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兵の命、国民の生活

2019-08-18 13:35:14 | アジア情勢複雑怪奇

昨日のトウモロコシ畑の胴体着陸に関する日本語の報道とそれに対する日本人の反応を見ていて、やっぱり問題あるよなこの社会、との感想を持った。

もちろん、よかったよかった、パイロット大したもん、と多人数の人間を救った英雄的行為を素直に喜んでる人もいる。

が、トウモロコシ畑の持ち主が気の毒とか、トウモロコシ畑の持ち主は補償されるんだろうな、おい、みたいな偉そうなことを書いたりしている人たちが散見できる。この人たちは一体どんなリアリティを見ているんだろうか?

これって一体何だろう・・・と思うに、要するにこれは、兵の命より銃、兵の命より玉砕と決めたら玉砕、校長先生の命より天皇の写真、といったことを真面目にやっていた人たちの子孫はたくさんいるということなのじゃないか。


総員玉砕することが目的となってる狂ったシーンはこの本などで体験者が語っているわけだけど、これを南方の極限状態の1シーンと考えるのは間違っているのだろう。

総員玉砕せよ! (講談社文庫)
水木 しげる
講談社


そこで思い出すのはこの人ですよ。

■ 兵の命、国民の生活

思えば、稲田朋美ほど大日本帝国の国民に対する態度を明らかにした人はいなかったかもしれない。

 


国民の生活が大事なんて政治はですね、私は間違っていると思います、とは、

兵の命が大事なんていう運用は、我々は間違っていると思ってる

という大日本帝国の兵の運用態度の現代版でしょう。

兵の命が大事なんて考えたこともないからこそ、火力の援護もなく兵を突っ込ませてなんら恥じない運用をやり通したわけだし、玉砕するっていったのにそんなに生き残るってのはどういうことだと本気で言う、という狂気が成り立つ。

 

ということなので、稲田朋美というのは、辻、服部、牟田口、杉山、富永、田中etc.が今に生きて自己正当化にこれ務めているようなもの。

どの口で「英霊」などと言うのだと言わねばならない。

 

■ 血に飢えた稲田登場

で、稲田は今回も登場して靖国に参拝したそうだ。

 

稲田朋美は、自衛隊の人に死んでほしくてしかたがない人なのではないかという疑念を私は消し去れない。

死んだら、靖国に祭るのだとか言い出し、他方で、こんな装備も持たされず死んだ、これはみんな左翼のせいと騒ぐ、そこから憲法改正というのが、安倍政権の基礎設計だったんじゃないのかという疑いを私はずっと持っている。

2012年に西邊邁さんの番組に出てきた安倍ぽんは、意味不明なまでに、血を流す、血を流す覚悟を、と言い続けていた。ああこの人は、誰かを死なせようという腹なんだなと思ったものだった。

つまり、これらの人たちにとって、兵は、最初っから最後までモノ、道具にすぎない。
 
同様に、1945年9月2日に降伏したあの戦争において倒れた兵士たちは、これらの無責任極まる、自己保身以外の何物もない狂った宗旨に頭がやられた指導者層の犠牲者であったにすぎない。死んでいったのは誰かの息子、誰かの夫、誰かの兄、誰かの弟である人間であって、断じて「英霊」などではない、いや「英霊」にすべきではない。
 
 

■ 犠牲は悲しむもの

戦没者を英霊といって、英霊に感謝しろという風潮は怪しむべきという感情を持つ方は私だけでないわけで、今年もたくさんそういった書き込みをされている人を見た。

 

 

で、これに対して、そんなのおかしいというコメントがだーっとついている。こんな感じ。

典型的な自虐史観だな 米国GHQ洗脳から生涯脱出できないんだろうな 悔しみ悲しむべき事だ

まったくその通り。散華された英霊に「感謝しない」とか馬鹿馬鹿しい限り。人として使うべき正当な言葉を使えない。どのような事より故郷を思い、家族を思い、戦場で散華された英霊への永年の尊崇は、先んじてしなければならない。それが分からないのは頭がおかしい。

 

一読してわかるのは、要するに、この人たちは、なにか仕方がない戦争があって、それに対して立ち上がった人たちを英雄扱いして、英霊としているんだと思うわけですよ。

しかし、事実は、時間を追うごとに死ななくてもいい人を死なせた展開でしかない。そもそも、日中戦争で引き上げてたらあんなに人は死なないし、その前に、山東出兵あたりをしなければ、あるいはシベリア出兵で無茶をしたことを契機に考え直していれば、あんな展開にはならならない。

すなわち、1945年9月2日に日本の降伏で終わった戦争とは、日本の統治機構の判断の誤りによって、他国民に迷惑をかけ、自国民を無駄死にさせた戦争である。

と、このようにしっかりと言うべきだと私は思う。国策の誤りという語をしっかりと国民の合意にすべきだと思う。

そういうふうに合意を作って来なかったからこそ、適当な解釈を生まれる余地がある。

ちょっと考えればわかるが、一体誰が、ガダルカナルでろくな援護もなく「投入」された人々に「感謝」などできるというの?

