夕方に時事通信社のサイトを見たら、18時17分付で「三江線、18年4月廃止=国交省に届け出-JR西」(http://www.jiji.com/jc/article?k=2016093000792&g=eco)という記事が掲載されていました。
このブログでも三江線の話題を何度か取り上げていますが、同線の2014年度における輸送密度が1日50人程度で、JR西日本発足時(1987年)の9分の1となっているのでは、どうしようもないというところでしょうか。岩泉線が廃止されてから、JR各社の路線で輸送密度が最も低い路線であり、これでは鉄道の特性を生かせないと評価されるところでしょう。108.1キロメートルという長大な路線で、1980年代の特定地方交通線では天北線、名寄本線、羽幌線、標津線、池北線(この路線だけは第三セクター鉄道に転換。但し、既に廃止)と言ったところを思い起こさせますが、いずれも北海道の路線であり、その頃には北海道以外で100キロメートルを超える路線が廃止されていません。本州において、100キロメートルを超える鉄道路線が廃止されるのは、三江線が初のケースとなります。
これまで、JR西日本は沿線自治体、広島県および島根県と協議を重ねていたようですが、結局、2018年4月1日に廃止することを国土交通省に届け出ました。今後は代替交通の問題に移ることとなります。
ただ、私自身も疑問に思っていますし、地元でも同様ではないかと考えらえることがあります。三江線は、開業以来、自然災害のために何度か不通や全線運休になっており、その度に復旧されてきました。「三江線は廃止されるか」でも記しましたが、2013年8月24日の大雨による全線運休からおよそ11か月ぶりに、つまり2014年7月に、10億円以上の費用をかけ、全線で運転を再開したのは何であったのでしょうか。2014年の輸送密度については、この運休期間を考慮に入れなければならず、それは2013年度についても同様ですので、2012年度の輸送密度などを念頭に置かなければならないでしょうが、2012年度から2015年度にかけて急激に業績が悪化したとは考えられません。2010年の10月から12月まで、社会実験としてバスを増便しましたが、その時でも1日平均の利用人員は226人しかいません。また、2014年度の営業収益が2300万円程度だったとのことですが、長期運休期間がなかった2012年度の営業収益も、おそらくは1億円を超えていないでしょう。2014年度より少々よかった程度ではないかと考えられます。
上記時事通信社記事では、廃止の理由としてJR西日本が説明したものが示されていますが、どれを見ても「何故、今更?」、「遅すぎた」などとしか思えません。記事を引用してみましょう。
「『拠点間を大量に輸送する』という鉄道の特性を発揮できない」
「通院、買物など市町内で完結する少量かつ多様な移動が実態であり、鉄道が地域のニーズに合致していない」
「三江線活性化協議会において、5カ年の取り組みにもかかわらず、利用者の減少に歯止めがかかっていない」
「自然災害リスクの高まりは当線区においても無関係でなく、バスにて代替可能な鉄道に対し、被災と復旧の繰り返しは社会経済的に合理的でない」
いずれも、三江線に固有の事情ではなく、全国の地方交通に共通する事柄であると言えますが、最後にあげられた自然災害リスクが、私に「何故、今更?」あるいは「遅すぎた」と思わせたのです。同線については「社会経済的に合理的でない」という「被災と復旧の繰り返し」が何度も行われてきました。雪を除けば、鉄道は災害に弱いということを鉄道会社自身が認めたことにもなります。
また、自然災害云々を言い出すならば、三江線に限らず、ほとんどの鉄道路線につながる話です(勿論、利用人員数、運営会社の資本力などとも関係します)。今後、自然災害の被害を受けた鉄道路線が、運休の後、復旧は「社会経済的に合理的でない」として廃止されることが多くなるでしょう。少なくとも、JR西日本はこの理屈を前面に出し、今後は「選択と集中」の方針を打ち出したと考えてよいでしょう。沿線自治体も覚悟を決めた方がよさそうです。つまり、赤字ローカル線については、やみくもに存続を訴えるのが無意味であるということです。夕張市のように「攻めの廃線」を主張することができる所は少ないかもしれませんが、赤字額を増幅させる存続を前提とするのではなく、廃線を前提とした「その後」を考え、備えておく必要がある、ということです。