中村正直の「頑張れプロ野球」

ベテラン野球記者の本音ブログです。

寂しい伝統の一戦

2008-07-08 22:55:37 | Weblog
 阪神が強いのはもういい。今の阪神が普通に戦えば、これからも2位以下をどん

どん引き離していくに違いない。それはいいんよ、もう。だって他が弱いんだから

さ。だけど、巨人が弱いのはやっぱりいかん。きょうの試合でも、結果的には2点

差になったが、実質的には阪神の圧勝だった。何が「伝統の一戦」だよ。もう誰も

そんな呼び方はしない。阪神担当だった10年前も、確か同じことを言っていたっ

けなあ。あまりにも阪神が弱すぎて「けっ!どこか伝統の一戦や」と。

 あれだけのメンツを揃えながら、もうこの時期でV消滅なんて、一体どういうこ

とか。高橋由と小笠原の打率を改めて見て、がく然としてしまった。高橋由は打率

2割3分台で、小笠原は2割6分台。頑張っているのは、ラミちゃんだけじゃない

か。選手会長の二岡はいないし、李もいない。高額年俸選手が全く自分の仕事をし

ていないのだから、そりゃ勝てんわな。首脳陣がどうこうという声も聞くし、さい

配云々の声も耳に届く。しかし、巨人の選手は、それを遙かに上回る能力を持って

いるはずだろう。だからこそ、高い年俸をもらえる。阪神とは違い「個」の力で勝

てるはずなのに、勝たない。これはファンに対する裏切り行為ではないか。

 昨年オフ、獲得に動いたグライシンガーを奪われ、阪神・岡田監督は巨人に対す

る敵愾心を燃やしに燃やしていた。それだけ「歯ごたえのあるチーム」と認識して

いたのだが、フタを開けてみればこうだ。噛みごたえのあるヤツを噛んでこそ、達

成感も得られるとしたものだが、これでは仕方ない。

 「阪神を食ってやる!」という気迫が巨人に感じられなかったのが、何とも寂し

かった。最終回、藤川から2点を取ったが、そんなもん「巨人の意地」とは思わな

い。食らいついてくる巨人を見たい。心からそう思う。

「江夏の21球」余話

2008-07-07 13:24:28 | Weblog
 7日付けのデイリースポーツ・22面に「蘇る記憶」と題した特集記事が掲載さ

れている。まだ未読の方は、自分で買うか、喫茶店に入って見るか、どちらかを選

択して読んでみて下さい。筆者は私で、1979年・近鉄対広島の日本シリーズ第

7戦の模様を書いています。球史に名高い「江夏の21球」であります。

 わざわざこのブログで書く必要がないのだが、一部削除されている箇所があった

ので「補足」をしたい。元近鉄のコーチ、そして管理部長をされていた藤瀬史朗氏

(現 学校法人浪商学園 強化センター・センター部長)の回顧の部分。大阪体育

大学に藤瀬さんを訪ね、いろいろ当時の話を聞いたのであるが、紙面の都合で割愛

となってしまった。藤瀬さん、えらいすんません。

 藤瀬さんと言えば、あの試合のキーマンの1人だった方。九回裏、先頭・羽田が

中前打で出塁し、その代走として一塁ベースに立った。その後、盗塁(実際はヒッ

トエンドラン)を決め、捕手の悪送球で三塁まで進み、最後のあのスクイズ失敗で

本塁憤死する。「江夏の21球」には欠かせないバイプレーヤーだったのだ。その

藤瀬さんは、当時をこう言って振り返っていた。

 「もう何十回も同じ話をしてきたが、そうやって思い出してもらえるだけで、あ

の場面に関われてよかったと思いますね。我々は負けた側だけど“江夏の21球”

