いつも通っているお店に、2年前くらいかな、イタリア生まれの小柄な娘がやってきました。赤い帽子がよく似合う、粋なコです。とても可愛いので、いつしか素敵な彼氏が出来て幸せな家庭を築くんだろうなあ。あんなコと一緒になれるやつは幸せだろうなあ、とぼんやり考えておりました。そのころ私には青い服がよく似合うちょっと古風な、やはりイタリア生まれの女房がいましたので、まあ自分には高根の花と思っておったのです。
ところがいつになっても彼女は一人ぼっちで店の片隅に、いや天井にぶら下がってる。
私はだんだん彼女が可哀想になってきました。そして彼女も私に
「おじさん、お願いだからここから私を救い出して」
と言っているような気がしてきたのです。1年たちもう2年が過ぎようという今年の10月、ふと私は店のおやじに尋ねてみました。
「ねえ、あのコどう思います?」
一度話をはじめたら止まらないことで知られるイガグリ頭のそのおやじは、意外にもこう言いました。
「いやあ、あっしもこのコはいいと思うんですけどねえ」
これには私も驚きました。おやじは今風の軽い女が嫌いで知られていて、重いけれど昔ながらの女しか女と認めていなかったので、これは絶対反対されると思っていたからです。
「なんだ、いいんじゃん」
すっかり拍子抜けしたと同時に私は次の瞬間、もうこれはこの娘と一緒になれという思し召しと思い、
「あのコ、もらいます。」
と言ってしまっていたのでした。待つことおよそ1カ月、青い女房から身ぐるみはぎ取ってそのまま娘に着せ替え(ちょっと罪悪感)、ついに身支度が整ったのがこないだの金曜日のことでした。
2010年11月12日、店のおやじと。写真は立会人の「赤い兄貴」が撮影。
というわけでロードバイクがクロモリのGIOS FELLEOからこんどはフルカーボン、Wilier(ウィリエール)のIzoard(イゾアール)に替わりました。サイズがXSでまさにおチビの大先生にピッタリというのが決め手。これがSとかMだったらとっくに売れていたでしょう。
フレームだけで30万ちかくというのは量販店のハンズにおいてはおそらく単体商品では破格の高値クラスではなかろうかと思われます。それがずーっと売れてなかったわけで、お店ではおそらく不良債権化しつつあったろうとは容易に想像できますよね。その証拠に、私がこれを買ったとたん、お店のいろんな人から
「ありがとうございました」
と深々と頭を下げられました。なんかすごくいいことをしてしまった気分。
あんまり可愛いので名前を付けました。「アヴァンツォ」といいます。イタリア語で「売れ残り」。「アバンちゃん」と呼んでおります。
GIOSはどうすんだって?最初についてた105がほとんど全部残ってますので、いずれフラットバーロードにでも仕立てようと思ってます。輪行なんかに気兼ねなく使えればと。
思えばお店のディスプレー用の古いロードを貰ってからあれよあれよとランクアップされてますねぇ、羨ましいぃ。