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バルバロッサ作戦 v2 の行方

2014-06-04 09:09:12 | 欧州情勢複雑怪奇

ついに、サウスストリーム・パイプラインが本格的に座礁しそう。

サウスストリーム・パイプラインとは、ロシアが供給者となって、黒海を通してブルガリアで上陸、その後セルビア、ハンガリーを通り、スロベニア、オーストリアまで行くパイプライン。

ここで書いたやつ。

ロシア:エネルギーから見たウクライナ問題/石油天然ガス・金属鉱物資源機構

サウスストリームの着工を巡っては、もともと揉めていたものではあるけど昨年ほぼこれしかないとなっていたものが、過去数週間にEUが本格的に乗り込んできて、ブルガリアに圧力をかけて、ロシアが反発して、ギリシャやトルコが口を出し、EUが絶対譲らないと頑張り、ロシアGazpromは何がなんでも着工すると応酬、を繰り返したけどついにブルガリアが折れるような気がする・・・。

EU demands that Bulgaria suspend South Stream works
http://en.itar-tass.com/economy/734453

圧力をかけて、というのをもちろんEU側は不当だというんだと思うけど、でも、上の石油天然ガス・金属鉱物資源機構さんという専門家集団の記事を辿るとこのプロジェクトは半年前にはもうこのパイプラインしかないんじゃないの、ということで決着していたもののように読める。で、今回のウクライナ危機を巡って再燃させて止めたんだから圧力といっていいんじゃないかと思う。

法の解釈問題なので続行させたいならそうするけど、させたくないから第3エネルギーパッケージに違反しているという立場で突っぱねている、と。

でもって、ブルガリア議会は、野党がEU側にたって与党を攻撃。政府与党が攻撃にさらされ、今年に入ってから4回目の不信任決議を生き延びている模様。

なんとなく見当がつくよね、これは。野党側にEU&USAがついて盛り立てているんだろうな、と。ちょうどいいことに与党が社会主義政党だそうなので、きっとロシアとの癒着がどうしたこうしたとかいうスキャンダルがメディアを使って流されてるんでしょうし、実際それもあるでしょう(笑)。ただ、じゃあEU&USAに裏がないかといえばそんなわけもないのが世の中。

しかし、このパイプラインは、出資国や通過国はずっと賛成なわけで、反対しているのはEUとその背後のUSAだけ、という状況。

なので、この決着が一時的なものなのか、それとも完全凍結でまたまた新しいプロジェクトを策定しようとするのか、今後に注目。

■ ドイツの野望

そんな黒海沿岸のプロジェクトなんか小さいじゃん、と思う人もいると思うけど、私としては、このプロジェクトが完成するとより神聖同盟的になり、欧州は安定するという考えに傾いているので俄然注目している。

で、この観点から見た時、本当の主役はドイツなんじゃなかろうか。つまり、EUって、ぶっちゃけドイツ第四帝国なわけだから、ドイツがゴーサインを出せばこんなの決まりでしょ? そもそも参加者全員がこれでいいといっているプロジェクトなんだし。

それをドイツが押せないのか押さないのか、ここが見どころじゃないかと思うのよね。

ドイツは自分はノードストリームをロシアとの間で通して安定した供給を確保しているわけ。この意味は、ウクライナで悶着が起こることを想定していたということでしょう。



で、今回サウスストリームが開通したら、ウクライナで揉めても南側諸国の被害はかなり低減されることになる。
(クリックで拡大)

しかし、これを通さないとしたら・・・。この意味は何だろう?

私はやっぱり、歴史的なドイツの野望を見たいなぁここは。つまり、バルカン半島をロシア側にフレンドリーにしたくない、ということ。ブルガリアは既にというか常にというか、反露じゃないし人の方が多いし、セルビアはリトル・ロシアと呼ばれるぐらいでロシアの復活を喜んでいる方だし。

その上で、ドイツこそ黒海からカスピ海へと向い、トルコやイランと組んで発展する権利がある! みたいな、まぁその率直な東方拡大思想ですね、これがどこかにあるんじゃないのか、と。ルーマニアに手を入れているのも表面はアメリカだけど、ドイツもあるんじゃないのかなぁと思って怪しんでる。ルーマニアはドイツ系、スラブ系混在地。

