ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

大晦日です

2013年12月31日 01時07分10秒 | 日記・エッセイ・コラム

 2013(平成25)年の最後の日を迎えました。

 年末年始には、何らかの仕事を抱えています。冬休み期間中ですから講義の仕事はありませんが、それ以外にあれこれと、行わなければならない仕事があるのです。

 考えてみれば、これはありがたいことです。何もやるべきことがないというのは、やはりつらいものですから。

 いつの頃からかはっきりとは覚えていませんが、大晦日は、23時半からテレビ東京のシルヴェスター・コンサートを見ています。おそらく、テレビで最初に放送された頃から見続けているはずです。他の番組は見ません。今年のカウントダウンの曲は何だろうか、と楽しみにしています。15日まで、3曲の中から投票で云々というのを、東急線の広告で見たのですが、気づいたのが遅かったので投票などをしていません。「ニュルンベルクのマイスター・ジンガー」序曲も候補になっていたので、残念な話なのですが。

 別に大晦日に限ったことではなく、ここ数年、あまりテレビを見ていません。よく見るのは日曜美術館と、NHKの動物番組くらいでしょうか。日曜日の午後8時も、大河ドラマではなく、日曜美術館の再放送を見ていたりします(かなり前からそうでした)。

 今年は、3月にインターネット番組に出演するという機会をいただきました。そして、11月に京都で久しぶりの学会報告という機会をいただきました。この二つが、特に強い印象として残っています。

 2014(平成26)年は、私が大分大学から大東文化大学に移って満10年を迎えます。さらに前進し、発展したいと思っております。

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ブラームスのクラリネット五重奏曲

2013年12月27日 19時38分52秒 | 音楽

 幼い頃からブラームスのハンガリー舞曲集(オーケストラ版)やヴァイオリン協奏曲などを聴いていたし、交響曲全曲、ヴァイオリン・ソナタなども聴いていた(今年の9月、青葉台のフィリアホールで開かれたコンサートでは3曲のソナタ全部が演奏された)。しかし、弦楽四重奏曲、弦楽五重奏曲などを耳にしたことがなく、LPやCDも持っていなかった。この分野の曲が好きであるというのに。

 今年になって、何のきっかけということもなく、たまプラーザテラスの山野楽器で1枚のCDを買った。ヴァイオリン協奏曲とクラリネット五重奏曲のカップリングという、よく意味のわからないものであったが、安かったこともあって購入した。自宅で聴いてみたら、ブラームスらしい渋さにあふれた素晴らしい曲であることを知り、それ以来、折りに触れて聴くようになった。最近、弦楽四重奏曲や弦楽五重奏曲などが収録されたセット物を購入し、何故ブラームスが諦観の作曲家などと言われているのか、よくわかったような気がする。

 クラリネット五重奏曲は、弦楽四重奏にクラリネットという編成による曲が多いようであるが、他のスタイルと比べると数は少ない。モーツァルトのイ長調の曲(K. 581)が圧倒的に有名であるが、その他と言えば、このブラームスのロ短調(作品115)くらいであろうか。

 全体は暗い雰囲気で覆われている。途中、何箇所かで「ここにはクラリネットが入らないほうがよいのではないか」、「弦楽四重奏か弦楽五重奏のほうがよかった」と思える部分がある。クラリネットの音色の性質によるためである(音域によって質が変わる)。それはともあれ、第1楽章から引き込まれる。

 第2楽章はロ長調であるが、雰囲気は変わらない。中間部がロ短調であることが、曲の統一性を高めることに貢献しているのであろう。第3楽章にも同じことが言える。ニ長調なのであるが、交響曲第2番やヴァイオリン協奏曲のような明るさはない。この楽章も、中間ではロ短調とも聞こえるような曲調になる。そして第4楽章である。変奏曲であり、途中でロ長調に転調するが、諦観の空気は変わらない。その中に様々な別の要素が入る。変奏を終え、クラリネットが静かに吹き終えると、弦楽四重奏がBマイナーの和音を強く演奏し、すぐに残響のごとく弱い音で曲を閉じる。

