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政治スローガンに対抗するには落ち着いて考えることしかない

2014-06-16 23:44:54 | 欧州情勢複雑怪奇

ロシアがウクライナへのガス供給停止、欧州向けは継続
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0ER0JI20140616

[キエフ/ゴルキ(ロシア) 16日 ロイター] - ロシア国営天然ガス会社ガスプロム(GAZP.MM: 株価, 企業情報, レポート)は16日、ウクライナがこの日の返済期限までにロシア産ガス代金の債務を支払わなかったことから、ガス供給を停止した。

今後は前払いした場合のみガス供給を受けられる。一方でウクライナ国内のパイプラインを通じた欧州向けの供給は継続するとし、ウクライナにガスが輸送されていることを確実にするよう求めた。

話し合いがうまくいかずついにガス供給停止。ウクライナとロシアは互いに非難してあっている、といったって使ったものにお金を払わなければガスが止められるのは市場経済の掟なのでウクライナを説得できない西側に非があると私は思ってる。

むしろしばしば支払いが遅れてもロシアは供給していたので、市場原理主義が身上の西側は、それはロシアからウクライナへの補助金だ!とかソ連のつもりだ!とか責めるべきではないのかしら。あはは。

■ ビジネス感覚と政治感覚

最近しみじみ思うけど、ロシアの方が普通に経済原則的に納得できることが多く、アメリカやらEUはなんかほんとに政治的過ぎて付いていけないと思うことが多い。

前に引用したように、石油天然ガス・金属鉱物資源機構の本村眞澄氏がレポートで書いてらした言葉をまた思い出す。

初歩的な議論ではあるが、政治は基本的にゼロサムゲームである。当事者同士では勝つか負けるかという点に関心が集中する。ビジネスはプラスサムのゲームが 基本であり、当事者はウィン・ウィン、即ちともに利益を上げなくては意味がない。対応を誤れば、双方が損害を被るというルーズ・ルーズの関係となってしまう。

ロシア:エネルギーから見たウクライナ問題/石油天然ガス・金属鉱物資源機構

私は、政治もゼロサムだとは思ってないです。政治のメディア広報的側面がゼロサムなだけで、長期的にはそうではない、と思ってる。

ただ、ビジネスか政治かと比較した時の、氏のお考え、理解は重要であると共に尊いと思うんです。だって、なぜ経済を、あるいは経済的な仕組みを整えたり向上させること(これがつまり政治)を多くの人が今でも良いことだと考えるとすれば、それは前提に多くの人の生活の基盤をあげたり豊さに繋がると思えばこそじゃないんでしょうか? それは俺だけが儲かる話では長続きするわけがなく、供給者も需要者も共に良くないとならない。

私は、ロシアの欧州向け天然ガスの輸出は普通にこの範囲の経済行為だと思う。欧州側は別に無理やり、要りもしないのにロシアのガスを買ってるわけではない。当たり前だけど、様々な利害を調整しながら買っている。

そこに、こういう発言をする人が登場するのが物事を無茶苦茶にする原因だと私は思う。

ヒラリー氏:欧州はロシア産天然ガスに過度に依存-独ZDF

 6月15日(ブルームバーグ):ヒラリー・クリントン前米国務長官は、欧州がロシア産天然ガスに依存し過ぎており、プーチン露大統領の旧ソ連地域での「威嚇」に対して、頑強に対応する必要があるとの見解を示した。

2014/06/16 13:48 JST
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N78SGQ6KLVR701.html

「過度に依存」とはどの程度を言うんだろう?

また、そもそも旧ソ連地域がロシアのエネルギーを購入するのがいけないというのは、どういう理由によってなのか?

旧ソ連地域という言い方は最近とても意図的に使われているけど、旧ソ連とは、ほぼロシア帝国内なので、ロシアがとても近い。笑っちゃうほど近い。そこからエネルギーを購入することは経済効率的には非常に優れているとしか言いようがない。ヒラリーはここをどういう理屈で乗り越えるつもりなのか?

その前に、天然資源やらドルやらのために他国を爆撃したりだまし討ちしたりしながら覇権を維持しようとする国からとやかく言われたくないよ、と率直に思うけどね。

■ 経済合理性は強いようにみえる

下の図は、ロシア産天然ガスの欧州各国における比率。この図は非常に面白いことを教えてくれるなぁと思うのは、ロシア産天然ガスに100%近く依存しているのは、あのロシア批判で有名なバルト三国とスェーデン。そしてブルガリア。10年前から比べるとポーランドはだいぶ減らしたと思うけど、それでも5割以上は行っている。

つまり何がいいたいかといえば、このへんの国は、地図を見ればわかる通りロシアが近い。さらに昔ソ連邦およびその衛星国だった国は、ソ連時代はその関係者なんだから実のところこんなにちゃんと流通しているものを変えなければならないメリットが全然見いだせないんだと思う。だって、ウクライナ問題以外でロシアはガスを止めたことはないし、それは冷戦の混乱期もそうだったというのも有名。

そして、その近さから来る値段設定とその他の資源が比較にならないからこそ、今もってずっとこういう比率になってるんじゃないんですかね。これを一律に、エネルギーのロシア「依存度」が高いとまるで悪いことのように表現しつづけて約10年になるわけですが、私としては結局のところ政治スローガンは経済合理性には勝てなかったんだな、と思う。

http://rt.com/business/166104-gazprom-ukraine-gas-prepay/

■ ウクライナの将来は暗い

率直にいって、ウクライナの将来は暗すぎる。だってそもそもお金がないわけで、その上、100人ぐらいの人を殺しながらもクーデターを起こして、それで、結局のところまた同じようなオリガーキの人、それも過去15年ぐらいウクライナの政権の関係者だった古顔のオリガーキを就任させて、万歳!となっているのが現在。

冗談のような展開だけど、結局のところ政権がどうなろうともEUがウクライナのガス代を立て替えてくれるとか支援してくれる確率は小さい。まぁ口は大きいんだろうけど。EUは、連合協定は結んでも別にウクライナが加盟国になるわけでないから、ウクライナを支援する義理はない、って考えてると思う。

で、この件も、サウスストリームも欧州委員会のエネルギー担当委員は、ギュンター・エッティンガー氏。ドイツのCDUの政治家。この人が話をまとめる気がないのか、なんらかの考えがあるのかが今後の焦点かと思ってみてる。

私の仮説は、バルバロッサ作戦遂行中!というものなので、結局この話はドイツがここでヒラリーの説明と同期している、と思ってみてる。

バルバロッサ作戦 v2: バルカン侵攻、続行中

つまり、バルカンを絶対にロシアの「シマ」にはしねーよという決意で行ってるんだろうな、と。

しかし、問題はじゃあそのバルカン半島のエネルギーをどう賄う気なのか・・・。しばらくはLNG対応で行けるところはあるだろうけど長期的にはどうせいっちゅうねん、と。

ひょっとして、またまたナブッコ・パイプライン計画を拡充するとか?

つくづく欧州のエネルギー安全保障って何ですかと言いたいものがある。

まぁでも、地中海側ではリビアを空爆して崩したから・・・

というわけで、パイプラインってやっぱりシリア問題と絡んでるよね、などとも思う。

欧州の安全保障とは戦争のことだ、とか言われそう。まぁぶっちゃけそういう地域には違いないわけだけど。


 

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