■ バルバロッサ作戦

いやいや、しみじみ、ウクライナ侵入といい、ドイツはヒトラー路線まっしぐらっしょ、これ。

よくよく考えれば、バルト三国を抑えて最近はそこにNATO軍の兵を置いて訓練をやっているわけだし、既にバルト海には手がかかってる、と考えることもできる。ポーランドはとっくに接収済(笑)。

バルバロッサ作戦とは、第二次世界大戦中の1941年6月22日に開始されたナチス・ドイツによるソビエト連邦奇襲攻撃作戦の名称。



今回の「バルバロッサ作戦 v2」は、中央軍集団でモスクワを狙うのをやめて、北方と南方からロシアを攻める方針にしたということでしょうか。南方軍にはルーマニアも引き連れているし。話が合いすぎて怖い。

今回はそれをアメリカが全面支援してるので一見すると最強の布陣のような気もする。今回のアメリカはいろんな意味でナチだったと(笑)。ウクライナ・ナチス・アメリカの隠しておきたい関係

しかし、どうもそれほど優位に進んでいるようにも見えない。なにかぐらついている。それは、西部戦線に支援がないからではなかろうか? ドイツの必勝パターンは西部を抑えて東部に行く、なのだが今回は西部で反第四帝国を騒ぐ一団が登場している。

また、抑えにかかっている南部方面ではロシア軍の執拗な反抗に阻まれ膠着状態。このへんは前回通り。

で、その南では、サウスストリームなどという、供給者のロシアだけでなく、ガスの需要者側から見て経済合理性的で通過国、仕向地、出資国がみんなして賛成しているプロジェクトを粉砕しようとしているのだが、この作戦の首尾はいかに? 無理してEUの圧力で妨害すると、西側のフランス、イギリスからの反第四帝国ののろしだけでなく、バルカン方面からも崩れる可能性が高まるのではあるまいか。

今回、オーストリアがサウスストリームに最終的に乗ってきたという点を重視しないで突っ走ると、オーストリア、ハンガリーあたりの政治的に比較的利口なところが、もうドイツのゲームには付き合えない的な考えに至る可能性もある。バルカンはこれに比べると政治的にはあまり進んでないからここだけだったら最小限の損壊でいけるかも。ギリシャに飛び火すると大変だけど。

欧州選挙では、注目をあびなかったけど、東欧諸国の投票率の低さはかなり深刻だった。このあたりの評価もいずれ問題になるだろう。ポーランド23%、スロヴァキア13%って、かなり困惑でしょうこれは。

最終的にドイツがロシアと反目するなら戦いになるだけだど、下手に動いてぐじゃぐじゃしてると露仏同盟が来るという線もあるんじゃないのかな・・・(いや、同盟はもう流行らないからしないだろうけど)。しかしそれは大崩れへの第一歩なんじゃないのかなぁ。

そういうわけで、現在岐路に立たされているのは、ロシアというより実は第四帝国ドイツなんじゃないかとも見える。それはつまり、1814年を選ぶか、ぐじゃぐじゃになるのを選ぶのか・・・つまり、EUの大変革か大崩壊が掛かってますよ、ということになるんだろうね。

思えば、4月のはじめに日経ビジネスに載っていたエマニュエル・トッドのインタビューが非常に意味深だった。フランスから見た場合という視点だが、とにかくこう見えている、と。

トッド:ウクライナで今起きている事態は極めて象徴的だ。ウクライナでの出来事は誤解されている。これはロシアと西欧諸国の問題であると考えられているが、果たしてそうだろうか。みんな、こう考えている。「ロシアがクリミアを侵略した。当然、米国は行動を起こすはずだ。米国は面目を失うわけにはいかないから、ウクライナ政府の後ろ盾になる」。

果たして、こうした見方は正しいのだろうか。旧ソ連圏解体後の米国は、異なる資本主義にも非寛容だった。しかし、今は寛容になっている。ロシアは異なったタイプの資本主義で、昔なら米国は介入しただろうが、今はそうならないはずだ。ウクライナ問題におけるオバマのアジェンダには、介入政策はない。

最近、反ロシアの動きがヨーロッパ内に生まれている。ドイツはロシアとの関係でいつも友好と対立の狭間で躊躇してきた。そして、両国の関係はつねに友好に始まり、対立で終わってきた。

今、ドイツとロシアには重大な対立があると考える。これがウクライナ問題に関する現在の地政学についての私の見解だ

(後退する中国、「大惨事」のヨーロッパ)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20140408/262573/?rt=nocnt


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