武蔵野つれづれ   第3の生活を自由人として

中国での体験記を記して参りましたが2012年の秋に帰国しましたので、これからは武蔵野での生活を徒然なるままに書きます。

第71話 夕陽の故宮(紫禁城)   世界遺産

2013-02-26 21:24:52 | 北京

世界最大の宮殿、故宮。 その真北に景山という小高い山がある。ここは故宮が見下ろせる唯一の場所である。ある真昼にここから故宮の写真を撮った。それが下の写真。故宮の広大さは感じられる。しかし、真北からのショットなので完全な逆光である。少し物足りない。

「逆光でなく、夕陽に輝く故宮を撮りたい。」この思いは日に日に募っていった。それには、いくつかの条件をクリアしなければならない。北京はほとんどが、スモッグに覆われており、抜けるような青空は一年のうち数日したない。すなわち、次の3条件が必要である。
   ①雨上がり
   ②風が強く塵芥を綺麗に吹き飛ばしてくれた直後
   ③快晴
9月某日、遂にその日がやって来た。満を持して夕方山に登り、撮った。


真西(写真右側)からの夕陽を受けて輝く故宮


景山を下から見上げる。高さは43m。紫禁城の周りの堀(下の写真)を作った時に出た土を盛って作った人工の山である。愛読した浅田次郎の「蒼穹の昴」にも、明朝最後の皇帝がこの山で首をくくり、宦官に看取らせた話とか、西大后がこの山に登り西側のカメラマンにわざと露出するように仕組んだとか、いろいろ因縁が出てくる山である。

冬になって北京の空が絶望的なスモッグに覆われたことは報道の通り。今この写真を見ると澄み切った秋の空が隔世の感がある。


第70話 庶民生活(2)

2013-02-15 14:43:58 | その他の中国都市

中国の都市というとゴミゴミとしたイメージを持つ人が多いが、公園は立派である。地方都市でもロンドンのハイドパークに匹敵するくらいの公園がいくつもあることも珍しくない。しかも無料である。数年前に歴史上の施設以外の公営公園や博物館は全て無料になった。中国の国民はすべからくこれらの文化施設を共有する権利があるということを示そうという政府の意向だったといわれるが、とにかく英断だったと思う。中国は時々思い切って先進国の真似をすることがある。ハイドパークや大英博物館が無料であることをモデルにしたのだろうか?

庶民が手軽に楽しみを見出すうえで、公園は大きな意義を持つ。休日などでは、素朴な素人芸でも結構人が集まる。やって楽しむ、見て楽しむという感じである。

 
左:二胡の同好会かな?公園の一角を陣取って演奏していた。
右:日本の着物を模したパフォーマンスのような。ちぐはぐな余興という感じだが、とにかく楽しめれば良い。


ゆきずりの人たちが集まって大合唱。常連も多いのか歌声には随分迫力があった。


中国といえば、やはりこれ。太極拳はどこでも見られる。中年がほとんど。

 
水鉄砲を使って路上に字を書くおじさん。かなりの腕前で、人だかりも多い。さすが中国は文字の国。

 
公園の外では、路上販売。魚もビニールを引いて、その上でさばく。


第69話 中国の大気汚染 北京・上海 PM2.5

2013-02-05 11:58:49 | その他の中国都市

中国の大気汚染の酷さが報じられている。原因は暖房(中国は石炭を産出するので未だに石炭を多用する。)および工場・車両からの排気ガスの増加である。自然院の専門とする建設機械の面から、この問題について述べてみたい。

中国では排気ガスの規制基準が緩いし取締りも厳しくない。上図は、建設機械からの排気ガスに関する各国の規制の進化を示している。日米欧では1996年ごろから規制値の緩いTier1が始まった。その後規制が厳しいTier2、3と進み、現在では本当に技術的に達成可能か否か危ぶまれるほど厳しいTier4を目指す段階に入っている。
中国はTier2のままである。実は、この資料は中国の建機メーカを指導するために2010年作成したものであるが、当時はTier3への移行は2012年頃と言われていた。しかし、2013年の現在でも移行されず引き延ばされたままになっている。

なぜ中国政府は大気汚染規制に本腰を入れないのか。理由のひとつは国営の石油関連企業との癒着である。現在の低質燃料から良質な低硫黄燃料へ切り替えれば事態は好転するが、それには業界に多額の設備投資を強いることになる。環境保全基準を設定する機関のメンバーの7割は石油関連業界人で占められているので、石油業界(多くは国営)の収益を圧迫するような規制を設定しようとはしない。

排気ガスを改善するには、燃料のほかエンジンの改良も必要である。現在の中国のエンジンメーカでは対応できる技術は不十分である。聞いた話では、規制を強化するとエンジンは日欧米のメーカの独占になるので、ようやく芽生えた中国エンジンメーカを守るために政府は規制をしないのだという。

かくて、国営企業を中心とする産業界を保護し、政財の既得権益を守るために、国民の健康は犠牲にされている。朝日新聞も読売新聞も「中国の大気汚染を改善するために日本の環境技術を利用すべく日中政府が協力すべきだ」と書いてあった。確かにそれは理想であるが、中国の泥臭いこの権利構造が改善されなけばい限り、実現は難しいと思われる。