人気小説の映画化
DVD
原作は半年ほど前に読んで、大好きな作品
"とても優しい小説"として強く心に残っている
その映画化(そもそも、映画化を知ってから読んだのだけど)
寺尾聰も深津絵里も結構好きだし、それなりに評判も悪くなかったし、すごく楽しみにして観た
で、概ね良かった
小説の持つ、淡々とした中に漂う優しい雰囲気
博士の世俗を超越した人格、そこに隠されたちょっと悲しい過去など・・・
かなり丁寧に原作をなぞっていたと思う
ただ、どうしても違和感を禁じえなかったのは、語り手がルートであったということ
ここにも書いたけれど、私が原作にすごく入り込んでしまったのは、語り手が「家政婦」だったからだ
だからこそ、博士を見る目、博士を語る言葉が本当に優しくて、すんなり心に響いた
吉岡秀隆の数学教師もとてもよかったけれど、(こんな授業だったら受けてみたい、とも思った)彼はあくまでも"家政婦の息子"であって、博士を語るには適当じゃない
あの視線はある種"母性"を感じさせる女性のものじゃないと・・・
結果的に、途中突然家政婦のモノローグが挿入されたのも、すごく不自然だったし、義姉と博士の関係の描写も全体の雰囲気から浮いてしまっていた(子供の視線ではありえないから)
もうひとつ
「博士の記憶が80分しか持たない」という大前提があまり活かされていなかった
"そこを超越して淡々と生きる"という描写だったのかもしれないけれど、超越する以前にそれにまつわるエピソードがほとんど無かったのがもったいない気がした
そして、途中に挿入される自然の情景
確かに美しいし、"数学の美しさ"の比喩(?)なのかも知れないけれど、なんとなく押し付けがましかったような気がする
わざわざそんな情景を加えなくても、博士の言葉で"数学の美しさ"を伝えることがこの作品の魅力のなのだから
と、なんだか苦言ばかりになってしまったけれど、人に尋ねられたら、ためらわずに
「いい映画だった、オススメだよ」と答える
でも、その後に
「原作はもっといいけどね」と加えてしまうだろうけど
(2006/8/9 DVD)@,o 227_115