ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

2003年5月31日、ととろの里

2020年08月19日 08時51分30秒 | 旅行記

 今から17年前のことになりますが、2003年5月31日、大分市に住んでいた私は、同県の南部、南海部郡宇目町まで車で走りました。2005年3月3日、佐伯市と南海部郡の各町村とが合併し、新しい佐伯市が誕生しました。宇目町も現在は佐伯市の一部です。

 それはともあれ、今回は宇目町を訪れた時の様子です。

 

 国際的に通用する、しかも一級品の日本文化とは何でしょうか。

 どうやら、漫画とアニメがあげられるようです。実のところ、私にとってはどちらもあまり得意ではない分野です。漫画といえば、新聞の4コマか、病院の待合室にある雑誌を手に取るくらいで、漫画週刊誌を買ったことはないのです。単行本なら何度か購入したことがありますが、あまり日本の漫画を読んでいません。1970年代、私の小学生時代には、鶴書房で刊行されていた日本語版ピーナツ・コミックス(スヌーピーやチャーリ・ブラウンなどが登場する漫画)を買いに、自転車で小杉へ行ったくらいです。それでも全部を買った訳ではありません。アニメも、よくテレビで見ていたのは小学生時代で、中学生になってからはあまり見なくなりました。しかも、小学生時代には東京12チャンネル(現在のテレビ登場)で夕方に放送されていた番組で外国発のアニメ(ピンク・パンサーやバーバ・パパなど)を少し見ていたくらいでしょうか。日本のアニメ番組を最初から最後まで見たこともほとんどないのです。

 2003年当時、オタクという言葉は英語にもなっており、ポケットモンスターをはじめ、日本の漫画やアニメは世界的にも高い芸術的な評価を受けていました。宮崎駿監督の映画「千と千尋の神隠し」がベルリン映画祭で金熊賞を受けたことなどからも、このことは理解できます。

 アニメといえば映画ということにもなるのでしょうが、私は、基本的に映画を好まないため、映画館にも滅多に足を運びません。何しろ、高校3年生の時に、今はない六本木シネ・ヴィヴァンで「或る女の不在証明」という映画を見て以来、一度も映画館に行っていません (それまででも、2回か3回しか行ったことがありません)。ヴィデオを借りたりすることもありませんし、映画のヴィデオやDVDも、やはり今はない六本木WAVEで「真夏の夜のジャズ」を買ったくらいです。テレビの映画番組もあまり見ません。

 このような私でも、宮崎駿監督の映画は、「天空の城ラピュタ」など、日本映画には珍しく(?)、音楽もよいと思っています。これは、「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」のテーマ曲が爆発的なヒットを記録したことから明らかです。ちなみに、私自身は「天空の城のラピュタ」のテーマ曲 「君をのせて」が好きで、一時期はよく歌っていました。歌手の井上あずみさんの声がよかったからかもしれませんが(児童合唱ヴァージョンはあまりよくありません)、歌詞がいいのです(J-POPには陳腐な歌詞が多いのでほとんど聴かないのです)。

 実は、大分県に、宮崎駿監督の映画にちなんだ、あるいは引っ掛けた名所が、南海部郡宇目町にあります。まずは写真を御覧いただきましょう。

 映画ではトトロになっていますが、バス停は「ととろ」です。しかし、本当に映画のトトロが登場しそうな里です。 そう言えば、「となりのトトロ」のテーマ曲も、井上あずみさんが歌っていました。撮影をしながら、最初の部分だけ思い出しました。しかし、ここに来るまで車の中で聴いていた音楽は、ととろの里のイメージとはかけ離れ、映画とも全く関係のない、マヌエル・ゲッティングのE2-E4でした。大分大学時代に知ってから現在に至るまで、何かといえば聴いている曲です。

 何年前のことか覚えていないのですが、大分県内の新聞やラジオで「ととろの里」が紹介され、話題になりました。しかし、私にはピンと来なかったのです。ととろと言えば、宮崎県延岡市に日豊本線の駅があります。土々呂と書きます。読み方は「ととろ」です。何度か通ったことがあります。ただ、私が通った時には、映画に引っ掛けたようなものはなく、里というようなイメージもわきにくい所でした。その意味では、宇目町のほうが相応しいでしょう。 なお、宇目町の場合、漢字で記すと轟です。

