オベロン会ブログ

英米文学の研究会、オベロン会の専用ブログです。

10月の例会報告

2012-11-23 | ねるど
順序が逆になりましたが、10月のオベロン会のご報告です。

10月の例会は、27日にいつもの国際文化会館で
行われました。

発表者は、松田幸子さんです。

今回のメイン・テクストは、Thomas Durfeyの
The Injured Princess(1682)です。(と言っても、
読んだことがある人は、ごく少数では…、あるいは、
ほとんどいないのでは…。)

ダーフィといえば、バラッドのアンソロジー(Wit and Mirth)
の編纂者として文学史に名前をとどめているくらいかと
思いきや、今回は劇作家としての一面に光を当てての研究
となりました。

『傷ついた王女』は、ダーフィのオリジナルというわけではなく、
シェイクスピアの歴史劇『シンベリン』の改作です。

1660年の王政復古以降、シェイクスピアの作品が様々な形で
改作され、舞台にかけられましたが、今回の『傷ついた王女』も
その1つというわけです。

とはいえ、『傷ついた王女』が『シンベリン』の改作だなんて、
へんな話ですよね。「シンベリン」って国王の名前ですよね。
それ「王女」になっちゃうんですから。

このあたりの不思議さを、松田さんは見事に解き明かしてくださいました。

シェイクスピアが『シンベリン』を書いた頃のイギリスは、
複合国家(つまり、イングランドとスコットランドの複合体
ということですね。)としてのアイデンティティを確立する
ことが国家の急務で、そのためにローマ帝国に征服されて
いた時代にさかのぼって歴史を再構成しなければならな
かったわけです。

ところが、『傷ついた王女』の時代には、演劇に対する
そのような時代的要請はすでになくなっていて、苦悩する
王女の私的領域での諸問題(恋愛、結婚、嫉妬…エトセトラ)
が浮き上がってくるわけです。

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発表者の松田さんは、今回がオベロン会での
デビュー戦でした。ただし、並の新人とは
違うんですよ。すでに、数々の学会の大舞台で
活躍していて、今回のご発表も、なんていうか
「メジャーリーガー降臨」っていう感じで、
私たちも大いに勉強させていただきました。

松田さん、ありがとうございました。

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で、例会の後はどうしたかといいますと、
いつものとおり、楽しく、夜がふけるのを
わすれて、酒宴が続きました。

時代とともに変化するものあれば、
いつだって、いつものとおりで、
変わらないものもあるんです。


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