新幹線乗り場で、母が、あなご飯を持たせてくれた。
東京方面へと滑りだしたのぞみの車中で、
がつがつと穴子飯を掻き込む。
人目もはばからずぽろぽろ出てくる涙にも、
今だけはお構いなしで。
食べおわったら、…新横浜へついたら、また怒濤の日々。
母の姿や、妹の花嫁姿を思い出して、
存分に感慨にひたれるのも、この、今だけ。
新横浜へついたら、まっすぐ、じいたんのところへ向かおう。
ひとりぼっちで、ただひたすらあたしの帰りを待っていてくれる、
年老いた、いとしい家族―じいたんのところへ。
ビールで自分にお疲れさま、と乾杯。
新横浜に戻るまで、束の間の、羽休め。
*********
新横浜へ到着したのは、午後六時すこし前。
のぞみの車中では、せっかく座れたというのに
ほとんど眠ることができず、ようやくまどろみ始めたころ。
重い頭を振って、肩を叩く。
一歩、ひらり、とホームへと降り立ったら凍みこむ空気。
じいたんの顔が、たまらなく見たくなった。
そのまま、タクシー乗り場へ。
タクシーを拾うと、まもなく携帯に着信。
じいたんからだった。
「お前さん、無事着いたかい?
今日はおじいさんのところには寄らなくて良いから、
まっすぐ、部屋へお帰りなさい」
…本当はすぐにでも飛んできて欲しいくせに。
この二日間、電話連絡こそ怠らなかったけれど、
淋しく心細く過ごしていたにちがいない、じいたん。
そんなじいたんの心遣いに、涙が出た。
じいたん、あのね
そんなじいたんだから、あたしは、まっすぐ
あなたの懐へ向かって、走って帰るんだよ。
お土産、あれもこれもって、いっぱい、買っちゃったから、
今から一緒に、ふたりでのんびり、いただこうね。
待っていてくれて、ありがとう。
タクシーの車窓を流れる、夜景を目一杯吸い込み、
わたしは、ぱちん、と
「たま」から「介護猫たま」へ、シフトチェンジした。
東京方面へと滑りだしたのぞみの車中で、
がつがつと穴子飯を掻き込む。
人目もはばからずぽろぽろ出てくる涙にも、
今だけはお構いなしで。
食べおわったら、…新横浜へついたら、また怒濤の日々。
母の姿や、妹の花嫁姿を思い出して、
存分に感慨にひたれるのも、この、今だけ。
新横浜へついたら、まっすぐ、じいたんのところへ向かおう。
ひとりぼっちで、ただひたすらあたしの帰りを待っていてくれる、
年老いた、いとしい家族―じいたんのところへ。
ビールで自分にお疲れさま、と乾杯。
新横浜に戻るまで、束の間の、羽休め。
*********
新横浜へ到着したのは、午後六時すこし前。
のぞみの車中では、せっかく座れたというのに
ほとんど眠ることができず、ようやくまどろみ始めたころ。
重い頭を振って、肩を叩く。
一歩、ひらり、とホームへと降り立ったら凍みこむ空気。
じいたんの顔が、たまらなく見たくなった。
そのまま、タクシー乗り場へ。
タクシーを拾うと、まもなく携帯に着信。
じいたんからだった。
「お前さん、無事着いたかい?
今日はおじいさんのところには寄らなくて良いから、
まっすぐ、部屋へお帰りなさい」
…本当はすぐにでも飛んできて欲しいくせに。
この二日間、電話連絡こそ怠らなかったけれど、
淋しく心細く過ごしていたにちがいない、じいたん。
そんなじいたんの心遣いに、涙が出た。
じいたん、あのね
そんなじいたんだから、あたしは、まっすぐ
あなたの懐へ向かって、走って帰るんだよ。
お土産、あれもこれもって、いっぱい、買っちゃったから、
今から一緒に、ふたりでのんびり、いただこうね。
待っていてくれて、ありがとう。
タクシーの車窓を流れる、夜景を目一杯吸い込み、
わたしは、ぱちん、と
「たま」から「介護猫たま」へ、シフトチェンジした。