じいたんばあたん観察記

祖父母の介護を引き受けて気がつけば四年近くになる、30代女性の随筆。
「病も老いも介護も、幸福と両立する」

現実吟味能力って、認知症とは関係ないみたい。

2005-07-18 01:59:02 | じいたんばあたん
なんだか小難しいタイトルで恐縮なのですが、
今日ふと発見したことなので、書きとめておきたいと思います。


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ばあたんは、アルツハイマーが進行してきていて、
失見当識・失行・失認がかなり顕著に現れるようになってきている。

でも、失われていないな、とつくづく感じる能力がひとつある。


それは「現実吟味能力」である。


つまり、
・自分がいま、どの程度のことが出来て、
・どの程度を他人に頼らなければ出来ないか、
その見極めだけはちゃんとついているということである。

この能力が高いおかげで、ばあたんは得をしていると思う。
そして、介護者である私も、その恩恵に浴している。


また、この能力は彼女自身に対してだけ働くのではない。

例えば、私が彼女に相談ごとを持ちかけたとき
(主に、対人関係のことなのであるが)
  ↑じいたんや親戚との間のことなので、
   他人様から受けた相談として、ぼかして話すのだけれど

彼女は、きちんと問題を把握して、
的確な答えを返してくる。

感情面での理解も示しつつ、解決策もちゃんと打ち出してくる。

はっきり言って、すごい。
「トイレの場所も便器も認知できない人」とは思えない。


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対して、じいたんはというと、
いわゆる「認知の低下」は年齢相応に見られるのだが、
(私に言わせれば、立派に認知症圏…orz
  皆に、ビデオで一部始終とって見せたろかと思う…)

それより何より私が泣かされるのは、
じいたんの「現実吟味能力」が著しく落ちていることである。

まあ、はっきり言って、昔から、
あまりそういう能力は高くない(にぶい)人だった。
それにしても…最近は、ちょっと困ることも出てきている。


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先日、こんなことがあった。

私のもうひとりの祖母が、寝込んでいる。
私と電話で話すその様子は、それほど衰えていないのだが、
いつ彼岸に渡ってもおかしくない程度に、身体が衰弱している。

それで、「見舞いに行きたい」と申し出た。
ショートステイを利用してもらうつもりで。


そしたら、じいたん
「おじいさんとおばあさんも、一緒に行くよ」

私は一瞬、何もいえなかった。
いや、気持ちは嬉しいんだけど。

…長野まで行くのでも去年、ぶつぶつ言っていたのに、無理でしょ…
 (ものすごく遠いのだ)

…道中ずっと、二人のトイレ介助で疲れちゃうと見舞いにならないよ…

…母方の祖母はずっと、我慢して待ってくれている。
 だから、行ったときくらい、ふたりきりでゆっくり話したいんだけど…

…じいたんは、私の母の悪口を私に言う。私また、それに付き合うん?…


ぐるぐる考え込んでいたら、
ばあたん、すかさず

「おじいさん、少し気を遣ったほうがいいわよ」

と突っ込んでくれた(大爆笑)

だが、当然じいたんは、そんなものは意に介さず
ばあたんに

「おばあさんは何もわかっちゃいない。
 お世話になった方なんだよ。
 君はもう、何も解らないんだから、黙っていなさい」

とばあたんの自尊心をえぐるようなことを言う。

 ↑こういう面に配慮がいかないのも
  「現実吟味能力」がない証拠だと思う…orz


この後、ばあたんは、廊下でこっそり泣いていた。
そして認知が急激に低下し、激しい夜間せん妄へと突入していった。


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結局は、その人の本来もつ性格によるのかもしれないけど…
現実吟味能力って大事です。
基礎になっているのは、多分自分以外の人への配慮と愛情です。
俯瞰的な視点から考えることのできる能力。
認知症になっても、これさえ残っていれば、何とかなる。

私も、自分の「現実吟味能力」にあまり自信がないので、
今からでも遅くないから鍛えておかなければならないなと
深く深く、自省する今日この頃です。


追伸:
いくら「現実吟味能力」がなくても、じいたんはじいたん。
まあ、憎むことはできないんですけどね(笑)

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6 コメント

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ああよくわかる…orz (ちーたろ)
2005-07-18 11:13:10
そういうのって男の人に多い気がします。

「自分はまだまだ」っていう意識が強いのかなぁ?

男のプライドなのか、自分を過大評価したりしますよね。

あと昔の人だとまだ男尊女卑というか、「女は黙ってろ」的な

ところもあったりして。

でもそれを「もう年寄りなんだから!」って押さえつけることも

できないんですよねぇ…。難しい。



女の人だとやはり「世話をする側」の気持ちがわかるから、

また違うのかもしれないですね。



ただ「お世話をする」といっても赤ん坊のように黙って

世話させてはくれませんからねぇorz

しかも世話自体が赤ん坊とは比べ物にならないほど

重労働だし。



明日レンタル業者が新しいベッドとエアマットもってくるんで

今大じじの部屋を大掃除してたんですが、エアコンがない

(古い家屋なのでつけられない)ので死にそうです…orz

本当、ショートだけは行って貰わないと、倒れてしまう…。

お互いまったりがんばりましょう~

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同志よ!(泣)>ちーたろさんへ (介護人たま)
2005-07-18 13:07:12
男の人だから、という面は確かにあるのかも…。

うちの祖母の兄=大伯父にもその傾向、あるし…

そこは子供がおらず、70代後半の奥様がおいでなんですが、

介護保険を使うことさえ嫌がるそうです。

大伯父は長身で、奥様は小柄。

風呂場などでもし何かあったらと思うと、奥様はヘルパーを頼みたいみたいなんですが、

大伯父は「倒れたら、君が何とかできなければそのまま放って置いてくれ」と…orz

ちなみに大伯父は、祖父に比べたらうんと穏やかで、円熟した人柄なんですけど、こんなもんです…。



でも、女性でも同じくらい「現実吟味能力」がなくて介護者泣かせな人がご近所にいますし、

男性でも…うちの父なんかは(看病だったけど)こんな投げやりなことは死ぬまで一度も口にしなかったです。

だから余計に、祖父に腹が立つのでしょうね。

大じじ様のお部屋、エアコンないんですね…

「冷風扇」って聞いたことあります?

