武蔵野つれづれ   第3の生活を自由人として

中国での体験記を記して参りましたが2012年の秋に帰国しましたので、これからは武蔵野での生活を徒然なるままに書きます。

第72話 長江 途方もなくでっかい河口

2013-05-05 14:43:25 | 上海

長江(揚子江)の河口は上海にすぐ北にある。この川に2つの島がある。上海側から第一の島(長興島)まではトンネル、第2の島(崇明島)までは橋、更に対岸(啓東)までは橋である。このトンネルと2つの橋はそれぞれ約10kmあるので、合計30kmということになる。因みに東京駅から30kmというと、横浜本牧・相模原・立川・川口などの地点である。従い、東京駅から立川までが川幅ということになる。何とドデカイことか!!!!!


飛行機から見た長江の河口付近。真ん中に横たわっているのは二つの島。川の向こう岸は遥か遠くで、ほとんど見えない。


中国の水系図を見て驚いた。中国の中部および南部の川のほとんどが黄河か長江のいずれかに合流しているのである。特に長江およびその支流域は全土の3割以上を占める。中国の総面積は日本の25倍。つまり日本列島の8倍の地面に降った雨が、この長江の河口に流れ込んでいることになる。(蒸発分や地下に浸み込んだ分は除く)やっぱり河口は30km必要なのだ。

昔、日本に来た中国人が瀬戸内海を見て「日本にもこんな大きな川があるのか」と言って驚いたという話を聞いた。どうも作り話っぽいが、長江の大きさを表すには良くできた話とも思える。







ここでクイズです。

「川」と「河」と「江」の違いは何でしょう ?
どちらも river の意味ですが。



黄河水系のリバーを「○○河」と呼び、長江水系は「○○江」と名付けられています。例外的に東北部のリバーは「○○江」となっています。例えば「鴨緑江」など。
では、「川」はどうなのか? 「川」という字は水が流れる形から出来た象形文字で元々はリバーという意味もあったが、今の中国ではリバー周辺の平野を指したり意味が広くなっているようです。

外国のリバーは、例えばアマゾン川は「亜馬孫河」のように全て「○○河」と書きます。ただ日本のリバーは例外で、「鴨川」「桂川」のように書きます。中国人としては、「鴨河」「桂河」と書く方がピッタリ来るそうですが、一応日本の原住民の習慣を尊重しているそうです。


第58話 蘇州の拙政園・留園・獅子林  世界遺産

2012-07-16 22:59:30 | 上海

蘇州は上海から高速鉄道を使うと30分で行ける。自然院の年代では、蘇州と聞くとまず思い浮かぶのは「蘇州夜曲」である。

 ♪ 君がみ胸に抱かれて聞くは、夢の舟歌、恋の歌、水の蘇州の花散る春を ・・・・・
 
日本人の手(西条八十・作詞、服部良一・作曲)による曲とは思えないくらい、中国情緒たっぷりの曲で高校時代に愛唱した。「東洋のベニス」と呼ばれるように、運河が縦横に走り、今も生活のインフラになっている。

  

蘇州は案外広い。そこで、今回の目的は運河めぐりでなく、庭園めぐりに絞った。唐代、シルク産業で栄えた蘇州は国内有数の大都市に成長した。そして、富豪たちが競い合うように、この地に江南式庭園を造った。そのうち、9か所が世界遺産に登録されている。

さらにその中で、拙政園・留園・獅子林の3つを一日かけて周ることにした。なぜこの3園なのか?
まず、拙政園は規模が最大だから、獅子林は太湖石庭園の代表だから、そして留園は、昔会社の近くに同名の中華料理屋があり、親しみを感じたから。

漫然と見ると、中国の庭園はどちらも同じように見えるが、注意してみるといろいろ工夫されている。まず庭園は壁や建物でいくつかの景区に区切られている。そして、壁には左下の写真のように、大きな飾り窓が開いている。訪問者に中の様子がチラっと見せ、次の景区への期待感を募らせるという仕掛けだそうだ。

