により、同第1項が準用される。

 経費全額負担の原則は、地方自治法第232条第1項にも「普通地方公共団体は、当該普通地方公共団体の事務を処理するために必要な経費その他法律又はこれに基づく政令により当該普通地方公共団体の負担に属する経費を支弁するものとする」として表現されている。

 その上で、国が法令によって新たに事務の処理を義務づける場合には、やはり地方公共団体が経費を負担しなければならないのであるから、同第2項により、「法律又はこれに基づく政令により普通地方公共団体に対し事務の処理を義務付ける場合においては、国は、そのために要する経費の財源につき必要な措置を講じなければならない」こととされる。この趣旨は地方財政法第13条第1項にも規定される。さらに、この「財源措置について不服のある地方公共団体は、内閣を経由して国会に意見書を提出することができ」(同第2項)※、「内閣は、前項の意見書を受け取つたときは、その意見を添えて、遅滞なく、これを国会に提出しなければならない」(同第3項)。

 ※碓井・前掲書34頁は、意見書提出について「自治体の国政参加権の一種として位置づけることができる」と述べる。

 地方財政法第13条に規定される財政措置に関する権利は、あくまでも個別の地方公共団体の権利であり、地方公共団体の連合組織などについて認められるものではない。地方公共団体の全国的な連合組織については、地方自治法第263条の3に規定されており、第1項において設置した場合の総務大臣への届出義務を規定した上で、第2項において届出をした全国的連合組織が「地方自治に影響を及ぼす法律又は政令その他の事項に関し、総務大臣を経由して内閣に対し意見を申し出、又は国会に意見書を提出することができる」と定めている。

 もっとも、内閣に対して意見を申し出、または国会に意見書を提出するとしても、個別の地方公共団体、全国的連合組織の意思が確実に反映されるとは限らない。内閣は、提出された意見を参考にするなどの政治的義務を負うものと思われるが、提出された意見を着実に反映する財源措置を講じなければならないという法的義務を負うものとは解されない。また、国会は、提出された意見書を誠実に処理しなければならないものと思われるが、その趣旨を必ず実現しなければならないとは言えない。その意味において、個人の請願権と類似する性格を有することとなる。

 一方、地方財政法第21条第1項は「内閣総理大臣及び各省大臣は、その管理する事務で地方公共団体の負担を伴うものに関する法令案について、法律案及び政令案にあつては閣議を求める前、命令案にあつては公布の前、あらかじめ総務大臣の意見を求めなければならない」と定め、同第2項は「総務大臣は、前項に規定する法令案のうち重要なものについて意見を述べようとするときは、地方財政審議会の意見を聴かなければならない」と定める。これは、地方公共団体の過重負担を防止するためのものであるが、ここで総務大臣は地方公共団体の代理人的な地位にある訳ではない。また、同第22条第1項は「内閣総理大臣及び各省大臣は、その所掌に属する歳入歳出及び国庫債務負担行為の見積のうち地方公共団体の負担を伴う事務に関する部分については、財政法(昭和22年法律第34号)第17条第2項に規定する書類及び同法第35条第2項に規定する調書を財務大臣に送付する際、総務大臣の意見を求めなければならない」、第2項は「総務大臣は、前項に規定する書類及び調書のうち重要なものについて意見を述べようとするときは、地方財政審議会の意見を聴かなければならない」と定めるが、これについても第21条と同様のことを指摘しうる。

 

 2 経費全額負担の原則に対する例外

 前述の通り、地方財政法第9条は経費全額負担の原則を定める。しかし、同条ただし書きは、同第10条ないし第10条の4までに規定される経費については例外としている。また、附則にある第34条ないし第36条、災害関係の多くの法律が、経費全額負担の原則に対する例外を定める。このうち、第10条の4は、第10条ないし第10条の3と性質を異にするので、別個に扱うこととする。

 地方財政法第10条ないし第10条の3に定められる国の経費負担は、一般に国庫負担金と言われる。ここで辞書的に定義を記すならば、国庫負担金とは、地方公共団体が行う事務で国と地方公共団体の相互の利害に関係する事務に要する経費につき、国と地方公共団体との経費の負担の区分に基づき、国が義務的に負担する給付金をいう。この種の事務について国が経費を一部でも負担するのは当然のことであるため、いわば割勘的に国と地方公共団体がそれぞれ分担するのである〈碓井・前掲書71頁〉

 ここで地方財政法第10条ないし第10条の3までの規定を読むと、経費全額負担の原則は実のところ法的意味に乏しいことが理解される。たとえば、普通国庫負担金を定める第10条は「地方公共団体が法令に基づいて実施しなければならない事務であつて、国と地方公共団体相互の利害に関係がある事務のうち、その円滑な運営を期するためには、なお、国が進んで経費を負担する必要がある次に掲げるものについては、国が、その経費の全部又は一部を負担する」として、義務教育職員の通常の給与に関する経費(第1号)、義務教育諸学校の建物の建築に要する経費(第3号)などを掲げ、第10条の2は「国がその全部又は一部を負担する建設事業に要する経費」を掲げる。

