トランプ当選に我慢がならないアメリカ人が暴れているらしいけど、とりあえずマジで当選したトランプ。
それに対して日本の中はわやわやみたいだ。で、識者という人たちのコメントをいろいろ読んだけど、外交方針は不明だ、みたいなところが一致しているように思った。
トランプ氏の外交・安全保障政策に国際社会注目[NHK]
11月9日 18時27分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161109/k10010762451000.html?
utm_int=news-international_contents_list-items_005
しかしそうでしょうか?
個別具体的にどうするかは不明なんですよ。しかし、根本的に現状から大きく変わろうとしていることは簡単に見て取れる。そして、投票者たちはそれを支持していたと言っていい。
トランプは勝利スピーチでこう言っている。(スピーチのスクリプト)
I want to tell the world community that while we will always put America's interests first, we will deal fairly with everyone, with everyone. All people and all other nations. We will seek common ground, not hostility; partnership, not conflict.
あえて直訳っぽく言うとこんな感じ。
私は国際社会に言いたい。私たちはアメリカの利益を常に第一にする一方、私たちは、誰とでも、すべての人とフェアに取引をするでしょう。あらゆる人々、あらゆる国々と。私たちは、敵対ではなく共通の土台(妥協点、一致点)、紛争ではなく協力関係を求めるでしょう。
これは選挙期間中一貫してる。
4月の終わりにトランプが自分の外交方針はこうだ、とまとめてスピーチしてました。これこれ。このスピーチは実に重要でした。冒頭の現状認識の部分も大事。
Make America Great AGAIN
で、この記事の中で私はこんなことを書いている。
全体に通底している主張は、一極支配なんて妄想は止めだ! じゃないかろうかと思いましたね、私は。
なんでそこが重要かというと、
アメリカはアメリカ第一で行く、というのは、トランプ氏が示すこのプラットフォームで読めば、他国は他国であるなわけですね。
同じ「アメリカ第一」をクリントンとかオバマが言うと、アメリカ以外みんな奴隷とでもいうべきアメリカ例外主義になっちゃう。
だから、トランプが採用しているプラットフォームは一極支配型ではないと気付くことがまず重要でしょう。
今でもこの読みは正しかったと思いますです。
トランプは、俺は俺だ(俺は強いのだとしても)、だから他者と上手くやっていくつもりだ、と言ってるわけでしょう。 (対等の他者存在)
これは、俺は他のすべての上に立つ、自分だけは例外だというクリントン他のアメリカ一極支配主義者たちととても違う点でしょう。 (対等の他者非存在)
別の言い方をするなら、表では各国がというが、後ろではすべて仕切らないと気がすまないというステルス帝国主義(表象としてはリベラル帝国主義)を終了したいと言っているとも言えるでしょうし、現状でいうなら、にわかに作られた擬似冷戦構造を否定していると言えるでしょう。
さらに別の言い方をすれば、ものの考え方としてレーガンあたりに戻した、ということかもしれないですね。
あと、トランプの言明に最も近いことを言っているのはロシアのプーチン大統領ですね。各国は対等にお互いの問題点を理解しあうことが大事だと言い続けているのはプーチン。
この様子を敷衍すれば、世界の大国2つの首領が同じ方向を向いていれば、それは現実問題として人類は核戦争から一歩遠のいたという意味でもありますよ。
さらに、個人的に拘ってますが、all men are created equalの国アメリカと、私たちは皆神のひとり子なのですを守り通していた地(正教の保護者ということ)ロシアの首領が歩み寄っているとも言えますね。
■ 具体的に何が問題になるのか
で、このステルス帝国主義の終焉または改変に伴い何が問題になるのかといえば、金融の再編と、NATOの処遇じゃないですかね。
前者はまぁSDRで一息ついたにしても、まだ今後どうなるのかこれこそ不透明。
NATOの方は、前から書いてますが、ここがもう白昼堂々の強盗集団になっている状況をなんとかしないと、でしょう。