 
景区と景区の間は、飾り窓(漏窓という)付きの壁や、丸い入口「円洞門という)で緩く区切られている。円洞門では、次の世界の景色を切り取って見せるというのも一つの仕掛け。

建物から庭園を見る方法も工夫されている。中から窓を通して外を見ると額縁の中の絵のように見えるようになっている。そしてどの窓からの景色も、それぞれ違う絵のようになるように工夫されているとのことである。

   
左二つは漏窓。右は飾りがなく空窓という。

 庭は、半分くらいの面積を池が占める。水と橋と回廊と楼閣と石と植栽が中国庭園のパーツである。

庭のゴツゴツした石(早い話、鬼の押し出しのような石)は太湖石と呼ばれ、太湖の湖底から取れる石で、浸食により無数の穴があいている。秀・痩・漏・皺の基準から価値が測られるそうだ。

 
左は留園の冠雲峰。天に聳える雄姿で太湖石の傑作とされる。

  
左写真:獅子と龍が戦っている形(に見えますか?)

太湖石だけでなく、中国人の石へのこだわりはすごい。石を平面に磨いて、天然の模様を楽しんだ。下の写真の模様などは、人が描いた絵のようだが、天然の模様である。

  

 
庭の要素は、石以外にも、もちろん植栽が重要である。このために盆栽がある。Bonsaiは英語になっているが、やはりルーツは中国である。日本の盆栽ほど「小ささ」には拘らないように見えた。

   
石も立派な盆栽

庭を設計した人の絵もありました。どこに見どころを置くか、また歩きながら角度が変われば見どころはどうなるかなど、客の動線を考えながら無数の可能性を考えながら設計してたのでしょうね。おかげで良い目の保養をさせて頂いています。

 

屋根も面白いですよ。クネクネと!!

 


第57話 上海の骨董品街

2012-06-30 00:01:42 | 上海

上海には「繁栄とは無関係」と言っているかの如く、昔のままのたたずまいの街路が所々にある。この骨董品街もそのひとつである。


「東台路古玩市場」というのが正式名。入口には門がある。


[左]外国人も多い。 [右]立派な仏像もあるがどこから持ってきたのだろう?
 

毛さんグッズは多い。一時は世界一のベストセラーだったが、モウ要らなくなったという家庭が多いのだろうか???


古ぼけた鞄。こんな物、買う人がいるのかなあ????

 


第52話 菜の花畑

2012-04-23 22:18:37 | 上海

前回は桜の話を書いたので、今回は菜の花の話を書きます。
自然院は上海といっても郊外に住んでいる。周りは田畑が多い。この季節は一面が菜の花畑となる。菜の花の淡い黄色は実に良い。香りも、これほど春を感じさえる牧歌的香りはないと思う。色と香りは日本と全く同じである。

 2年前にも「江南の春」と題して菜の花のことを書きました。興味ある人は http://blog.goo.ne.jp/chansha/e/cf7fcd3272806c930d95781a28074c09 へどうぞ。

 


第51話 花見・桜 中国で

2012-04-03 19:38:20 | 上海

中国にも桜はあるの??ってよく聞かれます。 そうです、立派な桜公園があるんです。上海に。
4月2日、25度の汗ばむような陽気に誘われて、花見に行ってきました。


上海環球金融中心(492m。世界最高の展望台)を背景に。

 
桜を背景に写真を撮る人々。日本も中国も同じ風景。

 桜は、染井吉野ですから日本から移された木かもしれません。中国人は伝統的に国花である牡丹のように、はっきりとした豪華さが好きである。淡い豪華さと潔さを誇る染井吉野の魅力が中国人に伝わるのか、ちょっと興味のあるテーマではある。

