パンドラの箱を開けるとちむがいた

書くスピード早いですが、誤字脱字多し。

15冊目

2006-05-21 00:30:25 | Weblog
◎15「中傷と陰謀 アメリカ大統領選狂騒史」有馬哲夫、2004、新潮新書



感想:
アメリカの大統領選挙でテレビが使われるようになったアイゼンハワーの時代から
ブッシュ(息子のほう)まで丁寧に解説してあり、大変面白かったです。
筆者は早稲田社会科学部の教授ですが、話の展開もうまく、すらすらと読めました。

アメリカの大統領選挙では大統領は「商品」であり、それを売り込む広告代理店や
データ分析の会社などがマーケティング手法を駆使して選挙を戦います。
勝てば官軍なので、どんな汚い手を使ってでも相手を追い落とそうとします。
特に民主党と共和党の代表が決まったあとでは、一騎打ちになり、かつ、両者とも政策には
大きな違いがない場合が多いので、違いを存分に発揮できる
ネガティブキャンペーンを張るとのことです。

これまで、日本の総理大臣もアメリカの大統領のように直接選挙で選べば良いと思って
いましたが、この本を読むと、「そうでもないな」と考えさせられました。
結局、直接選挙の行き着く先はポピュリズムであり、
聞こえのよい政策しか聞こえてこなくなると思います。

小泉さんは劇場型とよく揶揄されましたが、あの人は本書でも取り上げられているレーガンのように、
マスコミがごちゃごちゃ言うことを突っぱねられるぐらい国民から人気があった稀有な例でしょう。

たとえば、前回の選挙で、当初マスコミは、政策問題は郵政だけではないということ
を言っており、民主党の岡田さんは郵政以外の問題について地道に訴えていましたが、
小泉さんが郵政にまとを絞って訴えを続けると、その分かりやすさと、映像の使いやすさから、
マスコミは小泉さんの主張を連日TVで取り上げました。その映像にたとえTV解説者が郵政以外にも
政策課題があるといっても、コミュニケーションの原則では7%程度しか言葉には
注意を払っておらず、残りは表情と話し方に人は注意を払っていることから、
小泉さんの堂々とした話ぶりと強い口調の「映像」しか残っていません。
その内容が郵政一本なので、いつしか国民も争点は郵政だと思い
(というよりも他の問題を考えるのが面倒だし、小泉さんは構造改革で成果を
上げているみたいだし、と思考が停止した)、分かりやすい小泉さんに投票したと言えると思います

ちなみにレーガンはその人気から、現役中は不問だった失業率の上昇や、福祉の圧縮などの
弱者切捨ての政策が次の政権では大問題になり、政治家のレベルとしては
非常に低かったと書いてあります。

①民主党の党首が小沢さんになったとたんに、それまでの民主党から変化していないにも
 かかわらず、民主党に勢いがでた
②マスコミの世論調査で、マスコミの設問の仕方によっては一方に賛成・反対を仕向けることができる
③世論調査の結果を、直接選挙でない日本でこんなにも重視してよいのか?
  という政治学的なこと
④岡田代表と小泉さんの時代から、日本でも本格的なTV選挙になるのではないか

等々、まだまだ書いておきたいことがありますが、この本を読むと、日本の選挙と政治を
あらためて考えさせられる機会になり、非常によかったと思います。



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