オベロン会ブログ

英米文学の研究会、オベロン会の専用ブログです。

11月の例会報告

2012-12-21 | ねるど

またまた順序が逆になってしまいました。
遅ればせながらの、11月例会の報告です。

今回は、笹川渉さんが、

「苦悩する語り手---ミルトンの未完の詩
"The Passion"について」

というタイトルでお話くださいました。

この場合の、"The Passion"は、「激情」という
意味ではなく、神学用語の「受難」、すなわち
イエス・キリストが囚われの身となり、磔にされ、
処刑されるまでの一連の精神的、肉体的苦しみ
を意味します。

さて、この「受難」というテーマは、詩や絵画の
モチーフとして、さまざまな芸術作品において
取り上げあられてきました。

ただし、ここで申し上げておかなければならないのは、
「受難」はきわめてカトリック的なテーマであった
ということです。

カトリック的な題材に、プロテスタント詩人の代表格
とも言うべきミルトンがどのように取り組んだのか?
このような、困難で刺激的なテーマに、笹川さんは
取り組んでくれたのでした。

ミルトン版「受難」は、ミルトンが詩人として大成
する以前の、いわば習作期の作品です。一見すると、
かならずしも傑作とは言えない作品です。(笹川さん
によると、批評の対象として取り上げられることも
多くないとか…。)

しかし、たとえ秀作ではないとしても、ミルトン
という大詩人が完成される過程をたどるさいの、
重要な通過点として、見逃してはならないポイントを
いくつもはらんだ作品であることは、確かなようであります。

発表では、クラッショーやハーバート、ヘリック、ダン
といった、他の17世紀詩人(いわゆく形而上詩人という
人たちです)が、「受難」のテーマをどのように
料理したかなどにも目を配り、さらには15、6世紀の絵画
も視野にいれ立体的に進められました。

言うまでもありませんが、オベロン会の例会である以上、
ミルトンの作品の精読にもっとも多くの時間が費やされ、
ご発表の後は、喧々諤々の議論が長く続いたのでした。


笹川さん、どうもありがとうございました。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