日本でも、和歌で「花」と言えば桜を指すが、奈良時代までは中国伝来の梅を指したとか。その後、桜の方が日本人の気質に合うとのことで桜に変わったそうです。好みは時代と、国柄によって異なるところが面白い。


第50話 按摩・足もみ・マッサージ 中国事情

2012-03-18 13:42:31 | 上海

中国駐在員にとっての恩恵の一つは、極上のマッサージを安価で受けられるという事だろう。上海には按摩店が軒を連ねる按摩通りがある。


 按摩通り (「按摩・盲人按摩」「足浴・足道」・・・・・の看板が続く)

確かに安い。1時間で800円くらい。(地方なら、その半額くらい。) 自然院のような腰痛持ちの身には有難い。全身1時間、足もみ1時間のコースを週一回受けることにしている。この値段で申し訳ないくらい懸命に揉んでくれる。(按摩師は腱鞘炎にならないかと、他人事なが心配したりするが。)
按摩は典型的な労働集約産業。経済大国日本に生まれた幸運を有難く思うひと時である。

ただ中国では免許がないのか、あっても遵守されていないのか、按摩師によって上手下手の差が大きい。試行錯誤のうえ上手な按摩師を選んで指名することにしている。


按摩店にあった足もみ絵図。中国の伝統文化であることを感じる。

 


第46話 上海蟹余談

2011-12-29 00:09:26 | 上海

上海蟹の旬は11月と12月である。今年の年末はよく食べた。レストランで食べると、一匹150-180元(2000円弱)、スーパーで買ってくると50-60元(約700円)。週末に雄雌一匹ずつ買ってきて茹でる。

蟹は紐でくくって売っている。ある金曜日の夜、きつく縛られたままだと可哀そうだと思って紐を少し緩めておいて寝た。次の日に食おうと思ったら蟹がいない。あわてて探したら部屋の隅っこにいた。「こいつふざけやがって」と甲羅を箸でコンコン叩いてやったら、怒ったように箸をハサミでつかみ掛かってきた。

 

そんなことをして遊んでいたら、だんだん情が移ってきた。「こんな遊び相手(と言っても蟹は本能的に反応しているだけだろうが)を食っていいのか? 自分はたまたま人間に生まれてきて、彼は蟹に生まれついてきた。そんな偶然の関係に甘えて、俺は食う権利があるのだろうか?」

しかし、こうも思う。「相手は食物である。食物は人間に食べられるために存在するのである。」 そうだ、俺が食べなくても、ほかの誰かが食べるんだからいいんじゃないか。

そう思い直して、熱湯の中へほおり込んだ。と思ったら、奴さん、鍋のへりに足を引っ掛けて外へ飛び出した。勢い余って床にぶつかって足を2本折った。「観念しろ」ともう一度鍋に入れたら、瞬時に動かなくなった。一命が失われた。美味を求める人間の欲望のために。
「南無妙法蓮華経」「南無阿弥陀仏」お題目と念仏を唱えて、食べた。

単身赴任で蟹とたわむれる自然院でした。

 


第37話 中国の100円ショップ

2011-07-14 22:12:49 | 上海

中国にも100円ショップに相当するものがある。ここでは1元ショップまたは2元ショップである。1元は12円、2元なら25円に当たる。いくら物価が違うとは言え、そんな値段で何が買えるのだろうと思われる方は写真をご覧下さい。大体日本と同じような物を売っている。

 
  1元ショップ

 
 2元ショップ

日本の百円ショップもほとんどが中国から輸入しているようだから、ここが本場と言えるかも知れない。それにしても、やっぱり安い。雑記帳などは買い得だと思うよ。1


第36話 中国のトロピカルフルーツ

2011-06-16 21:37:43 | 上海

食べ物の話になったので、果物の話題にしよう。中国はトロピカル・フルーツでは恵まれている。なぜなら、南に中国のハワイと言われる海南島がある。また、タイ・ベトナムも陸続きだから簡単に運び込まれて来る。しかも、安い!!!