 ここのところ、CDというとクラシックを買うことが多い。拍子などのことを考えると、クラシックほど多彩な分野もないからかもしれない。今年、好んで聴いたのは、ブラームス、ドビュッシー、武満徹、といったところである。

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大東文化大学も法科大学院から撤退

2013年12月19日 20時09分07秒 | 受験・学校

 本日、大東文化大学が法科大学院の学生募集を2015年度から停止する旨を発表しました。

 先程、Googleで検索をかけたら、朝日新聞社が今日の19時21分付で「大東文化大、法科大学院の募集停止へ 15年度から」として報じているのを見つけました(http://www.asahi.com/articles/ASF0TKY201312190226.html)。大東文化大学のサイトでは、今日、「大東文化大学大学院法務研究科(法科大学院)の学生募集停止について」として発表しています(http://www.daito.ac.jp/news/details_8554.html)。

 私は大東文化大学法学部に勤務していますから、当然、この話は知っていました。また、前期だけですが法科大学院の講義を担当しています。合格者数も合格率も低迷しており、定員充足率の問題も生じていましたから、廃止はやむをえないということです。

 朝日新聞社の上記報道では、大東文化大学は「文部科学省によると、募集停止は9例目」であるとのことですが、10月25日付でこのブログに投稿した「9例目(?)はニュースにもならず……」に照らせば10例目となります。私が勘定を誤った可能性も高いので、ここでは「文部科学省による」ところとしておきましょう。

 大東文化大学大学院法務研究科は、これまで27名の合格者を出しています。その8割が未収者または社会人です。実際、これまで私が担当した講義の受講者の多くが社会人です。平日には夜間2コマ(18時半から20時までと、20時10分から21時40分まで)も設けられており、土曜日と日曜日にも講義が入っています。

 しかし、ここ数年、合格率が低迷しています。今年の合格率は1.64%で、全体では71位でした。これは昨年(59位)より下回っており、合格率0%であったところ(東海大学、神戸学院大学および姫路獨協大学の3校。いずれも撤退を表明済みです)を除けば最低の数字となってしまいました。

 まさに、我々の力が及ばなかった、ということです。

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國學院大學法学部「行政法1」(金曜日4限)受講の皆様に

2013年12月16日 09時20分29秒 | 受験・学校

 12日(金)の講義の際に話しましたように、当初は期末試験を行う予定でしたが、レポート提出に切り替えます。

 K-SMAPYの「お知らせ」および「フォーラム」の欄にも「課題」を記しましたし、私のサイトの「行政法試験問題集」にも「その42」(http://kraft.cside3.jp/PrVwR42.htm)として掲載しましたが、便宜のため、ここにも掲載しておきます。

 ●次の中から二題を選び、解答してください。

 1.国家公務員Xは、或る休日に、特定秘密保護法制定反対集会に参加し、現役の公務員として演説も行った。これにより、Xは国家公務員法違反で起訴された。この事案について、行政法の問題について、判例・学説に照らしつつ、論じなさい。

 2.行政行為の無効と取消について、判例、学説に照らしつつ、論じなさい。

 3.行政調査のうち、強制調査とその手続が抱える問題点について、判例、学説に照らしつつ、論じなさい。

 4.行政手続法第8条および同第14条は「理由の提示」を定める。その趣旨は何に求められるか。また、「理由の提示」は、どの程度まで求められるべきか。判例、学説に照らしつつ、論じなさい。

 ●字数・枚数:一題について2000字以上とします(上限は設けません)。次の点に注意してください。

 ①パソコン、ワープロでレポートを作成する際には、A4の用紙を使用してください。また、1行あたりの字数と1頁あたりの行数を明示してください。

 ②パソコン、ワープロを使用しない場合には、必ず原稿用紙を使用してください。ルーズリーフ、レポート用紙などを使用した場合には採点しません。また、黒の万年筆かボールペンで記すこと(鉛筆などの場合は採点しない場合があります)。