 第10条の2に定められる国庫負担金は建設事業費国庫負担金ともいい、第10条の3に定められる国庫負担金は災害復旧事業費等国庫負担金ともいう。

 なお、第10条の4は「専ら国の利害に関係のある事務を行うために要する」経費について「地方公共団体は、その経費を負担する義務を負わない」と定め、「国会議員の選挙、最高裁判所裁判官国民審査及び国民投票に要する経費」、「外国人登録に要する経費」、「国民年金、雇用保険及び特別児童扶養手当に要する経費」などを掲げる。これらは国庫委託金といい、国庫負担金と区別される。

 これらは、いずれも本来ならば国が自らの機関を通じて行うべき事務であり、それを地方公共団体の機関に委任しているのであるから、地方公共団体が経費負担の義務を負わないことは当然である(もっとも、地方公共団体が自ら経費を負担することが許されない訳ではない)。しかし、「国会議員の選挙、最高裁判所裁判官国民審査及び国民投票に要する経費」については実額負担ではなく、国会議員の選挙等の執行経費の基準に関する法律によって定められた基本額および加算額のみが負担されることとなる。また、第10条の4に規定された諸事務を地方公共団体が支弁した場合に、その金額を直ちに国に対して請求しうるものではない、とされている。

 

 3 経費負担の区分の意味

 地方財政法第10条ないし第10条の3を再読すると、いずれの規定においても「国が、その経費の全部又は一部を負担する」と定められているものの、負担割合の詳細については一切示されていないことがわかる。結局、第11条により、「第10条から第10条の3までに規定する経費の種目、算定基準及び国と地方公共団体とが負担すべき割合は、法律又は政令で定めなければならない」ということになるのであるが、第10条ないし第10条の3に列挙される事務の根拠法律を参照しても、国の負担割合が規定されているものもあれば規定されていないものもあって統一がとれていない。とくに、根拠法律に規定されていないものは政令に委任されており、全く問題がないとは言えない。また、負担割合を規定しているとしても「予算の範囲内」などとしている例も多い。碓井教授の表現を借りるならば、「国庫負担金は、割勘的な経費負担であるのに、ここでは、『予算の範囲内』という留保によって、補助金に転化されているといえよう(負担金の補助金への転化)」〈碓井・前掲書37頁〉

 国庫補助金は、地方財政法第16条によって「その施策を行うため特別の必要があると認めるとき又は地方公共団体の財政上特別の必要があると認めるときに限り」国から地方公共団体に交付するものとされている。特定の事務や事業の実施を奨励するための補助金を奨励的補助金といい、財政援助をするための補助金を財政援助補助金という。いずれにせよ、概念上は国庫負担金と異なり、国の利害に関係のある地方公共団体の事務事業について当然に経費として支出すべきものではない。しかし、同第18条が国庫負担金、国庫委託金および国庫補助金を併せて国庫支出金と総称すること、この三種類がいずれも特定の使途に向けられた経費であることから、とくに国庫負担金と国庫補助金との区別が曖昧になりやすいのである。

 このことは、摂津訴訟として法廷の場においても問題となった。まずは事案を見ていくこととする。

 摂津市は、市内に四箇所の保育所を設置し、その費用として合計9272万9990円を支出した。同市は、地方財政法第10条の2第5号、児童福祉法第52条(当時)、同第51条第2号(当時)、児童福祉法施行令第15条第1項(当時)、同第16条第1号の規定に従い、国は摂津市 が支弁した費用の額からその費用のための寄付金などの収入額を控除して得られた精算額の2分の1を国庫が負担すべきであると主張した。その上で、摂津市は「各会計年度終了時において当該年度中に支弁した設備費用につき、何ら特別の手続を要せずに直接右法及び法施行令の各規定に基づいて国庫に対し精算額の2分の1に該当する金額の負担金支払請求権を取得するものと解すべきである」として、支出額の2分の1である4636万4995円から、既に国が交付決定し支払った250万円を差し引いて得られた4386万4995円を支払うように請求した。

 これに対し、国は「国の負担金についての具体的な請求権は、(中略)補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(中略)第六条所定の交付の決定(中略)の効果として発生し、同法第一五条所定の補助金等の額の確定があつた場合の確定額が当該請求権の金額となる」と主張した。

