オベロン会ブログ

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6月のオベロン会例会報告

2012-07-01 | てこな姫

6月30日、晴天の中 オベロン会例会が行われました。


発表は、川井万里子さん


Sir Walter Ralegh の
The Prerogative of Parliaments(1628)(『議会の大権』)についてのお話でした。


この文章は、最初、
A Dialogue between a Counsellor of State and a Justice of Peace(1614)
という題で、手稿のまま回覧された文書です。


1603年以降、Ralegh はロンドン塔に幽閉されていたわけですが 
そのような境遇にあってなお
大作 History of the World を著し、そして、この『議会の大権』を書きあげた点に
川井さんは注目しています。


川井さんによれば、1603年以降の不遇のローリーにこそ
その真髄が見て取れるということなのです。


あたかも
シベリア流刑になったことで一流作家になったドストエフスキーのように、
ローリーは、ロンドン塔での辛酸を経て、
真の書き手へと変容したということでしょうか。


とはいえ
The Prerogative of Parliaments は、そんなにメジャーな作品ではありません。
モダンエディションも出版されておらず、
17世紀の版のファクシミリ版でしか手に取ることはできません。


そんな貴重な文章を、川井さんは実に丁寧に読み砕き、作品の要諦を詳細に解説し
さらには、同時代の権謀術数にありようについても、
さながら歴史活弁を聞いているかのように、
実に鮮やかに語ってくださいました

ローリーを破滅へと追いやっていく Robert Cecil や Henry Howard、
そして、ローリーに劣らない傑物である妻エリザベス (Bess Throckmorton)…。

陰謀渦巻く、血なまぐさい時代に生きた
ローリーの姿が見事に浮かび上がってきました。


川井さんの今回の発表では、
Anna Beer, Sir Walter Ralegh and his Readers in the Seventeenth Century (1997)
が重要な文献として活躍していましたが、
同じ著者は、ローリーの妻の伝記も出版しています。
( My Just Desire : the life of Bess Ralegh, Wife to Sir Walter)


川井さんのお話をうかがっていると
こちらもさっそく読みたくなってきますね! 


川井さん、いつもながらの力のこもった発表、ありがとうございました





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