今、この場所から・・・

いつか素晴らしい世界になって、誰でもが望む旅を楽しめる、そんな世の中になりますように祈りつづけます。

逢いたくて<永遠> 2 (小説)   

2013-10-20 10:17:53 | 逢いたくて<永遠> (小説)

         <美しき人のイメージで書いてみました>

逢いたくて<永遠>

★彼と私の・・・★
いつもの事だけれど、純ちゃんは物音も立てずに、私の前に来てくれる!
私は、何度目かの入院中で、体調も気分も落ち込みがちになるけれど、今は、純ちゃ
んが俳優として一番大切な時期!、どんなに逢いたくても、我慢するのよ!と、自分
に言い聞かせてはいても、やはり、逢えない事が寂しい!

私の病院での一日は、ほとんどが点滴に左手を繋がれての暮しだ!
点滴液が漏れてむくみやアザだらけの、お世辞にも、美しい手とは無縁な、醜い姿に
なってしまった。

限られた行動の中で、たいていはベットの中で過ごしている。
私は気づかぬうちに少し眠っていたようだ、眠りから覚め、ふと、眼を開けると、私
のおでこにキスをしようと、純ちゃんの美しい顔が、私の顔に重りあって、驚くほど、近かった!

それはまるで,夢のつづきのように・・・

「純ちゃんの唇が、素早く、私のおでこに触れた!」
「ごめん、起こしてしまったね!」

そう言って、照れくさそうに、純ちゃんは笑った、そして、「カコ」はもう、とっくに
お昼を済ませたよね!僕はちょっと、撮影がおしてしまって、時間がずれて、空腹で
お腹が変になりそうだよ!ちょっとここで、食べてもいい?そう言い終わらないうちに、用意してきた、「ゆで卵の白身だけ」を、口に放り込むように食べている彼のほっぺのふくらみがたまらなく愛しくて私の胸は高鳴り涙ぐむ、そんな私の気持ちを察しての純ちゃんのしぐさが可笑しくて愛しい!

腰に手をおき、左足を少し前開きにおどけながら、シェークしたプロテインを噛むようにしてゴクリ、ゴクリとのど仏を動かしながら飲む姿に愛しさと可笑しさの感情が苦しくなる。

いつもながら、純ちゃんの食事は、まるで、スポーツ選手の肉体をつくる為のような、筋肉質な、それでいて、ムキムキな筋肉ではなく、美しい肉体美を保つ為の食事!
体に必要のない脂肪を燃やし、良い筋肉を付ける、「プロテイン、ミルク、野菜ジュース、きな粉やすりゴマ、そして、お酢、少量を」加えて、シェイカーで飲む前に良くシェイクして、ゆっくりと、噛むようにしてのんでいた。

他に、果物、そして、オイルの入っていない、シーチキン一缶に玉ねぎと人参のきざ
んだ物を塩もみし、水洗いして、塩分を取り除いた物を混ぜて食べる!
炭水化物はほとんど食べない食事!

食事の不満さや欲望を抑える為なのか、純ちゃんは、いつも食べながら、おどけて、
マジックをするように・・・
たまごの白身だけを上手く舌で動かして遊ぶ仕草が、私はいつもなんの手助けも出来ない今が切なく、それでいて、とても可笑しくて、笑いながらも辛くて、複雑な想いになる!

本当は純ちゃんは、パンもごはんも大好き、少し塩をつけたおにぎりや焼き立てのパンをどんなにか、食べたい事だろう!いつだったか、思わずつぶやいたことがある!
「お肉だって大好物、焼肉大好き人間だ!」
「けれど、炭水化物を我慢するのは辛いよ!」

私は、純ちゃんの心情をおもうと、涙が出て、こんな言葉を心でつぶやく・・・

そのしぐさが危うい
少年のようなあどけなさが誘う刺激
モノクロームの情景が
大人の男をひきたてる
ほの暗いパリの空に
にあい過ぎるほど物憂い
その唇に懸想する白身遊戯
「俺は白い色が好きです」
私は貴方が大好きです
パリィの恋人達を物語る
理性を忘れた私がいる

ある写真集のパリェの風景の中に純ちゃんを重ね合わせて・・・


毎日のトレーニングは、純ちゃんにとって、決して、らくで楽しい事ではないはずだ
けれど、本当に、純ちゃんは凄い精神力で頑張っている!

まだ、正式に、ハリウッド映画に出演出来ると決まったわけではなく、もし、純ちゃ
んの素晴らしい才能が認められて、ハリウッド映画の小さな役であっても、決まって
から、仕事として、活動が始まるのは、たぶん、二年位先の話だ!

けれど、純ちゃんは、今、そのハリウッド映画出演のオーデションを受ける予定でいる!自分の俳優としてのこれからの生き方を賭けてみようと決心しての事だった!