 東京地判昭和51年12月13日行裁例集27巻11・12号1790頁は、「負担金については交付決定を経由することなく各実体法の規定に直接基づいて具体的な請求権が発生するとの見解をとれば、国はいつ、いかなる内容の負担金支払請求権が発生し、それが行使されることになるのかを把握することが困難となり、その結果適正化法の前示目的の達成が不服又は著しく困難となるのみならず、予算編成にも支障が及び、ひいては財政上の基本原則として採用されている会計年度独立の原則を脅かすこととなり、また、国家財政の計画的運用、財源の効率的活用も不可能となることが明らかであ」ると述べた。その上で、児童福祉法第52条などについて「右規定は単に抽象的な国の負担義務を定めた規定にとどまると解すべきであつて、右規定から直接具体的な負担金請求権が生ずると解することはでき」ず、「右各規定は市町村が任意に設置する保育所のすべてを負担金交付の対象とすべきことを規定したものではなく、また負担金交付対象とした保育所の設備費用についても、市町村が現実に支出した費用の全額をもつて負担金の額算定の基礎とすべき旨を規定したものではな」く、「行政庁が当該保育所を負担金交付の対象とすべきものか否かを判断し、交付対象とすべきものと判断した場合に、合理的な基準に基づいて算定した設備費用額を基礎とする一定割合の額の負担を国に命じている規定であつて、具体的負担金請求権は行政庁の合理的な判断とそれに基づく行為によつて発生することを予定した規定」であると判断した。

 しかし、このように理解すると、結局、地方財政法第10条の2第5号の規定の意味は失われかねない。国庫負担金は裁量性を認めうるような性質のものではないはずである。その点において、一審判決には疑問が残る。摂津訴訟二審判決(東京高判昭和55年7月28日行裁例集31巻7号1558頁)は、児童福祉法および同施行令の当該規定のみから具体的請求権が発生しないとした点において一審判決と同様であるものの、「地方財政法10条以下に現定されている地方公共団体に対する国の負担金と同法16条所定の地方公共団体に対する国の補助金とを比較するとき、同法上これらの性質に異つた点のあることは右各規定からみて明らかであり、とくに、前者は義務的なものであり、後者は裁量的なものである点において大きな差異があるというべきである」と判示している。

 

 4 寄付等の禁止

 地方財政法第4条の5は、国が地方公共団体またはその住民に対して、直接的か間接的であるかを問わず、寄附金を割り当てて強制的に徴収してはならないと規定する。同条は、地方公共団体が他の地方公共団体または住民に対して同様の行為をなすことも禁止する。

 この規定の趣旨は、寄附金などによって国のサーヴィスの提供先が左右されるなどの弊害を防ぐこと、寄附金などのために地方公共団体の財政に負の影響を与えることを防止することにある。その意味において、この規定は地方公共団体の税財政権を保障するとともに、財務法上の規制法でもある。

 なお、地方財政法第24条は「国が地方公共団体の財産又は公の施設を使用するときは、当該地方公共団体の定めるところにより、国においてその使用料を負担しなければならない。但し、当該地方公共団体の議会の同意があつたときは、この限りでない」と定めている。この但し書きにある議会の同意については見解が分かれるが、包括的な同意の議決や条例の定めによる同意ではなく、個別的な同意の議決を必要とすると考えるのが妥当であろう。

 

 ▲第6版における履歴:2022年12月23日掲載。

 ▲第5版における履歴:未掲載。

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第3部:地方税財政制度  第11回:国対地方の関係の側面からみた地方財政権(地方財政権その3)

2022年12月22日 11時10分20秒 | 財政法講義ノート〔第6版〕

 地方財政権は、憲法第92条および第94条に根拠づけられるとともに、これらの規定によって保障されるべきものである。このことは、地方財政権も国法体系の一構成要素であることをも意味する。そのため、地方財政権には、国との関係という側面からみた場合に、国、とくに国家財政からの一定の自律あるいは自立を求めるという性質を有すると同時に、国、とくに国家財政に対して一定の財源を保障するように請求しうるという権能をも有することとなる。

 そこで、地方財政権を、自律権と財源保障とに分け、それぞれについて概説を加えておく。

 (1)自律権としての性格

 地方公共団体は、国法体系に位置づけられ、統治機構としての性格を有しつつも、独立の法人格を与えられた存在である。すなわち、地方公共団体は国の統治機構の一部をなすのではなく、国から独立した自律的(または自立的)な存在なのである。

 地方財政権についても、基本的に同様のことが妥当する。地方財政権も国法体系に位置づけられる以上、国と全く無関係ではありえない。国家財政と密接な関係を有することを否定する訳にもいかない。しかし、一定の自律性が認められなければ、地方公共団体の自律性そのものが失われかねない。

 この、自律権としての性格に着目した場合、地方財政権は自主財政権とも言われる。日本の場合、憲法の規定にもかかわらず、大日本帝国憲法時代から引き継がれた機関委任事務が長らく存在し、強化されたこともあって、地方分権推進計画も指摘したように「国と地方の歳出純計に占める地方の歳出の割合は約3分の2であるのに対し、租税総額に占める地方税の割合は約3分の1となっており、歳出規模と地方税収入との乖離が存在している」という状態が根本に存在していた。そして、地方財政は、独自の租税収入よりも大きい部分を、地方交付税や国庫支出金などに頼っている状態である。地方分権的な色彩が皆無であった訳ではないが、中央集権的な性格のほうが濃厚であり、いわゆる三割自治の状態が、現在まで続いてきた。

