じいたんばあたん観察記

祖父母の介護を引き受けて気がつけば四年近くになる、30代女性の随筆。
「病も老いも介護も、幸福と両立する」

最善を尽くす。それしか、ないよね。

2005-09-14 23:21:08 | じいたんばあたん
要介護3だったばあたんの、
介護認定の見直し結果が、先日、届いた。

書類に記載されていた介護度は


 「要介護5」 


…もう、そんなところまで来てしまったのか。

正直、もう少し先のことだと思っていた。

「ばあたんは、まだ大丈夫」
心のどこかでわたしは、そう思っていたかったようだ。



認定のとき、調査員の方は、
直接、ばあたんとも面接して様子をつぶさに見てくださった。

かかりつけ医も、こまめにばあたんの様子を観察しながら、
ときには出先から、様子を訊ねるお電話をくださったりして、
本当に本当に濃やかなお心遣いをくださっていた。

そんな、プロの目からみた、ばあたんの状態。
そこからでた、結論。

やっぱり家族は、
「現実」より少し良さ目に
患者の状態について認識していたい、と
無意識に思ってしまうのだろう。



先日の見舞いの際、病棟の看護師長からも、
こんな言葉を告げられた。

「この状態では、在宅介護はまず無理だと思います。
 私たちはプロですが、それでも率直に申し上げると、
 周辺症状への対応に苦慮する場合があります。

 入院なさるまでよく、持ちこたえて来られましたね。」


やっぱり、客観的に見れば、そうなのか。
少々ショックを受ける自分を自覚する。



それでも、頭では、わかっているのだ。
ばあたんの疾患=アルツハイマーの性質上
在宅で最後までというのは、やはり厳しいということを。

アルツハイマー型認知症は、れっきとした「病気」だ。

対症療法的な治療や、病状に合った住環境を整えることで
もう少しだけでも、ばあたんを楽にしてあげられるかもしれない。



そして、ばあたんのことだけじゃなく、
じいたんのこと。

介護に疲れ果て、
穏やかに二人が育んで来た情愛を
いつくしみの気持ちを
損なってしまうことのないように、

じいたんとばあたんが、
慈しみ合いつつ最後まで添い遂げられるように

そのことを、いつも、心に思う。
強く、とても強く。



在宅介護を選択した場合、
じいたんが、
ばあたんの介護を24時間、目の当たりにすることになる。

そうすると、じいたんのQOLは著しく損なわれてしまう。
それは、入院前の生活で嫌というほど思い知らされたことだ。

ばあたんの入院後、やっと
本来の自分の生活ペースを取り戻しつつある
じいたんの姿。

そして、じいたんのために、わたしが、
充分に時間を割くことができるようになって
ある意味安定した、じいたんの心。


それを見て、心底ほっとしているわたしがいる。




当のじいたんは、

「お前さん、おじいさんは、決心したよ。
 新しい住まいを探してくれたまえ。
 昼間でも暗い場所が、この家には多すぎる。
 おばあさんのためなら、おじいさんは、
 できることならどんなことでも、してやりたいんだよ」
 
と、あっさり言い切った。
ようやく、腹をくくったようだ。


そしてわたしも、現実には

退院後(随分先になるが)
・どのような手順でばあたんを受け入れて、
・どのようなタイプの施設を最適と判断し
 (介護つき有料老人ホームだけではなく、いろんな選択肢を探して)
・今の住居をどのような形にするか
 (転売するのが非常に難しい物件なのだ)

など、To Do リストを作り、優先順位を考え、
ケアマネや居宅介護事業所の方などに相談するなど、
動き始めている。


こころが、どこかついていかないまま。


そして、
こころがついていかなくても

現実を捌いていくということの大切さを、
繰り返し、確認しながら。



追伸(呟き):

できれば最後まで在宅で看たい、という気持ちを
どこかでわたしは、捨てきれないのだと思う。
祖父母の世代にとっては、それが自然なことだと
日々接していて思うからだ。

(じいたんと話していると、
 言葉の端々にそういう想いが見え隠れする。
 そしてわたしは、その気持ちが痛いほどわかる)

彼らにとってなるべく自然なかたちで、
お別れの朝まで、過ごせるようにセッティングしていく


「最善をつくす」

それしか、ないよね。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
どうか・・・ (かささぎ)
2005-09-15 06:07:04
・淡々とさばくうつつの波間にも漂うこころ光となるらむ



・その日まで慈しみつつ添い遂げよ 陽なかの二人 傍に一匹







・・・祈りを込めて
返信する
可能な限り (The社会福祉マン!)
2005-09-15 15:00:34
可能なかぎり、

プロはプロの目、確かに重要ですが

介護5、周りからみれば家でなんてとんでもないと

思っても、家族がそうおもってないなら~ということはあると思います。あとは、じいたん、そしてたまさん自身のことも含めて、どうサービスを組み立てるか、ちなみに介護5となると、施設のショートステイなどは、月の半分くらい使えます。



あと、うちの施設の入所者で介護度5なんですけど、本人はそれほど、重度とは思ってない方もいます。

認定調査の時、「私って、まあ重度は重度よね」ってな感じです。本人がこんな風に思えるのは、もしかしたら施設のスタッフの支えがあるからなのかもしれません。私はそう思いたいです。

可能な限り、本人も家族もこんな風に思えるように仕事をしていきたいと思ってます。少なくとも僕は。
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歌のように>かささぎさん (介護人たま)
2005-09-22 05:30:12
頂いた歌のように、うたのように



生きていたい。こころを光で満たして照らしたい。



祖父母が、悔いのない形で添い遂げられるよう、そして大気に還していけるように、



そんな風に生きていたい。そんな気持ちを私の代わりに詠んでくださったかのようで。



とても嬉しい嬉しい、賜りものでした。

いつも ありがとうございます。
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The社会福祉マン!さん (介護人たま)
2005-09-22 05:35:15
頂いたコメントを読んで、涙が出ました。



励ましてくださり、具体的な方法を色々教えてくださる、そのおこころに。

祖父母やわたしの気持ちを大切に、と共感をもっておっしゃってくださる、その誠実さに。

うれし泣きしました。



お目にかかったこともない方に、このような施しを頂戴できることを、幸せに思います。



どうか、そのままでいらしてください。

存在そのものが誰かを救うということが、きっとあると思うのです。



いつもありがとうございます。
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