「あら、兄さん」
呼び止められて胸をつかれた思いがした。死んだ妹がそこにいた。もっとも妹を亡くしたのは子供の頃であり、目の前にいる女は二十歳ぐらいである。それを妹と見間違えるとはどうしたことだろう。自分でもよくわからない。
「何をためらってるの」
女はそう云って歩き始めた。ついてくるのが当然、という素振りである。あきらかに人違いなのだけれど妹に似ている女に興味もあり、気がつくと女のあとをついて歩い . . . 本文を読む
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