 国道326号線を走り、宇目町に入ってしばらくすると「ととろ入口」という交差点があります。ここから県道6号線(日之影宇目線)が分岐します。その県道に入ります。少し走ると日之影、木浦などの案内板がある交差点に出ます。そこで「ととろ」と書かれた方角へ向かうと、数分で到着します。狭いながらも木浦(傾山登山口)行きの大分バスが佐伯駅方面から走ってくる所です(但し、時刻表を見ると、佐伯駅方面は1日3往復しかなく、他の行き先のバスを入れても5往復くらいしかありません。 豊肥本線三重町駅のほうが近いと思うのですが、バスの便はありません)。

 御覧のように、映画に登場するキャラクターの絵がバス停にあります。これを見る限り、地元の住民、あるいは宇目町、あるいは大分バスが、観光目的のためにこのような仕掛けを作ったのではないかと思われることでしょう。しかし、実際はそうでないようで、少なくとも最初は、誰かわからないがこのような絵を描いたか何かをして、それが有名になったとのことです。最近では整備などをしているのでしょう。それにしても、極端に本数の少ない路線のバス停が有名になるとは……。

 ここまで書いておいて、という気もしますが、実は、私は「となりのトトロ」という映画を見たことがありません(テレビで放送されていたのを少しだけ見たかもしれませんが)。ただ、テーマ曲だけは何度か聴いたことがあります(「君をのせて」とはあまりにも違う曲調なので、最初の部分しか覚えていません)。このトトロはぬいぐるみにもなっていて、見る度に「あれはミミズクじゃないの?」と思っていたのですが、一体何なのでしょうか。

 「猫バスの停まる里」ということで、その猫バスの登場です。勿論、実際に走るバスは、こんな格好をしておらず、箱型のものです〔もっとも、先ごろ廃止された南部縦貫鉄道(青森県)のレールバスを猫バスに似ていると評価した人がいます。たしかに、この絵を見ると納得します〕。バスと言っても色々な大きさ、型がありますが、猫バスでは宇目の狭い道を走れないでしょう (逆に、猫バスだから走れるかもしれないのですが)。しかし、実際にこの地を通ると、猫バスが来るような錯覚に陥りそうになります。私自身が、ファンタジックな世界を好むからかもしれません(現実のスキャンダルなどには嫌悪感を催すことのほうが多いのです)。

 バス停の小さな待合室には、上の写真にあるように、小さな待合室の中に、字の名前の由来が貼られていました。 日照り続きで旱魃に見舞われそうになったところに竜巻が起こり、豪雨と嵐が後に続き、農村は救われた、という訳です。竜の存在はともあれ、実際にあったことを基にした話なのでしょう。

 ととろバス停のすぐ裏を流れる小川です。台風の強風域に入り、大雨が降ったために、川の水量が増えています。この周囲を歩いても、この川の流れと鳥のさえずり声だけが聞こえてきます。晴れている夏の日であると、懐かしさにあふれる、いい風景になるでしょう。

バス停から、国道326号線側に戻って撮影しました。岸などがコンクリートで固められているらしいのは残念ですが、それなりの雰囲気を漂わせています。

車を停めておいた場所から、奥の方向を撮影してみました。

 ここでもう一度、バス停の小屋に貼られているトトロと猫バスの絵を掲げておきます。別にわざとぼかした訳ではありません。デジタルカメラの望遠をきかせただけです(撮影技術の程度がわかりますね)。なお、奥にある自動車は、当時私が運転していた車です(どうでもいいことですが、5速マニュアルミッションです)。

 御覧のように、バス停の待合室は川の上にあります。 しかも、両岸に丸太か何かを渡し、その上に建てているのです。また、待合室と言っても、柵があって中に入れません。なお、ととろバス停の標柱は、道路の反対側に立てられていません。このように、道路の片側にだけバス停の標柱が立てられるのは、大分県ではよくあることで、大分市内でも、例えば大分大学正門バス停などがそうです。だからと言って、一方向しかバスが停まらない訳ではありません。