 地方財政法第2条は、第1項において「地方公共団体は、その財政の健全な運営に努め、いやしくも国の政策に反し、又は国の財政若しくは他の地方公共団体の財政に累を及ぼすような施策を行つてはならない」とし、第2項において「国は、地方財政の自主的な且つ健全な運営を助長することに努め、いやしくもその自律性をそこない、又は地方公共団体に負担を転嫁するような施策を行つてはならない」とする。この規定は、地方財政権に自律性を保障しようとする一方で、地方財政権が国家財政などに拘束されうることを認めている。

 地方財政権の自律性が問題となりうる局面は多岐にわたるのであるが、主なものとしては、地方税立法権および地方税行政権(両者を合わせて課税権としてよい)、予算編成権であろう。

 地方税立法権および地方税行政権については、後に扱う。

 予算編成権については、法定受託事務の存在、および、地方交付税法第7条に基づいて内閣が作成する地方財政計画が、制約として存在する。同条によると「内閣は、毎年度左に掲げる事項を記載した翌年度の地方団体の歳入歳出総額の見込額に関する書類を作成し、これを国会に提出するとともに、一般に公表しなければならない」として、第1号および第2号に規定される事項をまとめなければならないこととなっている。これが地方交付税の交付額の算定につながるだけに、各地方公共団体の予算作成にとって制約になるばかりでなく、国の予算の成立時期によっては障害にもなりうる。

 (2)財源保障請求権としての性格

 地方公共団体の財政権の自律性を保障することは重要である。しかし、地方公共団体の財政権には格差がある。現実には、地方公共団体の財政需要を自らの財源調達のみによってカヴァーしえないという所が多い。また、本来は国または都道府県の事務であるべきものが法定受託事務として都道府県または市町村の事務とされるものも多い。以上の点からすれば、地方公共団体の財政需要を充足するためにも、それなりの財源を保障せざるをえない。

 ①義務教育費国庫負担法など

 義務教育は、憲法第26条に定められるものであり、本来的には国の責務であると考えられる。少なくとも、教育水準の確保など、一定の責務が国に課せられる。他方、学校教育法第2条第1項は、地方公共団体が学校の設置者となりうることを規定し、同第5条は「学校の設置者は、その設置する学校を管理し、法令に特別の定のある場合を除いては、その学校の経費を負担する」と定め、設置者負担原則を明示する。

 これらを受けて、義務教育費国庫負担法第1条は「この法律は、義務教育について、義務教育無償の原則に則り、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的とすると定め、さらに、第2条は「教職員の給与及び報酬等に要する経費の国庫負担」として、次のように定める。

 「国は、毎年度、各都道府県ごとに、公立の小学校、中学校、中等教育学校の前期課程並びに特別支援学校の小学部及び中学部(学校給食法(昭和29年法律第160号)第6条に規定する施設を含むものとし、以下「義務教育諸学校」という。)に要する経費のうち、次に掲げるものについて、その実支出額の3分の1を負担する。ただし、特別の事情があるときは、各都道府県ごとの国庫負担額の最高限度を政令で定めることができる。

 一 市(特別区を含む。)町村立の義務教育諸学校に係る市町村立学校職員給与負担法(昭和23年法律第135号)第1条に掲げる職員の給料その他の給与(退職手当、退職年金及び退職一時金並びに旅費を除く。)及び報酬等に要する経費(以下「教職員の給与及び報酬等に要する経費」という。)

 二 都道府県立の中学校(学校教育法(昭和22年法律第26号)第71条の規定により高等学校における教育と一貫した教育を施すものに限る。)、中等教育学校及び特別支援学校に係る教職員の給与及び報酬等に要する経費」

 ここで、関係する諸法律の規定も示しておくこととする。

 市町村立学校職員給与負担法の第1条は、次のように定めている。

 「市(特別区を含む。)町村立の小学校、中学校、中等教育学校の前期課程及び特別支援学校の校長(中等教育学校の前期課程にあつては、当該課程の属する中等教育学校の校長とする。)、副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、養護助教諭、寄宿舎指導員、講師(常勤の者及び地方公務員法(昭和25年法律第261号)第28条の5第1項に規定する短時間勤務の職を占める者に限る。)、学校栄養職員(学校給食法(昭和29年法律第160号)第7条に規定する職員のうち栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭並びに栄養教諭以外の者をいい、同法第6条に規定する施設の当該職員を含む。以下同じ。)及び事務職員のうち次に掲げる職員であるものの給料、扶養手当、地域手当、住居手当、初任給調整手当、通勤手当、単身赴任手当、特殊勤務手当、特地勤務手当(これに準ずる手当を含む。)、へき地手当(これに準ずる手当を含む。)、時間外勤務手当(学校栄養職員及び事務職員に係るものとする。)、宿日直手当、管理職員特別勤務手当、管理職手当、期末手当、勤勉手当、義務教育等教員特別手当、寒冷地手当、特定任期付職員業績手当、退職手当、退職年金及び退職一時金並びに旅費(都道府県が定める支給に関する基準に適合するものに限る。)(以下「給料その他の給与」という。)並びに定時制通信教育手当(中等教育学校の校長に係るものとする。)並びに講師(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(昭和33年法律第116号。以下「義務教育諸学校標準法」という。)第17条第2項に規定する非常勤の講師に限る。)の報酬及び職務を行うために要する費用の弁償(次条において「報酬等」という。)は、都道府県の負担とする。