例えば、マンゴは一個数十円から百円くらいで買える。日常的によく食べる。

これはライチ。楊貴妃が大好物で、その昔、海南島から長安まで運ばせたそうである。皮の色は緑から赤へ変わって行く。味は甘さに独特の苦みのようなものがあり、食べ出すとやみつきになる。
 
 

イソギンチャクのような赤い毛で覆われているのはランブータンという。味はライチを似ているが微妙に異なる。
 

これは竜眼という。やや小粒で果肉は半透明で中の種が透けて見える。なるほど目玉だ。


トロピカルではないが、山竹。大きさも外見のザクロに似ているが、皮はそれ程堅くなく、手で何とかむける。中身はライチ。甘酢ぱい。自然院の好物の一つである。


第34話 上海万博中国館

2011-05-08 13:39:16 | 上海

 自然院は上海と日本を往ったり来たりの生活です。日本でもゴールデンウィークが過ぎた今頃になって、自粛ムードに覆われていた列島にも漸く本来の活気が戻って来た感じがしてほっとしてます。
今回は、少し景気付けに中国での行楽を書きます。

 万博は昨年10月末に閉幕しました。予想どおり大阪万博を凌ぐ入場者数を達成しました。というより、政府が力ずくで達成させたと言う方が正しいかも知れません。地方の国営企業に動員をかけたり、上海市民にタダ券を配布したり ・・・・・。何が何でも目標を達成するのだという中国らしい、なりふり構わぬ施策がまた行われました。 会社の同僚達の中にも「タダ券をもらったから行ったが、2時間で出て来た。」なんてのもいます。

 自然院もせっかく上海に居るのだから一度は行こうかとも思っていましたが、入場するのに数時間、人気館ならさらに数時間も待たされると聞くと二の足を踏んでしまいます。そうこうしているうちに閉幕してしまいました。

 ところが、・・・・・・ 閉幕後1月経って、12月に中国館だけ半年間オープンすることになりました。中国館には、是非見たいと思っていた巨大ディスプレイがあります。それで出掛けました。かなりの人出ではありましたが、待たされることはほとんどありませんでした。期待通り、巨大ディスプレイはすごい迫力でした。

 

何がすごいかって? 

1.まず、端から端までスクリーンの絵が繋がっています。
2.さらにその絵の中の人物や牛や船がエンドレスで動く。その動作がすごくナチュラルです。
3.時間も変化する。夜は夜らしく提灯の灯りが何とも言えない情緒を醸し出す。朝は光が眩しく思えるような雰囲気が出ています。

とにかく、こんなでかい物よくも作ったなあ。ハードもソフトも。さすが今の中国の勢いはスゴイ。素直に驚嘆できました。

 


第26話 上海蟹

2010-12-06 21:24:17 | 上海

上海蟹は10月が雌の卵、11月は雄の蟹味噌が美味しいと言われている。今年は両方とも食った。

 
【左】上海蟹                【右】陽澄湖周辺 (赤丸が陽澄湖、緑丸が蘇州、青丸は上海)

上海蟹(中国語では大閘蟹)とは、上海から50kmほど西にある蘇州(「蘇州夜曲」の蘇州。中国のベニスとも言われる。)の近くにある陽澄湖で取れる蟹のことである。この湖底は蟹が運動するのに好都合の泥状態になっており、それが美味の秘訣と言われ、高級ブランドとなっている。

しかし、上の地図でご覧頂くと分かるが、周りには沢山の湖があり、当然同種の蟹が住んでいる。価格に雲泥の差があるから、偽物が絶えない。そこで、蟹の背中にレーザ光線でマークを付けたり、タグを付けたりといろいろ手を施したが、もともとが偽物天国の中国のこと、マークタグも偽物を作る始末だから、お手上げ状態らしい。
蟹に「お前何処の湖に住んでいたの?」と聞く訳にもいかないから、まあ、店を信頼するしかない。


