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物資不足、奪い合う住民 ハリケーンでニューオーリンズ

2005-09-02 | 自然災害
無造作に放置された遺体。物品を奪い合う群衆。大型ハリケーン「カトリーナ」に襲われ孤立した米南部の都市ニューオーリンズは1日までに無法地帯と化している。避難所で息絶える人も相次いでいるという。

「私が見ただけでも5人が死んだ。車いすのお年寄りや乳幼児だ」

 ニューオーリンズ中心部から小型トラックで逃げてきた中年男性のジョージさんが放心したように語った。

 市内の国際会議場の管理担当者だった。被災後、会議場は1万人以上の避難所になった。泊まり込みで自家発電機を動かし続けた。しかし、水や食料はほとんどなく、力尽きる人が相次いだ。

 前からあった遺体も含めて少なくとも7体が放置されたままだった。毛布や白いシーツがかぶせてあるだけだという。

 待ちわびた軍の救援ヘリコプターが1日、到着したが、群衆が押し寄せて危険なため着陸を断念。物資を投下して引き返した。人々は奪い合うなど暴れ始めた。


 警官数十人が派遣されたが、群衆に逆に追い返された。銃撃騒ぎは31日から頻発している。「このままでは自分も危ないと思い、職場を離れた」「恐らく1日夜には自家発電も止まるだろう。行き場のない何万人もの人々がどうなるのか」。ジョージさん自身、行く当てもないという。

 AP通信によると、この会議場は特にひどい状況だ。息を潜めていたカナダ人男性は「ここを生きて出られるか分からない。暴動も銃撃も怖い」と同通信記者に語った。

 市警察のコンパス署長は「施設内で暴行やレイプが横行している。観光客が施設に立ち寄って、暴徒のえじきになっている」と話した。それでも暴徒を鎮圧する余裕は地元警察にはない。


 それどころか、襲撃を恐れて警察バッジを返上する警官も多数出ているという。脱出の途中だった男性エドワード・シモンズさんによると、スーパーマーケットの略奪に加わる警官の姿もあった。「人々はもはや獣のようだ」


 緊急支援活動を担当している当局者は「国家の恥だ」とAP通信に語った。市内には米連邦緊急事態管理庁(FEMA)が展開しているものの、「司令系統も何もない」と嘆く。

 「(スマトラ沖大地震の)津波被害に莫大(ばくだい)な支援を贈った我々の国は、足元のニューオーリンズ一都市を救えないんだ」

朝日新聞 2005年09月02日12時27分
http://www.asahi.com/international/update/0902/010.html
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