ちょ、ヒュームの『人間本性論』の第1巻(木曾好能訳、法政大学出版局)の定価が16000円(+税)って、どんだけのぼったくりだよww 人間にとって最も大事なことが書いてある(と思われる、Book2の最初を演習で半期読んだだけだからその凄さはまだわからん)名著に対する知的犯罪だ!>< (miurata) |
今日はオフ日だ、ということにしてしまったので朝からのんびりWebを眺めることしかしていなくて、ついでに、ここんとこ途絶えていたblogの連載(?)の、過去記事を自分で読み返していたりもして、そのついでに「人間本性論」をtwitter searchしてみたら上が引っ掛かったという次第である。
呟きの主のキモチは痛いほど判る。わたし自身が件の訳書の再刊をまだ買っていない。自分で私訳を作ってるから、ではなく、マジで高いと思うからだ(安かったらそそくさ買って、私訳の参考にしているはずだ)。ただ、そうは言っても「どんだけのぼったくりだよ」というのは少しく言い過ぎである。「名著に対する知的犯罪」というのはもっと言い過ぎである。この訳書は訳者畢生の大作というか大業というべきもので、ほんとは第2巻3巻と出るはずのところが、訳者が死んでしまったためにキカクが頓挫してしまった(続巻は弟子筋の人の手で進行中らしい)というものなのである。言ってみればまあ、THNに学者人生を捧げてしまった人の遺作なのである。そういう本が16000円というのは、まあ仕方がないのである。
それに、世の中にはこのくらいの値段がついた専門書は、ほかにいくらもあるわけである。この主は知らないことだろうが、わたしの職業上の専門であるところの信号処理の分野では、ペーパーバックの原書でこのくらいするものがゴロゴロある。その中にはHaykinのAdaptive Filter Theoryみたいな包括的な著作、知らなかったらモグリと言われても仕方がない名著と言っていい本もあるわけだが、カスみたいな代物も珍しくはないのである。AFTだって訳書はひどいカスだとわたしは思っている(監訳者が母校の工学部教授だからあえて言う)。そのカスがいくらすると思う。古本の相場にもよるが下手をすりゃ大三枚は飛んで行くわけである。
だから専門家がきちんと取り組んだ(はずである)THNの訳書が16000円というのは決してぼったくりではないし、ましてや知的犯罪などではない、と、一応はそう言えるのだが、じゃ高くはないということかといえば、そうは言わないのである。それとこれとは話が別なのである。わたしだって高いと思うから買ってないのである。
この値段はどうすればもっと安くなるのか。せめてカントの著作と同じくらいには安く手軽に読めるようなものになってもらいたいものだとわたしは思うものである。「人間にとって最も大事なことが書いてある」かどうかはともかく、ヒューム先生自身が後々黒歴史として葬り去ろうとしたくらい、そうした(今日ならば中二病呼ばわりされるかもしれないような)熱意を込めて書かれた本であることは確かである。読むに値する本である。要はただわが国では今にいたるまでほとんど知られていないのである。知られていないから読者も少なくて、ゆえにたくさん売れないとなれば、専門書はただただ高くなるだけなのである。まずヒュームと人間本性論の名を、またそのナカミのせめてもの概要を、いま改めて世間に知らしめることが必要なのである。