第20話 書道考

2010-09-15 15:19:05 | 上海
 前話で蘭亭の話が出たので、今回は書道に関する考えを書いてみたいと思う。

 自然院が書道に関わり合うようになったのは、6年前、ルーマニアの交流センターやブカレスト大学で書道を教えなければならない立場になったので、赴任前にTK先生の門を叩いた時に始まる。

 TK先生は、今上陛下の東宮時代の書道ご進講役であった故桑原翠邦先生の愛弟子で、今の書道界の重鎮である。そんな偉い先生であるが、快くマン・ツウ・マンで4時間みっちり教えて下さった。終わった時にはガックリ疲れが吹き出した。そんな特訓を数回繰り返したので、書道が上達したとはなかなか言えないが、少なくとも書道の楽しみ方だけは幾分でも分かった気がする。

 TK先生の書道は、古典の臨書を基本とする。つまり、日中の古典を手本にして達人の筆使いを疑似体験することによって、達人の美意識を学ぶことにある。達人の中でも王羲之は筆頭である。王羲之の作品は、初心者の自然院でも見ていて惚れ惚れとする。

書道の面白さは「不均衡の中の均衡」ではないかと、自然院は解釈している。
 そもそも前後左右、全く均衡の取れた文字なんてのは、面白くも何ともない。だから、わざと不均衡を作るのである。四角張って剛健に書いてみたり、丸みをつけて優雅さを出してみたり、突如、ズカリとやってみたり・・・・これらの不均衡は適度な味付けとなって、全体をみると見事な均衡に仕上がっている。そんな美を見つけるのが書道の面白さではないかと、自分なりに解釈している次第である。
 
 それでも時々「王羲之先生、この点はこんな所にあるのは変じゃない?」とか「この線は右下がりになっているけど、いいの?」とか疑問を感じることがある。そうすると王先生は自然院の心の中で答える。「そう思うなら、そう書いて見なさい。」よし、それならばと書いてみて、王先生の書と比べる。結果は明らか。王先生の書は品があり凛としていて魅力がある。自然院のは品も無ければ迫力も何も無い。自分の軽率な思いは無残に打ち砕かれ、「参りました。」それが楽しい。



 自分の未熟さを直視するために自分の書を壁に張り出して眺める。幸い私の社宅の居間は壁打ちテニスが出来るくらい広いので、張る壁には事欠かない。毎日これを見ながら、達人の足下にも及ばない(当たり前だが)自分の惨めさ、悔しさを心に刻んで、次に書くときのエネルギーにしている。

 ある時、ふとTK先生が言われた。「そうやって書いていると、習字なんてのは何てつまらないか分かるでしょう。」一瞬、耳を疑った。「習字がつまらない?」それでは自己否定になるのでは? ・・・・ 自問自答しながら、やっとその意味が掴めたのは翌日である。習字とは、学校教育で字を綺麗に書く練習である。我々がやっているのは書道。つまり美を求める芸術活動である。そうだ、習字を書道は違うんだ。やっと納得。それからは、他人から「習字をやっておられるそうで・・」と言われると「いいえ、書道です。書道・・・」

 中国の古家には、様々の書が飾ってあることが多い。それらを眺めながら、達人たちの息づかいを感じる。中国に来て良かったと思う一面である。

第19話 憧れの蘭亭と西冷印社

2010-08-21 09:04:03 | 上海

 西湖の東にある蘭亭にやってきました。蘭亭は書道の聖地です。  

 どういう事かと言うと、東晋の時代(300年年頃)に出た王羲之の書いた楷行草が、後の書の基本となっています。日本三筆の一人空海も王羲之の影響を受けています。従って日中の書道に志す人は、彼を書聖と呼び須く敬っています。