 ③参考文献を明示してください。ここで、参考文献とは、教科書(講義の教科書だけでは不十分です)、論文集、法律雑誌掲載の論文をいいます。六法などの法令集、辞書、判例集などは参考文献にならないので注意してください(参考文献として記されている場合は、論述の展開に関連する必然性があると認められない限りにおいて減点します)。また、文献の数も評価の対象となります。

 なお、総務省、各地方公共団体のサイトを除いて、ホームページ(各種サイト)などの参照は避けてください(参照されていることが明らかな場合、減点することがあります)。

 ●提出方法

 ①原則としてK-SMAPYによります。締切は1月17日(金)の14時30分です。

 ②但し、この機能を使えない場合には、1月17日の講義の際に提出していただきます。教卓の上に置いてください。

 ③レポートの提出がない場合には、単位の認定をしません。また、教科書や参考文献、さらにホームページなどの丸写しなどで終わっているものは未提出とみなします。

 自分の力で考え、表現してみましょう。

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一度も審議のないままに町議会が閉会された?

2013年12月12日 22時29分56秒 | 国際・政治

 国会であれ地方議会であれ、審議が空転したりすることはよくあります。しかし、開会から閉会まで、全く議案が審議されないままに閉会されるという例はほとんどないのではないでしょうか。少なくとも、珍しい話であると言うことはできるでしょう。朝日新聞社が、今日の5時58分付で「川俣町議会 審議無く閉会」(http://digital.asahi.com/articles/CMTW1312120700001.html)として報じています。

 福島県の川俣町では、今月5日から昨日(11日)まで、町議会が開かれていました。ところが、この町議会を構成する16名の議員(議長および副議長を含む)のうち、9名の議員の議員が、初日の途中から本会議への出席を拒否しました。過半数の議員が出席しなかったのですから、議会の定足数を満たせず、議事を進行できません。

 こうなったことの理由は、次のように報じられています。今年の7月25日、伊達郡3町で議員大会が行われました。この大会で、各町議会が行っている県への要望について、川俣町議会からの案を、議長が事前に、議員に諮ることとなっていました。ところが、どういう訳か議長が「失念した」とのことでした。そのため、町議会の議員は要望の内容を知らされなかったというのです。

 議員大会のことを「失念」していたのが議長だけだったのか、疑問も残ります。しかも、その話から4か月以上も経ってから、議会の場で問題として取り上げられたことについても、疑問符が浮かびます。7月25日から12月5日まで、町議会は一度も開かれていないのでしょうか。全員協議会など、設定しようと思えば開くことは可能であったはずです。

 ともあれ、12月5日に町議会の日程が決まり、その直後に議長に対する不信任の緊急動議が提出されました。この動議に対して賛成したのは8名です。議会の議長および副議長を除いた議員の総数は14名ですから、かろうじて過半数ということになる賛成により、動議は可決しました。しかし、議長は辞意を表明せず、これに対し副議長を含めて9名の議員が退席しました。

 町議会には重要案件がありました。その一つが補正予算案です。詳しい内容はわかりませんが、およそ1億3千万円の規模ということです。町議会が開かれていたのに審議されていないのですから、どうしようもありません。町長の専決処分ということになりそうです。

 地元の詳しい事情は、地元の人間でなければわからないものです。上記報道によれば、「動議に賛成した議員の中には前議長や議会運営委員長もいる。今年1月に前議長が議会運営を批判され、任期途中で辞任したことをめぐる議会内のしこりが背景にある、と指摘する議員も少なくない」とのことです。ちなみに、2012年11月、復興庁の参事官がツイッターで福島県内の町議会を揶揄するという事件が生じましたが、その対象が川俣町議会でした。

 いかなる組織であれ、一旦できたしこりはなかなか消えないものです。しかし、大災害からの復興に取り組んでいる最中に内輪揉めをしている場合ではないでしょう。これでは批判されても仕方がないところです(揶揄はいけませんが)。

