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米、タリバンと撤兵プランの合意文書に署名

2020-03-01 17:46:07 | アジア情勢複雑怪奇

米政府とタリバンが、撤兵プランを記した合意文書に署名した。

米政府のアフガン担当公使Zalmay Khalilzadと、タリバンの上級リーダーMullah Abdul Ghani Baradarとの間で、カタールにて署名。

 Washington and the Taliban movement have signed a deal that lays out conditions for the withdrawal of US and NATO troops from Afghanistan.

The agreement was signed by US peace envoy for Afghanistan Zalmay Khalilzad and one of the Taliban's senior leaders, Mullah Abdul Ghani Baradar, in Qatar’s capital Doha on Saturday.

 

タリバンが条件を遵守した場合には、14カ月以内に米・NATO軍が完全に撤兵することになるというプランだと先週から出ていたが、その通りの内容であるらしい。

US and Taliban sign agreement on withdrawal of troops from Afghanistan 

https://www.rt.com/news/482016-afghanistan-us-taliban-troops-withdrawal/

条約全文を読んだわけではないけど、条件としては、アフガンという場を米国とその同盟者の安全保障に抗する国際テロリストグループまたは個人の活動の場にすることを防止する、といったことであるらしい。

The withdrawal process is conditional on the Taliban fulfilling its commitments under the deal. The peace agreement will include guarantees “to prevent the use of Afghan soil by any international terrorist groups or individuals [working] against the security of the United States and its allies.”

https://www.rt.com/news/482014-us-troops-withdrawal-afghanistan/

テロリストを集めないとか、米の傀儡政権であるアフガニスタン政権をいじめないとかいった感じを念頭に置いているんでしょう。

特にアフガンの傀儡政権は基盤が弱いわけだから、そこがとっても問題。アフガニスタンというのはソ連時代にはソ連の重石もあって固まってはいたものの、基本的にいくつかの大きな部族対立があるというのは、ずっと変わっていない。

そこからアメリカが抜けると傀儡政権が持たない、傀儡政権が持たないがアフガンの一般人の多数が支持するだれかが都合よく存在するならいいけど、そうでもないってのが難しい。

だから、内部の揉め事が起きた時にどうするのかというのも本当は考えておくべき事態ではあるでしょう。

イランのスレイマーニが殺されたのは、アフガニスタンに対するイランの一部勢力の影響力を削ぐという意味なのかな、と思ったりもしてる。実際、イラン系は良くも悪くも影響力が大きな一部ですから。

「afghanistan map」の画像検索結果

 

■ カブロフさん

結局のところ、現実的にはロシアとCSTO(ロシア周辺の集団安全保障機構)に目を光らせておいてくださいね from USA

ってな含みが大いにあると思う。まったく皮肉なことだが。

Zamir Kabulovさんという、ロシアの、というよりソ連の外交官だった人で現在もロシアの大統領特使としてこの地域の問題に関わっている人がこの調印式にゲストの1人として出ているというのはその含みかなと思った。

Russian Presidential Envoy To Be Observer At US-Taliban Deal Signing - Embassy

https://www.urdupoint.com/en/world/russian-presidential-envoy-to-be-observer-at-848231.html

 

「Zamir Kabulov」の画像検索結果

カブロフさんはソ連時代のウズベキスタンの生まれの人でそこから職業外交官になった人なので、この地域の人らしく、部族とか力と力が拮抗する話とかで極めて直截なことを言う一方で、民生を押し上げなかったら長持ちしないに決まってるだろうという点を指摘して、NATOのプランニングの馬鹿さ加減を指摘していた人でもある。

また、アメがアフガニスタンで軍事力を使うことの正統性は国連安保理での決議に由来しているんだから、撤退するなら国連に一回話を戻して、失敗なら失敗で報告するべきで、この先に進むならもう一度国連の付託を受けなければならない云々という主張をしてもいた。実にまったく正しい。

 

■ ナチ派を国際派とか言うな

いろいろ考えてみるに、モンゴルが強かった時代の後ロシア帝国が最終的にこの地域の支配権を得ていく過程というのは、単に短期的な軍事支配によるものではないわけですよ。交流しつつ人の生活を支えたりしてちゃんと支持を得ていくことで安定させてた。

そして大事なところは、ロシア帝国は別にウズベキスタンなどに完全同化プランを持って行ったわけではないところ。ソ連もそう。

つまり、雌雄を決するまでには力と力の勝負に重点はあるものの、共通のルール、合意を見つけて共存するプランの策定に秀でていたといったところでしょう。まぁ帝国って実はそうなんだけどね。そもそも帝国というのは諸民族の上に載るんだから、最初っから共存型を示唆している。

そういうことの上に、中でも難しいアフガニスタンが、ソ連の支援を受けてアフガニスタン王国、アフガニスタン共和国、アフガニスタン人民共和国として存在していたわけだけど、その難しさを理解しないヨーロッパ人たちがぶち壊して、勝手にゲームのネタにして現在があるといったところでしょう。

1979年に向けて、ソ連を倒すためにあたり中から近代化のムーブメントを取り去って、宗教勢力を付けていっていった、ブレジンスキーを使ったカーター政権は今後も禍々しい存在として呪われるべき。