国内では、さほど、俳優として名の知れた存在ではないけれど、以前、ある映画祭で
出会った、ハリウッド映画のプロデューサーに声をかけられた事が、今の純ちゃんの頑張
りをささえているようだった。

私は、今、純ちゃんの為に役にたつ事が何も出来ない!、それどころか、むしろ、純
ちゃんの足を引っ張っているように思えて、つい、思い悩んでしまうけれど・・・

純ちゃんは、私の病室に来ては、小さなソファーに、純ちゃんの長い足を折り曲げて
丸めて寝ている姿を見ていて、私は、切なさと愛おしさで、心が揺れるけれど、この
瞬間がとても大切で、特別に幸せな時間だった!
「ここでの短い眠りが僕の楽しみなのだから、許してくれ!」

そう言って、私を見つめては、ちょっと、照れ笑いをする、笑顔がたまらなく美しきオーラに私は巻き込まれそうにさせてしまう人だ!
その表情が、人間の心や感性の奥深さを感じさせて、私は、又いちだんと、純ちゃん
の魅力に魅せられて、虜になってしまう!

あまり、仕事の事やトレーニングや体つくりの事は、純ちゃんはあまり詳しくは話してはくれないけれど、照れくささ、そして私に対しての心配をかけたくない気配りだと、私は自分の都合よく考えてる事が心を曇らせもするけれど、私も、純ちゃんの薦めで、俳優(とは言っても、主に通行人の役ばかりだけど)ただ、純ちゃんのそばにいられることが、私には嬉しくて、重要な事だった。


今の「カコ」の大切な事は、病気を治す事だよ!
仕事は元気になればいつだって出来るから・・・
いつも、そう言って、私を元気づけて、励ましてくれる・・・

俳優なのに、純ちゃんは、私の前ではとても口下手になる、特に私の病気の事を話す
時は、とても不安な表情になるのが、私にはとても辛い事だった。
けれどあの奇跡的な出会いから、純ちゃんとのお付き合いは、私に不思議なエネルギーを与えてくれて、とても元気になり、体調もとても良くなっていた。

ふたりで観た映画『オータムイン・ニューヨーク』は私にとっては思い出の深い特別
の日になった。

以後も、度々、映画を観たり、日帰りの旅行をしたり、音楽会にも出かけた!
純ちゃんは、友人や知人が多く、そのほとんどの方が芸術家だから、いろんなお誘い
を頂くようで、その中から、私にあうものを選んで、いつも突然、私を連れ出す!

それは、常に私の体調を考えての決断だと言う事を、私は気づいているから、ただ、
純ちゃんに申し訳なく、悪いと思いながらも、嬉しく、感謝していた。
今日は、純ちゃんの友人で、ピアニストのK子さんのコンサートにふたりで出かけた、K子さんは、純ちゃんの高校の時の同級生だとか・・・

演奏された曲は、ショパンのノクターンを始め、ほとんどの曲が、私の大好きな曲ば
かりで、純ちゃんは、その辺を考えてくれて、今日も強引に、私を連れ出して来てく
れたのだと分かり、胸が熱くなって、演奏も素晴らしかったけれど、私は、純ちゃん
の心配りが切ないほど、嬉しくて感動し、感謝していた。

けれど、その、帰りのタクシーの中で、私の右胸が、しびれるような痛さを感じて、
不安がよぎって、私はその怖さに耐えていた、やはり、その時が来たのだろうか・・・

★ ★ ★

純ちゃんとの奇跡的な出逢いから、私は恋におちて!、すべてが変わって、毎日が幸
せだった!三十五年生きて来て、純ちゃんは、私のすべての価値感を変えてくれて、
どんな小さくて、つまらない事であっても意味があり、その事をどう自分に活かせれ
ば良いかをなにげなく教えてくれて私の心や感性を成長させてくれたのだと思える。

私は幼い時から、病弱だった事で、ある意味、我がままに育ってしまったのかもしれない、又、成長する過程でのその時、その時の年齢にあった、世の中での、知りえる常識的な事にも疎かったし、どちらかと言えば、面倒で嫌な事を避けるような性格で、人間関係のトラブルなどは極端に避けて生きて来たのかも知れない・・・

純ちゃんの話す事がらは私にはとても新鮮に感じ、そして、私には初めて知る物事や関心事もとても多かった。

だから私は、益々、純ちゃんを頼りにして信じて疑う事知らない純粋な想いと恋心で素敵さに魅せられて行った。

私は純ちゃんに逢うたびごとに、私自身も洗練された人間になれるような気持ちにさせてくれる人なのだった!

