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日本の放射性廃棄物、カナダで受け入れ構想があったらしい

2021-04-05 19:02:14 | 欧州情勢複雑怪奇
何か、唐突にこんな記事が出た。

日本の「核のごみ」、カナダで受け入れ構想 元首相が関与

日本の原子力発電所から出る放射性廃棄物「核のごみ」について、カナダ北東部で地中に埋める処分場を造り、日本から受け入れる構想の存在が明らかになった。カナダ公共放送CBCによると、構想にはクレティエン元首相が関与。日本の一部原子力産業の関係者に昨年2月ごろに打診があり、カナダを同4月に訪問して話し合う予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で見送りになったという。一方、地元政界は構想実現の可能性を否定している。

簡単にいえば、日本の放射性廃棄物をカナダ北東部の盾状台地という固い地面の場所にもってって埋めたらどうだろう、ってな話でしょうね。

内容の出元はカナダのNHKであるCBC。BBCがイギリス、ABCがオーストラリア、CBCがカナダで同じ方向性を維持してるのが英グループ。

問題の記事はこれ。

Former prime minister Jean Chrétien part of secretive project to store nuclear waste in Labrador, emails show

計画されてた会合は去年2020年4月で、米国政府の核アドバイザーの人、モントリオールのビジネス関係者、日本の原子力産業で影響力のある人物(複数形)が加わる予定だった模様。

The meeting was to bring together former U.S. government nuclear adviser Tim Frazier, Montreal business executive Albert Barbusci, as well as influential figures in Japan's nuclear and public relations industries. 

クレティエンとのメールのやり取りの相手として名前が出ているのは、日本の主要PRエージェンシーのHisafumi Kogaなる人と、

東電で主要なポストを占めているTakuya Hattoriなる人。

In a letter Chrétien wrote in summer 2019 to an executive at a major Japanese public relations agency, Hisafumi Koga, he argues in favour of storing other countries' nuclear waste in Canada and said he will help move the project forward. 

Takuya Hattori, who held senior positions at Tepco, the company involved in the Fukushima nuclear accident, was also to be part of the trip, according to the emails. 

twitter見たら、同じように探した人が既にいて、元共同通信社長の古賀尚文氏と元東京電力副社長で現在日本原子力産業協会理事長の服部拓也氏であろうとのこと。


で、現地の反応は、そりゃ当たり前に、いいわけはない。なんでそんなもん引き受けなあかんねんという話。さらには、クレティエンは自由党の人なので、リベラルときたら、環境が大事だとアメリカとのパイプライン構想をぶっつぶしてるくせして核廃棄物はOKなのかよ、と昨今の事情から腹を立てる人もみられる。

ちなみに、このクレティエン氏は首相の時にイラク戦争に反対したことで有名な人だけど、カナダの自由党(リベラル)というのは、本流に対する抵抗者といった位置づけではなく、むしろ、リベラル帝国主義本流みたいに見た方が実情があうと思う。まぁ、アメリカで、民主党の方が国際戦略的(あるいは一極支配型ともいうが)だというのと同様ってところ。


■ 欧州方面

で、この話を見た時、私としては、これはつまりこの話と深いところで同根ではなかろうか、など思った。

それは、去年6月に、URENCOという欧州でウラン濃縮やってる事業体が、劣化ウランをロシアに運び出したという話。

Nuclear shipment leaves Germany for Russia

BBCが取材してURENCOから確認を取ってる。
行き先は、ロシアのUral Electrochemical Combine in Novouralsk。

この記事の時点で既に2020年3000トン、運び出していた模様。

The group believes that nearly 3,000 tonnes of depleted uranium have already been shipped from Germany to Russia this year.

運び出し先のロシア企業は、ロシアというかソ連時代からの重要施設。おそらく、世界最大のウラン濃縮施設。


で、なんでこんなことをしているのかといえば、そりゃもう言うまでもなく、西側には有効な処分施設、体制がないからでしょう。

それに対してロシアは閉鎖型の核燃料サイクルに向かって研究と事業を進めてる。使用済み燃料は廃棄物ではなくて処理して次の原料として使用し、最終的に残った放射性物質だけ多分地層処分に行くが、その量と期間は圧倒的に短くなる。ナトリウム冷却の高速炉は動いていて2016年以来商業運転されてる(BN-800)。

でまぁ、日本の右派がどう寝言を言おうが核燃料サイクルにおいてロシアはリーダーなので、そっちが頑張るならそっちを頼りにした方が楽、つか、現状それしかないわな、となるグループが出てきても全く不思議じゃない。