古ぼけて汚ならしい、でも消えない何か:NATO
巨大な軍事同盟を作ったはいいけど、軍事同盟があるということは敵国が必要なわけで、その敵国をロシアにして、それで一体どうするんだよ、なんですよね。
多分、最初にこのNATO拡大政策を始めた90年代のクリントン夫の政権時代には、ロシアは弱ってますから、最終的にロシアを自分たちのものにできる、という読みだったんでしょうね。
つまり、NATO拡大政策というのは、最初っから侵略軍構想だってことです。考えてみれば、軍事の前線が徐々に東方に拡大していったんだから、侵略軍が前進してたってこと。
しかし、これに気付いたロシアが体制を立て直しはじめた。このきっかけが、一般にセルビア空爆事件だと言われており、ここからプーチン擁立作戦が始まった、と。
ということは、並べて考えてみれば、過去17年ぐらいずっと何をやっているのかというと、NATOとロシアは戦争をしているも同然だったということ。
それに対して、アメリカの側でも危機感を持った人たちがいた。まとめはこのへん。
ウクライナ動乱:NATO東方拡大問題(1)
http://fanblogs.jp/dtj3/category_2/
つまり、トランプ当選の意味は、世界征服戦争を続けたいエスタブリッシュメント層に対して、アメリカ一般国民の少なくとも半数はノーだと言った、ってことでしょう。
■ 承服できない属国群
で、問題はアメリカ国民というより、実はアメリカの腰巾着で安定していたと錯覚している属国群の方なんじゃないですかね。
中国やロシアと貿易して、特に前者との間では大きな利益をあげたりしているのに、それでも、彼らを敵視する姿勢を取りたがる。
「価値観外交」なる外交方針は、「あっち」と「こっち」を分けるために仕掛けられているのに、何かそこに本当に意味があるかのような幻想を持つ属国群。
価値観外交体制を支える重要な国はサウジアラビアだったり、イスラエルなわけだけど、私たちは一体どんな一致点があるんだよ、と言いたい。しかしそこは見ない。詳細に考えるとおかしい設計だから、って感じですね。
どうなることやら。
とはいえ、アメリカ人の方はだいぶ覚悟ができてきたって感じじゃなかろうか。この間、ロシアのRTがアメリカのオールタナティブメディアみたいになっている状況を見ても、この2国間の一般人には通底するものがあるし、交流も結構深い。
ロシアとは敵じゃなくて友達になるべき、と言う人がほんとに多くなったと思う。
これはイギリス人とかフランス人にも結構いますからね。この人たちは、私たちは大きな戦争ではいつもロシアと一緒よ!とか簡単に言う。だったら同盟者を大事にしろよ、なんだけどすぐ裏切るのが西側。
危機をロシアに収拾させて、すぐに裏切ってきたのが西側の近代の歴史でもあるわけですよ。欧州に関していえばアメリカ覇権とはロシア人の死人の山の上に築かれたと言える。
ヨーロッパ1000年のロシア恐怖症
■ オマケ
プーチンのトランプに対する「おめでとう」のスピーチ。駐ロシアの大使信任状奉呈式でのスピーチであるため、ものすごくきらびやかなところでスピーチしてる。
かつてないほど低調になったロシアとアメリカの関係を立て直すのは簡単ではないが、両国は平等で相互に尊重しあい、相手の立場を本当に考慮するという原則に基づき建設的な対話を確立していけるものと信じている
英語になったこのスピーチをあっという間に100万人以上の人が見てる。
Putin reacts to Trump victory as he speaks at ceremony to welcome new ambassadors (Streamed Live)
オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史 1: 2つの世界大戦と原爆投下 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) | |
大田 直子,鍛原 多惠子,梶山 あゆみ,高橋 璃子,吉田 三知世 | |
早川書房 |
オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史2 ケネディと世界存亡の危機 | |
オリバー ストーン,ピーター カズニック,熊谷 玲美,小坂 恵理,関根 光宏,田沢 恭子,桃井 緑美子 | |
早川書房 |
それは問題点を整理して妥協することだ、
しかしそのためにはいくつかの大国はその他の紛争当事者よりも強くあるべきだ、ってのがアメリカ&ロシアのスタンダードな回答じゃないですかね。