今、この場所から・・・

いつか素晴らしい世界になって、誰でもが望む旅を楽しめる、そんな世の中になりますように祈りつづけます。

残酷な歳月 46 (小説)

2015-12-30 15:13:26 | 小説、残酷な歳月(43話~最終話)


残酷な歳月
(四十六)

蒔枝家の祖父母や大杉夫妻が、私たちの日本で生活出来るように、かげながら手助けを、してくださったと、聞いています。

また、お互いの立場の違いから誤解が生じ、息子「伸一郎と私の娘のスジョン」の結婚を認めてあげなかった事が、悔やまれると話されたと聞きました。

「もう、蒔枝の、おじいさま、おばあさまは、その時は、すでに、樹里を残して、家族全員が亡くなったと、思っていたのですね!」

祖母の思いが強いからか、手紙の内容がつながらない部分もあり・・・

ジュノや樹里の母、スジョンは、蒔枝家に樹里を託して、ひとり、身を隠して生きる生活だったのに、手助けがなぜ出来なかったのか?、その後、蒔枝の祖父母は、胸の痛む思いで暮らしていたのだと、樹里から聞きました。

いろんな行き違いや運命の悪戯などと、軽い言葉では、言い表せぬ思いですが、ジュノも樹里も、今までの残酷なまでの過ぎていった歳月を、もう、取り戻す事は出来ません。

どうか、どうか、辛すぎた歳月を忘れてくださいとは言えませんが、これからの人生を、より良い、幸せで素敵な日々が送れますように、このばばは祈っています。

どうか、元気を出して、そして、出来る事なら、今のご両親を、本当の父と母と思い、お慕いして、生きて下さる事を願っています。
『私の愛しい家族、ジュノへ』
『どうか、出来れば、直ぐに!
『逢いに来ておくれ!』

ジュノは、あまりにも、堰を切ったように、次々と、疑問や不安に感じていた事の真実がわかって嬉しい事ではあるが、三十八年のあまりにも過酷過ぎる人生だった事で、真実として受入れる事を、
『心が戸惑うように、揺れ動く!』
けれど、ジュノは、今が一番幸せだった。
大杉さんが、血のつながりのある本当の伯父であった事!
ただ、不安で常に気がかりだった妹!
妹の衝撃的な姿ではあるが!
『直樹が樹里としての出現!』

そして、何よりも嬉しい母方の祖母『キム・ソヨン』の健在で、しかも、妹の身近かにいてくれた事!

あのおぞましい事故の原因だった事は、伯父の故意ではないと思いながらも、どうしても、疑問符がついてしまう事はもうないのだと思える事は心が穏やかに暮らせる、幸福な思い!

疑問符だらけだった日々
そのすべての暗雲は消え去り
愛しい人は私の傍らで微笑む
美しき人の輝きは
心を映す鏡のように
深く虹色の麗しさで
新たなる道を踏む
妖しいまでのまなざし
それは透明な喜び
疑う事のない愛を胸に


今も、大杉の伯父の行方はわからなかったが、伯父もきっと、最後の時はジュノを頼ってきてくれると、確信しているジュノの願いだった。

だから、静かに今は待っている事が大事なのだと思う!

ジュノは、これからの人生を、国籍のある、韓国人『イ・ジュノ』として生きて行こうと、少しずつ思えるようになっていた。

確かに、寛之としての十歳までの記憶があるけれど、その思いや、今のおかれている、残酷で胸をえぐられるような辛さは消えてはいないけれど、この現実が、寛之としての誕生の証し(記録)がない事は私に課せられた
『宿命なのではないかと思うのだった。』

あの優しさで、私を全身全霊で愛情を注いでくれる、今の父と母の本当の息子として、生きて行く事が、
『私に神から与えられた道!』なのだろうと、素直な気持ちで思えるのだった。

妹の樹里は、どのような姿で生きて行く道を選ぶかは、わからないが、思いあえる心は、どんな生き方であっても、ふたりは理解し合える
『兄妹で大切な家族』である事には変わりないのだから・・・

ジュノは、自分は
『韓国人、イ・ジュノ』
として、これからの人生を生きて行く事を、妹、樹里に知らせる手紙を書いた。

その後、妹からはしばらく、返事は来ない事が、樹里の苦しみや悩みの深さを思いながらも、病院の仕事にジュノはひたすら没頭していた、それは自らの思考能力を抑え込む事が最善だと信じて。



          つづく

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お隣の国の事、何も知らないのに、このようなつたないものをつづり続けてよいのか不安になりますが、生まれて、最初に空気を吸った、朝鮮半島の事がどうしても気になる日本人です。

そんな事も気にせず生きて来た、青春時代、ベトナム戦争の悲惨さを知って、私の心の中で何かが変わった気がしています。

あのベトナム戦争をはじめ、アメリカが戦争をするたびに、韓国はその戦争に参戦させられています。

本当に韓国の事が気になり、知りたいと思ったのは俳優「イ・ビョンホン」さんのファンになってからです。

韓国の歴史や文化を知りえる範囲内で見て、考えて、又、韓国のドラマも観ました、それはあくまでドラマであって作り物だと思いながらも、驚きと戸惑いの連続でしたが、今はある程度真実と誇張された歴史を自分なりに考える余裕も出来ていると思えます。

あと、数回でつたない小説「残酷な歳月」も終わりですが、たくさんの方々にお読み頂けて感謝です。




最新の画像もっと見る