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政治任命の全大使&NATO全権大使、トランプ氏就任までに離任へ

2017-01-10 13:55:08 | 欧州情勢複雑怪奇

トランプ就任までに何を混乱させたいのか知らないけど、アメリカ方面ではロシアの選挙介入が~という騒動がまだ続いている。でも、全体としてみればメディアが話を盛り上げているだけで、アメリカ人の方は一部の過激なオバマ・ヒラリー支持者以外は冷めているように思う。

そんな状況をよそに、トランプの政権移行チームが、政治任命の大使に対しトランプの大統領就任日までに現地を離れるよう指示したという話が出回っている。

政治任命の全大使、トランプ氏就任までに離任へ
http://www.cnn.co.jp/usa/35094699.html

(CNN) トランプ次期米大統領の政権移行チームは8日までに、オバマ政権下で政治任命されていた各国大使の全員に対しトランプ氏が就任する今月20日までに任地を離れるよう指示した。

複数の米国務省高官と米外交官が明らかにした。ただ、職業外交官の場合は対象外となっている。

と、なんとなくリベラル系メディアを中心に大きなニュースみたいに扱われているけど、実のところオバマも就任時、ブッシュ時代の政治任命の大使に対して同じようなことをしている。

そして、指示したのは8日ではなくて12月後半だったようなので、なんで急にこの話が騒ぎのネタになっているのかよくわからない。多分、トランプが、政治任命の大使の離任に例外を認めない、といったあたりで、傲慢なトランプという話を作りたかったのだろうか? ニューヨークタイムスの記事では、各国の大使たちが子どもの学校の区切りがつくまで離任しない、したくない、みたいなことをまるでワイドショーみたいな切り口で書いていたので、非人道的なトランプ路線の記事だったのかも。

ドイツDWもその線で、従来は各大使や各国の事情に応じて数か月の延長が認められていたのにそれもしないなんて、みたいなことを言っている。

じゃあ、クリスマス休暇を前にいきなり言いがかりで帰国させられたロシアの外交官35人、家族を含めて約100人の立場はどうなるんだよ、って話なんだが、そんなことは気にしないのが現在のリベラルメディアというところか。

要するに、トランプが就任の日を境に「一新」するという体制が気に入らない、少しでも影響力を削ぐために日々中傷って感じなんじゃなかろうか。

しかし、そもそも、そんなことよりも、政治任命のみならず外交官の質が悪すぎて、あまりにも情けないというのがアメリカ国民の偽らざる感想のような気もする。

近年ではウクライナ問題が起こった当時の欧州各国のアメリカ大使の言動のあまりのアマチュアぶりに、アメリカ国民の一部が唖然としていたことが懐かしい。ロシアの外務大臣、国連大使などがあまりもベテランで、有能でいかにも頼りになる、敵ながらあっぱれと思わせる人たちだったために余計に多くのアメ人が困惑していた。俺らってホントにスーパーパワー?みたいな。

 

■ 米のNATO全権大使も離任

しかし、このDWの記事には興味深いことも書いてあった。NATO全権大使ダグラス・ルート氏も退任するらしい。ルートは退役した陸軍中将で、ブッシュに指名されてアフガン、イラク戦争時代に非常に特別な地位まで作って戦争を指揮した人。このポジションは米メディアによってWar Czarなどとも呼ばれていた。戦争の親玉、戦争の専制君主みたいな意味でしょうね。その後、この人はオバマ政権でNATOの全権大使となっていた。

だから、CENTCOM(アメリカ中央軍、中東担当)、イラク・アフガン戦争、NATOと、怪しいところにすべて関わってるおじさんといっていいと思う。で、この人が引退する、ってことらしい。これこそ大ニュースじゃないかと思うんだが、こういうのはヘッドラインには出ないんですね。あはは。

その他、NATOに絡むようなポジション(例えばブリュッセル)に誰が来るのか現状よくわからないみたいだ。

で、思えば先月中旬、このルート氏の名前は、RT、スプートニク他の英語で読めるロシアメディアに出ていた。

‘No one in Russia plans to attack NATO’ – US envoy to alliance
https://www.rt.com/usa/370731-russia-attack-threat-nato/

米ABCが行ったインタビューの中で、ロシアはその西部国境でクリミアやウクライナと同じようにロシア語を話す人々を併合しようとするんでしょうか、と尋ねるインタビュアーに対して、ルートは、

現在のロシアでNATOを攻撃しようという意図を持ってる人がいるとは私は思わない

Lute  ABC broadcaster he does not “believe that anyone in Russia today intends to attack NATO.” He added, however, that NATO is responsible for “reassuring” its Eastern European allies in this regard.

