そういえばと、
思い出したことがある
両親と一緒に
よく高野山や秘湯と呼ばれる『龍神温泉』に
度々出かけたことがあった。
高野山は、言わずとしれた弘法大師が建てた真言密教の聖地
現在は、世界遺産に指定されている。
龍神温泉は、日本三大美人の湯と言われ
トロリとした泉質は肌にまとわりつく感じで
入ったあとの肌はシットリスベスベ。
今ある、高野龍神スカイラインは、
車で、その秘境と呼ばれる2地点を
1300級の山々を抜けて1時間半ほどで
結んでいる
思い出した話は
まだ、高野龍神スカイラインと言う
舗装されたロードはできていなかったころ
いや、もうすぐ開通するという話が出ていたころ
この情報が後から
とんでもないことへの始まりとなることは
ゆったり龍神温泉の夢心地で
温泉に入っている私たち家族は知るよしもない。
私たちが高野山に向かうとき
和歌山市から、橋本市へ抜け
真田幸村で有名な九度山から高野山に登る道と
和歌山市の外れから海南市を抜けて登る道
龍神温泉に向かう時は
梅で有名な南部(みなべ)から川沿いに向けて
山々を縫っていく道。
その日は
確か、田辺市の南部から入り山を抜け
龍神温泉へ向かった。
充分に日帰りでも大丈夫だと
ゆったりと湯に浸かり
そろそろ帰ろうかと言ったとき
『そういえば、ここから高野山に抜ける道がそろそろ、出来上がっているようだ』と父が言い出した。
『そうだねー、いいんじゃない!
今までは、龍神温泉から高野山なんて行けなかったもんねー』と
言ったのは私。
それじゃぁ、高野山に向かって行くかと
来た道とは違う山の道を行くことになった。
父は、熟練のドライバーだった。
トラックからタクシーと乗りこなし
事故も起こしたこともない。
まして、若い頃は、プロ野球の旧、南海ホークスからも
スカウトに来たほど、運動神経は抜群な人だった。
方向もそのカンの良さから
この道だと言ったら
大概は間違うこともないほどの動物的なカンも
持ち合わせていたから
今のようにナビがなくても
多少の迷い道はあっても必ず目的地にたどり着ける。
その日は、
高野龍神スカイラインが開通してるから通れるはずだと
言う情報と、父のカンを頼りに
1300m級の山々を目指して走り出した。
行けども行けども山、山、山。
高野山に向かうはずの道
スカイラインが通っているはずの道
その入り口らしきものが見当たらない。
次第にあたりは暗くなりつつ
雲行きも怪しくなってきた
道はどこかと進んでいるうちに
ポツポツからザーザーと雨が降り出した
いま、私たちはどこ?
あたりが見えなくなりつつある中で
標識らしき物を探す、さがす。
『中津川? 中津川って書いてあるよ!』
ここは、和歌山県ではなくて奈良県?
その標識がみんなの顔を一変させた
どこに向かっている?
どこを見渡しても山、山、、、。
うっすら見える左側の谷?崖?
とんでもない場所に来てることは、
認識できても、雨風をしのげる車。
家族が一緒の安心。
しかし、
雨は強くなる一方
雷が鳴り出したが
すぐ目の前で
雷が生まれ放たれる光と爆音
そうだ、ここは、1300m級の山々の中
恐怖があおられる
不安が増してくる
それでも車を止めることはない
今の状況から抜け出すのは
走ることしかないとさえ思うように。
バケツをひっくり返したような雨と
落雷を避けるように進んでいくが
イナビカリのヒカリに
頭を抱えるように、怯えながらでも
全く迷ってしまっているのを確認する者はいない
口を切ればそれが確定してしまうかの思い
まだ、大丈夫だと信じていたかった。
恐怖と不安の中
一台のワゴン車と遭遇
状況を察したのと同時に驚きの顔の
どこかの工事責任者のような男性が
慌てて繰り出す言葉
『今から山を降りますが、かなりキツイです。ついてこれますかー』と
もう、選択の余地はない。
『はい、お願いします』
二台の車が山を降りていくことになったが
依然、目の前から繰り出されていく雷のイナビカリと
その爆音。
そして、それから数時間に渡る山特有のつづれ織りの道。
何も見えない闇の中、圧倒的なフラッシュのような雷と
猛スピードにより、左右に揺さぶられ、
体が宙に浮くのをなんとか立て直しながら
もう、地面があるのかさえ分からず
どう走っているのか予期せぬところに
雷のヒカリでやっと見えた場所に
道が出現していく感覚。
時間さえ、もはや分からぬ状況。
しかし、次第に街明かりが見えてくる。
ホッと胸をなで下ろした。
多分、かなり狭くて険しい道を
谷を見下ろしながら
とんでもない道を走ってきたのだろう。
走り慣れたように
アルペンのスキーのように
走り抜けて行く男性もさすがなもので
その後をついて行った父も相当なハンドルさばき
しかし、
その二人の運転に耐えきれず
母は、単なる車酔いを超えた状態で
町外れの場所で救急車を呼ぶことになってしまった。
結局、道案内してくださった男性に
感謝の言葉もそこそこにして別れ
私は生涯初めて、救急車に同乗する羽目となった。
母は、1日の入院で事なきを得た。
おそるべし中津川
おそるべし龍神温泉
いやいや
一番は、◯◯だろうと
お天気と土地柄を省みることなく
走り出した私達親子の自業自得の物語
目の前の雲から
雷が放たれる瞬間を
道に迷いながら
見た人って
どれだけいるだろう
『遭難』と言う文字が頭をかすめた日の出来事。
思い出したことがある
両親と一緒に
よく高野山や秘湯と呼ばれる『龍神温泉』に
度々出かけたことがあった。
高野山は、言わずとしれた弘法大師が建てた真言密教の聖地
現在は、世界遺産に指定されている。
龍神温泉は、日本三大美人の湯と言われ
トロリとした泉質は肌にまとわりつく感じで
入ったあとの肌はシットリスベスベ。
今ある、高野龍神スカイラインは、
車で、その秘境と呼ばれる2地点を
1300級の山々を抜けて1時間半ほどで
結んでいる
思い出した話は
まだ、高野龍神スカイラインと言う
舗装されたロードはできていなかったころ
いや、もうすぐ開通するという話が出ていたころ
この情報が後から
とんでもないことへの始まりとなることは
ゆったり龍神温泉の夢心地で
温泉に入っている私たち家族は知るよしもない。
私たちが高野山に向かうとき
和歌山市から、橋本市へ抜け
真田幸村で有名な九度山から高野山に登る道と
和歌山市の外れから海南市を抜けて登る道
龍神温泉に向かう時は
梅で有名な南部(みなべ)から川沿いに向けて
山々を縫っていく道。
その日は
確か、田辺市の南部から入り山を抜け
龍神温泉へ向かった。
充分に日帰りでも大丈夫だと
ゆったりと湯に浸かり
そろそろ帰ろうかと言ったとき
『そういえば、ここから高野山に抜ける道がそろそろ、出来上がっているようだ』と父が言い出した。
『そうだねー、いいんじゃない!