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実現可能なのか? 阪急神戸線と神戸市営地下鉄西神・山手線の相互直通運転 その2

2013年12月11日 10時22分26秒 | 社会・経済

 前回に記した阪急側の事情は、多分に私の推測です。ただ、当たらずとも遠からず、と考えています。関西経済圏の縮小という大問題があることは承知していますが、それを考慮に入れても、阪急には新たなネットワークを構築する必要性があるものと判断されたのではないかと思われるのです。また、阪急阪神グループの再編なども視野に入れていると考えられます。

 かつては「永遠のライバル」とも言われ、戦前には実際に阪急(この時代は阪神急行電鉄)と多くの紛争を構えた阪神電気鉄道も、JR西日本の攻勢を受けて乗客の減少に見舞われました。JR東西線の開通も、阪神本線にとっては打撃であったはずで、大阪府内の各駅(とくに、特急が通過する駅)では大幅な乗降客減が見られました。

 もっとも、阪神西大阪線が難波まで延長して阪神なんば線となり、近鉄奈良線との相互直通運転を開始してからは、利用客が増加に転じたかもしれません。そうなると、阪急神戸線の存在は霞んできます。JR西日本の攻勢は続いており(岡本に続いて夙川に特急が停車するようになったのが象徴的です)、たとえば福知山線、東西線、学研都市線(片町線)の直通運転を行い、東海道本線・山陽本線の新快速の運転区間を拡大するなど、京阪神地区での広域ネットワークを構築しています。阪神も、遅ればせながら近鉄奈良線への乗り入れを通じて広域ネットワークを構築し、やろうと思えば近鉄名古屋から阪神なんば線、阪神本線、神戸高速鉄道東西線を経由して山陽姫路までの直通特急を走らせることができるようにまでなっています。

 広域ネットワークにはデメリットもあります。首都圏の例でわかるように、埼玉県や栃木県で人身事故が発生すると、都内は勿論、神奈川県内にまで遅延などの影響が出ます。JR湘南新宿ラインが典型的ですし、東急東横線や田園都市線でも見られるようになりました。それでも、首都圏で再構築と広域化が図られることにより、利用可能性が大幅に増えるというメリットが大きいのです。

 JR西日本の場合は自社路線だけでネットワークの広域化が可能ですし、阪神や近鉄は他社への乗り入れによって可能としています。もっとも、この点では関東の大手私鉄のほうが進んでいます(電車のバリアフリーという点でも、昔から関西は遅れています。手すりが少なすぎるのは昔から今も変わりません)。関西の大手私鉄は、阪急京都線と大阪市営地下鉄堺筋線との直通運転のような例は見受けられるものの、あまり積極的ではありません。これには、大阪市営地下鉄の影響などがあるでしょう。それにしても、近年の状況を見ると、ネットワークの再構築への積極性では態度が分かれます。積極的なのが阪神と近鉄で、とくに近鉄は大阪市営地下鉄中央線や京都市営地下鉄烏丸線への乗り入れも行っています。逆に消極的なのが京阪(京都市営地下鉄東西線への乗り入れはありますが)、南海(泉北高速鉄道への乗り入れはありますが)、そして阪急です(上記の他に宝塚線から能勢電鉄線への乗り入れがありますが、片乗り入れという状態です)。阪急の場合は、前回にも記したように山陽電鉄への直通運転を中止しているくらいですから、縮小している訳です。ネットワークを狭めるような結果になっていますし、京都側のネットワークを広げることは難しいので、神戸側の新たな可能性を模索しているというところでしょう。

 さて、阪急神戸線と神戸市営地下鉄西神・山手線の相互直通運転は、実現可能なのでしょうか。

 この問いに対しては、技術的な観点、経済的な観点など、複数の方向からの検討が必要となります。ただ、私は土木技術などについては全く手が出ませんので、かなりの程度で趣味的な視点から記していきます。

