中村正直の「頑張れプロ野球」

ベテラン野球記者の本音ブログです。

「虚」を突いて、ウォーッ!

2008-07-13 21:27:25 | Weblog
 テレビの前で5歳の息子が聞く。「何で金本が走ったん?」。何で?と聞かれた

って…。親父にもわからん。同点の八回、一死一塁で金本が走る光景など、今まで

見たこともない。俺が聞きたい。監督何で?劇的な試合後、岡田監督は「最初から

予定通り。サインですよ」と言った。これには驚いた。久々に阪神の試合がある日

に休んだ私。テレビに向かって「やるなあ」とつぶいやいた。

 前日の完封負けから、この試合では2番に平野を入れ、5番に関本を入れた。安

定感のある関本を5番で起用する奇策。林の故障で、この広島戦ではまた5番打者

に苦労をさせられていた。そこに関本で勝負した岡田監督。これが終盤意味を持つ

ことになる。

 競った展開の八回、先頭・新井が倒れ、続く金本が四球を選んだ。マウンドには

2メートルの大男・シュルツ。90%犠打だろうと思った。ところが、ベンチはシ

ュルツの独特なフォームを研究し、はじめから金本の盗塁を企図していたようだ。

相手も、まさかこの土壇場で4番が走ることなどない、と考えていたはず。その「

虚」に付け入った岡田さい配は実に見事だった。盗塁成功。ここですかさず代打・

桧山を送る。勢いに乗って代打の神様を投入し、勝負を決めにいった。金本に走ら

すということは、それだけの決意があるということ。好調・関本には悪いが、この

代打は仕方なかった。結局、桧山は倒れ、鳥谷四球後に代打・葛城の決勝打。ここ

までの筋書きがわかったかのような一連の流れには、鳥肌が立った。

 例によって、葛城が叫ぶ。「ウォ~ッ!」。5歳の息子が真似をする。「ウォー

ッ!」。甲子園の興奮が我が家にも伝染し、家中猛獣だらけになった。おそらく、

あちこちの家庭に、狼か虎かライオンが現れたに違いない。それにしても、金本の

足には驚いた。昨年左ヒザを手術した40歳が、足でチームを救うとは…。いやは

や恐れ入りました。