非常によく出来たビデオを見た。
ドイツの戦後をアメリカの占領という視点で描いた26分のドキュメンタリー。ドイツ人の Jurij KofnerとRTが共同で作ったといっていいのかな、多分。
Soft Occupation. Investigating America’s influence on German politics
最初1946年に有名な「スターリン・ノート」があって、ソ連はドイツに中立国になってほしかった。もちろん東西分割なんて話はない。それをアデナウアーが拒否して、東西ドイツが別れる。このへんは
混乱を無視して進むドイツ流
で書いた成り行き。
この成り行きにある種の証言を与えているのが、ゴルバチョフ時代の外交関係のアーキテクトだったんじゃないかと言われているバレンチン・ファーリン。91歳の方なので、スターリンが生きている時代からのことを知っている人。
で、なぜそうなったのか。それはアメリカはドイツを失いたくなかったから、とビデオの中で誰かが言っていたが、続けて、中立国となったドイツはロシアに敵対する国にはならないだろうから、とも言っていた。重要な視点だと思う。
ドイツはロシアに盛大に攻めて行って負けたんだから、全体として戦争はこりごりと思っているところで中立化したら、ロシア敵視にはならなくなる、それは困る(by アングロ・シオニスト・アメリカ)、そうだそうだ by 一部ドイツ人、ということで、西ドイツをアメリカのコロニーにした、ってことですね。
以来、対ソの最前線として着々と軍備が増強され、西ドイツはNATOの基地の国となる。
次。東西ドイツ統一の時にも、ドイツにはチャンスがあった。ソ連が引き上げたのなら、NATOにも出ていけと言えばよかった。ところがそれをせず、それどころか、NATO東方拡大にドイツは関与して、最終的には、ユーゴスラビアを攻撃した。
つまり、アトランティック(大西洋)をまたいだ同盟なるものを模索する側は、ドイツに餌を放り込んだわけですね。餌としてユーゴ解体というドイツ人にとって、スラブ破壊として内心喜んでしまうことをやらせた、と。
そこから、アフガン、イラクという戦争へのドイツの協力が始まる。
しかし、ブッシュのイラク攻撃に際しては、シュレーダーはドイツ軍を使わせないと言い出す。それをフランスのシラクも同意し、さらにはロシアのプーチンも同調する。つまり、ここに、ドイツ、フランス、ロシアが並ぶという事態が発生。アトランティック同盟重視派は困る。
そこで出て来たのがメルケル。
メルケルは、アメリカに飛び、シュレーダーが言ったのはシュレーダーの個人の発言であって、ドイツの発言ではないとか言いだす。このへんはカナダの当時の与党自由党がイラク戦争反対を表明し、野党党首カナダのハーパーがまったく同じ態度を取ったなぁと思い出す。
そして、そこから、怒涛の金、金、金の作戦が始まったようだ。つまり、ジャーナリストや識者をなにくれとなくアトランティック同盟重視派が主催する会合に参加させて、金を撒く。
この様子は、ドイツの主要紙が完全に無視したにもかかわらずベストセラーとなった「買われたジャーナリスト」が詳しい。書いただけでなく、著者のウド・ウルフコテ氏は、あちこちでしゃべりまくっていたらしい様子が、上のビデオでもわかった。
で、亡くなるわけですね。56歳で。
買収ジャーナリズムの実態を告発したドイツ人ジャーナリスト亡くなる
というわけで、ドイツは、アメリカによるソフトな占領が続いているというのが現状。あいかわらずロシア攻めのための軍が配備され、訓練され、さらには、ドイツの諜報機関はアメリカの諜報機関のために働いている始末。
これが簡単に打破できるとは誰も思ってないんだろうが、でも、こうして並べてみると、一部ドイツ人は戦ってるよなぁと思う。
そして、これっていつまで続けられるなろうなぁとかも思う。
ある種のカギは、アメリカ合衆国のアメリカ人と、アングロ・シオニスト・アメリカ(あるいはドイツや日本の一部も含めた戦争を使って世界支配を画策するグループ)は異なるという理解かも。
個々のアメリカ人とか、アメリカが持ってる、メディアのヒステリーにもめげず考え方の自由さを否定しない態度を持った人が次から次から現れ、支持しようとする人たちがいるところとか、いろいろいいところはあるんですよ。これはユニバーサルに受け入れられる価値というべきでしょう。これは本当にそう思う。
が、それと、「アングロ・シオニスト・アメリカ」は別もの。この気持ち悪いほどの支配欲と、軍事で他人を圧殺することに対する無感覚ぶりは別のもの。
で、これまでは、それをメディアが隠していた。ここも今日気付かれるべき重要点だと思いますね。
リベラルです~、みたいな人たちが実は提灯持ちにされているわけですよ。リベラル派は、ミロシェビッチが悪いといえば、なんということとまなじり決して叫び、シリアでサリンがと言われりゃ提灯を持ち、みたいなことをしていた。
もちろん右は右で、軍がでるならなんでもいいみたいな人たちを中心に、同じように提灯を持つ。
まぁなんてか、気が付いた人から順番にこの仕組みはよろしくないと思うしかないような話。
ということは、と、つい今後のことを考えてしまう。いずれ、「ソフト占領」されている各国民それぞれが否定するような形になっていく可能性もなくはないかもなぁ、と漠然とそう思う。
仮に一時的に西側各国民が羊のように奴隷化されたとしても、目が覚める人は残り、対して、指導者層には金にしか興味のない奴らしかつかなくなる。どちらが利口で将来性があるかといえば前者。
しかも、アトランティック同盟推進派は、スパイがスパイが、ロシアがロシアが、あるいは中国が中国がと、各国で各国政府が各国民を取り締まる法令を作ってるわけでしょ。すべてが悪事隠しという動機でこんなことをやれば、その国の全体の知性が低下する。創造性は減退する。モチベーションは下がる。
こういう集団が興隆するわけもない。どうなるんでしょうね。わかりませんが、ソフト支配という名の米を中心とした「恐怖支配」も永遠ではないのかもな、という気はしてくる。
で、多少なりとも恐怖支配が緩むことがあるとすれば、ここまで屈せずに、いいや違う、それはそうじゃないと気持ちを確かにしていた数多くの人々の総力の上に成り立つというべきでしょう。あらためて、その代表的な一人として、ウド・ウルフコテ氏は記憶されるべき人だなと思った。
こちらじゃ、学校まで一律、疑問を持たない羊、文句を言わない提灯持ちの大量生産工場と化しております。保守と言われた大学でも、今じゃ無言の思想統制で、一律「リベラル」(註:括弧つき)色に染まっています。こうして一見「ポリティカリーコレクト」なエリート達が大量生産され、これらエリート達は社会の中で比較的高い報酬を得るため、それ以上疑うこともしません。
あるいは、疑っていても、「リベラル」でないと社会的に抹殺されるので、言論がアングラ化します。それが現状です。
いやぁ、ドイツの支配者層はヒトラーを据え付けた張本人ですから、最初っから成り行きは織り込み済なんだと思いますよ。エリートに国境はないでしょう。グループの方が優先的。
騙されたのはドイツ国民というだけ。