でいいと思います。実際、近鉄が勝っていたら、伝説にもなってないでしょう」

 今はプロ野球の世界から身を引き、母校・大体大の学生を指導する仕事に就いて

いる。「プロ野球はあまり見ないですね」と笑ったが、あの日は出来事は鮮烈にま

だ脳裏に刻まれているようだった。「あんな緊迫の場面で代走を告げられ“行くん

かいな”という思いだった(苦笑)。日本シリーズを決しようかという局面だか

ら、本当に緊張していた。マウンドにはあの江夏さんだし…。大きく見えたよね。

目で、背中で自分の動きを制されている感じがした」。藤瀬さんの話を聞くうちに

何だか時間がタイムスリップした感覚になったから不思議だ。。気が付けば、1時

間半が経っていた。

 本紙でも締めに書いたが、あの至高の野球ドラマは今なお燦然と球史に輝いてい

る。関係者に話を聞くたびに、知らなかった逸話が飛びだし、こちらの胸を熱くさ

せてくれる。阪神戦のない日、これを読んでいる方も、かつての伝説に浸ってみれ

ばどうだろうか。

ミラクルを見た後で…

2008-07-06 22:35:43 | Weblog
 あれで負けのでは、横浜も仕方ないわな。序盤のビハインドを必死で追いつき、

八回に難敵・ウィリアムスを打って勝ち越し、しかも3点差をつけて守護神・寺原

に託しながら、そこから逆転負け。二死一塁、カウント2-0から3点差を引っく

り返されたのである。これが反対であってみなさいよ。球児がそんな逆転を食らっ

たら、甲子園はもうパニックになるに違いない。その点、横浜スタジアムのベイフ

ァンは冷静なもんだ。負け慣れているせい?か、少しのメガフォンが飛んだだけで

表面上は済んだ。

 あの展開で負けるんだから、横浜はもうどうしょうもない。裏を返せば、阪神が

すごい、ということになる。1つ負けたくらい大勢に影響ないのに、みんなが必死

になって食らいついていった。関本、そして新井、トドメの金本。記者席で見てい

て、八回裏に3点が入った時点で、九回裏の欄に「×」印を書いた自分が情けなく

なる。勝負はゲタを履くまでまでわからない、というが、本当にその通りだ。もう

一度胸に刻印しておこう。

 さて、本題である。そんなミラクルを見た後、帰阪の途に着いたわけだが、新横

浜駅でぶ然とさせられる光景を見た。選手たちは乗れる新幹線でそれぞれ帰阪して

いたのであるが、記者が駅に着いたとき、新井や赤星が便を待っているところだっ

た。プラットホームは大勢の客でごった返していた。そんな中で、多くの阪神ファ

ンが選手を見つけてはサインをもらうのに走り回っていたのだ。長時間試合で疲れ

て家路に急ぐナインたちに、容赦なくサイン攻勢をしかけるファン。君たち、いい

加減にしてやれよ、と大声で言いたくなった。

 プロ野球選手は人気商売である。サインをするのも仕事のうちではあるが、ファ

ンの側も時と場合を考えてほしい。特に、混雑する駅などは、他の客の邪魔にな

る。そして危ない。ファンは勝手なもので、そんな選手に無視されたら「あの選手

に無視された」などと不快な思いを抱く。選手はたまらんぞ、本当に。記者が座っ

ていたベンチの横に、偶然座った浅井も大勢のファンにカメラを向けられ、困惑の

表情を浮かべていた。「赤星さんが囲まれている間に、逃げてきたんですよ」と苦

笑いしたが、君らの気持ちはよくわかるよ。

 応援するファンの側も、ある程度の節度を持ちましょうよ。そんな思いで横浜名

物「シュウマイ弁当」を買いにキオスクをのぞいたら、すべて売り切れていた。何

とも腹立たしい!ミラクル気分が一気に吹き飛び、傷心の帰阪となった。

あえて、重箱の隅を突こう

2008-07-05 19:02:01 | Weblog
 この日の横浜スタジアムは実に賑やかだった。試合前の阪神ベンチに、あの大物