もちろんそこまでの間に、70年代デタントという時代を作って、あちこちで工作していったキッシンジャーも同罪。

このへんの、実を言えばたいした知性のない、ヒューマニティにおいて劣ってる、ロックフェラーに拾ってもらったに過ぎない平凡な奴らをやたらに「国際派」だとか知性派だとか持ち上げる人たちは、単に、時流にのっかってるのに過ぎない。

(だが、現在のネオコン/ネオリベに攪乱されたthe Westの標準的知性からすると、この凡人たちはすさまじく知性があるように見える)

ここらへんの特殊権益者がいなくなったことは、人類にとって幸いだと言いたい。なんならGood News(福音)!とか言ってやろうか。実に皮肉だが。

 

■ 今後

今後はまったく不透明ではあるけど、パキスタンがもうテロごっこなんかやりたくないという方向に向いていることも含め、この40年越しの大乱闘時代は終わりを迎えていることは確かでしょう。

ボルカー:ペトロダラー→アフガン→ソ連崩壊→911→今ここ

直近の問題としては、カーター・ドクトリンの失敗、みたいな感じで、アメリカ人には是非反省していただきたい。

NATOの迷走&アフガニスタン

 

だがしかし、アフガニスタンを含めた中央アジアから湾岸地域の支配は、単にアメリカの50年間がやってるというだけでなく、19世紀にはイギリスがやったことの再挑戦だと思うので、the Westという挑発的で詐欺的な括りが存在する限り、うだうだするんでしょうが、次の世紀にもう1回できるかというと、できないようにユーラシアの民は奮闘すべきでしょうし、そうなるだろうと私は思ってる。

 

■ オマケ

ソ連の「アフガン侵攻」呼び込み作戦というのは、アメリカに住んでるアメリカこそ大事と思っている数多くの人間にとっては、まったく実に無駄、壮大なトンチキ、はた迷惑もはなはだしい自作自演物語だった。

だけど、この間書いた通り、みんな喜んじゃってた。ここも忘れちゃいかんね。

1982年において、アフガニスタンのムジャヒディーンは、レーガン大統領がスペースシャトルの打ち上げを捧げるほどに大事な大事な仲間だった。

自由のために戦うムジャヒディーンにこれを捧げますと、マジな顔でレーガンが語ってる動画。

Ronald Reagan dedicates the Space Shuttle Columbia to the Taliban

 


 


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3 コメント

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ブレジンスキーの見込み違い (ミール)
2020-03-01 22:32:24
Geopolitica に載っていた解説ですが,マッキンダー > スパイクマン > ブレジンスキーと続く英米の地政学的思考の系譜がかなりわかりやすく書かれています。
https://www.geopolitica.ru/en/1081-dreaming-of-an-empire.html
マッキンダーがロシアを支配することを考えていたのに対して,スパイクマンはロシアを封じ込めるだけで十分だとしました。マッキンダーがロシアの発展を恐れていたのに対してスパイクマンはロシアは大したことがないと思っていて,それがブレジンスキーに受け継がれたようです。スパイクマンの言う,ロシアを取り囲む rimland には中国も入っていて,ソ連解体までは思い通りに中国が動いてくれました。
 ブレジンスキーはもうこれで大丈夫と思って,次の段階として,rimland が結束しないように,そのために rimland の結節点である中東を支配することを唱え,それがその後のアメリカの中東政策とも合致しているのですが,彼の見通しを根本から覆したのがプーチンの登場と中露の結束でした。彼にとっては悪夢だったでしょう。ロシアを舐めすぎたのと,あまりにマッキンダー理論に凝り固まったのが原因でしょう。
 アフガニスタンでソ連をおびき寄せるためにムジャヒディーンに援助したことを 9.11 の後で自ら明らかにして批判された時,西側はイスラムに十分対抗できるとうそぶいていました。アメリカの中東政策(に限らずですが)の迷走はブレジンスキーが撒いた種で,こんな男に世界が振り回されたこの数十年は一体何だったのでしょう。
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まさしく狂人時代でした (ブログ主)
2020-03-01 23:37:07
ミールさん、

まとめ、ありがとうございます。ご案内のリンクも後で読んでみようと思います。

おっしゃる通り一体何だったのだろうかと開いた口が塞がらないです。

イスラム過激派っつったって、ナチュラルに出来たのではなくて金と麻薬、洗脳の結果なわけですから、ブレジンスキーらは狂人を作ってその家族と社会の将来を滅茶苦茶にした。戦争ですらないですね。狂人たちの妄想というべき何か。

William Engdahlが、それらのイスラム過激派を西側が作っていったことを調べた本のタイトルが、

The Lost Hegemon: Whom the gods would destroy

なんですが、これはもちろん、"Whom the gods would destroy they first make mad"という、いろんな人が歴史の中で言った言葉を想起させるわけです。

つまり、西側は狂って、そして壊れるのだという示唆です。最初驚きましたが、正常に道徳のある人間が知ればそうとしか言えないんだと思います。
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Unknown (ローレライ)
2020-03-02 09:14:34
アメリカ製のイスラムナチと和平したアメリカが自作自演ノ戦争。
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