 ととろバス停の付近は、小さな集落になっています。 少し前までは、神奈川県でも見られた光景です。写真は、大分県南海部郡宇目町、少し走ると宮崎県の北川町、日之影町です(北川町は、現在、延岡市の一部となっています)。

 バス停から150mほど離れた所に、このようなオブジェが置かれています。川の対岸にあるのですが、渡ることはできません(この日だけだったのかもしれません)。誰が作ったのかはわかりませんが、ちょっとした風景になっています。

 アップで写してみたら、いまだにデジタルカメラの光学ズームに慣れていないためか、ぼやけた写真になりました。このトトロを見る度に「あれはミミズクじゃないの?」と思っていたのですが、一体何なのでしょうか。

 猫バスのある場所から、方角を変えて周囲を捉えてみました。軽自動車が走っている道路は、路線バスが通っているとは思えないほど道幅が狭いのですが立派な県道でして、傾山の登山口である木浦、そして宮崎県日之影町へ向かいます(但し、相当に長い道のりで、さらに道の条件が悪くなります)。また、三重町の稲積鍾乳洞に行くこともできます。

 今度は、猫バスのオブジェと反対側のほうです。御覧のような郵便ポストがあります。私が子供のころには見慣れたものでしたが、今、全国的には少なくなっています。おそらく、首都圏などでは見られないでしょう。大分県には意外に多く残っていて、別府駅西口などでも見られます。しかし、ここまできれいな赤色のポストは、ととろの里くらいでしょう。

 この辺りには郵便局も簡易郵便局もありませんし、店舗らしいものもありませんが、上の写真のように、葉書記載所があります。左側の緩い坂を登ると、ととろの里オリジナル葉書(?)を販売している民家があります。

 猫バスの大きなオブジェが置かれている場所の対岸に、このような風景があります。天満宮の絵馬かけ、あるいは地蔵尊にも似た様子です。何故か御賽銭も置かれています。御覧のように、大きなトトロと小さなトトロがたくさん並べられています。じっくりとは見ていないのですが、一つ一つのトトロに願い事が書かれていたりします。

 この日は私一人だけがおりましたが、天候の良い休日には、何人もの観光客が訪れるのでしょうか。小さなトトロは、何百も置かれています。また増えるのかもしれません。

 同じトトロでも、一つ一つの形が少しずつ違います。狸のように見えるものもありますし、ミミズクのようにも見えます。何とも不思議な光景ですが、気分が和らいでくるのも事実です。大袈裟な仕掛けなど何もありませんが、一つ一つに手作りのやさしさ、ぬくもりのようなものを感じます。色々な人が、色々な思いを込めて、ここにトトロを置いていったのでしょう。

 木浦方面に角度を変えると、またトトロがたくさんおります。奥に見える黒い自動車は、私の当時の愛車、日産ウイングロードXです。

 日本もたくさんの映画を送り出していますが、このように、自然発生的に(と表現しておきます)映画にちなんだ名所ができたというのも、ここくらいのものでしょう。俳優でも女優でもなく、監督でもない。アニメのキャラクターが、この名所を生み出したのです。しかも、ディズニーランドのようなテーマパークなどという大袈裟なものではないのです。そこにこそ、驚嘆の念を覚えます。

 今度は、ととろバス停の方向です。階段を下りていくと、川を渡って猫バスのオブジェに行けるのかもしれませんが、撮影日は雨、間近に猫バスを見ることができなかったのは残念です。

 先ほどの写真から少しだけ右に動くと、このようになっています。それにしても、映画にちなんでとは言え、このような場所、アイディアを考えつかれた方、そして、これを維持管理している地元の方々には、敬意を覚えます。

 最後に、もう一度、猫バスのオブジェに登場してもらいましょう。そして、こことお別れといたします。また、時間があったら、ととろの里に行きたいと思っています。しかし、果たして、また行くことができるのかどうか、今の時点ではわかりません。


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