武蔵野つれづれ   第3の生活を自由人として

中国での体験記を記して参りましたが2012年の秋に帰国しましたので、これからは武蔵野での生活を徒然なるままに書きます。

第19話 憧れの蘭亭と西冷印社

2010-08-21 09:04:03 | 上海

 西湖の東にある蘭亭にやってきました。蘭亭は書道の聖地です。  

 どういう事かと言うと、東晋の時代(300年年頃)に出た王羲之の書いた楷行草が、後の書の基本となっています。日本三筆の一人空海も王羲之の影響を受けています。従って日中の書道に志す人は、彼を書聖と呼び須く敬っています。

 その王羲之の書の中で最も有名なのが、此の地で書いた「蘭亭の序」と呼ばれる漢詩です。蘭亭の庭の曲水のほとりに沿って招待された文人たちが陣取り、杯が流れて来ると即興で歌を作り、作れなかった人は罰ゲームとして杯を飲み干す。そんな風雅な遊びをしながら作ったそうです。  

 自然院も書を志す輩の端くれでありますからして、蘭亭は前から是非訪れたいと思っていました。序にある通り、小高い山に囲まれた静かな竹林に恵まれた水明の地という感じがいたしました。

曲水の宴は、この曲水に杯を流して行われた。聖地と思うからか、やはり風雅な雰囲気が漂う。

石碑には「蘭亭」と書かれている。

石碑の「鵞」は王羲之が、「池」は息子の王献之が書いた。周囲には、文字通り鵞鳥が居た。

美しい! 惚れ惚れとするほど美しい!! 


 ところで、そんなに崇められる王羲之ですが、彼の書いた直筆は残念ながらこの世に残っていません。彼の書を熱愛する唐朝2代目太宗皇帝が、国中の王羲之の書を全て集め、自分の墓に埋葬してしまったからです。(どうも中国の王様はやることが激しい。)

 ただ埋葬する前に数人の書家に忠実な手書きコピーを作らせました。今日我々が目にする事ができるのは、これらのコピーです。コピーだから皆同じかというと、書家によって微妙な差異があります。これらの違いを感じながら臨書するのも一つの楽しみ方ともなっています。

 今回書に関係ある地としてもう一つ訪れたのは、西湖畔にある西冷印社です。これは1904年に篆刻研究所として建てられました。篆刻とは石に印を刻むことです。篆刻専門に研究所を作るなんて、やっぱり書の国なんですね。

この円形の穴が正門です。内側から見たところ。向こうは雨に煙る西湖です。柳も垂れ下がって風雅です。