 一 義務教育諸学校標準法第6条の規定に基づき都道府県が定める小中学校等教職員定数及び義務教育諸学校標準法第10条の規定に基づき都道府県が定める特別支援学校教職員定数に基づき配置される職員(義務教育諸学校標準法第18条各号に掲げる者を含む。)

 二 公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律(昭和36年法律第188号。以下「高等学校標準法」という。)第15条の規定に基づき都道府県が定める特別支援学校高等部教職員定数に基づき配置される職員(特別支援学校の高等部に係る高等学校標準法第24条各号に掲げる者を含む。)

 三 特別支援学校の幼稚部に置くべき職員の数として都道府県が定める数に基づき配置される職員」

 同第2条は、次のような規定である。

 「市(地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市を除く。)町村立の高等学校(中等教育学校の後期課程を含む。)で学校教育法(昭和22年法律第26号)第4条第1項に規定する定時制の課程(以下この条において「定時制の課程」という。)を置くものの校長(定時制の課程のほかに同項に規定する全日制の課程を置く高等学校の校長及び中等教育学校の校長を除く。)、定時制の課程に関する校務をつかさどる副校長、定時制の課程に関する校務を整理する教頭、主幹教諭(定時制の課程に関する校務の一部を整理する者又は定時制の課程の授業を担任する者に限る。)並びに定時制の課程の授業を担任する指導教諭、教諭、助教諭及び講師(常勤の者及び地方公務員法第28条の5第1項に規定する短時間勤務の職を占める者に限る。)のうち高等学校標準法第7条の規定に基づき都道府県が定める高等学校等教職員定数に基づき配置される職員(高等学校標準法第24条各号に掲げる者を含む。)であるものの給料その他の給与、定時制通信教育手当及び産業教育手当並びに講師(高等学校標準法第23条第2項に規定する非常勤の講師に限る。)の報酬等は、都道府県の負担とする。」

 同第3条は、次のような規定である。

 「前2条に規定する職員の給料その他の給与については、地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)第42条の規定の適用を受けるものを除く外、都道府県の条例でこれを定める。」

 なお、義務教育諸学校国庫負担法は廃止された。

 ②地方財政調整制度

 財政調整という用語は、元々、ドイツ租税法学の父とも評価されるアルベルト・ヘンゼル(Albert Hensel)が、おそらくはスイスの憲法制度を基にしつつ打ち立てた概念であるが、その概念の重要性にも関わらず、ドイツにおいては確定的定義が未だ存在しないという状況にある。一方、日本は単一国家であるという事情があるので、とくに地方財政調整と表現されることが多いが、やはり、地方財政調整について明確な定義が下されていない場合が多い。それ故に、何を財政調整(法理)論の対象にするかについて必ずしも明らかでなく、しかも論者により射程距離に微妙な差異が存在する、という状況にある。ここでは、財政調整とはいかなる概念であるかについての詳説を避けるが、一般的には地方交付税制度が該当するという共通理解がみられる。

 文献紹介の意味も含めて、拙稿「地方税立法権」日本財政法学会編『財政法講座3 地方財政の変貌と法』(2005年、勁草書房)前掲書32頁注(10)を参照。また、同「ヘンゼルの地方財政調整法制度論」日本租税理論学会編『相続税制の再検討(租税理論研究叢書13)』(2003年、法律文化社)167頁、同「ドイツの地方税財源確保法制度」日本財政法学会編『地方税財源確保の法制度(財政法叢書20)』(2003年、龍星出版)75頁も参照。

 地方財政調整制度と考えられるものは、他に国庫支出金(地方財政法第10条以下および同第17条に規定される国庫負担金と同第16条に規定される国庫補助金からなる )などがあるが、国庫支出金についても、国庫支出金を財政調整制度に含める説※、国庫補助金を財政調整制度に含めない説※※、国庫支出金について明言を避けているが故に、国庫支出金を財政調整制度に含めるか否かが明らかでない説※※※が並存している。

 ※やや古い文献であるが、金子宏「総説」雄川一郎=塩野宏=園部逸夫編『現代行政法大系第10巻財政』(1984年、有斐閣)6頁、山崎正『地方分権と予算・決算』(1996年、勁草書房)93頁。また、橋本徹「イギリスの財政調整制度―レイフィールド委員会報告を中心に」藤田武夫=和田八束=岸昌三編『地方財政の理論と政策』(1978年、昭和堂)も、同じ前提をとるものと思われる。なお、佐藤進「国と地方公共団体の財政上の関係」雄川一郎=塩野宏=園部逸夫編『現代行政法大系第10巻財政』305頁は、「地方財政調整制度―交付税交付金を中心に―」という表題の下に地方交付税制度について論述するが、地方交付税制度以外の何が財政調整制度であるかについては明言していない。