今までは、龍神温泉から高野山なんて行けなかったもんねー』と
言ったのは私。
それじゃぁ、高野山に向かって行くかと
来た道とは違う山の道を行くことになった。
父は、熟練のドライバーだった。
トラックからタクシーと乗りこなし
事故も起こしたこともない。
まして、若い頃は、プロ野球の旧、南海ホークスからも
スカウトに来たほど、運動神経は抜群な人だった。
方向もそのカンの良さから
この道だと言ったら
大概は間違うこともないほどの動物的なカンも
持ち合わせていたから
今のようにナビがなくても
多少の迷い道はあっても必ず目的地にたどり着ける。
その日は、
高野龍神スカイラインが開通してるから通れるはずだと
言う情報と、父のカンを頼りに
1300m級の山々を目指して走り出した。
行けども行けども山、山、山。
高野山に向かうはずの道
スカイラインが通っているはずの道
その入り口らしきものが見当たらない。
次第にあたりは暗くなりつつ
雲行きも怪しくなってきた
道はどこかと進んでいるうちに
ポツポツからザーザーと雨が降り出した
いま、私たちはどこ?
あたりが見えなくなりつつある中で
標識らしき物を探す、さがす。
『中津川? 中津川って書いてあるよ!』
ここは、和歌山県ではなくて奈良県?
その標識がみんなの顔を一変させた
どこに向かっている?
どこを見渡しても山、山、、、。
うっすら見える左側の谷?崖?
とんでもない場所に来てることは、
認識できても、雨風をしのげる車。
家族が一緒の安心。
しかし、
雨は強くなる一方
雷が鳴り出したが
すぐ目の前で
雷が生まれ放たれる光と爆音
そうだ、ここは、1300m級の山々の中
恐怖があおられる
不安が増してくる
それでも車を止めることはない
今の状況から抜け出すのは
走ることしかないとさえ思うように。
バケツをひっくり返したような雨と
落雷を避けるように進んでいくが
イナビカリのヒカリに
頭を抱えるように、怯えながらでも
全く迷ってしまっているのを確認する者はいない
口を切ればそれが確定してしまうかの思い
まだ、大丈夫だと信じていたかった。
恐怖と不安の中
一台のワゴン車と遭遇
状況を察したのと同時に驚きの顔の
どこかの工事責任者のような男性が
慌てて繰り出す言葉
『今から山を降りますが、かなりキツイです。ついてこれますかー』と
もう、選択の余地はない。
『はい、お願いします』
二台の車が山を降りていくことになったが
依然、目の前から繰り出されていく雷のイナビカリと
その爆音。
そして、それから数時間に渡る山特有のつづれ織りの道。
何も見えない闇の中、圧倒的なフラッシュのような雷と
猛スピードにより、左右に揺さぶられ、
体が宙に浮くのをなんとか立て直しながら
もう、地面があるのかさえ分からず
どう走っているのか予期せぬところに
雷のヒカリでやっと見えた場所に
道が出現していく感覚。
時間さえ、もはや分からぬ状況。
しかし、次第に街明かりが見えてくる。
ホッと胸をなで下ろした。
多分、かなり狭くて険しい道を
谷を見下ろしながら
とんでもない道を走ってきたのだろう。
走り慣れたように
アルペンのスキーのように
走り抜けて行く男性もさすがなもので
その後をついて行った父も相当なハンドルさばき
しかし、
その二人の運転に耐えきれず
母は、単なる車酔いを超えた状態で
町外れの場所で救急車を呼ぶことになってしまった。
結局、道案内してくださった男性に
感謝の言葉もそこそこにして別れ
私は生涯初めて、救急車に同乗する羽目となった。
母は、1日の入院で事なきを得た。
おそるべし中津川
おそるべし龍神温泉
いやいや
一番は、◯◯だろうと
お天気と土地柄を省みることなく
走り出した私達親子の自業自得の物語
目の前の雲から
雷が放たれる瞬間を
道に迷いながら
見た人って
どれだけいるだろう
『遭難』と言う文字が頭をかすめた日の出来事。