武蔵野つれづれ   第3の生活を自由人として

中国での体験記を記して参りましたが2012年の秋に帰国しましたので、これからは武蔵野での生活を徒然なるままに書きます。

第33話 巨大地震と福島原発と中国と

2011-04-17 17:45:35 | その他の中国都市

  このブログも一ヶ月ほど御無沙汰をしていた。実は地震のニュース映像を見る度に気が滅入っていたのと、海外出張も重なり目まぐるしい雑事にかまけて書く意欲が大幅に殺がれていたからである。
しかし、これだけの災害であるから、自然院は何を考え、どんな行動を取ったかを読者に対して明らかにしておく必要があると思う。

ただこのブログでは仕事の事はあまり書かないようにしてきた。(関係者に迷惑がかかるのを避けるため。)今回は若干触れざるを得ない部分があるのだが、差し障りの無い範囲で述べてみることにする。

 

 地震発生から一週間ほど経った頃、原発は「空炊き」状態で、緊急に「冷やす」ことが求められていた。ヘリで上空から散水したり消防車から放水する苦肉の策が講じられていたが、ニュースを見て「二階から目薬」という感がした人は多かったと思う。

 実は、自然院が勤める会社では
60mの高さまで生コンクリートを圧送できる機械を作っている。この機械を作っているのは、世界でも当社とドイツに1社しかない。「この機械ならピンポイントで原子炉に水を掛けられるのではないか」と当社の何人かが思った。


 これを行動に移したのは当社の東京駐在員(中国人)である。彼は
T電力本社をある朝訪問し機械の説明を行った。その日の午後、T電力から「機械を購入したい」との意向が示されたので、彼はその旨当社本部に伝えた。それを聞いた会長は「直ちに無償提供しよう」と即決を下した。工場では丁度1台在庫があったので、その日の内に日本向けに改造し翌日出荷した。
50tを超える巨大な自走式機械は湖南省の工場から上海までの陸路1000km超1昼夜かけてひた走り、翌日船に乗った。2日後大阪港に上陸後、簡易通関を経て2時間後にはパトカーに先導されて、名神・東名を走り出し、T電力に引き渡された。当社関係者もよくやったが、行政側の協力も異例で、驚くべきスピードで事が運んだ。

 

 

 長い首の先から放水する当社の機械はキリン作戦と名付けられ、新聞・TVでも広く報道された。また放水だけでなく、原子炉の撮影などにも役立っていると聞く。日本の危機を救うため、また日中友好のためにもいくらかでも貢献できたことは嬉しくもあり、誇りに思っている。

自然院はアメリカ出張中であったが、本件のため急遽東京に転進させられT電力との折衝に当たった。
それにしても、原発事故は早く収束して欲しいと心から願う。