ごめんなさいをいいつつ、もう二度とあなたたちが苦しんだ苦しみを誰かの息子にさせるようなまねはしませんと誓うのみでしょう。

そして、実にこれが現行憲法の前文の主意。

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたって自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。

 

この憲法ができるには様々な偶然もあったが、ともあれこれが現前し、その後岸の系統や鳩山の系統などが改憲を狙ってはみたものの、結果的に今に至るまで多くの一般人はまだこれを支持している。それはGHQの洗脳の賜物ではない。それは、一般人は事実大きな犠牲を払ってこの地位を獲得したからだ。

 

■ オマケ:靖国神社についての基本書

稲田がまた勝手に道義国家のへちまのと言ってますが、靖国神社を顕彰するような態度には重大な疑念がある。大日本帝国のカルト体制をささえた中心的な組織として敗戦と共に解体すべきだったと私は信じます。石橋湛山の態度が正しかったと思ってる(靖国:難きを忍んで敢て提言す by 石橋湛山

 

靖国神社については、前にもちょっと書いた。この本が様々な示唆を与えてくれた。そして、泣かされた。

靖国神社 (岩波新書)
大江 志乃夫
岩波書店

 

で、通して最後まで読んで、それまでとトーンの違う「おわりに」を読んで泣いてしまった。多分、このあとがきの部分はもっと知られるべきだろうと思う。そして、どうして靖国神社を国家のものにしたり、国家の祭祀にしたりすることをすべきではないのかのエッセンスはここに詰まっているとも思った。

一言でいえば、国家の「祭神」であるとは、死してなお個人を認めないということなのだということ。誰かの息子であり、夫であり兄であるよりも前に国家の民でなければならないメカニズムこそ1945年以前の体制だったということと言えるでしょう。貧困と隣り合わせの逃げ場のない宗教支配以上に絶望的な支配体制などあるだろうか?

大日本帝国 vs 1947日本

 

そしてこの話は現代まだ、この絶望的な支配体制を壊せずにいる。

「誰かの息子であり、夫であり兄であるよりも前に国家の民でなければならないメカニズム」を保持したいからこそ、自民党の憲法草案では、現行の「すべて国民は、個人として尊重される」ではなくて、「人として尊重される」が提案されているということだと思う。

稲田は大日本帝国の負の要素をすべて凝縮したような存在なのだなと改めてそう思う。

そして、一般人の側は、一度大日本帝国カルトに罹患したということはすべからく保菌者なのだと考えて、用心して再度発症しないようにしないと、今度発症したら命にかかわる、ぐらいに考えて生きていくのがいいと思う。

 



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5 コメント

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一億総特攻ってマジでした (ローシャン)
2019-08-18 20:44:06
昭和20年の8月15日は父が自爆しそこなった日です。牡丹江から南下するソ連の機甲師団を迎え撃つため鏡泊湖という火山湖の沿岸で豪を掘り二人一組で15センチ榴弾をかかえて戦車に飛びこもうとしていました。
父の友人で関東軍司令部の警備兵をしていた人は手りゅう弾2発(1発は自殺用)を持たされ、これも戦車に飛び込めと、また牡丹江中学でもリュックに爆雷を詰めて飛び込んでいった子供もいたと聞いています。

まさに当時、カルト信者が日本の指導者に居座っていたわけです。英霊とは戦争指導者の愚かさを隠すためのおまじないの言葉ですね。

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死ぬことが目的化してた (ブログ主)
2019-08-19 15:26:17
ローシャンさん、