俳優・渡辺謙氏が現れたと思ったら、お笑いのダウンタウンや雨上がり決死隊、キ

ャーン、山口智充らが大挙してやってきた。横浜の親会社・TBSの番組に出演して

いる彼らが始球式をするというので、試合前から騒々しかったのだが、実際はそん

なに盛り上がってなかったようにも見えた。開始までの数分間だから、彼らがスタ

ンドを笑かすには、少し難があったようにも思う。しかし、こっちの前を横切って

いった松本氏は、何だかオーラのようなものを感じたな。

 大の阪神ファンで知られる渡辺氏などは、試合中、我々が見ていた記者席までや

ってきて、デイリー軍団の後ろの席に座って見ていたのだよ。少しの時間ではあっ

たけど、近くにあの渡辺謙がいると思うと妙にソワソワしてしまって…。年甲斐も

ない話だが、何せ大好きだった「独眼流政宗」だぞ。しょうがないじゃないの。

 試合は普通に阪神が勝った。最初からわかっていることだから、それはよろし

い。ここで書きたいのは、大量得点差の八回から出てきた3番手・太陽のことだ。

大量得点差で負けているときの登板はあっても、反対のケースはこれまでになかっ

た。しかし、気楽に投げられるのは同じこと。まして、相手はもう試合を捨ててい

るのである。すんなりゼロでいくのが普通なのに、代わり端の小関に四球を出し、

続く仁志にも安打されて結局この回2失点。九回にはその小関に一発まで食らって

しまった。大勢には全く影響はなかったが、太陽本人には辛い失点だ。彼は「あす

なき身」の男なのである。

 プロ8年目。期待された大型右腕も、故障などもあり、鳴かず飛ばずでここまで

きた。最後の挑戦とばかりに、今季はサイドに変えた。とにかく、何でもいいから

結果が必要なのだ。こんな試合の登板で、コツコツ普通に無失点を重ねていくこと

しか生きる道がない。なのに3失点。「背番号15」は、いつまでも待ってくれな

い。弱肉強食のこの世界。残った結果がすべて、なのだ。

 しかし、横浜は弱い。マシンガンだったあの頃は、もう帰らない。ああ、ヨコハ

マ、たそがれ…。

無人の荒野をいくが如し

2008-07-04 22:57:06 | Weblog
 暑さで頭がボーッとした。横浜に向かう中、携帯ラジオを聴いていたら、気象予

報士の姉ちゃんが「きょうの大阪の最高気温は34度になりそうです!」と高い声

で言っていた。なるほど、それもうなづける。自宅から最寄りの駅にたどり着くほ

んの10分くらいで、もう全身から滝のような汗が流れ出た。四国は梅雨開けした

らしい。真夏がやってくる。難儀なこっちゃ。

 頭がボーッとすると、よく間違える。この間書いたこのブログの中で、状況が違

っていたと指摘する声が届いた。誰かと思えば、うちの編集局長だ。確かに、そん

なイージーミスはいけない。いつも自分自身に言い聞かせているつもりでも、手と

頭が言うことをきかない(もちろん言い訳です)。「一死一塁」と書いたつもりが

「二死一塁」となっていたらしい。読者のみなさま、すんませんでした。この通り

ですわ。自分にパンチを食らわせておきます。

 汗だくで横浜に着き、最下位・ベイとの試合を見たのだが、これはもう相手にな

らん。7-0完封勝ちというのは結果論。序盤の三回を見たところで、ほぼ勝負の

趨勢は見えた。何もかも違った。何がどう違うか、具体的に言うのは時間がかかる

からやめるが、やっぱり相手は勝率2割台のチームだ。昔、阪神がそうだったよう

に、負けに慣れすぎている。

 もう無人の荒野をいくように、阪神は勝ち進んでいくことだろう。競馬で言え

ば、楽に逃げているのだが、実はハイラップの逃げで、後続はどうしようもない

展開になっているといった感じか。もう逃げ切り確定ーといっておこう。

「食い倒れ太郎」も大喜び?