クーラーほど直接冷えないし、扇風機みたいに「風が当たる」感じがしないけど、部屋は涼しくなります。

そんなに高くなかったと思う。子供さんの身体にもやさしいので、

ショートにいらしていない日のために一台、購入を検討されてみてもいいかもしれません

例えば、こんなの↓



http://store.yahoo.co.jp/digicon/arf-688.html

私も狙っています

お互いまったりいきましょうね~
返信する
う~~ん (ミンミン)
2005-07-18 20:20:55
たまさん、こんばんは。

わが家のじーちゃんの場合

耳が遠くなってきてしまっているので

聞こえなくて分からないのか

本当に分からないのか、

その判別が難しい時があります。

補聴器をつけて欲しいなぁ、って思う時が多々あるのですが

本人はやっぱり不自由で煩わしくて嫌みたいです。

それと、多分「年寄り」みたいで嫌なんじゃないかと。



最近の困った事。

じーちゃんの聞こえが悪い為に声を張り上げすぎて

怒鳴っているようになってきてしまうので

注意しなくては…と思っています。

前に妹が大声張り上げてじーちゃんに話していたのですが

あとで私にぽつりと

「○○(妹)はいつも怒っていて、怖い」

…って言ってました。

そういう風に聞こえてたのねと、ガッカリ…。

高い声よりも低い声の方が聞こえ易いそうなのですが

なかなか瞬時に使い分けられません~。



家族の声もどんどん大きくなっていますよ。

じーちゃん抜きの家族同士の会話でも

気が付くと大声出していたりとか…。

一人暮らしをしている弟がたまに顔を出すと

「みんな声が大きいよ。うるさい」ですって!!



いつも記事を読んで、コメントしようと思いつつも

う~~~んと考えさせられてしまって

そのままになってしまっています。

でも、ちゃんと読んでいて、お勉強させてもらっています!
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耳の遠い人と話すコツ>ミンミンさんへ (介護人たま)
2005-07-19 00:30:18
実はうちの祖父も耳が遠いです。

でも、うっかり聞こえるほうの耳のそばで大きな声を出すと「うるさいぞ」となってしまいます。

そこで…我が家で祖父に取っている方法を。

お役に立てばいいのですが…



◎手をとったり、肩をたたくふりなどしてふざけてみたりする。

◎「お甘を少しいかが?」と普通の声量で声をかけて、視界の範囲にそっとデザートなどを置く。

◎「お薬」「夕刊」なども上に同じ。

◎必ず目線を合わせて(これは必須)



などの方法を使って、まず、耳の遠い人の意識をこちらに向けます。

そして、改めて



◎「おじいちゃん」、と声をかける。

 声はやや、小さめに。

 優しい笑顔を忘れないこと。目と口両方が笑う練習をしておくといいです。

 (目さえあわせていれば、おじいちゃんは口元を見て判断して、聞き取ろうと身を乗り出してくれます)



あと、耳鼻科に定期的に連れて行ってあげてください。無理なら、内科で往診可の医師でもいいので…。



耳に病気が出来ている場合や、耳垢がつまっているせいで聞こえなくなっているケースもあるそうです。

わたしもたまに、じいたんばあたんの耳垢そうじをします。それをするだけで聞こえが少しましになるらしいです(じいたん談。甘えているだけかもしれませんが…)



あとは、「年寄りの智慧」で聞こえないふりをしている場合もありますが…

少しでも参考になるといいなと思うのですけれど…
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ありがとうございます。 (ミンミン)
2005-07-19 10:47:01
おはようございます~。

”コツの伝授”ありがとうございます。

話しかけていて、聞こえにくかった状態を思い起こしてみると

何か作業をしながら少し離れた所から声をかけている

…という状態が多かったかもしれません。

「必ず目線を合わせて」には、ちゃんとしていなかったかも!と

自分がちょっと恥ずかしい位でした。

人とのコミュニケーションにはこれって一番大事ですよね。

たまさんから教わった事、今度実家に帰った時に

さっそく実践してみますね!

そして、耳鼻科や内科の検診の事も家族に聞いてみます。

いろいろありがとうございます。

たまさんには、本当に教えてもらってばかりです。



聞こえてるけど聞こえてないふり。

これよくじーちゃんも使ってます。

「なんだ~、聞こえてたんじゃない~!」と

思わずツッコミたくなってしまいます。(苦笑)
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恐れ入ります>ミンミンさんへ (介護人たま)
2005-07-19 14:56:46
いやもう本当に恐縮です

プロに尋ねるときっと、もっといい答えが返ってくるはず…



離れていても、おじいさまのことを忘れないでいてくださる(そしてそのことを知らせてくださる)、ミンミンさんのお心に、わたしの方が励まされています。

本当にうれしいんです。力が湧いてきます。



それにしても、「お年寄りの智慧」恐るべし!です。

必殺技「聞こえないふり」

…でも、それを逆手にとって、たまにはちらり嫌味をいって逆襲してみるのもよいかも…

ああ、ブラックな奥の手。ふふ。
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