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国連総会70: プーチンのスピーチ

2015-09-29 14:58:16 | 欧州情勢複雑怪奇

国連総会の演説がこれほど待たれたことはそうはないだろうなぁと改めて思った。前日CBSでプーチンのインタビューを流したアメリカはもちろん、反ロシアでなる英グループのテレグラフもしっかり記事上でライブ中継してて、結構面白かった。

いろんなバージョンがあるけど、これはロシアRTによるプーチンの国連演説。

'Do you realise what you've done?' Putin addresses UNGA 2015 (FULL SPEECH)


国連設立の経緯からはじまって、シリア問題に触れ、イラク、リビア、シリアと続いた混乱を丁寧に説明し、その過程で、「穏健な」民兵を探し求めて支援しようという西側の取り組みを批判。

事実、イスラム国は何もないところから突然現れたのではありません。それは最初好ましくない世俗体制に対する武器として開発されたのです。シリアの一部とイラクに対する支配圏を確立したイスラム国は現在他の地域に攻撃的に拡大している。イスラム国はムスリム世界に支配圏を、それ以上を求めています。

In fact, the Islamic State itself did not come out of nowhere. It was initially developed as a weapon against undesirable secular regimes. Having established control over parts of Syria and Iraq, Islamic State now aggressively expands into other regions. It seeks dominance in the Muslim world and beyond. Their plans go further.

この最初の一行こそ西側は聞きたくないよね。ムジャヒディーンの変奏じゃん、という話なので。

そういうわけで、このイスラム国をふらふらと支援してみたり攻撃してみたりという話を終わりにしようというのがロシア大統領の趣旨なのは今更言うまでもない。考えてみれば2年前の秋にもこんなことがあった、と思い出す人も多いでしょう。

もう一つ、興味深い言い回しだったのはここ。

ある意味、日本のNHKに対するお答えみたいで笑ってしまった部分もあった。大本営発表:ロシアは存在感を高めようとしている(笑)、の問題じゃないとプーチンが正面から語っている部分。そして、ここが実は肝でもあるでしょう。

つまり、こうやって取り組んでいるロシアの行動について、それをロシアの増大する野心の故なのだと解説する向きがあるが、これは ロシアの ambition(野望、野心)の話ではなく、私たちは地球上でこのような状況を許すことはできないという認識の問題である、と来て次のようにいう。

私たちが実際提案しているのは、野心ではなく、共通の価値、共通の利益に導かれたものです。私たちは、国際法に準拠しつつ、私たち全員が直面している問題に共同で対処し、テロリズムに対する真に幅広い国際的な協調を作り上げる必要があるのです。反ヒトラーで連携したのと同様、こうした協調は、邪悪さと人に対する憎悪の種を蒔いたナチのような人々に対し断固として立ち向かおうという意思のある様々な人々を結合することができるかもしれません。

Dear colleagues, I must note that such an honest and frank approach on Russia's part has been recently used as a pretext for accusing it of its growing ambitions — as if those who say that have no ambitions at all. However, it is not about Russia's ambitions, dear colleagues, but about the recognition of the fact that we can no longer tolerate the current state of affairs in the world.....(続きはここ。)

 

反ヒトラーで、というところをおそらく日本の報道機関などはまたまた、戦勝国であることを誇示した、みたいなことで括ろうとするだろうけど、それは置いておいて、ここで示唆されていることは実は広くて深いよな、と私は思う。

20世紀の戦争の本当の黒幕とかいうと陰謀論者みたいだけど、ヒトラーはドイツ単独の産物というよりはおそらく西側のある部分が作り上げたモンスターだろう、みたいな話や、ロシア革命は別にロシア人が望んだ革命ではなくむしろ外国資金によるクーデーターですといった話、そしてムジャヒディーン作戦、ビン・ラーディン、イラク戦争とつなげてみれば、教科書が教える以上のことが流れているであろうとは間違いない。

 

さらに、その上で、イスラム教の精神的指導者たちに向けて、テロリストにリクルートされようとしている若者が早まったことをしないよう指導を呼びかけ、若者たちが普通の生活に戻れるよう支援が必要である点にも言及。

と、その他にもいろいろあるけど、これは相当に重要なスピーチだと思う。しかしもちろん、そうであらばこそ、気にいらないと思う国々もあるでしょう。

どうなっていくか。

■ 感想

まったくの感想にすぎないけど、このスピーチを聞きながら思ったことを一つ書いておく。これは、少なからぬアメリカ人たちが、自分たちの大統領の口から聞きたい話だろうな、とそう思った。

だって、最近のアメリカといったら、

西に和解を望む者があれば、行って過去を暴き、

東に調和を求める者たちがあれば、行ってスキャンダルの種を蒔き、

北に飢えと秩序の不安を嘆くものがあれば、行って木っ端みじんに空爆し、

南にようやく危機を脱したと一息つくものがあれば、行って金融パニックを引き起こす、

みたいなことを本気でやってるし、嘆かわしいことにリーダーたちがそれを恥とも思わず、あたかも当然の権利であるかのようにより弱い国や人々に向かって武器として使おうとするんだもの。これが一極支配メンタリティーの行き着く先なんだろうとは思う。強い者は弱いものをつぶしても構わないという姿勢のこと。

すべてのアメリカ人がこんなにも酷い人々ではないんですよ。

 




コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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『ロシアは世界の保安官』 (ローレライ)
2015-09-30 07:56:48
『ロシアは世界の保安官』として活動するからこの指留まれの『プーチンドクトリン』、アメリカの行動はまるで『魔王』とは名指しにはしていない。
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保安官にはならない (ブログ主)
2015-09-30 14:47:16
いやいや保安官にはならないしなれないからこそ、みんなでがんばろー、でしょう。

ロシアはやっぱりロシア帝国と同様近隣のロシアまたはスラブ圏の保護者であることが第一で、他の文明圏の人もしっかり立派にがんばれー、立ちあがるまで必要なら助けるからさ、というバランスオブパワー志向なんだと思います。欧州はそれを知ってると思う。
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