武蔵野つれづれ   第3の生活を自由人として

中国での体験記を記して参りましたが2012年の秋に帰国しましたので、これからは武蔵野での生活を徒然なるままに書きます。

第18話 茶葉博物館

2010-07-27 22:03:36 | 上海
さすがは茶の国、龍井茶の産地には「茶葉博物館」がある。お茶に関する総合館としては、唯一だそうだ。
館内には、茶史、茶事、茶具、茶俗、茶縁などのテーマで展示がある。



緑の庭園の中にある博物館


茶葉で作ったオブジェ。これをちぎりながらお茶を入れる。


茶こしを使わずにコップに湯を入れただけの龍井茶。なくなれば、お湯をつぎ足して飲む。

博物館の庭で頂いた昼食。

第17話 霊隠寺と龍井茶

2010-07-23 22:21:43 | 上海

 西湖から少し離れた霊隠寺へ行った。326年創建の中国禅宗10刹の一つで、最盛期には3000人の修行僧がいたという。確かに境内は広い。参道の途中の岩肌には多くの石仏が彫られている。深山幽谷という感じで、石仏には相応しい谷間という感じがする。


こんな所によくも、と思われるくらい、びっしりと刻まれた石仏。

見るからにふくよかな感じの仏さん。「メタポ」なんて言葉がなかった時分、太っ腹が尊敬されたのだろうか。


善男・善女の群れ。線香は日本より大きく束になっている。線香を順次東西南北に向けて祈願する。


ご本尊の仏様。大きくて金色で目映い。
 

周囲は龍井茶の特産地である。一面に茶畑が広がる。龍井茶は緑茶の代表である。本来はこの辺りの龍井村周辺でとれる茶を「龍井茶」というが、中国全土で売られている「龍井茶」はほとんどが他所生産の偽物だそうである。今回農家から250gを250元で買った。土地柄これは間違いなく本物である。上海の茶屋店頭で比較してみると、1/4くらいの値段のようだ。ラッキー !!


左の写真のように、釜に擦りつけるようにして煎る(揉捻)のが龍井茶の独特の製法だそうだ。そのために茶葉が扁平になる。茶は茶こしを使わず椀の中に湯を注ぐだけなので、不精者の自然院には丁度良い。


第16話 紹興といえば紹興酒

2010-07-11 18:42:02 | 上海

紹興と言えば誰でも紹興酒を連想する。壷に入った紹興酒を買った。これはまろやかで実にうまい。


紹興は、魯迅の故郷として観光地になっている。

左は魯迅の小説「孔乙己」の舞台となった居酒屋。一帯は古い街並みのまま保存されている。


魯迅が学んだ塾

 紹興は紀元前5世紀ごろ呉越戦争の舞台となった所で、興味の尽きないドラマチックな歴史がある。
 越に敗れた呉王は、薪の上で寝て(臥薪)復讐心を忘れぬようにし、やがて時を得て越を破った。今度は敗れた越王は呉王の馬屋で奴隷のような屈辱生活を強いられた。その悔しさを忘れぬために部屋に牛の肝を吊るして毎日舐めた(嘗胆)。これが「臥薪嘗胆」の起源という。 
 嘗胆の越王勾践(こうせん)を助けたのは名参謀范蠡(はんれい)である。范蠡は傾国の美人西施を呉王に送り込んで呉王をメロメロにしてしまい、呉を破る。これは史記に出てくる話で歴史ドラマとしては十分面白い。
 さらに范蠡は呉が滅びる際、西施を連れ出して斉まで逃げ、一生を添い遂げたという俗説があるが、ここまで来ると范蠡びいきの話かもしれない。

 それにしても、「勾践」や「范蠡」の名を聞くと、実は自然院にはググと来るものがある。それは自然院の生い立ちにかかわる物語である。
 自然院は、大阪河内の国で育った。楠正成の故郷で大楠公崇拝の風土が残っており、小学校では地元出身の先生から正成の武勇伝や後醍醐天皇への忠勤話は耳タコができるほど聞かされた。(だから足利尊氏はとんでもない悪い奴だとずうっと思っていた)
 音楽の時間には先生の趣味で後醍醐天皇を慕う児島高徳の歌(文部省唱歌)も習った。サビの部分は

 ♪ 天勾践(こうせん)を空しゅうする勿れ 時に范蠡(はんれい)なきにしもあらず。

  というメローディアスな曲でよく愛唱した。だから、子供の時から「勾践」や「范蠡」は他人とは思えない程の親しみを覚えてきたのである。50余年経って、その地にやって来るとは感慨無量である。


第15話 杭州西湖

2010-07-04 00:09:59 | 上海

 上海や杭州は鹿児島の西側800kmあたりの所にある。だから鹿児島が梅雨の頃は上海も梅雨である。「西湖へ行きたい。でも梅雨だから心配」というと、中国人の友人が「中国では雨の西湖も風情があると言われています。」という。
 蘇東波が西湖を詠った漢詩に「山色空濛として雨も亦奇なり」とある。さらにその美しさを中国4大美人西施になぞらえて「淡粧濃抹総て相宜し」と続く。すなわち、「晴れの西湖は丹念に化粧した濃抹姿であり、雨の西湖は薄化粧のようであり、それぞれに素晴らしい」と讃えている。絶世の美人というのは、肉眼で見た経験はないが、そんなものかなと想像する。

 やはり雨だった。淡粧の佳人に思いを馳せながら、現実には女房を連れて見物することにした。 最初にやって来たのは、西湖の南端にある雷峰塔。先ずは上から西湖を見ようという訳である。しかしガスっていて遠くは良く見えなかった。

それより塔の中に飾ってある木彫り絵に見とれてしまった。立体的に彫ってあり、迫力がある。
   


 次に淨慈禅寺を訪れた。ここは道元も修行をした所で曹洞宗も此処を本山としているとのこと。ってことは、永平寺より上ということになるのかも。

黄金の仏様は絵になる。  この坊様もどこか絵になる。


 次は曲院風荷。蓮の花を観賞する名所らしい。雨がひとしきり激しくなってきた。雨に煙ると遠景が適度にぼやけて景色が立体的に見えて、これもまた乙なものである。西施の薄化粧とは、これの事かも。淡粧濃抹総て相宜し。

 夜は湖畔で催される音と光のショー「印象西湖」を鑑賞した。北京五輪の演出を手掛けた張芸謀監督のプロデュースという。舞台が水面よりやや下に敷いてあり、その上で演技をするのだが、役者さんたちが忍者のように水面を歩いているように見えて面白い。湖を舞台にするスケールの大きさ、光を有効に使いソロになったりマスゲームになったり、変化のある構成で飽きることはない。一時間があっという間に終わった。


 抗州名物、鶏の蓮葉蒸しを食べた。鶏を蓮葉で何重にも包んだ物が店頭に並べてあり、注文すると蒸し焼きにしてテーブルに持って来てくれる。ハサミで蓮葉を開くと頭も足も丸ごと入っている。30元(420円)