第396話 家族が集う

2011年11月11日 20時22分04秒 | Weblog

通夜ぶるまいが始まったようだ。
私は祖母と共に隣から微かにもれ聞こえる声に耳を傾ける。
話している内容までは聞き取れないが、親戚一同が集まっている賑わいを感じる。

祖母は4人の息子を育てあげ、9人の孫と4人のひ孫を産湯につけた。
産湯といっても、文字通り生まれたばかりの赤ん坊を初めて入浴させたわけではなく、
実際は産院から退院後、お風呂に入れてきたという意味だが、
祖母にはベビーバスという言葉より産湯の方がしっくりくるので使用したい。

毎年、お盆とお正月は祖父母宅に集まっていた。
祖父が亡くなり、孫も大きくなるにつれ、誰かが来れば、誰かが来ず、
一堂に集まるという機会がなくなりつつあった。
久しぶりにみんなの声をききながら、祖母は喜んでいるに違いない。

親族・親戚だけではない。
近所の方々、友人もご焼香にかけつけてくださった中に見慣れない人たちがいる。
後できくと、いとこの職場の方々らしい。
「おばあちゃんが寂しがると思って・・・こんなにたくさんの人が来てくれて嬉しい」と話す。
お盆とお正月を何より楽しみにしていた祖母。
祖母が寂しがり屋であることは孫の代まで知れ渡っている事実。
よかったね、おばあちゃん。

酒を酌み交わし、談笑する。
通夜ぶるまいというこのシステムが私には不思議でたまらなかったが、
お酒が必要なことも、笑いが必要なことも、お腹がすくことも理解できた気がする。
壁を隔てての、生と死があり、故人と残されたものとの関係があった。
祖母の葬儀が悲しくも、どことなくすがすがしくもあったのは、
祖母が87歳という天寿を全うし、
先に生まれたものが、先に逝くという順番が大きいのではないかと思われる。


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