と答えた、と。

要するに、バルト3国のことですね。バルト3国内には、ロシア語話者というかアイデンティティがロシアの人が多数いる。だから、そのロシア人たちをロシア連邦が使って、バルト3国を併合しに来るのだ~と煽っているのがNATOであり西側メディア。

で、戦争の親玉はこれを否定したというのでロシアメディアが書いたんだろうと思うし、今から考えるとそこには大きな「変化」が示唆されていたと読むべきなのかも。

 

しかし、その一方で、ルート氏はロシアはほんとに横紙やぶりで、欧州の安定を揺るがすふてー奴でなんたらかんたら、大統領選挙に介入してどうしたこうしたという路線は堅持してるので、本当は何を考えているのか不明といえば不明。

この様子は、NATO総長も同じ。言ってることは、NATOはロシアとの対決を望んでいないんだ云々なんだが、やってることといえば、ロシア国境付近で演習したり、オランダ、ドイツ、ポーランドあたりに戦車と兵隊を運び入れたりしてる。

オランダ、ドイツはロシア国境から遠いからまだいいとして、ポーランドには戦車、兵隊どころか攻撃能力の大幅増強を提供しちゃっているので、NATOはこれを制御できるんだろうかと過去の歴史を知る人たちはみんな訝しがっていたりもする。というか、怖がっているというべき事態。これが現状。

 

今日のNATO。ドイツの基地に戦車87両、兵4000人投入。いよぉ、現代版ナチス!とか声援を送ればいいんじゃないの。アメ人の軍のファンみたいな人たちから著しい不評を買ってるオバマ政権がさらに最後の不興を買うって感じになってるのも興味深い。

Hundreds of US Tanks Arrive in Germany for NATO Mission in Europe

 

■ 不安だらけのNATO

とはいえ、どれだけ戦車並べても、それで戦争が起こるわけでもない。挑発させなければいいし、暴走させなければいいし、小さな紛争が起こったら小さいうちに消せばいい、ということ。

で、しばしばそれができないのは、その紛争が偽旗作戦の一部であることが多いからでしょう。紛争と同時にメディアが走り出して煽って後戻りできない状態にして、紛争を大規模化する。このメカニズムさえ働かなければ、紛争は大規模化しない。

ということで、戦争産業の主要な装置であった「メディア」にとっては正念場ですね。この「メディア」は、世界中の約9割の媒体を支配している(by スプートニクの編集者)と考えられているらしいので、ここが各国で信頼を失っている様子が見える現状は、できるだけ大規模戦争をさせないことが良いことだと考える人にとってこれはまさしく慶事だと私は思う。

恐いのは個別まちまちの偽情報じゃない。怖いのは偽情報を一致して、集団で振りまいて、異論を排除するその恐怖政治でしょう。

もう一つ正念場を迎えているのは、ポーランドじゃないですかね。ユダヤ問題とも重なるわけだし、イギリスがEUを離れたことによってEU内で意味不明にいばりちらしていた日々が終わったとも言えるじゃなかろうか。

これは折からのEUのパイプラインの話でも同様。ロシア産エネルギーに対する依存度を低下させるのだとかいって騒ぎまくったはいいけど、結局ロシアとの近接性に勝てる産地はそうはないわけで、ドイツ、イタリア、フランスはノルドストリーム1の輸送量を増加して(現在は潜在的輸送量の半分ぐらいしか使ってない)、その上でノルドストリーム2を建設して、ロシア産ガスのハブをドイツをにして、すなわちウクライナ、ポーランドに落ちるガスの通過料を激減させる方向に進むだろうと思う。

この地図はパイプラインの地図だけど、でも地政学的な地図でもあるよなとあらためて思う。

 

結局、バルト3とポーランドは再度、再再度西側に遊ばれた、って感じがする今日この頃。

 


 


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1 コメント

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『爆弾の捨て場』 (ローレライ)
2017-01-11 05:43:30
ヨーロッパは『アメリカ依存外交』を進めすぎると『爆弾の捨て場』にされる可能性大なのは『朝鮮半島』と似ている。
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