オベロン会ブログ

英米文学の研究会、オベロン会の専用ブログです。

4月例会報告

2010-04-26 | てこな姫
 「やっと晴れた!」
と、 気分爽快の4月24日 。

  オベロン会例会が開かれました.


 この日は、
 土岐恒二さんが、ペイターの『ガストン・ド・ラトゥール』について
 お話しくださいました。

 
 久々の土岐さんの発表とあって、
 椅子が足りなくなりそうな盛況ぶり。


 担当者は、座席とハンドアウトの確保に少し冷や冷やしましたが、
 おおぜい集まった分、
 質疑応答も大活発。

 予定をはるかに越えて、3時間におよぶ例会となりました。

  
 
 難物揃いのペイターにあっても
 極めつけに難物の『ガストン・ド・ラトゥール』ではありますが、
 土岐さんは、
 この未完の大作の「書誌的情報」「構成」「舞台設定」などの要点を
 解説された後、 
 実際のテクストを丁寧に披露してくださいました。 

 
 第1章 A Clerk in Orders、
 第2章 Our Lady's Church からの抜粋に沿いながら
 ペイターが構築しようとした「言語の建築物」の組成と肌理を
 丹念にたどり、
 次いで、
 主人公ガストンが友人の手引きによって
 ロンサールの『オード集』に出会い、
 それを契機に、「新しい時代の息吹」に魅了されていく
 第3章 Modernity を、作品の鍵になる章として論じられました。

 
 ロンサールの詩に "flowers of evil" を見いだすガストンは
 そのまま
 ボードレールに modernite(モデルニテ) を看取した
 ペイターの姿と言えるのでしょう。

 もっとも
 同じく「モダニティ」を主題としながらも
 ボードレールとペイターとは
 その生き様も、文学的資質も大きく異なっているわけで、
 その辺りをめぐって、
 発表後の質疑も、大いに盛り上がりを見せました。



 主人公ガストンをめぐる Bildungsroman めいたストーリーは感じ取れるものの、
 「小説」というよりは、
 ペイターならではの散文(あるいは散文詩)としかいいようのない
 『ガストン・ド・ラトゥール』。

 
 その文章の芳醇なアロマと、奥深い色調、
 繊細な起伏に満ちた舌触りは、
 まるで
 ボルドーの老舗シャトーに秘蔵される
 ヴィンテージワインの味わいです。 
 
 (そんなワイン、飲んだことないけれど・・・)


 ペイターの文章だけで
 すっかり酔ってしまった一同は、
 例会終了後
 あっさりと日本式ビールで、
 ペイター談義の第二幕を堪能したのでありました。

 ご発表、どうもありがとうございました! 


 5月の例会はお休みになります。

 次回は、6月26日(土)、午後2時からです。

 
 

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