それは時に、感動的な喜びであり、又、自分の今まで、あまりにも常識はずれな人間であったのだと、恥ずかしくなる事でもあった。

けれど、そんな時ほど、純ちゃんは、私を傷つけるような事のない、気づかい、心配りが感じられて、かえって落ち込む事もあったけれど、それまでの私とは違って、直ぐに、前向きな考えになれる事が不思議だった。

「カコ」は長く病気をしていたのだから、知らなくても、恥ずかしくない!!!
これから、少しずつ、一緒に考えたり、覚えたりして行けるんだからね!!!
僕が少しだけ、早く生まれて、ちょっとだけしなくてもいい苦労したからさぁ~

「しなくてもいい?苦労をした?」

純ちゃんの事、何でも知ってるつもりになっていたけれど、又しても、はじめて聴く事だった、いったいどんな苦労してるのだろう・・・

純ちゃんは、俳優としての仕事の時の集中力は他の俳優さんよりも優れていて素晴らしいと私は思う、たぶん、並外れた気力と集中力は他の俳優の誰にも負けてはいないと私はいつも感動している。

けれど、時には、少年のような、あどけなさを持ち合わせていて、誰にも注目されていない時など、自然体で、素の純ちゃんは、何処か、不思議なほど、落ち着きの無い仕草をしている時がある、その姿は、たぶん、純ちゃんの心がどこか異次元の世界を一瞬に旅をしているのかも知れない。

ふと、私は、そんな事を思ってしまう、不思議人!
『李 純輔』と言う、素敵で特別な人だ!

たった今、純ちゃんは、どこを旅したのかしら、心の旅を・・・

何も無い空間をみつめて、物思いながら、頬に美しい手を添えている、その姿が、私は大好き!そして私は世界一幸せな女性だと、勝手に思っていた!
すぐそこに、悪魔が潜んでいた事も知らず・・・

私、カコは、今年の夏頃から、体調が悪くて入院したけれど、もうひと月が過ぎても、いっこうに快復しない、私の病気は、子供の頃から、原因が分からないけれど、あるとき、極端に免疫力が低下する、主に初夏の頃に起きる事が多かった。

体全身の働きが悪くなる、アレルギー性の痒みがひどくなり、風邪を引きやすくなり又、よく熱を出しては中々下がらない、胃や腸の働きが悪くて、胃もたれや不快感に悩まされる、食欲も無くなり、食べられない為に、体力が無くて、結局は病院に入院して、点滴をする事になる、何度も、この繰り返しで、私は三十五年生きて来た人生だった。

けれど、純ちゃんと奇跡的に出会って、恋をして、私はこの五年間はほとんど、入院せずにいられた、確かに、体調の悪い時もあったけれど、不思議なほど、直ぐに元気になり、父の営む、印刷工場の事務を手伝いながら、純ちゃんの誘いで、俳優と言うのには気恥ずかしいけれど、何度か、映画に出演した。

けれど、私の名前は、誰も気づいてくれるような場所にはなく、いつも、その他大勢の中に、小さく載っている、そんな位置だったけれど、私は本当には、特別に幸せな五年間の日々だった。

仕事のない日は、純ちゃんと、ドライブをしたり、又、時には、自転車ロードを風を切って走る事もあった。

私は、生まれてから、ずーと、埼玉県の飯能に住んでいた、だから、純ちゃんも、所沢に越して来てくれた、そのほうが、ふたりのデートには、都合がよかったし、仕事にも、ほど、不便さを感じなくて暮せていた。

時には、純ちゃんは、脇役であっても、とても重要な役を演じたり、又、地方への長期のロケがある映画にも出たりと、純ちゃんは、派手なスターと言われる、俳優ではなかったが、仕事は切れ目なく、続けられる幸運さがある人だ!
それは、紛れも無く、純ちゃんの日々の努力のたまものであった。

時には、ストイックなまでに、役柄を研究して、役柄の人物になりきる努力、そして、その人物に徹底して、感情移入できる集中力は本当に凄いものだと、私はいつも感動して観ていた。
私は、そんな純ちゃんの努力し、研鑽する姿を見ていると、自分の甘さや我がままで、努力の足りなさを痛切に感じながらも、自分では、どうする事も出来ない事がはがゆい思いと、才能の違いを見る思いで、やはり、落ち込んだりもするが、ある部分で、純ちゃんのそばにいられて、素晴らしい才能の輝きを観ていられる事に感謝せずにはいられない思いになった。

私が入院して、ひと月が過ぎ、九月の大型連休、「シルバーウイーク」も過ぎた、ある日、純ちゃんは、私に何か言いたげなそぶりをするけれど、落ち着かない仕草をしては・・・
「カコ、病院暮らしは、辛いよね!」
「カコは、偉いよね、毎日、毎日、点滴に繋がれての生活だもの・・・」
「カコ、あのね!カコ!ちょっとね!」
そう言ったまましばらく黙ってから、今から、仕事だから行くね・・・

なんとも、気になる、純ちゃんの様子!、同じような事が二~三度繰り返しあって・・・
「カコ、いつ頃、退院出来るのかな~」
「一緒には無理でも・・・」
私は、純ちゃんが、何か、いけない事!、私に対しての裏切り!、何をしたのかしらと、邪推して自らの想いを汚してる・・・


                    次回につづく


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