 相互直通運転を開始するには、接続駅が必要です。どちらも既存の路線ですから、どちらか一方が大幅な改造を行う必要があります。少しばかり考えると「こういう話は40年くらい前に済ましておけばよかったのに」と思うことにもなりますが、今更どうしようもありません。

 そこで路線図を見ますと、阪急神戸線と神戸市営地下鉄西神・山手線との直接の乗換駅は、三宮しかありません。しかし、阪急神戸線の三宮駅は高架線上にあるのに対し、西神・山手線の三宮駅は北側(山側)に少し離れた地下線の途中にあります。しかも、地下鉄の駅は狭い道路の下にあるためか、ホームが二層構造になっています(東京で言えば桜新町駅、麹町駅、神楽坂駅のような構造です)。このままでは直通運転など無理ですから、阪急の三宮駅を地下化するという手が考えられます。実際に、この案が示されているようです。

 但し、今の高架駅の場所に地下駅を作っても、別の場所にある点は変わりません。連絡線を造るとしても、阪急の三宮駅と地下鉄の三宮駅が別々になっているのでは混乱します。下手をすれば、京都市営地下鉄東西線の山科駅と京阪山科駅との関係のようになってしまうのです。誤乗などが頻発するでしょう。

 そうなると、望ましいのは、阪急三宮駅の地下化とともに阪急と地下鉄の駅を統合することです。建設場所によっては西神・山手線のルートが変わりますが、やむをえないところです。どちらが管理するかということなどを明確化しておけば、実現の可能性は低くありません。

 ただ、この案を採用するとなると、地形的な問題、技術的な問題、財政上の問題の他に、神戸高速鉄道東西線の三宮・高速神戸間をどうするのかという問題が残ります。阪急としては、西神・山手線との相互直通運転を開始したら神戸高速鉄道東西線への乗り入れを中止することも念頭に置いているかもしれません。しかし、そうなると三宮・高速神戸間は廃止されることになりかねません。地下駅の高速神戸はともあれ、途中にある地下駅の花隈は廃駅となるのでしょうか。日本で地下鉄史上初の廃止区間、廃止駅が登場するかもしれませんが、何らかの活用方法が考えられて然るべきでしょう(神戸高速鉄道には神戸市も出資しています)。

 ここで、他の手も考えてみましょう。第二の手としては、阪急三宮駅を(高架のままに残しておくか地下化するかは別として)地下鉄三宮駅とは別のままにしておいて、県庁前駅付近から分岐線を造り、新神戸方面は地下鉄三宮駅、梅田方面は阪急三宮駅というように振り分けることが考えられます。首都圏で言えば京王線と京王新線の関係、あるいは東武伊勢崎線の曳舟・東京スカイツリー間と曳舟・押上間の関係に近い(?)ものとなります。費用はかかりますが、どのみち避けられない話です。この手のメリットは、阪急が神戸高速鉄道乗り入れの選択肢を残しておけることですが、意味がないかもしれません。

 第三の手として、阪急のほうが春日野道駅か王子公園駅から地下鉄三宮駅への連絡線を建設するという手もあります。これは、現在の阪急三宮駅を高架駅のままにしておき、神戸高速鉄道東西線への乗り入れも維持する、という前提の下で考えられるものです。

 但し、この案にも難点があります。一つには、阪急と地下鉄とで駅が別々になるという点に変わりがないことです。もう一つは、おそらく工事が非常に難しくなるということです。原因は、先程記した、地下鉄三宮駅の構造です。二層構造のため、この駅に連絡線を造るとなると、距離の問題もあれば分岐点などの問題もあります。西神・山手線は、三宮駅を出ると急カーブで北の方へ曲がり、新神戸駅に向かいます。かなり困難であることが予想されます。さらに、阪急側に資金での余裕があるかどうかです。春日野道駅か王子公園駅までの新ルートを建設しなければなりませんから、土地買収などの面で困難が予想されます。また、春日野道駅はホームの幅が狭いことでも知られていますので、改良工事を同時に行う必要もあります。このように考えていくと、あまり現実的な案とも言えません。

