映画の予告を観て、(米米クラブが提供していると知り)
映画を観るのならやっぱり予習しないとね、と購入
あの映画の予告と、文庫の表紙の絵などから、落語チックなユーモア時代劇だと思って読み始めた
確かに前半はそういう趣き
会話のテンポも良いし、登場人物が皆個性的で、落語のようで読みやすい
特に、主人公彦四郎は、婿入り先から追い出され、母親のお金で酔っ払い、挙句の果てに救いを求めてお参りしたお稲荷さんは"三囲"と"三巡"が間違って・・と、とことん情けなくて、それがまた面白い
でも、時代背景が明らかになり、彦四郎の身の上が語られるにつれ、彼の志の高さや芯の強さがどんどん浮き彫りにされ、なんだかかっこよく感じられるようになってくる
かつては仲間だったりライバルだったりした周りの武士たちが、次々と時流に乗ったり、振り回されたりする中、彼自身は、時に自分の進む道を見失いそうになりながらも、最後にはきっちりと"武士の本分"を貫いた彦四郎の姿には深く感動した
中でも、ラストの
「人間が全能の神に勝ることがあるとすれば、それは命に限りがある、という点においてである」
というセリフには、鳥肌が立ってしまった
いつの時代であっても「自分が何のために産まれてきて何のために死んでいくのか」ということをちゃんと見つめ直すことがとても大切であることには変わりないはずだ
自ら命を落として決着をつける、という結末は好きではないけれど、どうせ死神に取り憑かれて誰かが死ななくちゃ行けないのだったら、彦四郎のように胸を張って死んで行くことができれば素晴らしいと思う