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この平穏退屈な日々にもそれなりに感動って在るもの。

『SMALL GREAT THINGS 小さくても偉大なこと』を読んで

2020-10-26 09:33:16 | 私の読書日記
映画化もされた『私の中のあなた』の著者、ジョディ ピコーの小説はいつもとてつもなく凄い。作品ごとに社会的テーマがあり、それをものすごく勉強し尽くして、最後にはそのテーマを軸に、人を夢中にさせる素晴らしい物語へと昇華させる。
私はもちろん作家ではないけど、敵わないなと思う。本当に尊敬するこれぞ小説家だ。

そんな彼女がこの本で取り上げたテーマが、人種問題だ。
まさに今年様々なところで取り上げられた”BLACK LIVE MATTERS”

アフリカ系アメリカ人のルースは助産師歴20年のベテラン。アフリカ系が一人しかいないニューヨークの産科病棟に勤めている。そんなある日、白人至上主義者夫婦の赤ちゃんを担当する日があり、彼らにアフリカ系アメリカ人には自分たちの子供を担当してほしくない旨を伝えられる。憤慨するルースだが、その何日か後、院内でその赤ちゃんは包茎手術を施された後、突然容態を悪くし死んでしまう。運悪く、ルースはたまたま術後のその赤ちゃんを一瞬だけ見ていて、と別の助産師に頼まれた矢先の出来事だった。白人至上主義者の夫婦はルースを訴えるが・・

ざっとこんな内容の上下巻。
単純に、どんな風になっていくか、人種問題を軸に裁判していくんだろう、なんて思っていたら、どうやら、小説の中の弁護士曰く、「アメリカの刑事司法制度のなかで人種問題を語ることは御法度とされています。人種問題はなんであれテーブルに並べられた罪状の飾り物だというふりをして、審理を進めなければならないわけです

私は今回それを知って、そうなの??こんなに明々白白ことなのに、なぜ??と衝撃が走ったと同時に今年(もちろん彼らにとってはそれは今年始まった話では全くない。奴隷制度以来本当の意味で人種差別がなくなる時なんて来るのか??)あんなにも暴動
が起きたのも、やっとやっとああして大きく人々が立ち上がったんだろうか。

とにかく、ルースの人生を知れば知るほど、彼らが暮らす当たり前の日常がいかに容易でなかったかが痛いほどわかる。

ルースを担当する白人弁護士ケネディが言う通り、気づいていないことも含め、きっと皆誰しもがレイシストな部分を持っているのだ。