 その他の手としては、三宮駅で接続するのではなく、たとえば花隈駅を活用して連絡線を新たに建設するという事も考えられますが、阪急・神戸高速・神戸市と跨がるのでは面倒な話で、運賃の点でも疑問です。

 考えようと思えばいくらでもできる話ですが、最も現実的にして高い利便性を生み出す方法が最善です。莫大な費用がかかることからして、そもそも相互直通運転には慎重たらざるをえないかもしれません(むしろ、実現の可能性は低いと評価してもよいでしょうが)。しかし、検討には値するでしょう。いかなる結果が出るか、注目すべきところです。

 蛇足ですが、神戸市の中央区、兵庫区など、海から山までの南北に狭い平地に、JR東海道本線・山陽本線、神戸市営地下鉄西神・山手線、神戸市営地下鉄海岸線、神戸高速鉄道東西線(阪急、阪神、山陽に直通)が並行しているのを見る度に、実に無駄な路線網であると感じます。何度か神戸を訪れ、これらの路線を利用しましたが、その度ごとに「こんなにたくさんの鉄道路線が通っていても、食い合いで終わるだろう」と思っています。一度、海岸線を利用したのですが、乗客の少なさには驚きました。地図などを見ても、他の鉄道路線とそれほど離れていない場所を走っているのです。何のために建設したのか、意味がよくわかりません。海岸線に限りません。神戸市は、既に神戸高速鉄道という第三セクターを作り、出資していたのにもかかわらず、その東西線と並行するような形で地下鉄を建設しているのです。どのような需要予測が立てられたのか、興味深いところです。

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実現可能なのか? 阪急神戸線と神戸市営地下鉄西神・山手線の相互直通運転 その1

2013年12月10日 02時07分32秒 | 社会・経済

 昨日(と言っても日付が変わる寸前のことですが)、朝日新聞社のサイトを見ていたら、9日22時40分付で「阪急神戸線と神戸市営地下鉄、相互直通運転を検討へ」(http://digital.asahi.com/articles/OSK201312090025.html)という記事が目に付きました。

 実は、この相互直通運転の話自体は前から存在しており、私も知っていました。近畿地方交通審議会は、2004年10月8日付の「近畿圏の望ましい交通のあり方について(答申第8号)」において、阪急神戸線と神戸市営地下鉄西神・山手線の相互直通運転を「別紙1」の「京阪神圏において、既存施設の改良に関し検討すべき主な事業」のトップに登場させています。しかも「西神・山手線の急行運転を検討」とも書いています。もっとも、「京阪神圏において、既存施設の改良に関し検討すべき主な事業」とは「現時点で、京阪神圏において、事業の具体化の可能性を検討すべき主なもの」ですので、どの程度の優先順位なのかということなどがよくわかりません。

 (ちなみに、上記答申はhttp://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/shingi/toshin/toshin.pdfで見ることができますが、47頁以下の別紙、付図、付表を参照することができません。「別紙1」はhttp://wwwtb.mlit.go.jp/kinki/shingi/pdf/8-5-2.pdfで参照できますが、わざわざ別のアドレスにすべき必然性に乏しいと評すべきでしょう。)

 上記朝日新聞社報道に戻りますと、9日に神戸市長が「市営地下鉄西神・山手線と阪急電鉄神戸線を三宮付近で接続し、相互直通運転する案の検討に入る考え」を、神戸市議会本会議での答弁で示しました。狙いは「三宮の活性化や、西神ニュータウンから大阪・梅田への利便性を向上させることなど」とのことです。

 報道でも触れられていますが、元々、相互直通運転は阪急電鉄の意向によるところが大きく、神戸市側は1900億円もの事業費を要することなどから難色を示していました。ところが、ここに来て、最近就任したばかりの神戸市長が検討に積極的な姿勢を示したのです。あくまでも検討であって、そこから先は白紙ということなのでしょうか。