そもそも、どうしてロシアのロスアトム(原子力担当事業者)が、今後の新規原発の7割近くを受注しているのかといえば、結局、長期的に関係していけると各国が判断しているからだと思う。中国、インド、イラン、トルコ、エジプト、バングラディッシュ etc.といったところが、このグループ。


で、そうは判断できないのがつまるところ「先進国」なる集団で、それならそれで自分たちで何とか先行きを考えるしかない。ロシアが嫌いなんだから仕方がない。

で、結局出てくるのが、他国の人の住んでないところに埋めればいいという話だということなんでしょう。


■ アメリカがおとなしい

で、上のURENCOの話は、BBCがぎゃーぎゃー騒いだけど、アメリカはそうでもないように思えた。

どうしてそうなるのかといえば、一つの理由は、そもそも、アメリカはURENCOとロシアから原発の燃料を買っているから、そこをターゲットにして怒ったり、吠えたりすると話したくないことを話さないとならないので触らないのではあるまいか?

去年の1月に、ついに日経にまでこんな記事が出てた。

ロシアの原子力が世界を席巻 米に燃料供給 日本は距離
2020年1月19日 2:00 [有料会員限定]
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54526900X10C20A1TJM000/

ロシアの原子力技術が世界を席巻し、日米欧を揺さぶっている。日本が建設を断念した次世代原子炉は実用化直前までこぎ着け、水面下では日本に技術協力を呼びかける。ウラン濃縮の分野では米国のウラン燃料の最大供給者だ。中国やインドの原発にも技術支援する。日本の停滞などを尻目にロシアが着々と地歩を固めている。


前に書いた、この話がついに日経さんが書くまでになったなぁとか思って私は喜んでいたのだが、コロナ騒ぎで書くのを忘れていた。

米国のウラン燃料事情は結構お寒い

ここらへんのまとめはこのへんで。
ロシア分割・弱体化を望んだ西側の賭け


あと、世界で唯一ロシアが持つ原子力砕氷船の話も当たり前だけど原子力の話。

さらには、最近語られている小型モジュールの原子炉(SMR)も、世界中にいくつも設計はあるけど、現実に工業技術として完成して運用しているのはロシアだけ。


結局のところ、50年代、60年代からず~っと地道に研究してきて、いろんなところで実用化しながら現在がある、というのがロシアの原子力産業の姿で、それに対していえば、西側は言うほど進んでなかった、あるいはどこかで躓いてた、みたいな感じなんでしょうね。

どうしてこうなったのか、怒らないから教えてほしいぐらいですよ、ほんと。あと、この分野でのフランスの停滞ぶりというのも知りたいところだ。


■ だから

ということで、どうしてカナダが出てきたりするのかといえば、英グループが日本を囲い込むために、カナダにでも埋めさせて、日本人に原発技術を研究させた方がいい、みたいに考えている人たちがいるってことなんじゃなかろうか?

中国があんなに原発開発してるんですよ、という記事は見るが、ロシアが、とはあまり言わないのは、中国に対する敵愾心をあおっている、という意味ではなかろうか? 

実際には、原発技術のリーダーはロシアで、中国はそこから技術支援を受けて成長していった側で別に今もまだそれを抜いているという局面ではないので、本当に原発の科学技術面を考えようと思うのなら、中国ではなくてロシアがどうなっているのかを知ろうとするのが筋。でもしないでしょ? これは書いている人たちが正直ではない、他に目的がある(煽りとか)ということなんだと思う。

■ オマケ

日揮、米原発建設に参加 次世代小型炉で日米連携

プラント大手の日揮ホールディングス(HD)は、安全性に配慮した次世代の原子力発電所プロジェクトに参加する。米新興企業が開発した小型原子炉を使い、2020年代末の商業運転を目指す。 

どこに建てるんだろう? 

いずれにしても、日米連携というけど現実に建てられる会社が欲しいので日本を狙ってるって感じじゃなかろうか。設計はアメ or イギリス、施工は日本みたいなスキームを考えてると思う。

■ オマケ 2

アイダホあたりに建てるようなことを言っている。

アメリカはすべての原発が古くなってるので、小型に置き換えるつもりなのだろうか? どのぐらい期間がかかるのか知りませんが。


                                                           


     
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2 コメント

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脱ロシア原発の人柱だったカナダ! (ローレライ)
2021-04-05 20:26:24
原発の脱ロシア運動の人柱にされかけたカナダと言う話!
返信する
Unknown ()
2021-04-06 16:15:24
技術というより負債を押し付けたいのではないかな。
東芝もそれでやられた(のか最初からそういう事だったのかは知らないが)んでしたっけ?
それに原子炉そのものが核のゴミですからね、日本を巻き込まないで欲しいよ。
返信する

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