 ※※遠藤湘吉「政府間の財政調整」武田隆夫=遠藤湘吉=大内力編『資本論と帝国主義論下―帝国主義論の形成と展開』(1971年、東京大学出版会)356頁。但し、この論文においては、国庫負担金を財政調整制度に含めるか否かについて明言されていない。

 ※※※例:俵静夫『地方自治法』(1969年、有斐閣)364頁、大島通義=宮本憲一=林健久編『政府間財政関係論』(1989年、有斐閣)所収の各論文、高林喜久夫「曲がり角に立つ地方財政調整」本間正明他『地方の時代の財政(シリーズ現代財政3)』(1991年、有斐閣)59頁、佐藤進=林健久編『地方財政読本』〔第四版〕(1994年、東洋経済新報社)177頁[持田伸樹担当]。

 ③地方譲与税制度

 地方譲与税は、財政調整の一種と考えるべき制度であり、地方公共団体の財源を保障するために、国税の全部または一部を地方公共団体に譲与するというものである。課税技術の関係で国税として賦課徴収されるものが望ましい、という理由により、地方譲与税が存在する。現在は、地方揮発油税、石油ガス譲与税、自動車重量譲与税、特別とん譲与税、航空機燃料譲与税がある。また、2004(平成16)年度から2006(平成18)年度までは、三位一体改革による税源移譲(平成18年度税制改正による、所得税から個人住民税への税源移譲を指す)に向けての暫定措置として、所得譲与税法による所得譲与税が施行されていた。

 地方揮発油税は、地方揮発油税法により、都道府県、市町村および特別区に対して財源を譲与するため、地方道路譲与税に代えて2009年4月1日から施行されるものである。

 地方道路譲与税は、地方道路譲与税法により、目的税としての地方道路税法によって徴収される地方道路税の収入額全額を譲与税とするものであった。譲与税の58%は都道府県および道路法第7条第3項に規定される指定市(地方自治法第252条の19第1項の市、すなわち政令指定都市を指す)に按分され(同第2条)、42%は市町村に按分されていた(同第3条)。

 石油ガス譲与税は、石油ガス譲与税法により、本来は普通税であるが道路特定財源とされている石油ガス税の収入額の2分の1を譲与税とするものであり、都道府県および道路法第7条第3項に規定される指定市に按分される(同第1条)。

 自動車重量譲与税は、自動車重量譲与税法により、本来は普通税であるが道路特定財源とされている自動車重量税の収入額の3分の1を譲与税とするものであり、市町村に按分される(同第1条)。

 特別とん譲与税は、特別とん譲与税法により、特別とん税の収入額全額を譲与税とするものである。これは、開港が所在する市町村に按分されるものであり、外航船舶に対して固定資産税の軽減措置がとられているために、その減収分を補うための財源とされる。特別とん税は目的税であるが、特別とん譲与税は開港所在市町村の一般財源とされる。

 開港とは、関税法第2条第1項第11号により「貨物の輸出及び輸入並びに外国貿易船の入港及び出港その他の事情を勘案して政令で定める港」と定義されるものである。この定義が、とん税法第2条第1項においてそのまま援用され、さらに特別とん税法第2条に援用されている。

  航空機燃料譲与税は、航空機燃料譲与税法により、普通税である航空機燃料税の収入額の13分の2を譲与税とするものであり、空港関係市町村および空港関係都道府県に按分される。空港関係市町村は、空港が所在する市町村または特別区「及びこれに隣接する市町村並びにその区域外に空港を設置している市町村で、総務大臣が指定するもの」であり、空港関係都道府県は「当該市町村を包括する都道府県」である(同第1条第2項)。航空機燃料譲与税は「航空機の騒音により生ずる障害の防止、空港及びその周辺の整備その他の政令で定める空港対策に関する費用」に充てられなければならない(同第7条)。

 ④交付金

 交付金は、国から地方公共団体などに対して、一定の行政上の必要性から交付される現金的給付である。性質は様々であるが、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律の適用対象とならないのが一般的である。補助金よりも使途が緩和されているなどの特徴がある。

 交付金には様々な種類がある。たとえば、地域再生法第19条は、地域再生計画の認定を受けた地方公共団体に対して地域再生基盤強化交付金を交付することができると定めており、これを「道整備交付金」、「汚水処理施設整備交付金」、「港整備交付金」からなるものとしている。また、道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律第19条は、特定広域団体である道に対して「特定砂防工事交付金」、「特定保安施設事業交付金」、「特定道路事業交付金」、「特定河川改良工事交付金」を交付することができると定めている。