 阪急が相互直通運転を志向することは理解できます。朝日新聞社も「阪急側には、市営地下鉄からJR線への乗り換え客の取り込みを狙えるなどのメリットがある」と述べている通りです。しかし、それだけではないように思われます。

 かつて、阪急神戸線は神戸高速鉄道東西線を経由して山陽電鉄線までの相互直通運転を行っていました。しかし、1998年、山陽電鉄線への直通運転を中止し(免許は保持しているとのことですが)、神戸高速鉄道東西線の新開地駅までに短縮しています。その理由としては、JR西日本の積極的な攻勢により、東海道本線・山陽本線と並行する阪急神戸線(・阪神本線)・神戸高速鉄道・山陽電鉄の直通ラインが不利になったことが考えられます。阪神梅田から山陽姫路までの直通運転は現在も行われていますが、JRならば一社だけの運賃体系で済むのに対し、阪神・神戸高速・山陽なら三社の運賃の合算となるので高額になります。これでスピードもJRに劣るならば、競争の意味がなくなります。阪急は神戸線のみならず、京都線と宝塚線でもJR西日本と競合しており、京都線と宝塚線は劣勢に立たされています。神戸線についても影響は出ているでしょうから、なるべくマイナスを減らしたいでしょう。

 神戸高速鉄道東西線も、完全にJR東海道本線・山陽本線に並行しています。これに対し、神戸市営地下鉄であれば、並行する部分もあるものの、西神ニュータウンという別の展開ができます。JR山陽本線や山陽電鉄本線から離れた山側に路線があるためです。

 仮に西神・山手線との直通運転が実現すれば、阪急神戸線から神戸高速鉄道東西線への直通運転は廃止となるようです。生き残りをかけるのであれば当然の選択でしょう。

 以上の他に考えられるのは、阪急阪神ホールディングス成立以前から子会社である神戸電鉄と北神急行電鉄の不振です。神戸電鉄について記すならば、粟生線の赤字問題があることは数年前に存廃問題として大きく取り上げられています。また、西神・山手線と相互直通運転を行う北神急行電鉄は、高額な運賃が災いして利用客が少ないと言われており(バスに乗客を奪われているとか。神戸電鉄も同様です)、多額の負債を抱えているようです。

 ただ、親会社の阪急電鉄が西神・山手線との相互直通運転を開始した場合、神戸電鉄(とくに粟生線)と北神急行電鉄にもかなり大きな影響が出るはずです。北神急行電鉄と西神・山手線との相互直通運転は継続されるのかという点などでの調整も求められることでしょう。

 まだ続きがあるのですが、稿を改めることとします。

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Fox Capture Plan, Bridge

2013年12月08日 17時14分29秒 | 音楽

 9月15日付でFox Capture Plan, Trinityを取り上げました。それから3カ月弱で、再びFox Capture PlanのCDを取り上げることとします。前作から半年ほどしか経っていませんが、Bridgeというタイトルの新作です。

 Fox Capture Plan, Bridge(ディスクユニオン、PWT-007)

 今日、二子玉川ライズのヴィレッジ・ヴァンガードで耳にして、すぐに買いました。Trinityが素晴らしい作品であったからで、今回も期待したのです。初回限定版ということでシールが付いており、また、DVDも付いてきました。

 帰宅してから通して聴いてみました。基本的な路線は前作と同様ですが、統一感が増しているような印象を受けます。前作の2曲目「衝動の粒子」を最初に三軒茶屋で聴いた時ほどの衝撃を受けなかったのですが、確実に進化しています。今後に期待ができるジャズ・ユニットです。

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もうこんな季節ですね

2013年12月04日 16時36分54秒 | 写真

先月末、六本木を歩いていました。早いもので、もう少しで2013年も終わるのだな、と実感します。

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日が暮れると、このようになります。

2roppongihills20131130

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交通基本法案⇒交通政策基本法案(続)

2013年12月03日 10時15分09秒 | 法律学

 11月15日付で記した「交通基本法案⇒交通政策基本法案」にみやさんからコメントをいただいたのですが、それに対する応答(回答?)が長くなりそうなので、改めて記事にしました。

