武蔵野つれづれ   第3の生活を自由人として

中国での体験記を記して参りましたが2012年の秋に帰国しましたので、これからは武蔵野での生活を徒然なるままに書きます。

第60話 清代の夏宮 承徳 世界遺産

2012-08-22 22:42:07 | その他の中国都市

夏は何処へ行こうか?案外これが難しい。というのは、満州など東北地方もかなり暑いのである。そこで承徳を選んだ。清代に皇帝が90年をかけて避暑山荘を建設し、夏の政務を行った場所だからである。皇帝が避暑をするぐらいのところだからさぞかし涼しいのではないか。軽井沢のような感じかなと、思い立った。
北京から特急で4時間半。着いたら北京と変わらないくらい暑かった。

夏季だけと言っても5月から9月までだから、一年の半分近くの政治をここで行うことになる。この大国を治めるには、大勢の官僚・宦官・兵士たちが必要である。それに大奥の女達の世話も相当なものになったはずである。(大奥は何人くらいいたのだろう?長恨歌では「後宮の佳麗3000人」とある。本当に3000人もいたら、毎晩一人を相手にしても9年かかる。おばさんになってしまう?? 白髪三千丈の世界かも。) 
紫禁城に比べると20分の1くらいの規模かと思われるが、こんな小さな離宮で政治が行えたのだろうか、という疑問がまず湧いてきた。

第2の疑問は、北京からの距離。特急で4時間半と書いたが、距離は230km。東京から浜松くらいだが、相当な山越えである。大勢の女も連れて年2回も移動するのは大ごとだったろうと思われる。

自然院の勝手な想像だが、皇帝たちは紫禁城の固苦しい生活から逃げるために、(さらに、仕事としての子作り圧力からも一時的に開放されるために)、このこじんまりした離宮にやってきたのではなかろうか?そう考えると、第1、第2の疑問も解ける。 

 
山荘の正殿である澹泊敬誠殿。中央の黄色の椅子が玉座でここで謁見・接見を行った。周りは精緻な彫刻がほどこされた黒檀。簡素な中にも豪華さを見る。
「澹泊敬誠」とは、諸葛孔明の「心が淡泊かつ無欲で、志が明瞭でなければ、遠い所まで国を治めることができない。」という言葉によるそうだ。昔の政治家は実に良いことを言ったと思う。


澹泊敬誠殿の外観。楠殿と呼ばれるようにすべて楠作り。黒ずんで重厚な威厳が感じられる。


宮殿の後ろは大きな湖景区となっている。杭州の西湖を模して造られた。 拙政園(江蘇省蘇州)・頤和園(北京)・留園(江蘇 省蘇州)とともに中国四名園の一つだそうだ。これで全部制覇したことになる。

 離宮の近くに外八廟と呼ばれる寺院群がある。漢代式の宮殿建築をベースに、モンゴル・チベット・ウィグルなど諸民族の建築芸術を融合した独特の風貌で面白かった。これらも世界遺産である。

まずはラサのポタラ宮を模して作られた譜陀宗乗之廟。遠くからでも威容を誇る。


五塔門。5個の円錐塔は、それぞれ火(紅)・地(緑)・水(黄)・風(白)・空(黒)という宇宙の五大元素を表す。またチベット仏教の五教派および五仏の五つの知恵も表すという。


瑠璃碑坊。


ポラタ宮のようにそそり立つ大紅台。いよいよここから階段を登る。

 
右写真は皇帝が休息した御座楼。ここでチベット劇を観劇したという。


大紅台のど真ん中は、なんと黄金の屋根だった。この屋根はここまで登らないと見えない。

次は、外八廟で最も霊験あらたかといわれる普寧寺。
 
普寧寺大乗之閣。屋根に宝塔があり、チベット寺院の様式が見られる。


屋根の造形美。


瑠璃瓦の屋根が美しい。緑色とのグラデーションに見えるが、実はペンペン草。額には漢字のほかチベット語、モンゴル語などが書かれている

 
高さ22mの千手・千眼観音。世界最大だそうだ。手の中に眼がある。

 

承徳を見下ろす山の一つにサターン5号のようにそそり立つ岩が目を引く。高さ59mの巨岩である。黄山の飛来石もそうだが、自然界には面白い造形があるものだとつくづく思う。ロープウェイで登ってみた。


ロープウェイで近くまでは行けるが、あとは急斜面を登らねばならない。

 
周りは絶壁。風が強ければ飛ばされそうで、ちょっと怖い。


その名は蝦蟇(ガマ)岩。納得できる。

 


第59話 新旧がいきなり入れ替わる街 上海

2012-08-12 17:56:04 | その他の中国都市

上海は近代ビルの建設ダッシュである。現在中国で一番高いビルは上海環球中心ビルで492m。屋上にある展望台は世界一の高さそうだ。その横に632mの上海センタービルが来年の完成を目指して建設中。完成すれば、ドバイに次いで世界2番目の高さだそうだ。

高さだけでなく、ビルのデザインも見事である。日本の高層ビルは耐震構造にしなければならない事もあり、直方体の味気ないデザインだが、上海のビルは、斜めの線を使ったり、大胆なオーバーハングもあり、見ていて楽しい。


左の栓抜き型のビルが上海環球中心ビル。真ん中は建設中の上海センタービル。

 


未来都市を思わせる姿で、上海のシンボルとなった東方明珠塔。周辺の施設や色彩にも気を配られている。


新旧がいきなり入れ替わる街。一区画ごとそっくり立ち退かせて超近代ビル街に生まれ変わる。この荒っぽさは、日本では考えられない。
是か非か ?