ウクライナの問題は、米国、ロシア、EU、ウクライナの4者による話し合いがもたれ、とりえず方向性が示された。ウクライナ暫定政権が、連邦制とは言わなかったが、東部地域の自治権を認めるような方向に前向きだという点が大事かと思う。
これは予想した通りだし、現実問題それしか解決方法はない。何度も書いている通り、見解の対立が明瞭な4500万もの人口を持つ国の中で、キエフという首都でアメリカ&EU主導の政権をちゃちゃっと作ったからといってそれで終わりになるわけもない。
いずれにしても、まぁウクライナの去就は数か月単位の話じゃなくて、5年、10年経ってみないとわからないって感じじゃないでしょうか。
ロシアの側はそういう態度で見ていると思う。ウクライナの情報空間が完全に閉鎖的にならない限り、いつか俺らと、長い間そうであったように喧嘩しながらも仲間として付き合えるようになる日が来るはずだと考えているんじゃないかと思う。
この間のチャンネル桜の討論会(【討論!】アメリカはいったいどうなっているのか?)で、西尾幹二先生が、ウクライナってロシアと密接なわけで、ロシアから離れるなんて、そんなバカなことあるわけないのに、なんでそれがアメリカにわからないんでしょう・・・みたいなことをおっしゃっていたが、まさしくそれが健全な発想というべきものなんだろうと思うんです。
それをアメリカは冷戦後の20年あまりをかけて、ウクライナをロシアと敵対する何者かに仕立てようと頑張ってきた。各種の民主化がどうしたというプログラムや本、教育、テレビを通して、いかにウクライナ人はロシア人に苛められてきたのかを宣伝しまくって、それを根拠に現在ウクライナ人にはロシア人に対する抵抗を示す権利があるのだ、といった筋立てを作っていた。
キーフレーズは、「過去にロシア人が何をやったのかを考えたら、そんなこと言える?」だ。
しかし、過去3か月ぐらいの間、あまりにも事態が緊迫して大騒ぎとなり大量の記事、書き込みが出回った結果、ウクライナ支持者の言動がおかしい、問題がある、場合によっては歴史的に間違ってることが明らかになり、ネット上には多数の反論が見られた。
(例:ウクライナ地域は共産主義者をたくさん出しているのだから、ソ連をロシア人だけのプロジェクトのように語ってウクライナ人をソ連の完全な被害者にするのは間違いだ。ウクライナという大きな国が最初からあったわけではない、等々)
しかも重要なことは、この反論はロシア当局が総力あげてやっているというよりは、私がそうであるように、個々の歴史好きというか多少なりとも知識のある人たちが、あちこちで無数に書き込んだ結果として行われている。
ある意味、主流メディアの敗北みたいな感じさえする。
■正史との戦い-欧州編動向
2.5か月ぐらい前、ウクライナ危機が起ることなんて全然考えずに、
「正史」との戦い-欧州戦線
というエントリーを書いたのだが、まさしくこのへんにもフォーカスがあたっていた。ヒトラーだけを悪者にして、ミュンヘンがどうしたチェンバレンがどうしたと語るが、たいていの場合その比喩は適切でないというケースがまた起きたという感じでもあった。
プーチンをヒトラーに譬えた人が何人もいたけど、だんだん流行らなくなっていったのも興味深かった。
多分それは、実際、ヒトラーとプーチンの動機には共通項もある、ということにあまりフォーカスを当てたくなかったからではないかと思う。
つまり、ヒトラー当時のドイツがなぜ各地のドイツ系住民の保護に拘ったかといえば、それはベルサイユ会議において新しく民族国家を作った際各地のドイツ系住民を置き去りにしたことに根本的に問題があった。
そして、実のところソ連崩壊後にもロシア系住民を置き去りにしたまま各共和国が独立した。
再びドイツの例を見たくないのなら、ロシア語話者にも応分の権利を保護して協調すればいいわけだが、ウクライナではロシア語を禁止すればいい、的な発想を持った人に権力を与えた。しかも、よりによってロシアとの絆が一番深いところで。バカだ。
というわけで、ここにフォーカスを当てたくないという判断がどこか上の方にあったんじゃないかと思ってる。
■正史との戦い-東アジア編は来るのか
で、私が考えていたのは、もし東アジアで何か起こって、「日本の過去を考えれば・・・」のキーフレーズが登場した時にこれだけの訂正圧力がかかるだろうか、書き込みを行ってもらえるだろうかというところ。
ロシアは西洋近代におけるメジャーな戦争に当事者として関わってるだけあって、いろいろ詳しい人が英語圏、フランス、ドイツ圏に多数いる。もちろん、各地に暮らすロシア系住民もうんざりするほどいる。
これに対して、東アジアにおける1920年代、30年代がテーマとなった時、日本はかなり不利だよなぁと思わざるを得ない。基本的に日本軍は単独での行動を強いられると覚悟しないとならない。頼れる可能性のあるところがあるとすれば、インドぐらいかなぁ・・・。
日本って、歴史認識において反日軍の総大将たるアメリカを自国の安全保障の最大のパートナーとしているという、とんでもなく難しい位置にあるという点について、あまりにも自覚がなさ過ぎたと思う。
これは日本の保守派が基本的に親米保守がすぎて親米ポチになっていたことが大きな原因だろうねぇ。私は別に反米になれといっているのではない。でも、歴史認識を他国に委ねるような国には主権国家としての価値がない、と考えている。だから、なんとしても米覇権の保護領からの脱出を願うのなら、譲れないことは譲れませんよ、という覚悟と態度を持つべきだと思ってる。繰り返すけど、年柄年中意味不明に主張しろというのではない。ここだ、という時にやれればいい。
そのためには、歴史のお勉強だけじゃなくて、どうやって説得すべきかの戦略が必要。この戦略の中には、自前のメディアをたくさん持つということも含まれる。ロシアとかイラン、チャイナが多国語で自説を展開していることに日本人はもっと注目すべき。
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