 また、発電用施設周辺地域整備法第7条による交付金※、防衛施設周辺の生活環境の整備等に関する法律第9条による特定防衛施設周辺整備調整交付金、公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律第5条による、学校および病院などへの助成などは、補助金とは別に地方公共団体に資金を供給するものである。一方、国有提供施設等所在市町村助成交付金に関する法律による交付金は、在日米軍基地および自衛隊基地の所在市町村に対する交付金である。この他、道路交通法附則第16条に定められる交通安全対策特別交付金などがある。

 ※原子力発電所、水力発電所、地熱発電所、火力発電所、原子力発電に使用される核燃料物質の再処理施設など原子力発電と密接な関連を有する施設の誘致のためのものである。

 ⑤公営競技

 競馬、競艇、競輪、オートレースであり、それぞれ、競馬法、モーターボート競走法、自転車競技法、小型自動車競走法の定めによる。これらは、元々、地方公共団体の財源を保障するために認められているものであるが、近年は赤字のために廃止あるいは見直しを受ける例が多くなっている。

 ⑥宝くじ

 正式には当せん金付証票といい、地方財政法第32条および当せん金付証票法に基づいて行われる事業である。本来は第二次世界大戦後の混乱期に、地方財政の窮乏に対する当分の間の救済策として認められたものであるが、現在も事業は続けられているばかりか、ますます盛大になっている。「当分の間」という限定を外し、恒久的財源として位置づける必要があるものと思われる。

 参考:スポーツ振興投票券

 一般にサッカーくじなどと言われるもので、スポーツ振興投票の実施等に関する法律によって事業が行われる。この事業自体は地方公共団体でなく、独立行政法人日本スポーツ振興センターのみが行いうることとなっているが、同第21条第1項により、収益を「文部科学省令で定めるところにより、地方公共団体又はスポーツ団体(スポーツの振興のための事業を行うことを主たる目的とする団体をいう。以下この条及び第30条第3項において同じ。)が行う次の各号に掲げる事業に要する資金の支給に充てることができる」とされているので、地方公共団体が行うスポーツ施設の整備などに充てられることとなるであろう。但し、この法律がどこまで地方公共団体の財源保障請求権に応えるものであるかについては、不明確な点もある。

 (3)財政権力としての地方財政権

 直接的には国対地方の関係の側面に関わる訳ではないが、全く無関係とも言えないので、ここで住民などに対する関係を扱っておく。

 地方財政権は、財政権力としての性質を有する。この財政権力の中心は、何と言っても課税権である。その課税権を仔細に見るならば、立法権、賦課権、徴収権、収入権などと分けることが可能である。実際に地方公共団体がいかなる内容の課税権を有するかについては、国、時代などによって異なりうるし、現在の日本の地方税制度においても、税目によって異なっている。たとえば、地方消費税の場合、本来的には少なくとも賦課権、徴収権および収入権が認められることとなっているが、附則第9条の4以下により、収入権のみが認められる。しかし、これでは地方譲与税とあまり変わりがないし、国との関係はともあれ、住民などとの関係は非常に稀薄なものとなる。少なくとも賦課権および徴収権を有しなければ、真の課税権とは言えないであろう。

 既に述べたように、地方公共団体の課税権は、法律上、地方自治法第223条に根拠づけられる。その上で地方税法に根拠づけられるのである。もっとも、これについては地方税条例主義という重要な概念があるので、「15 地方税制度」において述べることとする。

 また、地方自治法第228条は、分担金、使用料、加入金および手数料について条例主義を規定する。すなわち、これらの収入を得るためにはあらかじめ条例を制定しておかなければならないということである。これら以外の収入について、個別の法律が存在する場合に認められることは当然であるが、法律に定めがなく、かつ、禁止規定もない場合に、地方公共団体が条例によって独自の収入を設定し、それについて地方財政権を行使しうるかという問題もあるが、この講義においては、一応、可能であると考えておくこととする。

  そして徴収権である。財政権力の一部としての徴収権であるから、基本的に強制徴収が可能であると考えなければならない。地方税については地方税法が詳細に定めるところであるが、その他のものについては地方自治法第231条の3第3項の規定があり、「分担金、加入金、過料又は法律で定める使用料その他の普通地方公共団体の歳入料又は法律で定める使用料その他の普通地方公共団体の歳入につき第1項の規定による督促を受けた者が同項の規定により指定された期限までにその納付すべき金額を納付しないときは、当該歳入並びに当該歳入に係る前項の手数料及び延滞金について、地方税の滞納処分の例により処分することができる」とされる。ここでいう「法律で定める使用料その他の普通地方公共団体の歳入」は、同附則第6条により限定的に列挙されることには注意が必要である。

