オベロン会ブログ

英米文学の研究会、オベロン会の専用ブログです。

10月のオベロン会例会予告

2010-10-26 | てこな姫
秋も深まってまいりました。


北の方からは雪の便りも届き始めましたね。


つい先日まで、あんな猛暑だったのに、ほんの1ヶ月くらいで、
まるきり、違う気候になってしまうのですね。


オベロン会は、来る30日(土)に、10月の例会を開催します。

今月の発表者は、笹川さん。


ご発表タイトルは

――アディソンの「美」と『パラダイス・ロスト』批評

となっています。


あの、ジョセフ・アディソンが『スペクテーター』262号以降に掲載した
『パラダイス・ロスト』についてのエッセイと、
『スペクテーター』411号以降に掲載した
「想像力の喜び」The Pleasures of the Imagination についてのエッセイを
主に扱われるそうです。


18世紀の『パラダイス・ロスト』というと、
私などは、悪名高い(?)リチャード・ベントリーの『パラダイス・ロスト』が
浮かんできてしまうのですが、
今回は、それよりもちょっと前、
アディソンが主役になります。

週末、
天高い秋晴れの一日になるといいですね。


みなさん、どうぞお集まりください!! 



9月のオベロン会報告

2010-10-02 | てこな姫
9月のオベロン会例会は、
25日に行われました。

朝方、台風の接近が予報されていましたが
午後はスッキリと晴れて、
台風一過の秋晴れの中の会となりました。


発表は土岐知子さん。
予告のように
A. S. Byatt の "Morpho Eugenia" を材料に、
"Morpho Eugenia" におけるメタファーとアナロジーというお話しでした。


"Morpho Eugenia" には、
Amazon帰りの博物学者William とAlabaster家の令嬢Eugenia との
恋愛と結婚をめぐる物語を中心にしながら、
いくつか、別の物語が断章的に挿入されています。

それは、
Alabaser家の当主のNatural Theology の部分だったり、
アリの生態観察をもとに William が記した
大衆向けのNatural Hitoryだったり、
さらには、
Alabaster家に「寄寓」している遠縁の女性Miss Cromptonが
密かに綴っていた幻想的な物語だったりします。


土岐さんは、
これらの断章的文章に描かれる個別のエピソード、イメージが、
さらには、そこに生起するインターテクスチャルな結合が、
どんなふうに、
メインプロットに描かれる現実世界との間にアナロジーを形成しているかを
丹念にたどられました。



Byattの駆使する精密なアナロジーとメタファーを見届けたわたしたちは、
アナロジーによってしか接近できない文学的境位というものが、
まざまざと存在することを感得し、
同時に、
"Anthropomorphism" をはじめとする
アナロジーの落とし穴も、垣間見ることになるのでした。


"Morpho Eugenia" の出版は1992年。
ポストモダニズムの小説が流行した時代です。

緊密で知的な構成、
何重にも複雑に絡み合い、多方向的に響きあう言葉のイメージたちは、
まさに、90年代初頭らしいテクストと言えましょう。


Byattの小説世界は、
実に実に、濃密かつ華麗、絢爛たる言葉の乱舞でありました。


土岐さん、どうもありがとうございました!