私が最も気になるのが、一年に一回、少女たちに人気順位をつける「総選挙」というイベントです。この少女集団について、こんなオッサンがとやかく言いたくはないのですが、「総選挙」については、どうしても一言、言いたいのです。なぜ、これほどこだわるのか、それは私がまだ駆け出しだった頃の体験に関係があります。 (中略) 私が「女だらけ」を少年ジャンプで連載していた頃は、「愛読者賞」という年に1回の、恐ろしいイベントがあったのです。読者用の綴じ込みハガキの人気アンケート(まさに投票券)によって、上位から10人の漫画家を誌上で発表し、読み切りを描かせる、という「やめてくれっ」と叫びたくなるものでした。ほぼ本誌で連載されている作品の人気通りの順位になるので、当落線上でウロウロすること必至の私は、生きた心地がしなかったわけです。幸いにも連載中の二年は、ギリギリでなんとか通過しましたが、嫌なものでした。しかも、選ばれて発表した10人の漫画家の人気順位まで、また発表しちゃうという残酷さ。それも、私が少年ジャンプを去る原因の1つになりました。 (中略) ま、こんなヤワなオヤジとは違って、彼女達はもっと図太い神経をもっていて「何、勘違いしてんだ、このオヤジは。バーカ」かも。でも、気の毒だけど、この集団の人気は簡単に終わってしまうと思います。人数が多すぎて、ファンも、すぐに満腹になってしまうからです。どうなんだろ(あー疲れた)。 (週刊新潮 柳沢きみお「なんだかなァ人生」;2chのスレから孫引の上抜粋) |
まずは一言ツッコミを。柳沢きみお氏はすでに「オッサン」とか「オヤジ」の年齢ではないだろう。わたしが小学生のころ、すでに週刊・月刊のジャンプで連載を持っていた人である。今そのわたしがオッサンなのだから、柳沢きみおは「オジイサン」でなければ計算が合わない。
それはともかく、確かに、今から思えば「愛読者賞」というのは、週刊連載を抱えたマンガ家にいきなり読み切りを追加注文するわけだし、その上人気投票の結果ハラハラのおまけつきで、マンガ家にとっては辛いにもほどがある企画であったのかもしれない。
とはいえ、当時小学生だったわたしには、年にいっぺん、当代の人気作家の読み切りが読めるということで、結構毎年楽しみにしていた企画ではあった。実際、永井豪の名作のひとつとして名高い「真夜中の戦士(ミッドナイト・ソルジャー)」は、この愛読者賞のための作品として描かれ、発表されたものである。それを思えば悪い企画だったとは思えない。ちなみに、せっかく入賞したのに読み切りを書く暇がなくて代原(代用原稿)で用意されていたとおぼしき作品が掲載されることもちょくちょくあったのだが、それはそれでスリルとハプニングがあって楽しめた。
柳沢きみおという人は昔から、マンガはともかく、時々こうして出張ってきては、世相に向かって余計なお世話を呟きたがる変な癖がある。昔、ワカモノの間でシャツの襟を立てて着ることが流行ったとき、脈絡もなく突然「ファッションセンス最悪」だと発言して、そのころ人気マンガ家だった相原コージから「お・お・き・な・お・せ・わっ!」だとネタでからかわれていた。ただ昔ならそういうのは自作のひとコマの中で余談的に書いていたのに、今はわざわざ週刊新潮の記事として出てくるのは、すこし解せない。大ベテランの柳沢きみおがいまさら弘兼憲史みたいなアホウの真似してどうするよ・・・さては、これも新潮の編集の仕業か。
みっともないからおよしなさい、と余計なお世話を返しておきたい。