コメントありがとうございました。

当時の話を見聞きするにつれ思うのは、目的をもって作戦を敢行するというより個々人が死ぬことを目的とするかのような状態がままみられ驚かされます。

おっしゃる通りカルト信者が号令をかけていたようなものだと思います。
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現在が当時の戦時下となんら変わるわけがない (海坊主)
2019-08-19 18:06:52
 少年犯罪データペースを主宰する菅賀江留郎氏の著書、『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』はシベリア出兵、そして中国侵略後の銃後の日本社会の世相を私たちに垣間見せてくれます。モーニングに掲載されている勝田文氏の新連載『風太郎不戦日記』にも少し記載かありますが、銃後の日本列島の都市部や農村部は戦地と遠く離れた別天地であって、指導者・財閥・企業家・資産家のみならず一般国民ですら自ら始めた戦争による好景気を植えた餓鬼のように貪って謳歌していた、というのが現実に近い捉え方なのでしょう。そして、自分たちの身代わりに送り出した若者達が死地から無事に生きて帰ってくると、そんな彼ら戦傷兵や復員兵の怨嗟(銃後の乱れに対する怒り)に怯懦したというのです。その命の代わりに戦地から富を持ち帰って欲しかったのではないか、と疑わせるほどです。敗戦後の軍人に向けられた裏返しの態度は、加害者が被害者面してやり過ごすためのバツの悪いトバッチリや逆ギレのようなものだったのでしょう。

 つまりこの侵略戦争は、日本列島全体が最初から「欲しがりません、勝つまでは」という戦時体制にあったわけでは全く無く、制空権と制海権を全て敵に明け渡して本土空襲を許してしまった始まった時期においても「自分たちには当たらない、当たった奴が運がなかっただけ」とばかりに隣人の死に目を瞑り生きていた、と疑わせる空気であったと私に思わせるのでした。その雰囲気が崩れたのが、本土絨毯爆撃が苛烈となって少しずつ配給が乏しくなり人心が荒み始めた敗戦直前の一年あまりではなかったかと私は思います。
 さらに、この米軍による大空襲は加害者たる自分たちを被害者にすり替えることに成功し敗戦を終戦と言い換えました。米軍に主権を譲り渡す代わりに、敗戦国ながら戦勝国倶楽部たる国際連合に(条件付き)復帰を果たして現在の国際地位が与えられたのでした。

 いまから70年以上前の戦時期ですらそうなのです。戦地に将来ある若者達を生贄に送り込んだ代わりに銃後の日本社会は繁栄を享受していたのです。ならば、朝鮮戦争での戦争景気を1930-40年代と同様に貪り謳歌し、自分たちの繁栄のみに注力してきたこの国は現在においても本質的に全く変わっていないと思うのです。だから、先祖返りを平気で受け入れる、靖国神社に祀られてしまった人々を現在の繁栄を与えてくれた英雄とみなす、JR東海の会長が曰ったように次の戦争を希求する、元敦賀市長の高木某氏のように子孫がどうなったって構わない、「我亡き後に洪水来たれ」なのです。

 実は、私はナチスドイツの銃後でも同様な空気が漂っていたと考えています。ドイツ国外より富を収奪しその富を自分たちの生存のために精一杯使ってきました。そのナチスの政策を国民達は受け入れました、敗戦までナチスとともに在りました。だから、表面上はナチスをタブー視していますが彼らドイツも最後の最後で捨て去ることはできません。なぜなら、彼らはナチスと共犯であり、自分達をナチスの圧政における被害者と見做すことで自ら免責してきたからです。

 悲しき道化師の名は日本人、ドイツ人。
 もちろん米英が相対的に立派であったとは、口が裂けても言いませんよ。あれもダメです。
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英雄がアジアでしてきたこと (セコイアの娘)
2019-08-20 04:32:21
「復員兵が家族に対してさえ戦場での体験を語りたがらないのは、自分も現地で家族にも言えないようなことをしてきたからだ」
復員兵の一人がテレビで語っているのを聞いて、ショックでした。
家族に言えないようなこと、その被害者は一体誰だったのでしょうか。
戦後のドイツが、ナチスに全ての責任をおしつけ、臭いものに蓋をしているのと同様のことが日本にも言えないでしょうか。
加害者が忘れても被害者の記憶は消せません。そこをしっかり見据えないと、健全な関係は築けません。日本はアジアの一員です。

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アメリカは現在進行中 (ブログ主)
2019-08-20 13:53:22
セコイアの娘さん、

おっしゃる通り、日本の過去の話も十分問題なんですが、家族に言えないことをやり続けているアメリカの兵隊の問題は現在進行形なので、こっちをまず問題にした方が全世界にとって有意義だろうとは思いますね。

アメリカの現在は、関東軍を抱えて以降の日本と実によく似てる。軍と治安組織が大きく、妙に小利口になって、かつ、財閥(オリガーキ)と結託することによってここに殺人利益共同体が出来て、止められなくなってる。

この様を見ていると、日本は一体どこでどう止められたのだろうかと結構興味深いです。ファシズムってスゴイ。
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