 その王羲之の書の中で最も有名なのが、此の地で書いた「蘭亭の序」と呼ばれる漢詩です。蘭亭の庭の曲水のほとりに沿って招待された文人たちが陣取り、杯が流れて来ると即興で歌を作り、作れなかった人は罰ゲームとして杯を飲み干す。そんな風雅な遊びをしながら作ったそうです。  

 自然院も書を志す輩の端くれでありますからして、蘭亭は前から是非訪れたいと思っていました。序にある通り、小高い山に囲まれた静かな竹林に恵まれた水明の地という感じがいたしました。

曲水の宴は、この曲水に杯を流して行われた。聖地と思うからか、やはり風雅な雰囲気が漂う。

石碑には「蘭亭」と書かれている。

石碑の「鵞」は王羲之が、「池」は息子の王献之が書いた。周囲には、文字通り鵞鳥が居た。

美しい! 惚れ惚れとするほど美しい!! 


 ところで、そんなに崇められる王羲之ですが、彼の書いた直筆は残念ながらこの世に残っていません。彼の書を熱愛する唐朝2代目太宗皇帝が、国中の王羲之の書を全て集め、自分の墓に埋葬してしまったからです。(どうも中国の王様はやることが激しい。)

 ただ埋葬する前に数人の書家に忠実な手書きコピーを作らせました。今日我々が目にする事ができるのは、これらのコピーです。コピーだから皆同じかというと、書家によって微妙な差異があります。これらの違いを感じながら臨書するのも一つの楽しみ方ともなっています。

 今回書に関係ある地としてもう一つ訪れたのは、西湖畔にある西冷印社です。これは1904年に篆刻研究所として建てられました。篆刻とは石に印を刻むことです。篆刻専門に研究所を作るなんて、やっぱり書の国なんですね。

この円形の穴が正門です。内側から見たところ。向こうは雨に煙る西湖です。柳も垂れ下がって風雅です。


第18話 茶葉博物館

2010-07-27 22:03:36 | 上海
さすがは茶の国、龍井茶の産地には「茶葉博物館」がある。お茶に関する総合館としては、唯一だそうだ。
館内には、茶史、茶事、茶具、茶俗、茶縁などのテーマで展示がある。



緑の庭園の中にある博物館


茶葉で作ったオブジェ。これをちぎりながらお茶を入れる。


茶こしを使わずにコップに湯を入れただけの龍井茶。なくなれば、お湯をつぎ足して飲む。

博物館の庭で頂いた昼食。

第17話 霊隠寺と龍井茶

2010-07-23 22:21:43 | 上海

 西湖から少し離れた霊隠寺へ行った。326年創建の中国禅宗10刹の一つで、最盛期には3000人の修行僧がいたという。確かに境内は広い。参道の途中の岩肌には多くの石仏が彫られている。深山幽谷という感じで、石仏には相応しい谷間という感じがする。


こんな所によくも、と思われるくらい、びっしりと刻まれた石仏。

見るからにふくよかな感じの仏さん。「メタポ」なんて言葉がなかった時分、太っ腹が尊敬されたのだろうか。


善男・善女の群れ。線香は日本より大きく束になっている。線香を順次東西南北に向けて祈願する。


ご本尊の仏様。大きくて金色で目映い。
 

周囲は龍井茶の特産地である。一面に茶畑が広がる。龍井茶は緑茶の代表である。本来はこの辺りの龍井村周辺でとれる茶を「龍井茶」というが、中国全土で売られている「龍井茶」はほとんどが他所生産の偽物だそうである。今回農家から250gを250元で買った。土地柄これは間違いなく本物である。上海の茶屋店頭で比較してみると、1/4くらいの値段のようだ。ラッキー !!


左の写真のように、釜に擦りつけるようにして煎る(揉捻)のが龍井茶の独特の製法だそうだ。そのために茶葉が扁平になる。茶は茶こしを使わず椀の中に湯を注ぐだけなので、不精者の自然院には丁度良い。