世界最大の宮殿、故宮。 その真北に景山という小高い山がある。ここは故宮が見下ろせる唯一の場所である。ある真昼にここから故宮の写真を撮った。それが下の写真。故宮の広大さは感じられる。しかし、真北からのショットなので完全な逆光である。少し物足りない。
「逆光でなく、夕陽に輝く故宮を撮りたい。」この思いは日に日に募っていった。それには、いくつかの条件をクリアしなければならない。北京はほとんどが、スモッグに覆われており、抜けるような青空は一年のうち数日したない。すなわち、次の3条件が必要である。
①雨上がり
②風が強く塵芥を綺麗に吹き飛ばしてくれた直後
③快晴
9月某日、遂にその日がやって来た。満を持して夕方山に登り、撮った。
真西(写真右側)からの夕陽を受けて輝く故宮
景山を下から見上げる。高さは43m。紫禁城の周りの堀(下の写真)を作った時に出た土を盛って作った人工の山である。愛読した浅田次郎の「蒼穹の昴」にも、明朝最後の皇帝がこの山で首をくくり、宦官に看取らせた話とか、西大后がこの山に登り西側のカメラマンにわざと露出するように仕組んだとか、いろいろ因縁が出てくる山である。
冬になって北京の空が絶望的なスモッグに覆われたことは報道の通り。今この写真を見ると澄み切った秋の空が隔世の感がある。