 徴収権は、国の場合と同様、消滅時効にかかる。地方税法第18条第1項は、地方税の徴収権が法定納期限の翌日から起算して5年間行使されないことによって、時効により消滅すると定める。しかも、この時効については援用を必要とせず、利益を放棄することもできない(同第2項)。また、時効の中断および停止については第18条の2が定める。さらに、還付金については第18条の3が規定しており、「地方団体の徴収金の過誤納により生ずる地方団体に対する請求権及びこの法律の規定による還付金に係る地方団体に対する請求権」は、請求をすることができる日から5年を経過したときには消滅時効にかかることとなっており(同第1項)、やはり援用を必要とせず、利益を放棄することもできない(同第2項により、第18条第2項を準用)。

 地方税法などの法律に定めがない金銭債権については、地方自治法第236条第1項により、権利を5年間行使しないことによって消滅時効にかかる(住民の側が普通地方公共団体に対して有する、金銭の給付を目的とする権利についても同様である)。この種の金銭債権についても、特別の規定がない限り、時効の援用を必要とせず、利益を放棄することもできない(同第2項。住民の側が普通地方公共団体に対して有する、金銭の給付を目的とする権利についても同様である)。

 

 ▲第6版における履歴:第10回として2022年12月22日掲載。

            2022年12月23日、第11回に繰り下げ。

 ▲第5版における履歴:未掲載。

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東急グループ100周年記念トレイン 大井町線版

2022年12月21日 08時29分40秒 | 写真

 2022年11月2日16時46分30秒付で「東急グループ100周年記念トレイン」を掲載しました。その時の写真は田園都市線版で、ラッピングを施されたのは2020系2122Fです。

 今回は、同じく東急グループ100周年記念トレインの大井町線版です。9000系で唯一、製造当初から大井町線用として5両編成で活躍してきました。つまり、東横線で8両編成として運用されたことがない編成です。ラッピングを施されるのに相応しい、と言えます。

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津軽線の一部が廃止されるか?

2022年12月19日 23時35分00秒 | 社会・経済

 今日(2022年12月19日)の21時34分付で、時事通信社が「津軽線、廃線含め地元と協議へ 大雨の被災区間―JR東」(https://www.jiji.com/jc/article?k=2022121900998&g=eco)として報じています。非常に短い記事ですが、気になるものですので、紹介しておきます。

 津軽線は、青森駅から三厩駅までの56キロメートル程の路線です。かつては全線非電化の路線でしたが、青函トンネルの開通とともに姿を大きく変えました。但し、それは青森駅から新中小国信号場までの話で、この区間はJR北海道の海峡線と合わせて津軽海峡線と呼ばれ、交流25,000ボルト50ヘルツで電化されています。一方、残りの区間である新中小国信号場から三厩駅までは非電化のままです。

 今回(今日のことです)、JR東日本が地元自治体(青森県、外ヶ浜町、今別町)と協議を進める意向を明らかにしたのは、蟹田駅から三厩駅までの区間です。今年8月の大雨による被害を受けて現在も運休しているのですが、赤字路線ということで廃線にしようという意思が見えてきます。自然災害で運行休止となる鉄道路線は多いのですが、どのような位置づけであるかによって復旧か廃止かが分かれることとなります。とくに最近は復旧ではなく廃止が選択されることが多くなっているように思えます。費用対効果などを考えるとやむをえないところですが、もう公共交通機関全体が成り立たない地域が続々と現れており、バス転換では済まない状況にまで追い込まれています。おそらく、津軽線の沿線も同じような状況でしょう。

 ただ、蟹田駅から新中小国信号場までの区間は、旅客運輸をやめるとしても貨物運送が残るでしょう。そのため、海峡線との接続を中止するとも思えません。もっとも、北海道新幹線の延伸で函館本線の長万部駅から小樽駅までの区間が廃止される可能性(少なくとも、旅客運送の廃止の可能性)は非常に高く、貨物運送もどうなるかわかりませんので、津軽線全体の動向も気になるところです。

 なお、津軽線は、1980年代、輸送密度の点からすれば特定地方交通線の指定を受けてもおかしくなかったのですが、除外要件に該当するということで指定を受けなかったのでした。ここは注意しなければならないでしょう。

 1990年代から現在まで、元国鉄の路線で廃止された路線または第三セクター化された路線を見ると、深名線、江差線、三江線、岩泉線など、特定地方交通線の指定の除外要件に該当したところが目立ちます。最近であれば、北海道医療大学駅から新十津川駅までの区間が廃止された札沼線、鵡川駅から様似駅までの区間が廃止された日高本線、留萌駅から増毛駅までの区間が既に廃止され、2023年3月には石狩沼田駅から留萌駅までの区間も廃止される留萌本線を例としてあげることができます。

 廃線議論があちらこちらで取り上げられ、YouTubeの動画でも解説なり分析なりが行われていますが、1980年代の特定地方交通線、さらに遡って1960年代後半の赤字83線にまで遡って検討などを行っている人は少ないように思われます。不十分であると評価せざるをえません。廃止の可能性が取り沙汰されている鉄道路線の多くは、何も最近になってから問題が生じた訳ではなく、長年にわたって問題が抱え込まれたままであったのでした。今一度、特定地方交通線について歴史的な観点も踏まえた検討をしなければならないでしょう。

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