トランプ勝利の意味を、非常にネガティブに捉えている最大の国は多分ドイツと思っていたのだが、マジで、ZDFによれば82%のドイツ人はトランプ勝利を悪い、または非常に悪いと捉えているそうだ。
さらに、トランプの下ではドイツ・アメリカ関係は悪くなると考えている人が65%だそうだ。
要するに、ドイツはクリントン・ブッシュ家が率いた過去25年間のリベラル帝国主義の欧州総元締めだった、ってことでしょう。だから、この秩序が壊れたらそりゃ一番困る。
で、ドイツはNATO拡大問題においても、非常に大きなプレーヤーで、この人たちがもしもう少し責任感があったら、今頃こんなことになってないと思う。
そもそも、統一ドイツがあばれたらヤダなと思っていたのはソ連(ロシア)だけでなく、フランス、イギリスも同様だった。それでもOKになったのは、もって、NATOは東方に拡大させない、つまり強大な軍事ブロックを作って再びロシアと欧州の間で戦争を起こすことはない、という了解があったからでしょう。ジェイムズ・ベイカー米国務長官は、NATOは東方に拡大させないとソ連ゴルバチョフに言ったのは、現実には米ロの約束だとしても、問題になっているのはドイツだった。
しかし、結果においてドイツは、拡大したNATOをユーゴ解体のために使った。ドイツ南方の解体と支配はドイツ民族の願望だから、でしょう。
世界強国への道/フリッツ・フィッシャー
でまぁそれでもEUというカバーの下に適当に民主的で、豊かな団体になってりゃよかったんだけど、EUは、アンチ民主主義以外の何物でもない。各国の主権を奪って、上の方で誰が選んだんだかわからない人々が欧州委員会なる、あたかもみんなの委員会であるかのような名前と共に支配をしようという、まぁ寡頭支配構想。
前にも書いたけど、現在の政治的な意味は横におくとしても、ブリテンの人たちがこれを嫌うのは非常にわかる。そこでBrexitとなった。
EU離脱問題と日本の報道とこの先問題
ということで、またまたドイツは負けているって感じだすね。
ウクライナを奪い、ギリシャを銀行救済スキームの出汁に使いといった手ひどい政策の上に、バルバロッサ作戦をもう一度やるかのごとき状態になっていることを恥とも思わず、困惑するそぶりさえ見せられない(外相が一人で踏ん張ってるけど)点で、ドイツ周辺民のドイツへの信頼はゼロでしょう。ただ単純に、離れるわけにもいかず、金持ちは怖いから適当に付き合うけど、といったところ。
ハンガリーとスロバキアが、ドイツがどうも凶暴化している気がするので保険にモスクワを向くというのは理解できる。両方ともドイツ系じゃないから。でも、チェコでも、オーストリアでもメルケルよりプーチンの方が人気があるようになってきたことは、示唆としては十分にドイツにアゲインスト。でも、こういうことに気付かない、無視するのもドイツってところもあるわけで、今後どうなるのって感じ。
European voters ABANDON Merkel as embattled chancellor proves less popular than Putin
http://www.express.co.uk/news/world/704437/Vladimir-Putin-Angela-Merkel-Czech-Republic-Europe-Migrant-Crisis
■ 逃げ遅れ
とはいえ、これらすべてがドイツが悪いって話じゃないわけですよ。当たり前ですが。しかし、ブリッツはBrexitで、アメリカはトランプで、逃げたってことではないでしょうか。
前にも何度も書いたけど、トランプを勝たせて、悪いことはみんなヒラリーを中心とするサークルとして落とすことがアメリカにとって最も簡単だろう、ってことです。
今後どうなるかはともかく、ともあれシリア方面、クリントンのリビア回りの醜聞で行き詰まっていることは事実だし、オバマをマイノリティー代表にして偽の救い主にする戦法も、国内経済、オバマケアといずれもうまく行ってないからもう限界なんだから、ここで止めるって作戦的に悪くない。
で、あっという間に、イギリスとアメリカは、仕組みは腐っているものの国民は少なくとも半数は真理を追究し、ジャスティスを求め、民主的だ、ってな形になってるところが凄いですね。
それに対して、ドイツ&EUは、上の方が寡頭支配的に金融と大企業にくっつたままだし、NATOは危険な団体だし、ってんで、もう悪いことだらけ。
しかも、さらに状況が悪いのは、全体的にドイツを筆頭に上から押さえつけるモデルが優勢だったところに、ロシア叩きというメディアが嘘八百をがなり立てる必要性が来てしまったために、嘘、嘘、嘘をつき続けるしかない状態。
そして、ドイツが、大連立を組んでいるので事実上野党がない状態であるのを筆頭に、どの国もしっかりした野党がない! つまり、上手に体制を変える方法がない!
思うに、野党になり得る勢力を残すというのは、実のところ、健全とか理想的というだけでなく、体制が行き詰まった時にとりあえず一息つける、体制を立て直すためのよすがとなれるという意味で実にプラクティカルなことなんだと思う。
政権交代って、潜在力としては合法的な革命ですから、これを恒常的に何度もやってれば、こういう知恵もつくんだと思う。
「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告 (文春新書) | |
エマニュエル・ドット 堀 茂樹 | |
文藝春秋 |
帝国以後 〔アメリカ・システムの崩壊〕 | |
エマニュエル・ドット 石崎 晴己 | |
藤原書店 |
謝罪というのが何を意味するかはそれぞれ個人の問題だと思いますが、国家としてのドイツは、一応ソ連(その後継国としてのロシア)に、政治的な場面での義理は立ててるんですよ。
このへんが参考になれば。
法事は大事なんです
http://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/75c03291a46abe3a9c469e6b5db26493
だから、ドイツは両建てしてると私は思ってます。