 交通政策基本法は、11月15日に衆議院で可決され、同月27日に参議院でも可決され、成立しました。公布はまだ行われていませんが、法律としては成立していますので、以下、法律とのみ記します。

 御指摘の事柄は、元記事で私が下線部を引いた箇所です。ここは私も気になっていました(元記事にも書いております)。

 交通基本法案として最初に提出されたのは第177回国会で、内閣提出法案でした。第181回国会で審議未了の故に廃案となり、第183回国会で、衆議院議員提出法案として改めて提出されました。よく見ると、第177回国会提出法案と第183回国会提出法案とでは違いがありますが、この点については今後、何らかの形で検討結果を公表します。今回は、その端緒です。

 第1条は、第177回国会提出法案でも「交通関連事業者、交通施設管理者及び国民」が責務を負う旨を記していました。この時の法案では、第1条に「交通関連事業者」と「交通施設管理者」という言葉が登場するのに、定義は第6条に示されており、構造として問題がありました(通常、法律における用語の定義は、2番目に置かれる条項に一括して規定されますし、場合によっては同じ条の別の項で示されます)。そればかりではなく、第1条の文言にもかかわらず、「交通関連事業者」の責務、「交通施設管理者」の責務を明示的に示す規定が存在しません(国民の責務に関する規定はありましたが、努力義務です)。ほとんどの規定では「連携及び協力」の相手として位置づけられています。

 第183回国会提出法案でも、以上の点は変わらなかったのですが、第177回国会提出法案になかった「交通関連事業者及び交通施設管理者の責務」に関する規定が第11条として登場します(第20条も参照)。もっとも、責務とは言っても努力義務を定めるのみです。すなわち、法的義務ではありません。この点は、交通政策基本法第10条にそのまま残されています。御指摘のように、「交通関連事業者」および「交通施設関連者」に責任を押し付けないという趣旨が含まれていることでしょう。しかし、この点は第177回国会提出法案の時点から変わらないということに注意をしなければなりません。

 第2条も、第177回国会提出法案から「交通に対する基本的な需要が適切に充足されなければならない」旨を示していました。これが交通政策基本法第2条で「交通に対する基本的な需要が適切に充足されることが重要であるという基本的認識」に改められています。適切な充足が求められるのですから、地域の実情に応じたものにする、ということでしょう。その点でも、まさに御指摘の通りです。

 しかも、第177回国会提出法案の第21条、および第183回国会提出法案の第23条は「総合的な交通体系の整備等」という見出しの規定であり、その第1項には「徒歩、自動車、鉄道車両、船舶、航空機その他の手段による交通が、それぞれの特性に応じて適切に役割を分担し(後略)」という文言が登場します。自動車から自家用車が排除されていないことからして、公共交通機関だけが選択肢ではないことが明らかです。なお、これらの法案には何故か自転車が示されていなかったのですが、同じ趣旨を定める交通政策基本法第24条第1項には「徒歩、自転車、(後略)」と定められています。

 まだ続けるべきなのかもしれませんが、私が研究を続けなければなりませんから、ここで止めておきます。交通政策基本法は、国が講ずるべき「必要な措置」を多く規定していますが(第16条から第31条まで)、必ずしも公共交通機関の保護・育成、充実ばかりを定めているものではありません。むしろ、地域の実情によっては公共交通機関が「適切な役割分担」から外される可能性を否定していないのです。高速道路網など、自家用車などの利用を前提とした交通網の整備が加速される可能性もあります。

 もう一つだけ記しておくと、交通政策基本法には地方公共団体の施策に関する規定が第32条にのみ置かれています。政権交代以後、地方分権がどこかへ消え去ったかのような印象を受けているのですが、それを象徴するような規定でもあります。交通は一市町村、一都道府県に留まらない部分を多く持つため、施策を講ずるにも難しいのですが、或る意味で地方公共団体の気概なり意向なりがわかる分野でしょう。

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