2008-07-03 23:00:32 | Weblog
 先発が「朝倉」と聞いた時点で、何やら負ける気がしなくなった。川上なら「相

手もエースを立てて必勝態勢だから、1つくらい負けても…」となるが、そのエー

スは次の巨人戦に回った。何でなん、落合さん?確かに、朝倉は去年阪神に強かっ

たが、この3連戦は悠長なことを言っている余裕はないでしょうよ。川上を外した

敵将の胸の内がよくわからん。結果的には、朝倉は踏ん張ったものの、中継ぎのチ

ェンが打たれて中日の負け。手痛い3連戦3連敗だ。別にいいけど、こうなっては

全く面白くなくなる。

 途中で何回も雨が降ったこの試合。スタンドにはあの「食い倒れ太郎」がおばち

ゃんとおっちゃんに連れられて“観戦”に来ていた。どこにでも出てくるヤツだ。

居酒屋の単なるマスコットだった彼が、有名タレントの如くあっちこっち出て回る

のはどうみても変。しかし、そんな「変」を笑って見守る心の広さを、関西人は持

っている。「食い倒れ太郎フィーバー」は、関西人が生んだシャレの1つだろう。

そんな彼も、阪神の痛快な勝利に酔ったのではないか。正確には、側で寄り添って

いた2人の“保護者”であろうが…。

 個人的なことで恐縮だが、この試合には大の中日ファンという大学の先輩も観に

来ていた。前日にメールしたら、そりゃあもうグチばっかり。特に、さっぱり打た

ない助っ人・李に対しては罵詈雑言のオンパレード。内容はあまりに酷なのでここ

には書かない。逆の立場だったら、無茶苦茶言っているだろうが…。最終打席に藤

川からヒットを打ったが、その他はスカばっかり。彼を見るつにつけ、森野不在は

やはり大きい。

 ガックリと家路に着いただろう先輩を思うと、心苦しくなる。だが、2年前の阪

神ファンだってそうだったのだ。中日に負けるたびにやけ酒を飲んで「いつか

は…」と肩をたたき合ったもの。因果応報というか、驕る平家久しからず、という

か、盛者必衰というか。時に流れを実感したこの3連戦でありました。

桧山幻のサヨナラ弾

2008-07-02 23:18:04 | Weblog
 思わず「行った!」と叫んだ。プロ野球取材20年目のおっさん記者の目には、

完全にスタンドインする打球に見えた。甲子園での阪神対中日戦。九回裏、二死一

塁から放った代打・桧山の打球である。打った桧山のフォーム、打球の角度はもう

文句なし。上がった感じからして、右から左へ流れる風など関係なくスタンドへ飛

び込むと思った。前夜(1日)に金本が放った一発よりも、確信があった。だが、

入らなかった。その直後に葛城のサヨナラ打が生まれた。

 桧山の当たり、入っていてほしかった。サヨナラ本塁打ではなく、桧山の今季1

号が見たかったのだ。代打稼業に徹し、コツコツと安打は積み重ねてきたが、一発

だけは今だない。上空を優雅に舞う、桧山独特の本塁打。チームがまだ弱かりし

頃、彼の本塁打と新庄の強肩だけがファンの拠り所?だった。失礼な話だが、もう

いつ見れるかもわからない。絶好のチャンスだったのだ、きょうが。

 なぜ入らない?やはり風か。桧山自身のパワーが落ちているのか。昔なら完全に

放り込んでいた当たり。それが入らない。ベンチでクビを捻る彼の様子を見ている

と、こっちもクビを捻りたくなる。いつも梅雨時なら、風は左から右に吹いている

のだが…。

 劇的な幕切れだった甲子園。他球場もなかなかドラマチックだったみたいだ。一

番目に止まったのが、仙台の楽天対ロッテ。プロ3年目の左腕・片山が、初勝利を

初完投、初完封で飾った。交流戦で阪神も対戦したが、なかなか見所があった。キ

ャンプ視察のさい、本紙評論家・江夏豊氏が「うまく育てれば10勝は楽にできる

素材だよ」と言っていたのを思い出す。兵庫・報徳学園出身の大型左腕。阪神でい

えば鶴と同期。ノムさんがうまく育てているのか、これを機に一気に羽ばたきそう

な気がする。

 それにしても桧山、惜しかったなあ。入らんか、あれが…。

7月快勝スタートだけど…

2008-07-01 23:34:27 | Weblog
 何か秋口の試合を観ている感じだった。7月に入ったばかりなのに、どうしてこ

んな書き方をするかというと、ちっとも暑くないのである。例年、この時期は蒸し

暑くて仕方く、記者席から試合を観ていてもダラダラと汗が流れ出るのが相場だ

が、汗の「あ」の字も出ない。それどころか、風のせいでやけに寒いのだ。今、こ

のブログを書いていても、風が冷たく感じる。

 試合の結果は、阪神の快勝。六回裏、新井の適時三塁打と金本の2ランで勝負は

決した。風が全く逆なのに、金本が放った右翼スタンドへの一発はお見事!甲子園

の右翼席へぶち込むには、風の抵抗をあまり受けない、低いライナーしかない。し

かも、あのコースのみだ。

 宿敵の竜を叩いての7月スタート、それはそれでいい。しかし、試合が長い。全

球団が試合時間短縮を掲げて始まった今季だが、阪神の試合は早くなっているとは

思えない。先発陣が踏ん張れなくなっているせいもあるが、はじめのころよりも、

皆の意識から「スピードアップ」が薄れてきているような気がする。昔のように極

端に遅い試合はないものの、はやり3時間半を越すとしんどい。個人的には、2時

間40分台の試合を望む。

 それにしても寒い。去年より記者席が高い場所に移ったせいもあるが、風がよく

通る。風邪を引きそうだ。もう帰ろ。