ちょっと嬉しかったこと

この間、作業を終えて、

仲間と深夜の神保町を徘徊していたときのことです。



一杯やって帰ろうと

とある居酒屋の窓から中を覗いたら

ちょうど窓際に座っていたグループの中の１人が

こっちを見て何か叫び出したのに、気が付きました。



窓越しなので、声は聞こえないが

どうも私に話しかけているらしい・・・。



（どっかで会ったことのある人だな）



そう感じましたが

いったい誰かが、全く思い出せません。



取り合えず、

ぎこちない笑顔で会釈しつつ

必死に思いだそうとしました。





私は記憶が薄いので、こういうことはよくあります。

話は飛びますが

ほんの数年前にも、

電車の中で突然女の子に話しかけられ、

同じように誰だか思い出せなかったことがありました。

そのときは

相手が非常に親しく話しかけてくるので

困って強張った笑顔で生返事をしてたら

「あれっ、ちょいなさん。もしかして、私のこと忘れてます？」

と気づかれて、慌てました。

そしたら

その数か月前まで、私の会社にいた女の子だったということがわかった。

さすがに自分でも呆れて謝りましたが

私はそのくらい、人の顔と名前をすぐ忘れるのです。







というワケで、この時も、

直接対面して気まずくなることにビビりながらも、


しかし席はあいているようなので

店の中へ入ることにしました。



ところが先方は酔いの勢いもあって

明るい、明るい。



「忘れてるでしょう。ちょいなさん」

と、

横を通る私に、いきなり笑顔で先制パンチ。



その言葉にも

ぎこちない笑顔で会釈を返しながら

何とか自分の席に着きました。

そして

その瞬間、思い出した。


（あ～、Ｅ社のスズキさんだ）



玩具メーカーＥ社は

私が入社して初めて担当したクライアントで

このスズキさんは、

開発部の課長さん（当時＝20年近く前）だったのです。



（こりゃ、失礼しちゃった。挨拶いかなくちゃな）

そう思いつつも


Ｅ社との取引では

仕事柄、通常は宣伝部の方との接点ばかりだったので

スズキさんとは一度か二度会ったくらいのはずだけど。

何でこんなに親しげに話してくれるのかな？

どんな接点があったんだっけかな？

と、

逆に疑問が膨らみ、悩んでいると・・・



「どーも、お久しぶりです」

とビールを持って

スズキさんの方が来て、私の隣に座ってしまいました。





グループから抜けて来てくれたらしい。

（最初の一杯はスズキさんにご馳走になってしまいました）





で、続けて

熱く語り始めた彼の言葉で、

ようやく彼との接点を思い出しました。




「ちょいなさん、

僕はちょいなさんと仕事したことが忘れられない。

今日は嬉しいです。

ほら、昔、幼稚園で園児を集めて

グループインタビューしてくれたじゃないですか。」




あぁ、あの時・・・



当時、スズキさんは幼児用玩具を開発していて

でも準備にかける予算が少なく、

調査ができなくてお困りだったのだと思います。

（彼は発売計画を立てる前に

子どもたちの生の声が聞きたかったのだ）



何かの拍子でそれを聞いた私は

会社の先輩の子供が通っている幼稚園を紹介してもらって

グルインの場を作ってご案内したのでした。

すっかり忘れていました。





「僕はあのとき、本当にうれしくて・・・」



要はスズキさんは

あの時の私の対応に

未だに感謝して下さっているらしいのです。





スズキさんの紅潮する顔を眺めながら

私はビックリしていました。





細かい経緯は覚えてないけど、

たぶん、サービスでやったんだと思います。


当時、Ｅ社に対して思いがあった私には

それで売上が上がる、上がんない関係なしに

無我夢中でいろんなことをやってました。

（でも、それと比例するように、

　宣伝部からの売上も上がっていたので幸運でしたけど）




だから、

こちらにとっては

自分の子供の幼稚園にお願いしてくれた先輩には迷惑をかけたけど

大したことをやったという記憶は全くない。




それでも、

１０年以上経っても

こんな風に思ってくれている人がいたなんて・・・


本当にビックリしました。

そして

本当にしみじみ嬉しかった。




実はこのとき、

いろいろ滅入りまくっていたので

このスズキさんとの奇跡的な遭遇は

神様からのご褒美のように感じました。




営業の仕事って、

やっていることは

人のために尽くしているだけに思えるけど、

それに何だか

その場でどんどん消費されていくことのように思えるけど

一生懸命やっていれば

何かの喜びとなって、

自分にも返ってくるのかもしれない。


そんな風に感じることができました。




長くやっていると、こんなこともあるんですね。


スズキさん、ありがとうございました。






※追伸：

そう言えば、一昨日も

昔お世話になっていた某ビデオ会社の部長から

いきなりお電話いただきました。

Ａ社に移ったから、今度遊びに来いや、という連絡でした。

後でネットで見たら役員になられてました。

これも嬉しかった。

おめでとうございます、シミズさん。










だから、広告会社の営業は面白い！







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※The reason why the title is“広告代理店はイヌと同じだ”